コリアうめーや!!第174号

コリアうめーや!!第174号

<ごあいさつ>
6月になりました。
憂鬱な梅雨前線が近付いています。
すでに沖縄や九州南部、四国は梅雨入りとのこと。
僕の住んでいる東京を含む関東地方では、
すでに梅雨明けが遅くなるという予報も出ています。
ジメジメムシムシの日々が長く続く思うと溜息が出ますね。
曇り空を見て、傘を持って出るか悩むのも嫌なもの。
最初から折り畳み傘を持って出ればいいのですが、
ついうっかり忘れ、家にビニール傘が増えていきます。
早く元気な太陽と戯れる、爽快な夏になって欲しいです。
さてそんな中、今号のメルマガですが、
ここ数号、連作で書いている話を続けます。
どのみち飲んだくれのたわごとにすぎないのですが、
自分自身を反省し振り返る意味も込められるかなと。
どのようなまとめになるかはわかりませんが、
韓国でのハシゴ酒話はこの号で完結とします。
コリアうめーや!!第174号。
微妙な内臓具合で、スタートです。

<人はいかにして5次会に行くのか!!>

冒頭から言い訳じみた話で恐縮ではあるが、
このメルマガを書いている時点で2日酔いである。

いや、正確にいえば3日酔いなのだろう。

一昨日、へべれけになるまで飲んで2日酔いになり、
その2日酔いが癒えないまま、昨日も飲んでしまった。
今朝は布団からのそのそと起き上がるだけでも、
全身全霊の力を込めて! という感じであった。

胃が重い。頭が痛い。全身がだるい。
なぜここまでツライ思いをしなければならないのか、
ひと通りの後悔をしてみるものの、すべては自業自得。
前夜の楽しさぶんだけ、きっちりツケを払うことになる。

一昨日は親しい友人夫婦とホルモンを食べに行った。

開店と同時に予約客でいっぱいになる人気店。
レバ刺し、センマイ刺し、モツ煮あたりから始まって、
焼き物はカシラ、ミノサンド、ハラミ、コプチャン。

いずれもトロトロの脂が口の中であふれかえり、
ビールが、焼酎がたまらないうまさであった……うっぷ。

ちょっとタンマ。

一昨日の美味しさを思い出していたら、
2日酔いの胃袋が耐えきれずに悲鳴をあげ始めた。
さきほどやっとの思いで飲んだ野菜スープが、
酸っぱい胃液とともに逆流してきそうだ。

こんな2日酔いの状態で、脂ギトギトのホルモン話。

正直、思い出すのも嫌。描写するのも嫌。
2日酔いの状態で美味しいものの話を書くのは、
ある種の拷問に近いのではないかと思う。

「八田さんのお仕事っていいですよねぇ」
「毎日、美味しいものを食べるのが仕事だなんて」
「いやあ、本当にうらやましいです。あはは」

なんてセリフを何度となく耳にするが、
決してそんなことはないのだ! と力強く言おう。

全身がアルコール漬けになったような2日酔いでも!
ひどい風邪を引いて39度の高熱を出していても!
食べすぎで胃が硬直し、ダラダラの脂汗をかいていても!

「うっひょー、このホルモン超旨!」

なんて書くのが僕の仕事なのである。
胃液を力技で飲み込みながら、筆を進めていこう。
フードコラムニストの意地を見せてくれん。

七輪の中で真っ赤に熾る炭火の中央から少し離し、
アミの端近くに除けて、弱火の遠火でミノサンドを焼く。

ミノサンドとは牛の第1胃における脂が特に豊富な部分。
胃壁の間に脂が挟まっていることからミノサンドと呼ばれる。
心地よい食感に加え、脂のうまみも楽しめるのが魅力だが、
胃袋のさらに一部であるため、とれる量が極めて少ない。

この日足を運んだ店でも、2人前を頼んだら断られた。
多くの人に食べてもらうため、1人前で勘弁とのことだ。

時間をかけて焼いたミノサンドは外側に薄い焦げ目がつき、
特有のザクザクした食感に、噛み始めのサックリ感が加わる。
その軽快な食感を、耳奥で響く「噛み音」とともに楽しんでいると、
ワンテンポ遅れて、中からとろーり絶品の脂が流れ出てくる。

