コリアうめーや!!第138号

コリアうめーや!!第138号

<ごあいさつ>
12月になりました。
いよいよ2006年も最後の月です。
泣いても笑っても、残すところは後1ヶ月。
あちこちで師匠がせわしげに走り回る、
バタバタとした季節が今年もやって来ました。
2006年を有終の美で飾るためにも、
今年にできることは今年のうちにしておきたいですね。
悔いの残らないように12月を生きねば。
カレンダーを眺めながら、そんなことを思う日々です。
さて、そんな慌しい時期のメルマガですが、
韓国の焼酎事情にちょっとした異変が起きています。
師走のバタバタをも凌駕するような急展開。
現在進行中の事柄ですが、その熱さを語りたいと思います。
コリアうめーや!!第138号。
過去の思い出から始まる、スタートです。

<韓国焼酎業界に何が起こっているのか!!>

自分の部屋の机を整理していたところ、
留学時代に撮った写真がわらわらと出てきた。

まだデジカメなど普及していない頃の話である。
不精がゆえに、整理もされていない状態で数百枚。
分厚い束の中に、24歳の僕が写っている。

「ほほー、これは若い……」

僕も若いし、写っている友人たちも若い。
あれから6年が経過しており、友人も大半が30代だ。
懐かしさから、1枚ずつパラパラと見ていくと、
無駄に元気だった20代の様子が克明に記録されていた。

撮影されているのは、主に旅行時の写真。
韓国のあちこちに遊びに行って撮ったものが多い。

仲間内で出かける小規模の旅行を韓国ではMTと称し、
これはメンバーシップトレーニングの略語なのだそうだ。
何がトレーニングなのか、今も正確には理解していないが、
仲間同士の親睦を深めるといった意味がある。

ただ、外国人である僕にとって、泊りがけでの旅行は、
朝から晩まで韓国語を使う、語学強化合宿の場でもあった。
その意味では立派なトレーニングだったと言えよう。

そしてもうひとつ。

こうした旅行では、当然のごとく夜は酒盛りとなる。
しかも家に帰る心配がないので、それぞれ気合を入れて飲む。
たいていの場合、記憶が飛ぶまで飲んだように思う。

そんな状況で撮った写真がたくさん残っている。

醜態というか痴態というか、とにかくどれもすさまじい。
男同士で抱き合ったり、キスをしているような写真ばかり。
かと思えば翌朝2日酔いで、死んだ魚の目をした写真もある。

おそらくこれらの旅行は酒飲み強化合宿でもあったのだろう。
語学とともに酔っ払うトレーニングもしていたのだ。

そもそも、酒の飲み方からしておかしい。

そのときは別段疑問にも思っていなかったが、
今振り返ってみると、飲むよりも酔うことに真剣だった。

韓国でこういう場合に飲む酒は、何よりも焼酎である。

よく冷えた2合ビンをたくさん用意しておき、
酒を飲むためのゲームをしつつ、片っ端から空けていくのだ。
ゲームというのが酒席のおける重要な役割を果たしており、
負けるたびに、目の前の焼酎を一気飲みするのがルールだ。

つまり負ければ負けるほど酔い、酔えば酔うほど負ける。

参加者全員がずぶずぶのドロドロになりながら、
半ば強制的に酔っ払いと化していくのがMTの酒である。
美味しく飲もうなんていう考えは微塵もない。

飲み始める前に、しっかりと腹ごしらえをしておくので、
酒を飲むときにあるつまみも、せいぜいスナック菓子程度だった。

MTゲームにはいくつもの種類があるが、
せっかくなので簡単なものをひとつ紹介してみよう。
ゲームの名前を「ゲームオブデス」という。

英語で書くなら「Game of Death」。

つまりは「死のゲーム」という恐ろしい名前であるが、

「何のゲームやる?」
「ゲームオブデスにしようぜ」
「いいねえ、やろうやろう」

という、ごく気軽な雰囲気で和気藹々と始まる。
ルールも簡単なので、僕らのような外国人にも便利だ。

ゲームの最初に親をまずひとり決める。
この親は便宜上の親なので誰でもかまわない。
最初の親が決まったらゲームスタート。
短い前フリの歌があるので、それを全員で歌う。

♪シンナンダ~
♪チェミナンダ~
♪ド ゲームオブデス!

