マッコルリはいつ「マッコリ」になったのか(まとめ)。

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3日前からの続き物です。

前編はコチラ。
中編はコチラ。
後編はコチラ。

土日の間にダラダラと続けていましたが、
これをもって、いったんの区切りとさせて頂きます。
たぶん月曜日にまとめ読みという人も多いでしょうけどね。
なので一応、あらすじを書いておきます。

発端となったのは先週の水曜日に書いた下記の記事。
冒頭の写真は、そのトップページで使ったものです。

新大久保「武橋洞」で発売前の済州マッコリ。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-958.html

この中で僕はこれまで「マッコルリ」と書いてきた表記を、
「マッコリ」に改める、ということを宣言しました。
僕自身にとっても、ずいぶん悩んだうえでの方針転換でしたが、
意外なことに、けっこうな反響を頂きました。

他の韓国語表記と統一をはかるなら「マッコルリ」なのですが、
世間一般では「マッコリ」という表記がだいぶ浸透してきました。
市販される銘柄や、飲食店なども「マッコリ」を使うケースが目立ちます。
韓国ブーム、韓国料理ブームとともにマッコリブームが沸き起こり、
韓国語ではなく、日本語として認知されてきたと僕は判断しました。

韓国語として書くならマッコルリ。より忠実に書くなら「ル」は小さく。
日本語として書くならマッコリ、という区別で統一するつもりです。

ただ、韓国語を知る多くの人にはまだ違和感があるようで、
コメント欄から言葉を借りると、「ら抜き言葉」に近い感覚。

「マッコルリ」を「マッコリ」にするのであれば……。

・ソルロンタン(牛スープ) → ソロンタン
・シンソルロ(神仙炉) → シンソロ
・ムルレンミョン(冷麺) → ムレンミョン
・シルラ(新羅) → シラ
・ハルラサン(漢拏山) → ハラサン

といった表記で統一せねばなりません。
正直言って、なんとも気持ち悪い現象です。
まあ、新羅は「シーラホテル」が使われますけどね。

ただ、その一方でこの発音は非常に難しいのです。

韓国語を知らない人には「小さいル」など想像もつかない音ですし、
大きく「ルリ」と書いても、Rの音が重なって舌が回りにくい。
発音のしやすさと、語感のかわいさも手伝って、
「マッコリ」が主役を奪ったのは、よく理解できます。

僕が「マッコリ」を使おうと判断したのは2009年5月27日でしたが、
メーカー、飲食店などは、もっと早い判断を下していたのでしょう。

では、それがいつ頃なされたのか。

それを調べてみたいと思って始めたのが今回の企画。
言葉の問題だけでなく、「マッコリ」が日本語化し、
世間に認知されていった時期を確認しようという試みです。

まあ、自分が方針転換したことへの小さな心のモヤモヤを、
他の事例を確認し、塗りつぶそうということでもありますけどね。

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写真は三河島あたりで見かける「不老どんどん酒」。
イメージカットとして挿入しましたが、これは大邱の地酒です。
輸入品であるにもかかわらず、まだ発酵が止まっておらず、
フタのてっぺんに小さな穴を開けて、ガス抜きをしています。
自宅では最近のお気に入りとしてこれを愛飲しております。

この美味しさも熱く語りたいところですが、
それは他の機会に譲るとして、まずはマッコリの日本定着時期。
前編、中編、後編でピックアップした事象を、
時系列に沿って、一覧として書き出してみたいと思います。

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2005年12月28日……韓食日記スタート
2006年04月28日……西新宿「マッコリバーてじまぅる新宿店」オープン
2006年07月25日……銀座「どぶろくバーTORAJI」オープン
2006年11月頃………百歳酒ジャパンが純米マッコリ「米夢」発売
2007年03月22日……中央日報が日本のマッコリブームを報じる
2007年05月09日……新大久保「はるばん」がマッコリの酒造免許取得
2007年08月09日……鄭銀淑著『マッコルリの旅』刊行
2007年09月05日……読売新聞が新大久保の地マッコリを報道
2007年11月頃………東亜トレーディングが「本生マッコリ」発売
2007年11月16日……実業之日本社『東京 本気の韓国料理店』刊行
2008年02月頃………二東ジャパンが「マッコルリ」を「マッコリ」に改称
2008年02月09日……第1回「利きマッコリ選手権」開催
2008年04月頃………二東マッコリがテレビCMを開始
2008年07月頃………新大久保「生マッコリ家」オープン
2008年07月22日……上野「韓国食菜二東マッコリ」オープン
2009年02月23日……焼肉天国.comプロデュース「東京マッコリ」発売
2009年03月28日……高矢禮から「高矢禮マッコリ」発売
2009年05月27日……韓食日記が「マッコルリ」を「マッコリ」に変更
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手持ちの資料だけで作成していますので、
もし間違いなどありましたら、ぜひご指摘ください。

