コリアうめーや!!第73号

コリアうめーや!!第73号

<ごあいさつ>
3月も半ばになりました。
ぽかぽかと暖かい日が続き、
吹く風もだいぶ和らいできています。
あともう1度くらいは、寒さも戻ってくるのでしょうが、
とりあえずはこの暖かさを喜びたいと思います。
花見酒が飲めるのも、もうすぐだなあ……。
なーんて、指折り数えたりして。
桜のつぼみに「がんばれよ」なんて、
思わず声をかけてしまう今日この頃です。
さて、今号のコリアうめーや!!ですが、
数ある韓国料理の中でも人気のある一品を紹介です。
それも、自分で作ってみてのリポート。
コリアうめーや!!第73号。
つるつるつると、スタートです。

<僕はチャプチェを愛せるか!!>

あめ、あめ、ふれふれ、かあさんがー。
ジャノメで、おむかえ、うれしいなー。
ぴっちぴっち、チャプチェ、チャプチェ、らんらんらん!

と、いきなり目も当てられないような、駄ギャグからスタート。
先が思いやられるが、ともかくテーマはチャプチェである。

チャプチェとはいわゆる春雨炒めのこと。

タンミョンという韓国の春雨を、ゴマ油で炒めた料理で、
牛肉、野菜、キノコなど、とにかく具がたっぷり入る。
味付けは醤油、砂糖で甘こってりと仕上げ、
韓国料理特有の、唐辛子による赤さ、辛さはない。

タンミョンは日本の春雨よりも太めなので、
麺を食べるときの、しっかりした食感がまた嬉しい。

このチャプチェという料理。
僕の偏見かもしれないが、女性ファンの多い料理ではないかと思う。
チャプチェというかわいらしい音の響きが、そう感じさせるのだろうか。
少なくとも僕の経験上は、そう感じることが多い。

例えば、

「あたし、チャプチェ大好きなんですぅ」

というセリフは何度も耳にしたことがあるが、

「押忍!自分チャプチェ大好きであります!」

というセリフは今だかつて聞いたことがない。
また、ゴツイ身体をした大男に、

「チャプチェ食いてぇんだけどな」

と言われても、けっ、勝手に食えば、と思うだけだが、
これが綺麗な女性であったら話がまったく違ってくる。

「あたしチャプチェ食べたいなぁ」
「あ、そう? うんうん、チャプチェ食べようねぇ」

と、鼻の下を3メートルくらい伸ばすことだろう。
少し極端な例ではあるが、やはり女性に似合う料理に思える。

だからという訳ではないのだが、
男性である僕はチャプチェにこれといった執着がない。
あまり思い入れもないし、そもそも韓国で食べた記憶もほとんどない。

過去の留学経験や、旅行などの記憶を振り返っても、
チャプチェ、食べたことあったっけかなあ……という程度。
どこかで食べているはずだよなあ……と脳みそがねじ切れるほど考えて、
やっとなんとか2例ほど思い出したくらいである。

1回は留学時代に、友達とカフェのような店で食べたとき。
ただしこのときは、普通のチャプチェではなく、
ごはんの上にチャプチェを盛りつけた、チャプチェパプという料理だった。
麺とごはんを混ぜ合わせて食べるという、そばめし的な料理である。

もう1回は、旅行先で韓定食を食べたとき。
韓定食に限らず、おかずが豊富な定食系のメニューを頼むと、
おかずの一品として、チャプチェが出てくることがある。

もっと考えれば、他にもあるのだろうが、
とりあえずくっきりと覚えているのはこの2回だけである。
チャプチェは家庭で作る料理であり、外で食べる料理ではないのだ。

かくして次のような、ねじれ現象が起こる。

韓国では家庭料理なので、外のメニューにはあまり出てこない。
日本の韓国料理店では、まさにその家庭料理を出すので、どこの店にも置いてある。

韓国人には馴染みのある料理であり、日本に住む韓国ファンにも馴染みがある。
だが、僕も含めて、外国人として韓国に住んでいた(いる)者にとっては、
あまり食べる機会がなく、馴染みのない料理になってしまうのだ。

僕がチャプチェを食べるようになったのも、
実は日本に帰ってきてからである。

誤解ないように、言っておくが、
決してチャプチェが嫌いなわけではない。

嫌いではないが、大騒ぎするほど好きでもない。
そのため、このメルマガも第73号を数えるが、
今に至るまで登場することはなかった。

だが、最近になって思った。

韓国料理を語る者として、それではよくないのではないか。
馴染みのない料理でも、等しく愛さねばならないのではないか。

なにしろ、日本では女性に人気の料理である。
チャプチェが女性に愛される以上、
チャプチェを語る人も、便乗して愛されるかもしれない。

「僕、チャプチェ好きなんだよね」
「きゃあ、あたしもぉ。あたしたち気が合うね!」

ということが、まったくないとは言えないではないか。

以上、極めて健全かつまっとうな理由により、
僕はチャプチェへの愛情を、より大幅に深めることにした。
今後、僕は大のチャプチェ好きとして生きることを、ここに宣言する。

