コリアうめーや!!第290号

コリアうめーや!!第290号

<ごあいさつ>
4月になりました。
本日まで韓国を出張していましたが、
幸運なことに各地で満開の桜を見られました。
ちょうど南から北上していくルートだったので、
桜前線とともに旅をしていた感じですね。
期せずしてなんとも風流な旅でしたが、
日程の大半は、花より団子。
おかげさまでたくさんの料理を食べ歩き、
今回も実り多き出張だったことを報告します。
あとはそれをしっかり書くだけ。
今号からしばらくは出張ネタが続きます。
コリアうめーや!!第290号。
どれにしようかなの、スタートです。

<プレミアムテンジャンの工場見学!!>

さて、どの話から書こうか。

3月21日から11泊12日の出張に出て、
久々に手持ちのネタがホクホクである。

序盤の済州島料理も新たな発見が多かったし、
中盤の慶尚道料理、終盤の京畿道料理も面白かった。
最後の最後で食べたソウルの料理も印象深い。

嬉しい悩みというところだが……。

うん、やっぱりコレだな。
今回の出張は前々回のメルマガで書いた……。

「あと来月浦項に来い。味噌仕込むから」
「え゛!?」
「取材していけ。メシぐらいおごるぞ」
「え、えーっと……」

という会話がきっかけのひとつ(下記参照)。

コリアうめーや!!第288号
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1500.html

前半は済州島のグルメツアーだったが、
後半のほとんどは慶尚道中心の取材となった。

もちろん今年、2013年が、

「釜山・蔚山・慶尚南道訪問の年!」

というのも大きな理由ではある。
それがために慶尚道の南部をあちこち巡ったが、
僕が呼び付けられた浦項(ポハン)は北部。

仮にテンジャン(味噌)取材がなかったとすると、
もっと時間をかけて南部をまわることもできた。
それをしなかったのは、ひとえに……。

韓国人を兄さんと呼ぶというのは、

「来い!」
「はい!」

という関係であるということ。
これを愚直に実践した1点に尽きる。

もらったテンジャンが美味しかったとか、
これまで浦項を訪れる機会がなかったとか。
あるいは、

「メシぐらいおごるぞ」

の部分に心がヒクヒクしたとか。
細かく見ていけば、理由はいろいろあるけれども、

「八田靖史は韓国的な義理を重んじる人物である!」

ということを証明するための出張だった。
うん、ウダウダ書かなくてもオレ偉いよね。
ということでテンジャン取材の話である。

前回からの繰り返しにもなるが、
プレミアムテンジャンの工場が浦項にある。
会社名、そしてブランドの名前が……。

「竹長然(チュッチャンヨン)」

これは竹長面(チュッチャンミョン)という、
工場を設立した地域の名前に由来している。
最後の「然」は社長の名前から取ったものであり、
また、テンジャンのキャッチコピーである……。

「自然と歳月以外は何も入れていません」

という部分にもかかっている。
竹長然を象徴する大きなキーワードとして、

「地元と自然」

という両者をまず抑えておきたい。

そして、その地元と自然のある地域だが、
浦項の中でも、かなりの山間部に位置する。
市街地からは車に乗って約1時間。

事前にある程度、田舎だとは話に聞いていたが、
その想像をもはるかに超えるド田舎であった。

嘘か本当かはわからないが、

「このへんの住人は朝鮮戦争を知らなかった!」

という話を現地で聞かされたほど。
ブラックジョークのたぐいだと思いたいが、
さもありなんという田舎ぶりだった。

つづら折りの山道をうんざりするほど走り、
廃校の角を曲がった、村のどんづまりが竹長然の工場。
一面、山しかない場所にようやくたどりついた。

迎えてくれたのは竹長然の社長である。
敷地内を巡りながら、原料や製法について話を伺う。

「主力商品はいうまでもなくテンジャンです」
「それとともにコチュジャンとカンジャン(醤油)」
「いずれも伝統製法にこだわっています」

「原材料の大豆や唐辛子はこの村で栽培したもの」
「ここは海抜450mの高冷地で良質の作物が育ちます」
「テンジャンの場合、原材料は大豆、塩、水のみです」

塩は全羅南道新安産の3年寝かせた天日塩。
水は敷地内の地下200mから汲み上げた岩盤水。
こだわりはあるが、素材としてはシンプルだ。

それを隣町、青松(チョンソン)の名人が作った、
伝統製法の甕に入れてじっくり熟成させる。
あとは時間と自然が極上の味に仕上げてくれる。

「ここには2000個の甕があります」

ということで甕の保管場所を見にいったが、
山間部にずらりと並ぶ光景はさすがに見事だった。
今後はそれを5000個まで増やすらしい。

併せて体験場やゲストハウスの建設も予定している。
また、地下貯蔵庫ではできたテンジャンを長期保存し、
ビンテージごとに販売する計画もあるという。
未来を語る社長の表情は、満面の笑顔であった。

