慶尚南道グルメツアー下見報告(2)~咸安の高麗韓菓と落花遊び

 下見報告(1)から続きます。

 写真は慶尚南道咸安銘菓の「咸安プルパン(함안불빵)」です。直訳すると「火のパン」となり、前回の投稿にもあった火焔型透窓土器の火焔が命名の由来。そこに鬼面瓦の顔をつけています。ベースはマドレーヌで、左からカボチャ、チョコ、抹茶味。

 咸安プルパンの中には干し柿(곶감)が入り、甘味付けには熟柿(홍시)と冬スイカ(겨울 수박)の水飴(조청)を使用。いずれも咸安の名産なので、まさに咸安尽くしのお菓子です。咸安プルパンを製造するベーカリーカフェでは、熟柿ジュースや、熟柿ラテなども提供。見た目はマンゴージュースにも似ていますが、味はしっかり柿でした。

 阿羅伽耶の歴史がお菓子にまで根付く咸安ですが、高麗の歴史も重要で、郡内には高麗洞村(고려동마을)と呼ばれる地域があります。高麗王朝から朝鮮王朝に変わる際、自分はあくまでも高麗の臣下であり、朝鮮に仕えるのは義理を欠くことだと、中央を離れて隠居した李午(イ・オ、이오)先生が開いた村です。

 近年の韓国では、ヤックァ(薬果、蜜入りの揚げ菓子/약과)や、ケソンジュアク(開城式の揚げ餅/개성주악)など、高麗時代からの伝統菓子がブームになっています。高麗洞村でも伝統菓子を作る体験プログラム(要予約)や、通販を行っています。ちなみに右下の器にある黒ゴマのタシク(らくがん/다식)は僕が教わって作りました。

 左下のお茶はヨンコッチャ(蓮花茶/연꽃차)。前回の投稿にも書きましたが、山城の遺蹟から発掘された700年前(高麗時代)の蓮の種子が花を咲かせたことから、咸安では蓮が重要なモチーフとなっています。こちらのお茶も高麗洞村の近くで、自ら蓮を栽培する方が淹れてくれました。香りがとっても華やかです。

 お茶だけでなく、ヨンニプパプ(蓮の葉包みごはん/연잎밥)をメインとするコースメニューもあります。ヨンジャユッチュク(蓮の実粥/연자육죽)、ヨンコッティギム(蓮の花の天ぷら/연꽃튀김)、ヨンニプオリフンジェ(蓮の葉で包んだアヒルの燻製/연잎오리훈제)など、蓮尽くしを堪能。他の野菜料理も素材のよさが活きていました。

 朝鮮時代の歴史に触れる場所もあり、楼亭の無尽亭(무진정)は1542年に文官の趙参(チョ・サム、조삼)先生が、後進の養成を兼ねつつ余生を過ごすために建てたものです。無尽亭の前には蓮の池が設けられており、ここでは陰暦4月8日(初八日)に朝鮮時代から続く「落花遊び(낙화놀이)」が行われます。

 落花遊びの詳細は、咸安郡の公式YouTubeを見ていただくのがよいと思いますが、炭の粉を紙で包んで棒状にし、願い事を書いた短冊を吊るして燃やすものです。池中に張り巡らせて火をつけるので、一面に火花が散って幻想的。下見では実際に1列作って見せてくださいました。

 その無尽亭から、急坂をのぼっていくと城山山城(성산산성)。700年前の蓮の種子や、鬼面瓦などがこの場所から発掘されました。無尽亭から山城をぐるっと回る散策コースになっており、案内板によれば2.5kmで約50分ほどの所要時間。ツアーで行けるかは難しいところですが、健脚の方はぜひ。

 城山山城からの眺めですが、中央の小高い丘に連なる末伊山古墳群が見えますでしょうか。近くから見ても圧倒されますが、こうして離れてみると全体の姿がよくわかりますね。昔の人もこうやって山城から古墳を眺めたのだろうかと考えると、時の流れが一瞬のようにも感じます。いやはや絶景でした。

 以上が、咸安の下見報告。この後もう2ヶ所の地域を巡りましたので、引き続きまとめていきます。なお、ミステリーツアーゆえに飲食店名は伏せていますが、いずれの機会に別途紹介したいと思います。すぐ行きたい方は個別にDMなどでご連絡ください。

 ツアーのお申込みは三進トラベルサービスまでお願いします。

慶尚南道グルメツアー下見報告(1)~祝・世界遺産登録「伽耶古墳群」
慶尚南道グルメツアー下見報告(2)~咸安の高麗韓菓と落花遊び
慶尚南道グルメツアー下見報告(3)~河東の始培地茶と蟾津江グルメ
慶尚南道グルメツアー下見報告(4)~固城の海の幸とレインボーな橋

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