コリアうめーや!!第109号

コリアうめーや!!第109号

<ごあいさつ>
9月15日です。
韓国では秋夕(チュソク)の準備が本格化。
秋夕とは陰暦の8月15日にあたり、
親戚一同集まって、ご先祖さまの祭祀を行う日です。
今年は9月18日の日曜日が秋夕の当日。
前後3日間が秋夕の連休となります。
日本では中秋の名月でもありますよね。
韓国と密接に関わる暮らしをしていると、
お月見の日を忘れないのがありがたいです。
さて、今号のコリアうめーや!!ですが、
ちょっと変わったテーマを設けてみました。
自分が楽しむのではなく、人に楽しんでもらう韓国料理。
それも小さな子どもを対象としております。
とかく辛い料理ばかりが注目される韓国ですが、
今回は辛くない料理にスポットを当ててみたいと思います。
コリアうめーや!!第109号。
少年の心で、スタートです。

<4歳と行くソウル食べ歩き旅行!!>

4歳の男の子とソウルを旅行することになった。

といっても2人きりではなくご家族と一緒である。
ご夫婦、男の子、そしてご夫婦双方のお母さまで5人。
家族旅行のガイド兼通訳として付き添うことになった。

みんなソウルは初めてか2回目ということで、
日中は古宮や有名市場を訪ねるベタなコースをたどった。
僕自身プロのガイドではないが、ある程度の案内ならできる。
幸い天気にも恵まれ、順調に観光を楽しむことができた。

問題となったのは1日3回の食事である。

韓国といえば唐辛子を多用する激辛料理の国。
大人が食べるにはよくても、4歳にはちょっと厳しい。
唐辛子の入らない穏やかな料理を探す必要があった。

「これは困ったなあ……」

と悩み始めたところでふと思った。
これは僕にとっての重要な試練ではないだろうか。

僕は韓国料理のホームページを作り、メルマガを書いている。
まがりなりにも韓国料理の情報を発信している人物なのだ。
だとすれば、どんな韓国料理であれ情報を提供する義務がある。
4歳が喜ぶ韓国料理も、きちんと紹介できねばならない。

そう思い至った瞬間、心の奥底に熱い闘志が芽生えた。

「ようし、やってやろうじゃないか!」

かくして4歳児を一方的にライバル視する僕の熱い戦いが始まった。

知人ご家族の旅行日程は2泊3日。
ソウルに午後到着し、最終日も午後遅くに帰国する。

従って食事は初日夜から3日目昼までの6回。

これを激辛料理なしに乗り切らねばならない。
また大人も韓国はほとんど初めてなので、
代表的な韓国料理も網羅していく必要がある。

ちなみにご家族からあったリクエストは2つだった。

1、牛焼肉よりも豚焼肉を食べたい
2、伝統的な舞踊を見ながら韓定食を食べたい

1番は僕が牛焼肉よりも豚焼肉がうまいと力説した結果。
2番はお母さま方のご希望とのことだった。

どちらも唐辛子を使う料理ではないのでこれは歓迎。
さっそく2回の夕食にこれらを組み入れることにした。

以下、それぞれの食事に分けて結果を紹介する。

店名などのデータは「エリア/料理名/店名」の順。
4歳の喜び度は★3つが満点。☆は0.5点とする。

<1日目夜>
鐘閣/オギョプサル/パプサンモリ

初日の夜はリクエストに沿って豚焼肉を食べに。
パプサンモリは分厚い皮付きの豚バラ肉(オギョプサル)が食べられる店。
とろけるような脂の味に加え、皮ぎしのクニクニした歯触りが楽しめる。

パプサンモリでは巨大な石板で肉を焼くのが大きな特徴。
味はもちろん、見た目の迫力まで楽しめるのがいい。
これまでたくさんの友人を連れていったが、ハズしたことは1度もない。