一連の製造工程も見学させてもらったが、
機械化されているのは、本当にごく一部だった。
原料の大豆を洗浄する部分と、蒸した後につぶす作業。
それ以外はすべて地道な手作業で行われている。

もっとも壮観だったのは16個の大釜。

ガスも使わずクヌギの木を薪としてくべて、
1時間ふつふつ煮込み、5時間蒸らす。
万が一にも焦げないように、冷水を差しながら、
噴きこぼれたぶんはその都度丁寧に拭き取る。

それらを行うのは地元の住民たちだ。

おそらく竹長然のテンジャンを語るうえで、
もっとも重要なのがこの部分であろうと思う。

「ウチには名人がいないんです」

と社長が語るように、竹長然のテンジャンは、
社員と地元の人が共同作業で造っている。
テンジャンを仕込むのは基本的に農閑期であるため、
手の空いた人たちが交代で手伝っているのだ。

それは村の人にとって新たな収入源であり、
作物の安定的な販路確保という意味合いもある。
地元の人と手を取って、地域の名物を作り上げる。
それこそが竹長然の目指す道であるらしい。

そこだけ聞くと出来過ぎた話にも思えるが、
地元との関係は、もともと社長のお父様との付き合い。
かつてお父様がこの地域の人と仕事をしており、
その人間関係を息子である社長に譲った形だ。

社長は自分のビジネスとして工場を立ち上げ、
親子2代の付き合いを、より強固なものにしている。
月並みな美談ではない、地に足のついた人間関係だった。

工場の敷地をひと通り見学した後、
地元の人の家で、昼食をご馳走になった。
村には飲食店もないので、誰か見学に来たときは、
そこでもてなすのが通例であるらしい。

竹長然のテンジャン、コチュジャン、カンジャンと、
地元でとれた山菜、野草などを料理したもの。

そう書くと、ありふれた総菜料理に思えるが、
出てきたものは、息を飲むほどに素晴らしかった。

主菜として出た料理がこんな感じ。

・ネンイテンジャンチゲ(ナズナの味噌チゲ)
・テンジャンスックッ(ヨモギの味噌汁)
・サグァプルコギ(リンゴを添えた牛肉炒め)
・コチュジャントク(コチュジャン味のチヂミ)

ちなみにリンゴもこの地域の名産品だ。
また、箸休めとしてのチャンアチ(醤油漬け)も、
山間部ならではの素材で構成されていた。

・トゥルプ(タラの芽)
・オガピ(五加皮、ウコギの根の皮)
・ジェピ(ケカラスザンショウの葉)
・野生のキノコ

いずれも鮮烈な香りと風味に優れ、
ほろ苦さと、醤油の塩気が食欲をそそる。
メインの料理も副菜類も、箸を伸ばせば伸ばすほど、
もうごはんが進んで仕方がなかった。

味付けもさることながら、素材そのもののよさ。

それは竹長然が誇る、原材料のよさにも通ずるものだ。
なるほど、これは驚嘆すべき説得力である。

「また来てくださいね」

という社長らのセリフに、

「ぜひ!」

と答えたのは言うまでもなし。
地元と自然に密着するプレミアムテンジャン。
その未来は大きな可能性に満ちている。

<会社情報>
社名:竹長然(チュッチャンヨン)
住所:慶尚北道浦項市南区虎洞573
電話:054-283-1530
http://jookjangyeon.com/

<お知らせ>
3月21日(木)に新刊が発売になりました。

タイトルは「韓国料理には、ご用心!」。
版元は三五館、定価は1260円(税込)。

ここ10年ほどの日本における韓国料理事情を、
ギュッとまとめて整理をしたという内容です。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1503.html

<リンク>
ブログ「韓食日記」
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<八田氏の独り言>
竹長然は安東からも約1時間の距離。
安東→竹長然→浦項というコースもよさそうです。

コリアうめーや!!第290号
2013年4月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com

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