たまらない。もう永遠に噛み続けていたい。

適当な下処理のミノであれば食感がゴムのようで、
いつまでたっても飲み込めないが、上質のミノサンドは違う。
永遠に噛みしめるつもりで咀嚼していても、
いつしかするりと喉奥に吸い込まれてしまうのだ。

後は脂の甘味と塩ダレの味わいを余韻として残したまま、
刹那の魅力として、幸せの時間は高速度で過ぎ去ってゆく。
名残惜しさの中で傾ける、焼酎ロックがまたたまらない……。

……げふっ。やっぱりもうダメ。

ホルモンまでは我慢したけど、焼酎ロックという単語でダメ。
全身が酒の話題を極度に拒絶している気がする。

やっぱりこんなに飲み過ぎるべきではないのだな。
反省の意味を込めて、前々号から続くハシゴ酒話をまとめよう。
3月訪韓の2日目。話は前号のキムチチゲ店を出たところからだ。

韓国人の某兄貴が案内してくれたキムチチゲ店。

その店はキムチチゲの専門店であるとともに、
絶品のコプチャングイ(ホルモン焼き)専門店でもあった。
その店ではホルモンでひとしきり焼酎を飲んで、
最後のシメとしてキムチチゲを堪能するのである。

発酵した白菜キムチをどっさりと入れ、
辛味と酸味の折り重なったスープはまさに至福。
それを楽しみに、行ってみたのだが……。

兄貴曰く、

「今日のキムチチゲはいつもを100点とすると59点」

とのこと。

韓国の飲食店はどうしても味にばらつきが出る。
この日は運悪く、ハズレの日に当たってしまったらしい。
確かに美味しいキムチチゲではあったが、味に深みがなかった。

予想外に無念の1次会ということで、一同から2軒目案が出る。
5次会までの道のりは、この瞬間から始まるのだ。

2軒目はすぐ近所の室内ポジャンマチャへ行った。

ポジャンマチャとは漢字で幌張馬車と書いて屋台の総称。
通常はテント風の屋台を、路地裏などに出して酒を提供するのだが、
なにぶん屋台であるだけに、料理の提供など水回りが不便である。

それを解消するために場所を屋内に移し、
かつ屋台風の雰囲気を残したのが室内ポジャンマチャ。
気軽にさっと飲む、という意味では便利な場所だ。

そこでマッコルリを飲みながらチヂミをつついていると、
参加者のひとりから、思いがけない情報が出てきた。

「そういえば、こないだカムジャタン店に行ったな」
「そこのカムジャタンがボリュームたっぷりで美味しくて」
「場所がえーと、テリム……市場……だったかな」

カムジャタンとは豚の背骨とジャガイモの鍋。
韓国では焼酎の肴として定番で、24時間営業の店も多いことから、
ハシゴ酒の終着地として使われることも多い。

1次会、2次会を経た状況ではまさに垂涎の情報。

すぐさま行ってみよう、という話で意見がまとまり、
5分後には路上でタクシーをつかまえていた。

前々号から一連のハシゴ酒話を書いているのだが、
自分なりに段々とハシゴ酒に至る経緯が見えてきた。

ひとつはこの日の1軒目にもあった、かすかな不満。

せっかく飲んでいるのだから、いい気分のまま締めたい。
そういう理由から、飲み直しの意味で次を目指す。
ただこれは前々号にも書いたように、運が悪い場合は、
延々と飲み直し、飲み直しでハシゴせねばならない。

もうひとつは酔いが進んで盛り上がりすぎるケース。

飲んでいるときは気が大きくなりがちであるし、
場の共有によって、魅力的な情報もわんさか出てくる。
そこも行こう! そこもちょっと立ち寄ってみよう! などと、
妙にフットワークのよい一団になりがちである。

カムジャタン店を目指した流れはその後者である。

ちなみにそこのカムジャタンは春菊がどっさり入り、
背骨周りの肉もゴロゴロ豊富についていてよかった。
本来であれば、その部分を強調して書くべきなのだろうが、
いま書いているのは、いかに5次会に行くかである。

盛り上がった我々はカムジャタンについて大いに語り、
いつしか、さらに自分の推薦するカムジャタン店の話題に移った。
僕が留学時代に行った建大駅近くの店について語ると、
そこにこの日の参加メンバーのひとりも足を運んでおり、

