コリアうめーや!!第13号

コリアうめーや!!第13号

<ごあいさつ>
台風直撃、新宿歌舞伎町の火災、そして
アメリカの大規模テロと大事件が続いた2週間でした。
亡くなられた方たちのご冥福をこころよりお祈りいたします。

さて、今回少し悩みました。
第13回の原稿を書き上げたのは1週間ほど前。
つまりアメリカのテロ事件が起こる前のことでした。
内容的になんの関係もないのですが、
今回のコリアうめーや!!には米軍の話題が登場します。
差し替えて別のネタにしようかとも思いましたが、
これも何かの運命かもしれません。
料理にリンクさせ、未来にわたって事件の記憶を風化させない……。
とまで言うと大げさですが、記憶を結ぶ細い糸になるかもしれません。
けして不謹慎な便乗ネタでないことをアピールしつつ、
コリアうめーや!!第13号、スタートです。

<君はアーミースープを知っているか?>

君はアーミースープを知っているか?
いや、多分知っている人は皆無だろう。というより知らなくてよい。
そもそもアーミースープとは、とある韓国料理の英語訳。
まあ、英語にしたらそうなるよねえ……。て言うか、そんでいいのか、おい!!
という程度のかなり無理やり、投げやりな直訳であり、
しかもとくに市民権を得ているわけでもなんでも無い。

韓国料理に詳しい人なら「英語訳」の時点でピンときただろうが、
つまりアーミースープとは「プデチゲ」のことなのである。
新聞上でこの訳を発見した時は、なんだか全身の力がヘナヘナと抜けていった。

プデチゲのプデとは漢字で書くと「部隊」。
韓国に駐留していた米軍部隊に由来する。
日本語で「部隊チゲ」と訳すのも泥臭くて嫌だが、
アーミースープなどという小ざかしい横文字はもっと嫌。
感動的にうまいプデチゲは無理に訳さず「プデチゲ」であって欲しい。

さて、そのプデチゲ。
朝鮮戦争後の食糧難の時代、米軍基地から流出したハムやソーセージなどを、チゲに入れ
て食べてみたところ思いのほか美味しかったという、瓢箪から駒的な料理である。
韓国の伝統食であるチゲに西洋の食材を投入したいわば韓国の無国籍料理。
韓国ではこういった国境を超えた料理のことをフュージョン(融合)料理と呼ぶが、その
元祖ともいうべき料理である。

その材料のラインナップを見ていくと、とても韓国料理とは思えない。
もちろんチゲであるから、白菜キムチ、春菊、長ネギ、タマネギなどの野菜関係、豆腐や
キノコ、韓国モチなどが入り、唐辛子、ニンニクが大量に使われる。しかしそこにハム、
ソーセージに加え、ランチョンミート(スパム)、インスタントラーメン、スライスチー
ズまではいるとなると、事態は途端に闇鍋化してくる。

想像してみよう。
寄せ鍋にインスタントラーメンを入れてみたら。
すき焼きにソーセージとスライスチーズをぶち込んだとしたら。
瞬間的に食卓は戦場と化し、「何てことするんじゃあ!!」と一徹返しに血の雨が降る。
その点でアーミースープといえるかもしれないが、これでは身もふたも無い。

しかしプデチゲというのは驚異的にふところの深い料理だ。
実際これらの洋食材は不思議なことに辛いチゲとよく合うのだ。
チゲのダシは主に肉でとるので、ハムやソーセージなどの加工肉はまったく違和感を与え
ない。また、インスタントラーメンも地獄ラーメンや韓国の辛ラーメンなどを思い浮かべ
てもらえばわかるように、唐辛子の辛さとは意外な組み合わせではない。
スライスチーズが最も異色かも知れないが、これはすぐに溶けてなくなってしまうので、
味噌ラーメンにのせるバターのようにコクを与える役割を持つ。

通常鍋料理だとメインとなる1種類の食材に対し、白熱した争奪戦が繰り広げられるが、
プデチゲの場合はどれもこれもメインとして1人立ちできるくらい魅力的な食材のみで構
成されているため、歳末在庫一掃売り尽くし大バーゲンくらいの熾烈な戦いとなる。

ラーメンは放射線状にクモの巣を張り、ソーセージが乱れ飛び、
ハシとスプーンが火花を立てる。
食堂などでは1人前のプデチゲを出すところもあるが、
やはり大勢で大きな鍋を囲みわいわいつつくのが楽しいし、美味しい。

日本にはとてもこんな鍋料理はないだろうなあ、
と思ったらひとつだけあった。
それは「おでん」である。

純然たる日本料理でありながら、その中には餃子巻き、ウインナー巻き、ロールキャベツ
と幅広い食材がケンカもせずに円満に同居している。
我々日本人は今こそ、ここにラーメンを加える工夫をせねばならない。
そしておでんは日本式プデチゲとして生まれ変わるのだ。

<おまけ>
ランチョンミートをご存知でしょうか。
スパム(SPAM)という商品名の方がむしろ有名かもしれません。
スパイシー・ハムを略してスパム。
コンビーフの豚肉版というような缶詰です。
沖縄料理にもよく使われます。

<八田氏の独り言>
最近会社ではジャネットと呼ばれています。

コリアうめーや!!第13号
2001年9月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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