まず、象徴的なのが、

2006年04月28日……西新宿「マッコリバーてじまぅる新宿店」オープン
2006年07月25日……銀座「どぶろくバーTORAJI」オープン

こちらの2つでしょうか。
2006年は日本にマッコリ専門のバーが誕生した年。

ちなみに、それ以前では高円寺にも「白&黒」という写真バーがあり、
ここのマスターが大のマッコリ好きで、マッコリバー化しておりました。
「マッコリEXPO」、「マッコリ試飲会」と称してみんなで集まり、
利きマッコリ大会のようなことを、いち早く実施していましたね。
僕も2003年に開催された第2回には参加させて頂きました。

アジアンパラム/マッコリEXPO
http://www.asianpalam.com/makkolri/index.html

マッコリとバーの関係を語るには欠かせないお店ですが、
とりあえず専門店、ということでは2006年を基軸に致します。

で、ここで注目したいのが……。

「マッコリバー」と「どぶろくバー」という2種類の言葉。
マッコリを日本語にすればどぶろくなので同じ意味なのですが、
銀座という場所柄、わかりやすさで「どぶろく」を選択したのでしょう。
経営母体の大きな店なので、より一般性のある単語を求めたかなとも。
裏を返せば、マッコリという単語に一般性がなかったことの証明です。

また……。

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こちらももう1度掲載しておきましょう。
マッコリ販売の最大手である、二東の黒豆味。
ラベルには「マッコルリ」と記載されております。
現在は「ル」の字が取れて、マッコリで統一されました。

二東ジャパン/商品紹介
http://www.e-dong.co.jp/jp/produt/pro_intro.aspx

先ほど、電話で問い合わせて聞いてみたのですが、
「マッコルリ」から「マッコリ」への転換は2008年2月頃だそうです。
そして、

「にっこり、まっこり、いーどん、まっこり!」

のフレーズでお馴染みのCMは2008年4月頃からの放送。
二東ジャパンの転換はこの時期に行われた模様ですね。

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一方、2006年11月頃に出た「米夢」はマッコリ。

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韓国料理店として2007年5月に初めて酒造免許を獲得し、
自家製マッコリを造った「はるばん(現、生マッコリ家)」もマッコリ。

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2007年11月頃に出た「本生マッコリ」もマッコリ。

ということから考えると、二東ジャパンのマッコリ転換は、
ずいぶん情勢の流れを見極めたうえでの判断に思えます。
CMソングのインパクトが強いため、なんとなく、

「大手がマッコリにするから、みんな引きずられて……」

と思ってしまいがちですが、そうではないようですね。
大手ならではの悩みが、あったのではないかと推測します。

とはいえ、それが世間的な広い浸透を促したのは事実。

二東のCMはスカパーの韓国チャンネルのみならず、
地上波でも放映されておりましたからね。

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さて、このあたりでいったんの結論。

マッコリブームが始まった2006年あたりでは、
まだ、マッコリという呼称に強い一般性はないようです。
ただ、2006年下旬あたりから2007年にかけては、
大手メーカーも参入し、ブームが本格化します。

このあたりから「マッコリ」の定着と日本語化が始まり、
2008年に二東ジャパンが「マッコルリ」から「マッコリ」に転換。
CM放映などを通じて、「マッコリ」の浸透を後押ししました。
このことから、僕が考える「マッコリ」の日本語化は……。

「2007年から2008年を核としつつ、現在も進行中」

としてみたいと思います。
長く引っ張ったわりには幅広い結論ですけどね。

進行中としたのは、今年発売の「東京マッコリ」、「高矢禮マッコリ」。
そして自分のことで恐縮ですが、先の時系列一覧に掲載した、

2009年05月27日……韓食日記が「マッコルリ」を「マッコリ」に変更

もごくごく極地的ですがひとつの転換期になるかと。
今後もそのような事例がいくつも出てくるでしょうし、
あるいは「マッコルリ」派の逆襲もあるかもしれません。
それらすべてをひっくるめて進行中ということです。

そして、それはすなわち、マッコリブームも進行中であるということ。

今後もますますそのブームが加熱し、広まることを願いつつ。
以上で4回に分けて書いた長話のまとめとさせて頂きます。
お付き合い頂き、本当にありがとうございました。



9 Responses to マッコルリはいつ「マッコリ」になったのか(まとめ)。

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