「みなさん、これは韓国料理ですか!?」の考察。

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先日、韓国関係のビジネス交流会があり、
そこで、10分ぐらい話をしてくださいと頼まれました。

ここ最近、話をする仕事はだいぶ頂くようになりましたが、
相手がみんな韓国業界のプロ、というのはめったにないことです。
さてどんな話をしたものか、と悩んだあげく選んだテーマが、
タイトルの、

「みなさん、これは韓国料理ですか!?」

という話でした。

けっこうこのテーマはあちこちで使っているのですが、
韓国に詳しい方々には、目先を変えた切り口でいいかなと。
韓国料理業界における最先端の話題も交えてという話だったので、
それなら、ということで選んだテーマでもあります。

その例としてあげた料理をここにも並べますので、
もしよかったら、みなさんも考えてみてください。

まず大前提として……。

・韓国料理は世界を目指した発信に力を入れている
・そのため韓国内では韓国料理の再解釈や新しいアレンジが流行
・韓国に限らず、日本など外国でも新しい韓国料理は生まれている
・韓国料理という枠が広がり、枠自体も曖昧になっている

といった背景を話の始めに伝えました。
これは肯定的にとらえても、否定的にとらえてもかまいません。
むしろ、そこがまさに個々人の解釈であり、

「みなさん、これは韓国料理ですか!?」

という問いかけへの答えとなるはずです。

さて、その第1問目が冒頭の写真。

ソウルの清潭洞にある「L’Atelier Monique」という、
ベーカリーで見つけた焼きネギ入りのクロワッサン(左下)です。
お店では日本語で「ネギワッサン」と呼ばれておりました。

なぜ、日本語かというと開発したシェフが日本人。
韓国野菜の甘さに惚れ込み、それを活かしたパンとして、
クロワッサンに挟む、という形で販売を始めたそうです。

また左上は、ノーマルなタイプのクロワッサンですが、
右にあるのはミスカル(穀物粉)入りの香ばしいクリームパン。
韓国的な素材を、パンの中に取り込むという工夫を行っています。

とりあえず、左上のクロワッサンは置いとくとして、
ネギワッサンと、ミスカル入りのクリームパンを考えてください。

みなさん、これは韓国料理ですか?

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次にあげたのはコチラ。

昨年、大ヒット商品となった白いスープの「長崎チャンポン」。
韓国でチャンポンというと、真っ赤なスープというのが相場でしたが、
白いスープのブームで、その常識がガラガラと崩れました。
日本的な視点から見ると、もとのスタイルに戻ったとも考えられます。

ポイントとなるのは、白いスープだけども「辛い」という点でしょう。
青唐辛子がたっぷり入って、真っ赤なチャンポンと同じぐらいビリビリきます。

商品名に「長崎」と入っていることからも、イメージは日本でしょうが、
味の方向性を考えると、韓国料理の延長線上に落ち着いています。

みなさん、これは韓国料理ですか?

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もうひとつ韓国から。

ソウルの新沙洞にある「ジョン食堂」という店の料理で、
ポッサム(茹で豚の葉野菜包み)にアレンジを加えた一品です。
こちらの店は西洋料理の技法を用いた韓国料理を自慢とし、
従来の韓国料理とは一線を画す「ニューコリアン」を名乗っています。

焼き目をつけた豚バラ肉に、刻んだピクルスを載せ、
ジャガイモ、タマネギのピューレと干しブドウのソースで味付け。
下に敷いた行者ニンニクの葉で包んで食べるという趣向です。

この店では「五感満足テジポッサム」と名乗っていましたが、
ポッサムをこのスタイルで出すのは、まあまずここだけ。

みなさん、これは韓国料理ですか?

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こちらはこのブログでも何度となく紹介している薬膳スイーツ。
東京、広尾にある「薬膳甘味千の花」で作られています。

写真手前から、時計回りに、

・薬膳カップケーキ(高麗人参)
・薬膳カップケーキ(五味子)
・高麗人参モンブラン
・薬膳種タルト

というラインナップ。

いずれも韓国的な素材を使って作った西洋スイーツ。
ただ、いままでの3つと違うのは、「日本で作った」という部分ですね。

みなさん、これは韓国料理ですか?

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お次はコチラ。

僕自身は東京の有楽町にあった店で食べたのですが、
もともとはロサンゼルスで生まれたタコスの一種です。
「KOGI BBQ」と呼ばれる料理で、「KOGI」というのが韓国語で肉。
メキシカンタコスに韓国式の肉料理を載せてあります。

上の写真では、チーズブルダックが載っておりますが、
ほかにも、プルコギ、サムギョプサルあたりが定番とか。

みなさん、これは韓国料理ですか?

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最後は大阪名物ともいえる、ちりとり鍋(鉄板鍋)。
大阪の在日文化が作り上げた料理のひとつです。

韓国料理としてはコプチャンジョンゴル(ホルモン鍋)が近いですが、
料理の名称にもなった、ちりとり型の鍋を使っているのが特徴。
炒めながら、煮汁も楽しむという発想から生まれたそうです。

大阪の韓国料理店では、これが看板メニューというところも多く、
また東京など他地域では、ちりとり鍋としての専門店もできています。
ただ、少なくとも僕は、まだ韓国で見かけたことがありません。

みなさん、これは韓国料理ですか?

ということで以上、6つの料理を例にあげました。
もちろんこれ以外にも、あちこちでいろいろな試みが行われており、
同じような形で紹介できる料理はそれこそ無数にあるでしょう。

どうですか、なんとなく頭の中で想像して頂けましたか?

境界線の引き方は人それぞれなので、

「こんなの韓国料理じゃない!」
「いや、これも立派な韓国料理だ!」

という両方の意見が成り立つと思います。
この問題に正解はないですし、立場の違いでも意見が割れて当然です。
もっといえば、無理に答えを出すような問題でもないかもしれません。

ただ、それを踏まえた上で、それでも悩むべきなのが、
僕を含めた、韓国業界で仕事をしている人ではないかなと。
未来に向けて、常に新たな可能性は模索していかねばなりませんが、
それが過度であると、本質を見失う結果にもなりかねません。

僕は他の業界のことをあまり知りませんが、

・日本メーカーが開発した日本限定の韓国コスメ

みたいのもあったりするんですかね。
あるいは、

・全員外国人で韓国人がひとりもいないK-POPアイドル

とかがデビューしたらどうなるんでしょう。
たぶん、各業界で悩まなければならない人がいるように思います。
そういう問題提起としては、少し考えてみてもよいかなと。
そんなことを思って、こういう話をさせて頂きました。

「え、僕ですか?」

ちなみに僕は上の6種類、全部韓国料理でいいと思っています。
少なくとも自分が取材に行く可能性があるなら、それはアンテナを立てておくべき。
自分の守備範囲なら、それは韓国料理として考えておこう、という考え方です。

まあ、こういうのって、定義の問題だったりするんですけどね。

境界線をまたぐ料理に出会ってオモシロ悩むというのも、
現代の韓国料理を味わううえで、ひとつの楽しみではないかと思います。
あとは、それをテーマに、みんなであれこれ悩んでみることも。
なので機会があったら考えてみてください。

みなさん、これは韓国料理ですか?



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