「シンナンダ」というのは楽しいとか興奮するといった感じ。
「チェミナンダ」というのは面白いという意味だ。

最初の頃はゲームの前にある「ド」がわからなかったが、
あるとき、ふと友人に聞いて、その答えに目を丸くした。

「ゲームの前にあるドって何なの?」
「ドはドだろう。学校で英語習わなかったのか?」
「英語? ドが何の英語になるの?」

「ドだよ。ド。ティー、エイチ、イーでドだ」
「ティー、エイチ、イー……って、ザ(THE)じゃん!」
「ザ? バカ言うな。ドって発音するんだよ」

要するにそのフレーズは「The Game of Death」なのだ。

日本人の「ザ」もかなり正確さを欠くとは思われるが、
韓国語で「ド」と読むというのは、衝撃的な事実であった。
ときに外来語の発音は日韓で理解不能な溝を作る。

話がそれた。ゲームの内容に戻ろう。

前フリの歌を歌い、最後の「~デス」まで来たら、
ワンテンポおいて親が、2以上の好きな数字を叫ぶ。
と同時に親も含めて全員が、参加者のひとりを指差すのである。

それぞれが思い思いの人を指差すため、
輪になった中央で、それぞれの指が交錯することになる。

指差し、指差された状態で、親の叫んだ数字が「5」であったら、
親の指差した人が「1」、その人が指差した人が「2」、
その人が指差した人が「3」と続いて、「5」に当たる人が負け。
目の前にある焼酎を飲み干すか、別の罰ゲームを受ける。

数字が2以上であるのは、1だと確定の個人攻撃になるため。
罰ゲームを受けた人が次の親になって、次のラウンドへと移る。

至極単純なゲームだが、これが意外に盛り上がる。

しかも1回のゲームに時間がかからないため、
飲むピッチが早まるというメリット(?)もある。

不思議なもので、この手のゲームは連続して負ける人が出るので、
飲み会の盛り上がりに不可欠な酔っ払いが確実に製造されていく。
かくて夜中の12時頃には、男同士の醜いキス写真が生まれるのだ。

ちなみに罰ゲームは飲むという選択肢のほかに、
質問にひとつ答えるというようなものもあったりする。

そこでは、あえて書くのもはばかられるような、
「修学旅行の夜」的質問が、妙な盛り上がりの中で飛び交う。
若かったし、青かった。でも楽しかった思い出だ。

さて、そんな思い出をつらつらと書いてきたが、
語りたいのは宴会の主役、韓国の焼酎についての話である。

実は、韓国焼酎にちょっとした異変が生じている。

もちろんいろいろな理由が重なった上での異変なのだが、
飲む側の立場からすると、やや迷走気味に見えて仕方ない。
韓国焼酎は大丈夫なのだろうか、という指摘をしたい。

僕が留学当時によく飲んでいた焼酎は2銘柄。

1998年に発売された「チャミスル」という焼酎と、
そのひと世代前に活躍していた「眞露ゴールド」である。

どちらも眞露(ジンロ)から発売されている焼酎で、
チャミスルというのは、眞露を固有語読みした名前だ。
眞露ゴールドが焼酎らしい力強い味わいだったのに対し、
チャミスルは飲みやすさを売りにして人気を集めた。

竹炭濾過によるすっきり感もポイントのひとつだったが、
もっとも大きかったのはアルコール度数の引き下げだった。

これまで各社25度の横並びであった焼酎の度数を、
当時としては異例の23度にまで下げたのである。

韓国では焼酎をストレートで飲むのが一般的なので、
アルコール度数の軽減は、即、飲みやすさに直結する。

チャミスルは口当たりのよい酒ということで人気を集め、
わずか半年で1億本を売り上げるほどの商品となった。
現在でも首都圏を中心に驚異的な市場占有率を誇り、
2006年5月には累計で100億本を突破している。

