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延辺報告(5)~地元市場に潜入してわかった延辺観光の輝かしい未来!

 延辺報告(1)(2)(3)(4)から続きます。

 今回の延辺滞在中に2ヶ所の市場へ行きました。どんな国であれ、どんな地域であれ、市場にはそこに住む人たちの食生活が詰まっています。旅の間に市場を訪ねるのは大きな楽しみですが、延辺の市場もやはりエキサイティングな場所でした。

 冒頭の写真は「水上市场(水上市場)」の朝市。普段であれば川沿いに露店がずらりと並ぶのだそうですが、寒い時期ということもあって室内のみの営業でした。それでも早朝からずいぶんな活気でしたけどね。

 そして、この市場が本当に延辺そのものといった感じ。

 ずらりとキムチを並べている一画があるかと思えば……。

 スンデ(韓国式の腸詰/순대)を切っているお母さんがいて……。

 かと思えば揚げたての油条(揚げパン)も販売している。

 朝鮮と中国の食文化が見事に混在しているのですが、特にエリアで分かれていたりするのでなく、どちらと区別することなく並んでいます。飲食店ではどちらかに分割されやすい延辺の食文化が、ここでは見渡す限り混在しているのに興奮しました。

 まさしくこれぞ延辺。

 これを見つけたのも嬉しかったですね。

 写真の左手前に並ぶふたつの鍋。丸鶏を一緒に炊き込んだおこわのような料理ですが、これを朝鮮語でタッコム(닭곰)と言います。タッは鶏、コムは煮込むという意味の単語で、コムタン(牛スープ/곰탕)のコムと同じです。これもまた延辺を代表する郷土料理のひとつと言えましょう。

 僕はこのタッコムを開城で食べたことがあるのですが、そのときはサムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)のような料理でした。ただ、それが北朝鮮の北部地域では炊き込みごはんのように作るようで、これがまさしくその炊き込むタイプのタッコムです。

 もち米を丸鶏の腹に詰めてスープ料理として煮込むか、もち米と一緒に丸鶏を炊き込むか。地域差にしてはかなり大きな違いですが、これを同じ料理と考えてよいのかは、もうちょっといろいろな角度からリサーチしてみたいところ。なかなか難しいでしょうが、北朝鮮の各地域における言葉の使われ方などを知りたいところです。

 せっかくなので弁当風になったものをテイクアウト。

 薬味醤油が添えられており、それをかけまわして食べます。もっちりつややかなごはんは鶏のダシをいっぱいに吸い込んでうま味たっぷり。エゴマ油でも混ぜているのか、鶏の脂だけではないようなこってり感もあって、それがまた裂いた鶏肉とよく合います。

 アクセントにナツメとクコの実。

 クコの実は長白山(白頭山)に自生するものが「野生クコの実」として販売されていたり、あるいは北朝鮮産というのが並んでいたり。これを少し買ってきましたので、これを使って家でもタッコムを作ってみたいと考えています。

 場所がかわってこちらは「西市场(西市場)」。

 広大な建物の1階が衣料品コーナーになっていて、地下1階が食品売場。ソウルの東大門市場と南大門市場が合体したような感じで、とりあえずここに来ればなんでも揃うといった雰囲気でした。

 こちらの市場はエリア分けが明確で、一面の青果コーナーがあるかと思えば……。

 ずらり連なる精肉コーナーがあって……。

 その先にずらり鮮魚コーナーという感じ。

 パッとみる限りは馴染みのある食材がほとんどですが、それでも精肉コーナーには犬が並んでいたり、鮮魚コーナーではカエルが飛び跳ねていたり。あるいは先日の記事でも書いたヤママユガのカイコが生きたまま売られていてウネウネ動いているなど、なかなかにワイルドな光景も楽しめます。

 個人的に大喜びしたのはチャル(羊の串焼き)のスパイスがどっさり売られていたこと。すかさずこれも購入し、ここしばらく自宅で鶏肉を焼いてまぶすなど、延辺を懐かしみながらいろいろ試している年末年始です。

 あと、こちらが延辺報告(3)で紹介したネギ(カワミドリの葉)。乾燥させたものが売っていましたので、これもまた延辺らしい風味の香草ということで購入し……。

 こんな感じで使ってみました。

 先日、ホームパーティにお呼ばれした際に作っていったのですが、手前がチャルのスパイスを使った鶏肉の延辺焼き。奥が塩漬けにしたアヒルの卵と、ネギ(カワミドリの葉)の乾燥粉末を混ぜ込んだポテトサラダの延辺風。もちろん正しい延辺料理ではありませんが、個性の強い延辺的な香りを馴染みやすい形で、とあれこれ考えたらこんな料理になりました。

 だいぶ手探りで作ったわりにそこそこ好評でホッとした次第です。

 さて、ここからは最後のまとめ。

 市場を巡っていて印象的だったのですが、値段を尋ねようと朝鮮語で話しかけたところ、漢族の方で言葉が通じないということがありました。僕は中国語ができないので困ったなと思ったら、すかさず隣の店にいた朝鮮族の方が通訳をしてくれて解決。

 どうやらそういうことはよくあるようで、市場仲間同志の助け合いという当たり前の雰囲気だったのですが、これをよくよく考えてみるとけっこうすごいことだなと。

 そのへんにいる誰もがごくごく自然に朝鮮語と中国語の2ヶ国語を話せる。

 ヨーロッパなどでは多言語を扱う人も多いのでしょうが、普段日本と韓国ばかりをウロウロしている身としては、なんとも強力な武器を持っているように見えます。だからこそバイリンガルという能力を活かして、90年代以降、韓国へと出稼ぎに行く人が増えたのですが、中国の経済が力を増している中、延辺報告(4)でも書いたように朝鮮族の所得水準も大幅に向上している現状があります。

 となると……。

「この人たち今後すごい勢いで伸びるんじゃないの?」

 というような予感もわいてきます。

 現在の韓国社会で朝鮮族というと、中国の貧しい地域から出稼ぎに来た田舎言葉のヒト、みたいな扱いでやや下に見られているような感じがなくもないのですが、中国人観光客が爆発的に増えたあたりから、韓国語と中国語の両方ができるありがたい人材、という評価に少しずつシフトしてきた感があります。

 このポテンシャルがそのまま韓国社会で力をつけていったら、あるいは東アジア全域で見たとしても、能力を発揮できる場はかなり多いように思います。

「朝鮮族すげぇ!」

 みたいな爆発的転換点が韓流のように起こることもあってもおかしくないですし、そんな意味からも目を離せない地域になるタイミングがすぐ近くまで来ているんじゃないかなとも。延辺から帰ってきたばかりの興奮もあるのでしょうが、ついついそんなことを夢想しました。

 また、ここまで5回に分けて報告してきたように、朝鮮文化と中国文化の入り混じる光景はかなり独特ですし、韓国に深くハマった人たちにとっても、まったく異なる新鮮な体験ができるように感じました。そしてその体験は、韓国という国を見る場合にも新たな厚みとして活きるように思います。

「面白いからみんな延辺行こうぜ!」

 というのがまずは今回の結論。

 僕自身もまだまだ見られていない部分が多いですし、食べられなかったものも多いので、いつかまた「今回ほど寒くない時期!」に、延辺を訪れたいと思います。いつ行けるかはまだわかりませんが、遠からず必ず。

 いずれまたの延辺報告をぜひご期待ください。

 一連の延辺報告はこれでおしまい。最後まで読んでいただきありがとうございました。なんとか年をまたぐ前に終わってホッとしております。

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