コリアうめーや!!第98号

コリアうめーや!!第98号

<ごあいさつ>
5月になりました。
新緑と陽光がまぶしい季節です。
いよいよゴールデンウィークにも突入し、
エネルギッシュに遊ぶ日々がやってきます。
山へ、海へ、川へ、田舎へ、海外へ。
みなさんは、どこに行かれるご予定ですか?
僕は自宅でゴロゴロする予定です……。
と、ここまで読んでおやっと思ったアナタ。
え、5月? とハテナ顔になってしまったアナタ。
ふっふっふ。今日が何の日かご存知ですか?
そう、今日4月1日はエイプリルフール。
せっかくなので、5月になったという大嘘をついてみました。
毎月1日、15日に配信されるこのメルマガ。
カレンダーがわりにしている方もいらっしゃると聞き、
ちょっとだけ茶目っ気を出し、イタズラしてみた次第です。
5月の連休は、まだ1ヶ月も先。
今日から4月の始まりです。
さて、今号のコリアうめーや!!ですが、
釜山のとある郷土料理を紹介してみます。
コリアうめーや!!第98号。
食感にこだわる、スタートです。

<パジョンが創り出す禁断の美味!!>

やってはいけない、と言われるとやりたくなる。
それは人として、ごくごく当たり前のことだと思う。

特に子どもの頃は、そういった傾向が強い。

子どもにとっての楽しいこととは、常に大人が眉をひそめること。
危険だったり、汚かったり、明らかに無駄なことであったり。
そんなタブーが、子どもにとっては刺激的なのだ。

ちなみに僕が子どもの頃は、ガードレール競争がはやった。

ガードレール競争のルールは簡単。

ガードレールの上を綱渡りの要領でひたすら歩き、
もっとも多くのガードレールを渡ったものがチャンピオンだ。

「落ちたら危ないから止めなさい!」
「いきなり車が来たらどうするの!」

当然のごとく大人に止められたが、僕らは決してやめなかった。

いつ落ちるかわからないハラハラ感。
たくさんのガードレールを渡れたときの達成感。
チャンピオンに与えられる羨望のまなざし。

その喜びは、にわかに放棄できないほど大きかった。

特に、僕はこのガードレール競争が大得意だったので、
なおさらこの遊びをやめる訳にはいかなかった。

僕らは大人の目を盗んで、せっせとガードレールを渡った。

だが、そんな流行にもやがて終焉は来る。
終了の引き金を引いたのは、皮肉にもチャンピオンの僕であった。

その当時、ガードレール競争はみなの技術向上により、
さらなるレベルアップが要求されていた。

全員が相当な長距離を歩けるようになっていたのだ。

新案として出されたのは、障害物競走にしようという案だった。

ガードレールの上でバランスを取りながら、
障害物を乗り越えたり、避けたりしなければならない。
それはかなりの難易度で、新たなるスリルを味わうことができそうだった。

僕らはさっそく実験にうつった。
障害物競争の実験には、僕も積極的に加わった。

そして、起こる悲劇。

問題となったのは、ガードレールとガードレールの間に挟んだサッカーボール。

橋のかわりにしようと置かれたサッカーボールだったが、
僕が渡ろうとすると、いとも簡単にくりんと回転し、僕の足場を奪った。

一瞬でバランスを崩す僕。

その落ち方はまさに予想外で、ガードレールの右でも左でもなく、
ちょうどガードレールの真上に落ちていくような形になった。

「あっ」

と、思ったときには、すでに遅い。

ごいいいいいいいいいんっ!

僕はしたたかに股間を強打。

もっともいけないところに打撃を受けてしまった。

目から火花。口から嗚咽。全身に強い衝撃が走る。
僕は都合20分ほど、道路をのたうち回って悶絶した。

あれほど盛り上がったガードレール競争に、見事幕が引かれた瞬間である。

さて、話は唐突に韓国料理へと戻る。

第98号まできて、意味不明の前フリ、下ネタ勝負とは情けない限りだが、
これをさりげない複線として、本編に移行しようと思う。

今日のテーマは釜山の郷土料理、東莱(トンネ)パジョンである。

東莱とは、釜山北部に位置する有名な温泉地。
東莱温泉の名は、パジョンとともに広く知られている。

パジョンは、細ネギを具にしたお好み焼きのような料理で、
細ネギに魚介類、肉などを加え、溶いた粉とともに鉄板で焼いて作る。
ちょっとしたおやつにも、酒のつまみにもよく合う料理だ。

東莱パジョンは全国でも元祖的な地位にあり、
かつては王様にも捧げられたという、由緒正しい料理である。
韓国では珍しい、4代続いた老舗という店が残っており、
そこでは今も、本格的な東莱パジョンを食べることができる。

そこに東莱パジョンを食べに行ってきた。

今回、同行してくれたのは3名。

釜山通の日本人、および釜山在住の韓国人。
東莱パジョンについても造詣が深く、料理を待つ間にいろいろ教えてくれた。
僕自身は3年前に1度食べただけで、東莱パジョンは2度目だ。