韓国では土地ごとに独占的な酒造メーカーが存在するが、
チャミスルだけは、全国どこに行っても飲むことができる。
まさに国民酒といっても過言ではないほどの人気だ。

ただしライバルメーカーも、その状況をよしとしているわけではない。

たとえば首都圏では、2番手の斗山(ドゥサン)が猛追している。

斗山は昨年まで「山(サン)」という焼酎を販売していたが、
2006年2月になって新商品の「チョウムチョロム」を発売した。
日本語では「初めてのように」という意味の商品である。

この商品のポイントにはアルカリ水使用などがあったが、
いちばん注目されたのは、やはりアルコール度数だった。

このときチャミスルのアルコール度数はさらに下がって21度。
低アルコール化路線がどんどん加速している状況で、
チョウムチョロムはそれをさらに進めて20度にしたのだ。

チャミスルよりもさらに飲みやすい酒というアピールである。

その20度という低度数にも驚いたが、
もっと驚いたのは、その後に続いた眞露の反撃だった。

「ならばチャミスルの度数は20、1度まで引き下げる」

1998年から続いてきた、焼酎の低アルコール度数化戦争が、
ついに小数点以下のレベルまで引き下げられた瞬間である。

それだけではない。

眞露は2006年9月に新しい銘柄を発売。

「チャミスルflesh」と名付けられたこの商品は、
なんと20度の壁も破って、19、8度で売り出された。

これまでのチャミスルが20、1度。
斗山のチョウムチョロムが20度ちょうど。
新商品のチャミスルfleshは19、8度。

猛追をはかるチョウムチョロムを両側から挟みこむ、
露骨なサンドイッチ作戦に出たのである。

消費者を引っ張りあう、小数点以下の駆け引き。

五十歩百歩、どんぐりの背比べ的な微差ではあるが、
王者のなりふり構わぬ作戦は、焼酎業界に大きな衝撃を与えた。

そして、この19、8度が呼び水になったのだろうか。

11月に入って今度は慶尚道を地盤とする無鶴(ムハク)が、
16、9度という超低度焼酎「チョウンデイ(いい日)」を発売。
共通地域のメーカーである大鮮(テソン)酒造もそれに続き、
同じ16、9度の「CYOU(シーユー)」を販売開始した。

20度の壁が破られたと思ったら、もう17度以下である。

この16、9度という数字はCMの規制も関係しており、
17度以下の酒類に限って、夜10時以降のテレビCMが可能。
それを目指した度数設定という意味もあるようだ。

こうした状況は、まるで暴落してゆく株価のよう。
アルコール度数のなだれ現象が始まってしまった。

まだ先月発売になったばかりの焼酎なので、
実際に飲んで味を確かめたわけではない。

だが、16、9度となると、もう日本酒とさして変わらない。
それは本当に焼酎なのだろうか、とも思ってしまう。

一気飲みで喉を焼き、胃に火が灯って酩酊する。

そんな力強い韓国焼酎の姿が失われていくようで切ない。
ゲームに負けて飲む酒は、苦かったが楽しかった。
味うんぬんはさておき、それが韓国らしい焼酎の味なのだ。

僕らが留学時代に競って飲んだ「酔える酒」は、
近い将来、なくなってしまうのではないだろうか。

韓国の焼酎が、韓国の焼酎でなくなってしまう日。
そんな日の訪れがやって来ているのかもしれない。

韓国の焼酎はいったいどこに行くのか。

迷走する韓国焼酎の未来が心配でならない。

<お知らせ>
韓国焼酎の写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/

<お知らせ2>
『魅力探求!韓国料理』が発売となりました。
書店、地域によって多少、並ぶ時期は前後致しますが、
このメルマガが配信される頃からお目見えし始める気配です。
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本の表紙写真や、詳細についてはこちらをご参考ください。

韓食日記 11月30日『魅力探求!韓国料理』発売!
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<八田氏の独り言>
アルコール度数で競争するよりも、
美味しい焼酎で戦って欲しいものです……。

コリアうめーや!!第138号
2006年12月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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