問題はその好きになる方法であるが、
しばらく考えて次のような名案を思いついた。
ヒントになったのは、僕が幼いころによく聞いた母親の口ぐせである。

「馬鹿な子でも我が子はかわいい」

幼い頃は、かわいがられているのだなあと思っていたが、
今になってよくよく考えてみるとずいぶんヒドイ話である。

だが、まあ、それがヒントになるのだから怒ってもいられない。
この、我が子はかわいい、というのは次のように応用できる。

「自分で作った料理はなんでもおいしい」

思えば、これも母親の言葉だった気がするが、
それはさておき、とある休日の昼下がり。
材料を買って来て、チャプチェ作りにチャレンジしてみた。
チャプチェを作るのは、もちろん初めての試みである。

まずは、さまざまなレシピを比較検討しつつ、
また、過去あちこちの店で食べた経験をもとに、中に入れる具を選んだ。
なにしろチャプチェは具だくさんがおいしい。
できるだけ欲張って材料を選ぶこととした。

決定したのは、以下のようなラインナップ。
野菜はキュウリ、ニンジン、タマネギ、ピーマン、赤ピーマン、ホウレンソウ。
そしてキノコ類。シイタケ、キクラゲは絶対に欠かすことができない。
最後に牛肉。特に高価である必要はないが、この際なので贅沢に和牛を使った。

主役になるタンミョン(韓国春雨)は韓国スーパーにて購入。
日本の春雨や、葛切りなどで代用できるという人もいるが、
本格的なチャプチェを作るならば、やはりタンミョンにこだわりたい。

以上、材料はなんと10種類。
そのほかにも、調味ダレを作るのにニンニク、長ネギなどが加わる。
作り始めるにあたり、すべての具をテーブルに並べてみたら、
そのずらり感は、まことに壮観であった。

「いやあ、これはいいチャプチェが出来そうだなあ」

と1人キッチンでにやにやしていたが、
その喜びも、作り始めると、あえなく激しい後悔へと変わる。
なにしろ10種類もの材料を使うとなると、手間もものすごいのだ。

まず、キュウリを切ったり、ニンジンを切ったり、タマネギを切ったり、
ピーマンを切ったり、赤ピーマンを切ったり、牛肉を切ったり、
ニンニクを切ったり、長ネギを切ったり、キクラゲをもどしたり、
ホウレンソウをゆがいてナムルを作ったりしなければならない。

また、醤油と砂糖とゴマ油などを混ぜ合わせた調味ダレを作り、
細切りにした牛肉と、キノコ類を別々に下味をつけて、別々に焼いたり、
各種野菜をフライパンで炒めて、軽く塩で味つけたりしなければならない。

その上、タンミョンはたっぷりの湯で茹でて、
茹であがったら水にさらして、食べやすい長さに切った後に、
さらにフライパンで炒めて、醤油、砂糖で味付けなければならない。

フライパンで炒め終えたタンミョンは大きなボールに移し、
炒めた牛肉と、炒めたキノコ類と、炒めた野菜類と、ホウレンソウのナムルを加えて、
全体をよく混ぜ合わせて、最後に白ゴマをパラパラふらなければならない。

それはもう、すごい手間で、すごい大変で、すごい時間がかかった。

「チャプチェ作るのって、大変なんだなあ……」

と、しみじみ思った。

今まで韓国料理店では「あと、チャプチェもくれる?」などと、
さも、ついでのようにして頼んでいたが、これは大きな誤りであった。
もっと心をこめて「ぜひチャプチェをくださいませ」と頼むべきであった。

このようなもろもろの反省点を含め、
僕のチャプチェへの愛は、確実に深まっていった。

さて、そのチャプチェを試食してみる。
自分の作ったチャプチェは、本当にうまいのだろうか……。

結論。

うっひょー!!
マイ・チャプチェ、激うまっ!!

うんうん、やっぱり自分で作るとうまいねえ。
具だくさんに作れるってのもいいねえ。
それも自分の好きな具をたっぷり入れて作れるのがいいねえ。

と全面的に「いいねえ」だらけの人になって、
いつになく、チャプチェをもりもりと食べた。

ひとつ失敗があるとすれば、調子に乗って作り過ぎたこと。
3人分くらいを目指して作り始めたはずが、
材料の目測を誤って5~6人分くらい出来てしまった。

まあ、でもマイ・チャプチェなら毎日食べてもいいな。
というくらいの出来だったので、これは特に反省しなかった。

ところが、翌朝。
事態はもう一展開する。

なんとマイ・チャプチェがすべてなくなっていたのだ。
夜遅く帰って来た母と妹が、マイ・チャプチェを、
きれいさっぱりたいらげてしまったのである。

「チャプチェ全部食べたの?」
「うん、食べちゃった」
「あれだけの量を、全部食べたの?」
「うん」

そりゃあ、もうびっくり。
2人で4~5人前はたいらげた計算になる。

やはり、チャプチェは女性が好む料理なのだろうか。
僕にはとてもあの量を食べきることはできない。
ちょっと食べて満足した僕の愛は、せいぜいその程度。
僕はまだ充分にチャプチェを愛せていないのだった……。

真にチャプチェを愛するには、さらなる修行が必要。
そう、再確認した、マイ・チャプチェ体験であった。

<おまけ>
チャプチェのレシピをホームページで紹介します。
自分で作ってみたいチャプチェ好きの方はぜひごらんください。

<お知らせ>
チャプチェの写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
コリアうめーや!!も創刊から丸3年。
時が過ぎるのは早いものですねえ……。

コリアうめーや!!第73号
2004年3月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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