日本メーカーの韓国商品パッケージを観賞する。

12102001.jpg

僕の肩書きはコリアン・フード・コラムニストですが、
最近はどうも、書くより、話す仕事を頂く機会が増えました。

今年の漢字1文字を僕が選ぶなら「話」です。

日本における韓国料理の現状や、トレンドだったり、
日韓のマッコリ事情、韓国の郷土料理についてなど。
お話をさせて頂く内容は、趣旨によってさまざまですが、
その準備をすることで、僕自身にも大きな勉強になっています。

冒頭の写真、日本で販売される韓国商品を集めたのは、
韓国の方々に、日本の韓国料理事情を知って頂こうというもの。

韓国から研修でいらっしゃった食品メーカーの方々に、
日本のメーカーはこんなことをしていますよ、という話をしました。
しかも、

「韓国語で!」

というリクエストだったのでプレッシャーは甚大。
話だけでは説得力を持たせるのに不安があったため、
実際の商品を並べて、なんとか格好をつけた感じです。

まあ、韓国語自体はヨレヨレでしたけどね。

きちんと伝わったかは一抹の不安があるところですが、
話のメインにしたのは、日本メーカーならではの細かな工夫。
往々にして韓国の方々は、

「自国でこれだけ売れているんだから日本でも売れるだろう!」

と考えがちなところがあります。

家庭用の商品だけでなく、飲食店の進出も同じことがいえますが、
韓国での感覚を、できるだけそのまま持ち込もうする傾向が強いです。
その背景には、商品のみならず、自国文化を伝えたいとの思いがあり、
海外で通用するとの評価が、愛国心を刺激する一面もあります。

もちろんその姿勢を否定する訳ではありません。

韓国ファンからすれば、韓国そのままのほうが評価されますし、
大多数の日本人にとっても、本場という響きは魅力的でしょう。

でも、その上で、というところですね。

実際にそんな姿を見ていて思うのが、本場性を損なわない程度で、
日本人に合わせる姿勢があってもいいんじゃないかということ。
もちろんどの会社でも、

「そのぐらいはちゃんと考慮しています!」

ということになるのでしょうが、僕はどうしても日本人なので、
もっとこうしたら、との思いが強くなるようです。

そんな視点から、日本メーカーの商品を改めて見ていくと、
僕自身にとってもずいぶん多くの発見がありました。
せっかくなので、ブログにもまとめようというのが記事の今回です。

なお、このあたりの話は、以前にもこんな形で記事にしました。

近所のスーパーで満喫する未来的韓食ライフ。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1379.html

12102002.jpg

まずこちら、お馴染み丸大食品の「スンドゥブ」です。

これが、ふと気付いたらパッケージが少し変わっていて、
いまスーパーなどに出回っているのが……。

12102009.jpg

こんな感じです。

えー、集合写真からアップにしたものでちょっと見にくいですが、
スンドゥブと書かれたすぐ右下に、

「売上No.1」

という文字が付け加わりました。
もっとよく見ると……。

2011年スンドゥブの素
丸大食品スンドゥブシリーズ(辛口・マイルド)
弊社調べ(KSP-POSデータより)

と説得力のある出典も明記されています。

丸大食品のスンドゥブは発売が2007年9月と早く、
いうなれば市場を作った会社ですが、現在は他社からも商品が出ています。
他社の商品に埋没しないよう、元祖を名乗った格好ですね。

「売上No.1ならきっと美味しいだろう」

という安心感をこの一言で与えられます。
そのほかパッケージの表面だけでも……。

「韓国家庭料理 豆腐でつくるチゲの素」
「豆腐と卵ですぐできる」
「お肉とあさりのエキスの濃厚スープ仕上げ」(辛口)
「お肉と魚介エキスのあっさりスープ仕上げ」(マイルド)

よく見るといろいろ書かれているんですよ。

韓国料理のことをまるで知らない人が手に取っても、
料理の概要から調理法まで、ひと目でわかる仕組みです。

12102003.jpg

あるいはこちら、永谷園から出ている商品ですが、
鶏のから揚げに絡めて作る、ヤンニョムチキンの素です。
ただ、一般的にはまだ馴染みがない料理なので、

「韓国風から揚げ」

とわかりやすい説明が隣に出ています。
どころか、

「揚げずにできる」

とまで書いてありますね。
から揚げなのになぜそんなことが可能なのか、
その答えも右下に書いてあります。

「鶏もも肉を用意してフライパンで7分」
「コチュジャン・トマトベースの甘辛だれ仕上げ!」

ヤンニョムチキンという料理は知らなかったとしても、
韓国風のから揚げであり、調理法も味も想像できます。

これってすごいことじゃないですか!?