また焼肉メニューは唐辛子の辛さとも無縁である。

せいぜい付け合せに生の青唐辛子が出てくる程度。
好みで食べるものなので、食べなければまったく問題ない。
これなら4歳も問題なく食べられるだろう。

と、思っていたら予想外の展開が待っていた。

「八田くん、このタレ唐辛子が入っているみたい」

見ると4歳母が2種類のタレを前に渋い顔をしていた。
ひとつはサムジャンと呼ばれる合わせ味噌、もうひとつは醤油ダレだ。

「あ、そうか!」

サムジャンは韓国味噌にニンニク、ゴマ油、唐辛子などを混ぜたもの。
もうひとつの醤油ダレにも微量の粉唐辛子が振られていた。

豚焼肉そのものが唐辛子と無縁でもタレに入っていては意味がない。
慌てて厨房に走り、塩とゴマ油だけのタレを作ってもらう。

これでやっと4歳も豚焼肉を楽しめる。

「お肉やわらかーい」

という声もあがり、なんとか一安心。
デザートに出てくるアイスクリームも好評だった。

4歳の喜び度:★★-(2点)
反省すべき点:焼肉はタレにも注意すること

<2日目朝>
明洞/ソルロンタン/シンソンソルロンタン

ホテルが明洞のロイヤルホテルだったので朝食は近場を選択。
道路を挟んですぐナナメ向かいにシンソンソルロンタンがある。
24時間営業のチェーン店で日本人客にも人気が高い。

ソルロンタンは牛肉、牛骨などを煮込んだスープ料理。
あっさりした味つけなので朝食にはぴったりだ。

しかもシンソンソルロンタンは子ども向けメニューがあり、
子ども用の小さな器にスープとごはんを盛りつけてくれる。
大人が食べる分を少しずつ取り分ける煩わしさもない。

見ると4歳はスープにごはんを入れて食べるのが気に入ったようだ。

日本では行儀が悪いとされる行為だが韓国では問題なし。
むしろより美味しい食べ方として奨励される傾向にある。

スープを吸って柔らかくなったごはんを美味しそうに食べていた。

4歳の喜び度:★★☆(2.5点)
反省すべき点:特になし

<2日目昼>
景福宮/ハンバーガー/国立中央博物館内スナックコーナー

観光で古宮を回っている途中で昼食休憩。
韓国料理を目指して移動する方法もあったが、
軽い食事でとの希望がありスナックコーナーで済ませた。

ハンバーガー、サンドイッチなどを購入し、
みんなで少しずつつまんで食べる。
4歳も笑顔でハンバーガーにかぶりついていた。

自分だけだとついつい韓国料理を重視しがちだが、
観光の流れで立ち寄れる場所も意外に貴重だと気づいた。

4歳の喜び度:★★-(2点)
反省すべき点:軽食で韓国料理だったらさらによかったかも

<2日目夜>
梨泰院/韓定食/青紗草籠

昼食を軽めにしたのは夜に備えての意味もあった。
韓国舞踊を見ながらの韓定食は今回の旅行でも目玉的存在。
有名な梨泰院の青紗草籠に足を運んだ。

韓定食は上品な宮廷料理をモチーフにしているので、
唐辛子のような刺激の強い香辛料はさほど使われない。
出てくる料理数も多いので4歳が食べるものにも困らないはずだ。

と考えていたらなんと予想外の事件が発生。

食事を始めて少ししたところで、

「んー、ねむい……」

と言って4歳が食事戦線から離脱。
座布団をマクラに眠りについてしまった。

確かに昼間は観光であちこちと移動を重ね、
食事に来る直前も、道でもらった風船に大喜び。
僕も一緒になって目一杯はしゃいで遊んでしまった。

その疲れがここにきてどっと出てきたのだろう。
これでは韓定食を味わうどころではない。

結局デザートの頃にムクリと起き、ブドウを少し食べて終わった。

4歳の喜び度:☆--(0.5点)
反省すべき点:食事前に遊びすぎてはいけない

<2日目夜>
明洞/キンパプ/セブンイレブン

4歳はほとんど食事が出来なかったので、
夜食用に4歳母がコンビニのキンパプ(のり巻き)を購入。
ハムや卵だけが入った辛くないものを選んだ。

食べたところは見ていないが4歳は大喜びだったとのこと。
辛さのないキンパプは4歳にも食べやすいようだ。

4歳の喜び度:★★-(2点)
反省すべき点:夜食に頼ったこと自体が反省点

<3日目朝>
明洞/お粥/Congee House

前日と同様に明洞の近場で朝食。
ホテルの目の前にあるお粥専門店に入る。

Congee Houseは専門店だけあってお粥の種類が豊富。
アワビ粥、松の実粥、黒ゴマ粥といった宮廷料理系のお粥に加え、
鶏、ワタリガニ、エビ、カキなどのお粥がある。

