コリアうめーや!!第177号

コリアうめーや!!第177号

<ごあいさつ>
7月15日になりました。
僕の住む東京ではまだ梅雨明け前ですが、
ジリジリと焼かれるような暑さです。
夏前なのに、妙に日焼けしてしまったりも。
まあ、夏生まれなので暑いのは好きですけどね。
同時に、そろそろ夏の料理が本番を迎え、
それが妙に嬉しく浮かれる今日この頃です。
素麺、ウナギ、冷奴、スイカ、がぶ飲み麦茶。
韓国料理なら冷麺、サムゲタン、パッピンス。
夏の間にどれも目一杯満喫したいものです。
さて、そんな中、今号のコリアうめーや!!ですが、
ごくありふれた韓国料理に新たな価値観を見出します。
と、いきなり大上段なことを書きましたが、
実際は家でちまちまアレンジを楽しんでいるだけ。
とはいえ、前のめりな興奮で燃えております。
暑い夏に鬱陶しいほどの熱さで迫る所存。
コリアうめーや!!第177号。
熱湯のような熱気で、スタートです。

<ナムルが秘める大きな可能性!!>

韓国料理にナムルは欠かせない。
キムチと同じくらい不可欠な料理だが、
キムチに比べると扱いはやや地味なのが残念だ。

キムチの刺激的な味わいに比べると、
どうしてもナムルは穏やかな印象が強い。

キムチが風神、雷神のような味だとすると、
ナムルは微笑む菩薩のような味である。

ん!? なぜこんな例えが突然出てきたのかな。

キムチが風神、雷神で、ナムルが菩薩。
派手さと穏やかさを対比する比喩表現なら、
ほかにもいろいろ考えられるだろう。

にもかかわらず、あえてこんな高尚な例え。
コリアうめーや!!らしくないことこの上ない。
直前まで書いていた文章が少し固いものだったので、
ついついこんな例えを使ってしまった。

いかんいかん。

もっと手軽でソフトな例えを考えよう。
さらにくすっと笑えるものなら、なおベストだ。
んーと、んーと、んーと……。

キムチが満塁ホームランのような味だとすると、
ナムルは6-4-3のダブルプレーのような味……。

わかりにくい。却下。

キムチがロックミュージックのような味だとすると、
ナムルは名作クラシックのような味……。

陳腐だ。却下。

キムチが女王様による鞭のような味だとすると、
ナムルは温泉宿における芸者遊びのような味……。

品性が疑われる。却下。

うん、予想通りろくな例えが出てこなかった。
だが、コリアうめーや!!らしさは取り戻せたはず。
身勝手な満足感を得つつ本題に入るとしよう。

ここ、最近ナムルが妙に気になっている。

こんなに気になったのは留学時代以来で、
どうしてこんなことになったのか不思議でならない。
ごく身近にあって、空気のような存在の韓国料理。
気になることは、これまでも極めて少なかった。

留学時代に悩んだのも語学的な意味でだった。

ナムルとは、野菜や山菜を茹でるか、または炒め、
ゴマ油、塩、ニンニクなどで味付けた料理のこと。

ただ、もともとの意味としては野草、山菜全般を指し、
植物の若芽や、食用になる葉などもそこに含む。
語義としてはこちらが第1義で、料理はその次。

おそらくナムルの食べ方としてあまりに一般的なので、
料理名もいつしかナムルになってしまったのだろう。

日本でもソバというと、ざるそばなどの麺料理を指すが、
もともとソバというのは一植物の名称に過ぎない。
食材名イコール料理名という例は特に珍しくない。

だが、語学を学ぶ留学生はこういうところで躓く。
例えば、こういう疑問があった。

通常のナムルは、食材名プラス「ナムル」で呼ばれる。

セリのナムルだったら、ミナリナムル。
ホウレンソウのナムルだったら、シグムチナムル。
ワラビのナムルだったら、コサリナムル。

この場合は第2義、料理としてのナムルが使われている。

これに対してややこしいのが第1義との混合。
例えば、豆モヤシは韓国語でコンナムルと呼ばれる。
直訳するとコンが大豆で、ナムルは芽。
大豆から生えた芽がモヤシなので、意味的には実に正しい。

だが、この豆モヤシをナムルにするとどうなるのか。

「豆モヤシって韓国語でコンナムルですよね」
「そのコンナムルはよくナムルにして食べますよね」
「なら、それってコンナムルナムルっていうんですか?」

ちなみにこれ、いまだに正解を得ていない。
韓国人に質問すると、

「余計なこと考えずに早く食え!」

と理不尽に怒られたりする。
たぶん韓国人にとってはどうでもいい問題なのだろう。

まあ、これは余談として置いておくとして、
いま僕が気になっているのはナムルの可能性である。

昨年の夏から秋にかけて、
東京にある飲食店を多数取材して回った。
そのときに気付いたのが新作ナムルの多様性。

「え、こんな食材でナムルを?」

というケースが実に多かったのだ。
試しにざっくりと例を挙げてみると……。

・オクラのナムル
・ミョウガのナムル
・アスパラガスのナムル
・メークインのナムル
・ゴーヤのナムル
・サツマイモのナムル
・スナップエンドウのナムル
・空豆のナムル
・小松菜のナムル
・完熟トマトのナムル
・レンコンとオクラとパイナップルのナムル
・ユズと大根のナムル