いや、当たり前すぎるほど当たり前のことですが、
改めて観賞すると、本当によくできていると驚かされます。
韓国からそのまま持ってきた商品は、表面がハングルだけで、

「そもそもなんの料理かわからん!?」

ということすらありますからね。
裏貼りをじっくり見ずとも、あるいは手に取らずとも、
商品の内容を理解させる、この丁寧さは素晴らしいです。

12102004.jpg

あるいはこんな工夫をしている会社もあります。

「たこがおいしいチヂミの素」

ある程度、韓国料理に詳しい人であったら、
この時点でまず「チヂミにたこ?」と思うかもしれません。
韓国でならイカか、またはテナガダコを使うところでしょうが、
日本でならボイルしたタコのほうが手軽に入手できます。

材料で苦労することがない、というのがまず1点。
そして、チヂミという比較的ポピュラーになった料理に、

「たこがおいしい」

と付け加えることでイメージがわっと膨らみます。

ちなみにこれ、ダイショーの商品なのですが、
食材決め打ちで提案する韓国料理をたくさん出しています。

「たこがおいしい チヂミの素」
「エビがおいしい チャプチェ用セット」
「サーモンがおいしい ビビンバの素」
「鶏肉のトッポギ炒め用セット」

このラインナップもまとめるとインパクトがすごいですね。

どの料理においても、本場ではまず見かけないアレンジですが、
味を想像するに、まあきっと美味しいだろうというチョイスばかり。
実際、エビのチャプチェと、鶏肉のトッポッキは食べましたが、
予想通りに美味しいのはもちろん、素材との相性もよかったです。

日本で手に入りやすい食材で韓国料理にアレンジを加え、
しかもその魅力をネーミングだけで充分伝えているのはすごいです。

12102005.jpg

こちらは日本食研から出ている「サムギョプサルのたれ」。
前述したダイショーからもよく似た商品が出ています。

この商品は僕にとって、存在そのものが衝撃的でした。

豚バラ肉を焼いて食べるだけのサムギョプサルという料理に、
商品化が必要という発想すら、まったくなかったからです。
おそらく韓国人の誰に話しても似た反応が返ってくるでしょう。

この商品はブロックの豚バラ肉を、カットした後に下味をつけるもの。

原材料名を見る限り、ゴマ油や、塩、ニンニクなど、
確かにサムギョプサルらしい味に仕立てるものとなっています。
あとはフライパンで焼いて、サンチュやレタスに包むだけ。

作り方をみれば、なるほどと納得できる感じでしょうか。

ある程度、韓国料理に慣れた人ならレシピすら必要ない料理ですが、
それでも多くの日本人にとってサムギョプサルはまだまだ未知の料理。

「これがサムギョプサルのたれです!」

と提示されれば、なんとなく聞いたことがある程度の料理でも、
安心して食卓に並べることができる、ということになります。

韓国料理を知りすぎると、逆に見えなくなってくる部分ですね。

12102006.jpg

そして、こちらはモランボンの「ポッサム」。

これもまたサムギョプサル同様、韓国キャリアの長い人ほど、
ポッサムのどこに商品化の余地があるか悩むのではと思います。
茹でるか蒸した豚肉を、葉野菜に包んで食べるだけですからね。

ただ、これが見るとけっこう凝っていて……。

「豚肉をジューシーに仕上げるワイン蒸しの素」
「ピリ辛味噌だれ」

という2種類のソースが入っています。

1、ブロックの豚肉を表面だけフライパンで焼く
2、長ネギ、モヤシを加え「ワイン蒸しの素」をかける
3、フタをして弱火で25分蒸す
4、火を止めて余熱で20分火を通す
5、豚肉を切り、葉野菜と「ピリ辛味噌だれ」を添える

というのがざっくりとした作り方。
豚肉がブロックなので、火を通すのに少し時間がかかりますが、
調理自体は2種類のソースがあるおかげで至極シンプルです。

これまたなるほどと唸らされる商品ですね。

12102007.jpg

さらにモランボンからもうひとつ。

これまたなんとも悩ましい「サムギョプサル鍋」という商品で、
豚バラ肉を焼いてから鍋にするという、なんとも斬新な発想です。

作り方を見ると、

1、フライパンにゴマ油、ニンニクを入れ豚バラ肉を焼く
2、鍋に水を入れ、本品を加えて煮立たせる
3、キャベツ、ニラ、長ネギを加えて煮込む
4、残ったスープでキムチチャーハンを作っても美味

といった感じになっています。

豚バラ肉を焼くことで香ばしさを演出し、
野菜を美味しく食べよう、という鍋料理のようですね。
味付けも、

「ごま油香るにんにく塩スープ」

ということなので、まあ韓国風でありサムギョプサル風。
こういう韓国に存在しない切り口の商品が出てくるのも、
日本で韓国料理を食べる面白さといえましょう。

……といった感じに、実際も話をしてみたのですが、
とにかく日本メーカーの商品をいろいろな角度で眺めてみました。

全体的にすごいすごいと褒めちぎった感じにはなりましたが、
韓国の方へのメッセージということで、味の評価とは無関係です。
僕自身、まだ食べていない商品もあるので、そこはご了承ください。

ただ、実際にこういった視点でスーパーに行きますと、
韓国料理好きなら、これはこれでけっこう楽しめるかなと。
韓国から輸入されてくる商品も含め、メーカーの方々というのは、
商品を手に取ってもらうために、ものすごい努力をしています。

同じ韓国料理を仕事にする者として、素直に、

「すごい!」

という賛辞を送りたくてこんな記事を書いてみました。

韓国料理が今後ますます家庭に浸透していくためにも、
どんどん魅力的な商品を、身近なものにして欲しいですね。
すべてのメーカーの方々に、心からのエールを送ります。



2 Responses to 日本メーカーの韓国商品パッケージを観賞する。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

 

 
 
previous next