栄州物語(2)~衝撃の大粒チョングッチャンに出合った日

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前回の記事から続きます。

・三国時代に交通の要衝として新羅と高句麗が争った
・朝鮮時代に優秀な儒学者を養成していた
・小白山脈を背にして農業、畜産業が盛ん
・リンゴ、高麗人参、韓牛といった名産品がある

こんなまとめを作りましたが、歴史的に教育熱の盛んな栄州は、
土地の豊かさにも恵まれ、数多くの名産品を抱えています。

栄州の食を語るうえで、この名産品の豊かさは大前提ですね。

栄州米と呼ばれ、米が有名なところに加えて、
秋になるとマツタケも出てくるというのが冒頭の一品。
もちろん、この時期ですから冷凍保存したものですが、
特別注文ということで、

・ソンイトルソッパプ(マツタケ釜飯、송이돌솥밥)

を出していただきました。
ただ、本来は栄州よりも隣町の奉化(ポンファ)郡が、
マツタケの産地としては有名らしいですけどね。

慶尚北道はほかにも安東、青松などがマツタケで有名。
秋に訪れる場合は、必須の楽しみといえましょう。

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むしろ栄州として見るべきは脇役の充実。

トルソッパプに20品ほどの副菜がつくというのが、
こちら「芸郷」という店の自慢だそうです。

マツタケは特注メニューなので普段はありませんが、
黒豆などの入った釜飯と、アザミ入りの釜飯がレギュラー。
そこに上記のような20品の副菜がついて……。

「W8000!(約800円)」

という値段はかなりお得感があるかと。

観光客向けというより、限りなく地元向けのお店ですが、
副菜の底力を感じたい方にはおすすめのお店です。

店名:芸郷(イェヒャン)
住所:慶尚北道栄州市コットンサン路40番キル11(可興洞1381-37)
電話:054-637-7238

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そして、栄州にいる間ずっと感じたのですが、
副菜のレベルが高く、野菜、山菜料理が美味しいです。

いちばん左上に見える、

・プチュコンカルチム(ニラの大豆粉蒸し、부추콩가루찜)

なんかも慶尚北道らしい一品だとか。
ニラに大豆粉をまぶして蒸したものですが、
どこの店に行っても必ず出てきました。

こうした野菜、山菜料理は浮石寺の入口あたりも有名。

観光地でもあることから専門店が並んでおり、
早朝からも開いているので使い勝手はいいと思います。

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ところ変わってこんな店。
看板に書かれているのは、

「栄州コグマパン」

という文字です。
コグマ(고구마)がサツマイモを表しているのですが、
栄州はサツマイモの名産地でもあるんですね。

リンゴ、高麗人参、韓牛、山菜に加えて、
まだ出てくるあたりが栄州ならではの魅力とか。
最終的にはあれこれ並べるよりも、

「栄州の名物は大地である!」

という理解が正しいのかも。
もう至るところ名物だらけという状況ですので、
それは市の観光担当もPRに悩む訳です。

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サツマイモ菓子の専門店はいくつかあり、
僕も過去にソウルの支店を取材したことがあります。
こことは違うお店でしたけどね。

「元祖はココ!」

と地元の方が強調しておられました。

店名:ミソモグムゴ
住所:慶尚北道栄州市鳳峴面小白路1727(大村里508)
電話:054-636-1599

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かわいらしいサイズのコグマパン。

中にサツマイモあんの入った焼き菓子ですが、
甘さがとても自然で、サツマイモそのままを食べる感じ。
素材のよさをストレートに楽しめます。

なんでもこの店ではサツマイモ自体を自家栽培。
それを自社工場で加工、販売する、

「第6次産業!」

であると社長がアピールしておられました。

農水産物の生産(第1次産業)と食品の加工(第2次産業)、
流通と販売(第3次産業)をすべて足し算した用語。
日本でも最近よく聞きますが、韓国でも注目されているんですね。

ちなみに1個W1300(約130円)。

お土産などにもちょうどいいかと思います。

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スイートポテトや、ガレットなど種類も豊富。
ほかにもサツマイモそのものを段ボールで販売していたり、
サツマイモ入りのパンなども並べられておりました。

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さて、そんな感じで栄州の大地を堪能しつつ、
最終的にいちばんよかったのはこの料理だったかなと。

・チョングッチャン(韓国式の納豆汁、청국장)

というのは全国どこでも食べられる料理ですが、
栄州らしさとしておおいにアピールすべきが……。

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豆。

本当にいくつあるんだという名産品ですが、
栄州は大豆の生産も盛んな土地柄だそうですね。
浮石寺のある浮石面が主産地であることから、

「プソクテ(浮石太、부석태)」

というブランドを掲げております。
品種としては黒大豆のソリテということになりますが、
その中でもたいへん大粒であるのが自慢のひとつ。

大豆の重さを計る単位に、

「百粒重(ひゃくりゅうじゅう)」

という用語があるのですが、
一般の大豆が25~30gなのに対し浮石太は40gほど。
写真でうまく伝わるかがちょっと不安なのですが、
スプーンですくった瞬間、

「でかっ!」

と思わず声をあげました。

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2人前でこんな感じ。

副菜が充実しているというのも嬉しいですよね。
これでお値段、1人前W8000(約800円)は安いです。
豊基駅前という便利な立地ということもありますが、
ランチタイムには大行列ができる人気店です。

素材のよさもさることながら、料理としても抜群。
40年の歴史あるお店ですが、たいへん研究熱心なご夫婦で、

「今日よりも明日のほうが美味しくなるように」

と語っていたのが印象的でした。

僕がこれまで食べたチョングッチャンの中でも、
この店の味は間違いなくトップクラス。
豆の立派さも含め、ぜひ多くの人に味わって欲しいです。

店名:ハンギョルチョングッチャン
住所:慶尚北道栄州市豊基邑人参路1-1(西部里138-10)
電話:054-636-3224

というところで、今回はここまで。
次回はまた違った切り口から栄州の食を分析します。

<栄州物語三部作>
栄州物語(1)~栄州と聞いて思い浮かべるものは?
栄州物語(2)~衝撃の大粒チョングッチャンに出合った日
栄州物語(3)~郷土料理の源流には宮中料理があった

 

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