もしかしたら韓国にも存在するのかもしれないが、
少なくとも僕は初めて聞く素材ばかりで驚いた。

そしてこれらはひとつの店での話ではなく、
けっこうあちこちの店で行われている試みなのである。
日本における韓国料理の流行として、
日本で手に入る食材での新たなナムル作りが流行している。

個性的なナムルをメニューに並べるだけなら、
韓国から本場の食材を輸入するという手もある。

だが、それだとコストもかかるし新鮮さに劣る。
野菜の持ち味である瑞々しさを最大限生かすのなら、
日本の野菜を使ったほうがよい、との判断だそうだ。

また、日本の食材を使うことで旬も表現しやすい。

夏野菜のナムル、秋にとれるキノコのナムル。
外国料理の専門店でも、、日本的な四季の移り変わりを、
料理に込めたいとの考えが反映されているようだ。

上にあげたナムルは実際に試食もしてみた。

ナムルとしては変化球だがどれも意外に合う。
ゴマ油に塩という、シンプルな味付けがよいようだ。
野菜の甘味を引き出し、香ばしい風味をプラス。
ゴマ油の力強さが、どんな野菜をもナムルにかえる。

唐辛子、ニンニクも同じような働きをするが、
ゴマ油を加えるだけで、ぐっと韓国風になるのが面白い。

こうした昨年からの取材体験を踏まえ、
しばらく前から自宅でもナムル作りに凝っている。
スーパーで珍しい野菜を見かけると、

「これ、ナムルにしたら美味しいかな」

とついつい手に取ってしまう日々だ。

素材の扱いに失敗してイマイチのこともあるが、
基本的にどれも美味しく食べられるのが楽しい。
中でもほろ苦い野菜、山菜がよく合う。

せっかくなので、作ってみた中から、
印象的だったものをいくつか紹介しよう。

1、かき菜のナムル

かき菜とはいわゆる菜の花のこと。
春先に出回るつぼみのイメージも強いが、
かき菜と呼ばれるのは茎のしっかりした葉野菜。
茎や葉にトウモロコシのような甘味がある。

葉の部分はさっとゆがくだけでもよいが、
茎の部分は固いのでしっかり火を通すのがコツ。
甘味の濃いナムルに仕上がる。

2、ツルムラサキのナムル

力強い土臭さを身にまとった葉野菜。
モロヘイヤのようなぬるぬる感が独特だ。

以前、おひたしを食べたときは土臭さが気になったが、
ゴマ油を加えることで、それが上手く中和される。
ぬるぬるしたナムルというのも面白い。

3、ブロッコリーとジャガイモのナムル

ブロッコリーは固い茎の部分だけを使用。
ふさの部分を使った後、残りの使い方に悩んで考案した。

茎を細い千切りにし、ジャガイモも同じ細さで切る。
ブロッコリーの茎から茹で、一呼吸遅れてジャガイモを投入。

シャキシャキとした食感が残る程度でざるにあけ、
冷水でジャガイモのぬめりを取ってから、ゴマ油と塩で味付け。
軽快な食感のナムルに仕上がって後を引く。

ほかにもいろいろと作ったが、
比較的、意図通りにできたのが以上の3種。
楽しくなってきたので、さらに極めようと思っている。

第170号のコリアうめーや!!を書いた際、
テーマとしてジョン(野菜や白身魚の衣焼き)を取り上げた。
そのジョンもさまざまな素材を扱えるため、
ジョン同好会を結成すると呼びかけたことがある。

こつこつと地道に個人的な活動を続けているが、
これと同様に、ナムル同好会も結成したいと思う。
活動内容はナムルの幅を広げる魅力の開拓。

意外な野菜で作った、大ヒット新作ナムルを考案したい。

会員の好みによって、大胆な味付けのアレンジや、
素材同士の意外な融合なども活動に含むこととしよう。
要は好き勝手に、ナムルを作って楽しむ同好会だ。
ゴマ油や、塩にこだわる会員がいてもいいだろう。

美味しいレシピができたら、ぜひ教えて欲しい。

韓国料理の幅がよりいっそう広がるとともに、
我が家の食卓事情もさらに豊かとなる。

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<お知らせ2>
全州でビビンバを食べるツアーを企画しています。
美味しいビビンバを食べ、コチュジャンの里を巡り、
飲んで食べて遊んで、酔っ払ったりもするツアーです。

僕も案内人兼、参加者として全日程に同行します。
一緒に全州で飲み食いしたいという方、ぜひご参加ください。
詳細な日程、要項などは下記ページにまとめてあります。

全州ビビンバと韓食の魅力を探る旅4日間
http://sanshin-travel.com/original/experience/entry/000398.html

<八田氏の独り言>
丹波の松茸ナムルとかもどうですかね。
誰か作って僕に食べさせてください。

コリアうめーや!!第177号
2008年7月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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