「あそこはいいよね!」

という話になった。

そしてここからが驚愕の展開。
アルコールが脳髄までまわりにまわった我々は、
そのカムジャタン店を目指して、またもタクシーに乗るのだ。

極めて間抜けなカムジャタン店の2軒ハシゴ。

ちなみにこのとき建大(コンデ)といったつもりが、
タクシーの運転手さんにうまく伝わらず、

「え、弘大(ホンデ)じゃなかったんですか?」

という韓国初心者のような痛いミスがあったが、
なんだかんだの大回りを経て、無事目指す店に到着。
2軒目のカムジャタン専門店へとたどり着いた。

ただ、さすがに酔った我々にも一部の理性があったのか、
店の外観を視認したところで、妙に満足してしまった。
なんとなく別の店を探し、繁華街をウロウロしてみる。

このあたりになってくると移動自体が楽しくなってくる。

飲みたいからハシゴ酒をするのではなく、
ハシゴ酒が楽しいから、ハシゴ酒をしている感覚だ。

駅前でなんとなく見つけた日本式居酒屋に入って4軒目。
さらにタクシーを捕まえ、別の繁華街に移動して5軒目。
と、思ったのだが、この5軒目はもうイレギュラー。

飲もうと思って来た町は、すでにほとんどの店が閉店しており、
どこに入って飲む、というような雰囲気でもなかった。

やむなく目の前にあったミニストップに入り、
韓国ではこよなく愛されているバナナ牛乳を人数分購入。
それで無理やり乾杯をして、この日はお開きとなった。

だから、実際には最後の5次会はノーカウント。

それをあえて5次会といってしまうあたりに、
飲んべえなりの、見栄が存在するのだと理解して欲しい。
なんだかたくさん飲めるほうが偉いのではないか。
そう思ってしまうあたりが、愚か者への第一歩なのだ。

ということで今回なりのまとめをしよう。
ついハシゴ酒をしてしまう要因は以下の通り。

1、なんらかの不満を埋めるために次を目指す
2、不満がない場合は盛り上がりすぎて次を目指す
3、要は心のどこかで次を目指す理由を探している

うん、わかってはいたがアホである。
我ながら本当にアホとしかいいようがない。

表向きは2日酔いを反省しているように見せかけつつ、
なんだかんだでもっと飲みたいというのが本音。
さらにはたくさん飲んだハシゴ酒の自慢も透けて見える。

おそらく今後もこうしてアホなハシゴ酒をすることだろう。

自分の身体と相談しつつ、控えるところは控えていきたいが、
まだしばらくこの習性は抜けていきそうがない。

なんせ、冒頭であれほど3日酔いだと書いたにもかかわらず、
このメルマガを仕上げたら、また飲みに行く約束があるのだ。
書いているうちに、なんだか体調も戻ってきた気がする。

今日はうまい焼きとりをつまみつつ1杯。

最初はビールでよいが、ほどなく日本酒へ移行しよう。
ネギ間をつまんだり、つくねを口の中で転がしたりして、
その直後、間髪入れずにキンキンの冷酒をキュッ。

うはー、もうたまんねえ。
メルマガなんか書いていらんねえ。

みんな、それじゃーねー!

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<お知らせ2>
今日5月15日に、新刊本が発売になりました。
韓国料理をテーマにした韓国語の初心者向け学習本。
新書というスタイルなので、韓国料理の薀蓄もたくさん絡めつつ、
読み物としてすらすら読める内容を目指しました。
本のゴールは韓国語のメニューを読んで注文すること。
ハングルの読み方から、発音変化、簡単なフレーズまで。
お店の人の心をくすぐる文句などもちりばめています。

タイトルは、

『はじめてのハングル「超」入門 ビビンバを正しい発音で注文する』

です。
出版社はソフトバンククリエイティブ。
ソフトバンク新書の1冊としてラインナップに並んでいます。
価格は税込で767円。全国書店での販売です。
見かけたらぜひ手に取ってみてください。

ネット上でも購入できます。

アマゾン

楽天
http://item.rakuten.co.jp/book/5671133/

<八田氏の独り言>
4日酔いにならないよう気をつけます。
それでは行ってきます。

コリアうめーや!!第174号
2008年6月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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