第13回「オレカテ」後記~地図を通じて80年前のソウルが確かに見えた!

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 第13回オレカテは3月28日(土)に実施。写真は第1部の様子です。

 2ヶ月遅れの後記になってしまった第12回に続き、1ヶ月遅れになってしまった第13回の報告です。講師は明治学院大学教授の秋月望先生。オレカテの企画を最初にお話ししたのは去年の年明けでしたが……。

「受験が終わって新学期前の時期ならなんとか」

 ということで1年以上の準備期間を持ちました。主催者側としては念願成就の回。普段から講義に、研究に、大学内におけるもろもろのお仕事など、大忙しの中でこうして時間を割いていただいたことに感謝です。

 タイトルは「ソウル昔ばなし 京城からソウルへ」。

 事前にいただいた概要から抜粋し、

「あまり視野には入ってこない植民地支配下の京城の町の景観を、現代のソウルと重ね合わせてみることによって、写真や数字からだけでは見えてこない植民地支配の本質を考えてみたいと思います」

 というのが主たる内容でしたが、なんか改めてこの文章を読むだけで、1時間半の講義がわあっとよみがえってくるようですね。

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 講義中に活躍したのが京城時代(1933年)の精密地図

 東京経済大学図書館のサイトで公開されていますよ、とのことでしたので、上記にリンクを貼ったところから僕もダウンロードしてみました。ものすごい高解像度なので、町名から番地、主要な店舗名などもすべて見ることができます。これを拡大して眺めて行くと……。

・サクラビール
・天狗すし
・京城菓子
・櫻羊羹
・ニコニコカフェ

 といった店名が続々と出てきて興奮したり。

 そうなると、今度は「天狗すし」が現在のどこにあったのか気になりだして、現在の地図サイトを広げて照らし合わせてみると、ちょうど4号線の淑大入口駅前あたりと判明しました。路地に分け入ってストリートビューを見ると、そこがパジョン(ネギチヂミ、파전)を専門とする居酒屋になっていて……。

「80年以上前にここで寿司を食べていた人がいたんだなぁ」

 とか思い始めると、妄想だけでどんどん時間が過ぎていきますね。

 やがて深みにハマって、手元の資料なんかも引っ張り出すと、本の中に出ている店がやっぱり載っている訳ですよ。

 明洞駅のすぐ南山側には1897年にうどん店として創業し、1900年から料亭として人気を集めた「花月」があり、また南山のふもとには支店の「花月別荘」までもがしっかりとあります。さらには現在の乙支路2街あたりにあったカフェ「銀松亭」や、同じくパゴダ公園前のカフェ「エンゼル」。いまでいうバーと説明されている当時の酒場であろう「朝鮮舘」までもが見つかりました。(参考資料:『ソウル城下に漢江は流れる』)

 詳細に見れば見るほど、当時の姿が脳内に浮かんでくるようで。

 現在のソウルをストリートビューで確認しながら、そこに80年前の地図を重ねていくと、なんだかタイムスリップしたような錯覚に襲われるようです。

 この地図すげぇ楽しい。

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 こちらは第2部の様子。

 講義の中では前述の地図を見つつ、こういった面白系の発見をリアルタイムで紹介しながら、本題のひとつである「日本人と朝鮮人の生活区域が明確に分かれていた」という説明へと踏み込んでいきます。

 確かに地図を見ると一目瞭然なのですが、仁寺洞、楽園洞、公平洞、清進洞などは「~洞」と書かれて現在の韓国と同じ表記。一方で、そのすぐ南にある現在の武橋洞、茶洞なんかは武橋町、茶屋町と日本風の町名で記述されています。

 ちょうど清渓川あたりを境にして、景福宮など王宮のある北側が朝鮮人のエリア。清渓川から南山あたりが日本人のエリア。その一帯だけすべて「~町」になっており、実は上記に並べた店の名前も、ほぼそのエリアに密集しています。

 日本人向けの地図というのもあるかもしれませんが、清渓川より北側は王宮や学校など主要な建物名だけが記載されており、店舗や企業の名前はほとんど見ることができません。

 もともと日本人が入ってきた頃は、辺境に追いやる意味で南山のふもとに日本人街が作られたそうですが、やがて日本に併合されるとそちらが優先的に開発されていったとも。そういった別々の暮らしがありながら、やがて戦争が激しくなると、日本も朝鮮もなく戦地へと駆り出されていくことになります。

 ついつい浮かれて食にまつわる部分だけ探してしまったりもしますが、見方によればそういった爪痕も地図上から読み取れる訳ですね。そのほかたくさんの貴重な資料をもとに、いろいろと考えさせられる内容の話をしていただきました。

 こういった古地図を頭の中に入れておくと、現在のソウルもまた違って見えるような気がします。あるいは古地図片手に歩いてみても楽しそうですね。いつか機会があったら、淑大入口駅前のパジョン居酒屋に寿司を持ち込んで食べてみたいものです。

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