「東莱パジョンの悲しいところは、日本人に人気がないところですね」
「ほほう、それはまたどうしてですか?」

「生地がカリッとしていないんですよ。かなり柔らかい感じです」
「なるほど。ちょっとベタッとした感じなんですね」

「いや、ベタッという感じでもなく、フワッと柔らかい感じです」
「すると、食感としてはそんなに悪いものではないと」

「ええ、ああいうものだと思って食べればおいしいはずなんですが……」
「日本人の思い描くパジョンとは、だいぶ違うということですね」

「そうなんです……」

釜山通の男性は、いかにも残念そうに語った。

東莱パジョンの魅力はふわふわトロトロした食感にあるという。
だが、全国的に見ると、パジョンを柔らかく焼くのは少数派である。
たいていの店では油をたっぷり使って、カリッと揚げるようにして焼く。

ざっと、作り方を追ってみよう。

東莱パジョンは、まず細ネギだけを焼くところから始める。
細ネギは長さをきちんと揃えておき、横一列に整列させて焼く。

ついで、具となるエビ、牛肉などを加えて細ネギに混ぜ込み
油とよくなじませながら、そこに生地を注いでいく。

生地と具をすべて一緒に混ぜてから焼く方法もあるが、
東莱パジョンでは、それぞれ別々に火を通していくのが肝要となる。
生地にはダシ汁がたっぷり含まれており、水分がかなり多い。

ある程度、生地が焼けてきたらひっくり返し、
今度は上から溶き卵をとろとろとかけまわす。

この卵が食感の柔らかさを倍加させるようだ。

最後にパジョンを半球状のフタですっぽりと覆い、
全体をじわじわと蒸し焼きにしていく。

この蒸し焼きという過程も、他のパジョンにはない独特の調理法である。

生地はあくまで柔らかく。溶き卵も生地に混ぜ込まず別々。
最後に覆いまでして蒸し焼きにすることから、
東莱パジョンは食感の柔らかさを追求した料理のようだ。

食感を損ねるからか、定番食材のイカも入れないらしい。

そんな話をしていると、パジョンが焼きあがってきた。

「お待たせいたしましたー!」

大皿に乗った、ふわふわトロトロパジョンが運ばれてくる。

円形でなく、正方形にびしっと成型されたパジョン。
長さを揃えた細ネギが、生地の下で整列しているのがよくわかる。

表面は溶き卵が半熟で混ざりあい、いかにもおいしそうだ。

「くわぁ、うまそうじゃないですか!」
「ぜひ、1口目をがっぷりいってください」
「いただきますっ!」

整列する細ネギに沿って箸を入れる。
箸先に伝わってくるふわふわ感がたまらない。

醤油ベースのタレをちょっとつけ、大口をあけてパクリ!

「んむっ! 生地がもろもろしてうまい!」

細ネギのよい香りがぷんぷんしてくる。
よく火が通っているので、ネギ特有の甘みも強く感じる。
たまにプリッとかじる、小エビの感触もたまらない。

「うまい! 口の中でとろけそうですよ!」

僕がそう言うと、同行の3名がいっせいに目を細めた。

そこからは、あっという間だった。
4人が争うようにして食べるので、どんどんパジョンがなくなっていく。
普通のパジョンと、キノコのパジョンと2枚頼んだのだが、
あやうく、もう1枚追加しようかと思ったくらいだ。

東莱のパジョンは、たいへんな美味であった。

さて、それでは冒頭の「やってはいけない」に戻ろう。
おいしい話が盛り上がったところで恐縮だが、ここからが今回のオチである。

僕はかねてより、東莱パジョンでどうしてもやってみたいことがあった。

それは禁断の味、おきて破りの「東莱パジョン丼」大作戦。

ごはんの上に東莱パジョンを乗せて、東莱パジョン丼。
ごはんと東莱パジョンの相性を、ぜひ確かめてみたかったのだ。

僕は以前から、パジョンとごはんは相性がよいと思っていた。

もちろん炭水化物同士の融合なので、基本的には非常識な組み合わせである。
日本で言うなれば、お好み焼き丼を作るというようなもの。
まわりの韓国人に言うと、一様にアホかという目で見られる。

でも、僕はおいしいと思うのだから仕方ない。
好きなものは、好きなのだ。

そして、パジョンとごはんの相性がよいのなら、
ふわふわと柔らかい東莱パジョンで作ればもっとおいしいはず。

溶き卵が半熟状態であることから考えても、
ネギと魚介のかき揚げを、卵でとじたような感じなるだろう。
東莱パジョン丼が、天とじ丼のようになる確率は高い。

というわけで、ごはんを注文し、実際に東莱パジョン丼を作ってみた。

本来ならば「やってはいけない」チャレンジである。

以下、その報告だが、
丹精こめてパジョンを焼いている方には申し訳ないので、
非推奨として、こそこそ感想を言うとしよう。

えーと……。ん、ん、ゴホン。
それはもう、むっちゃうまかったです……。

<お知らせ>
東莱パジョンの写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/

<お知らせ2>
プサンナビで黒ヤギ料理のレポート記事を書きました。
東莱パジョンと同じく、釜山の名物料理です。
http://www.pusannavi.com/food/food_r_article.php?id=65&ArtNo=11

<八田氏の独り言>
お好み焼き丼で検索をかけたら、かなりの数がヒットしました。
実はけっこうメジャーな料理なのでしょうか……。

コリアうめーや!!第98号
2005年4月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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