大人はそれぞれ好みのお粥をチョイス。
4歳は大人が自分のぶんをそれぞれ分け与えた。

色々な種類のお粥が食べられたという点でよかったが、
味そのものとしてはそこまでお気に召さなかった様子。
4歳にこれといった感想はなかった。むむ……。

4歳の喜び度:★--(1点)
反省すべき点:熱くてなかなか冷めないのも食べにくい様子

<3日目午前>
南大門市場/バナナ牛乳/ピングレ

4歳と一緒にソウルを歩くうえで、
絶対に試したかったのが、ピングレ社が販売するこの飲料。
韓国では絶大な人気を誇るロングセラー商品だ。

南大門市場でショッピングをしている際、
道路脇の露店でこのバナナ牛乳を売っていた。
これ幸いと4歳に飲ませてみる。

ストローをさしチュッと吸う4歳。

「…………」

期待に反し、なんとも複雑な表情になってしまった。
結局一口飲んだだけで「いらない」と返される。
独特の甘ったるさが口に合わなかったようだ。

4歳の喜び度:---(0点)
反省すべき点:自分の好みを押し付けてはいけない

<3日目午前>
明洞/生オレンジジュース&フルーツケーキ/Caffe Pascucci

ショッピングの合間にカフェで休憩。
大人はコーヒーを飲み、4歳はフレッシュのオレンジジュース。
先ほどのバナナ牛乳とは対照的にゴクゴクと飲んでいた。

バナナ牛乳の香料的な味わいを嫌う一方で、
フレッシュジュースを好むのは味覚がしっかりしている証拠。
本当に美味しいものしか喜んで食べてくれない。

その意味では大人を喜ばせるより難しいのかもしれない。

という事実にこのとき初めて気づいた。

一緒に出てきたフルーツケーキもきれいに完食。
ケーキをこんなに食べるなんて、と4歳父が驚いていたのも印象的。
確かにフルーツがたっぷり入って美味しそうなケーキだった。

4歳の喜び度:★★★(3点満点!)
反省すべき点:そういえば昼食前だった

<3日目昼>
エリア/冷麺/南浦麺屋

明洞のロッテデパートでショッピング。
お土産類を買い終えて、昼食をとることにした。

さきほどの休憩で大人もケーキを食べているため、
重いものは入らないが、最後の食事なので適当にはしたくない。
もろもろ検討した結果、冷麺を食べに行くことにした。

選んだのはロッテデパートから近い南浦麺屋。
創業46年というソウルでも老舗の冷麺専門店だ。

冷麺のスープに多少酸味はあるが、カラシを入れなければ辛くない。
これなら4歳も大丈夫かな、と思ったら麺のコシに苦労していた。

冷麺はそばのような切り麺ではなく圧力をかけて作る押し出し麺。
独特の強いコシが魅力なのだが、4歳には噛み切りにくいのだ。

なるほど、辛くないだけじゃダメなんだなぁ。
と、深く反省しつつ最後の食事を終えた。

4歳の喜び度:★--(1点)
反省すべき点:味以外の要素にも気を配るべし

4歳と一緒に食べた料理はこれでおしまい。
総括ということで、冷麺を食べながら4歳に聞いてみた。

「韓国で食べたものの中で何がいちばん美味しかった?」

カフェで食べたケーキがいちばんだったらどうしよう、
とドキドキしていたのだが、返ってきた答えは意外なものだった。

「んー、おにく」
「お肉? お肉がいちばん美味しかったの!?」

僕よりもはやく4歳母が横で目を丸くする。
そして4歳がさらに付け加える。

「エプロンつけたとこ」

エプロンをつけたのはまさに1日目のパプサンモリ。
韓国に来て最初の食事がいちばん印象的だったということか。

「うわー、ケーキじゃなくてよかったなあ」

4歳父も感慨深げな声をあげる。
その横で僕も涙が出そうなほど嬉しかった。

将来大きくなってこの旅行のことは忘れてしまうかもしれない。
それでも旅行の中にひとつでも感動があったなら幸いである。
美味しいと思ってもらえる韓国料理があって本当によかった。

従って1日目夜の喜び度は以下のように変更させて頂く。

<1日目夜>
鐘閣/オギョプサル/パプサンモリ

4歳の喜び度:★★★(3点満点!)
反省すべき点:次回は塩とゴマ油のタレをまず用意する

近い国だけあって子どもと一緒に韓国へ行く人は多いと思う。
子連れならではの楽しさがあり、苦労があるというのが今回よくわかった。
その意味では本当に得がたい勉強をさせてもらった。

韓国料理の魅力をもっともっとみんなに知って欲しい。

そのためには様々な角度から情報を提供することが肝要。
今回の経験をしっかりと活かしていきたいと思う。

<おまけ>
4歳と行ったお店データ

店名:パプサンモリ
住所:ソウル市鍾路区清進洞141
電話:02-734-0288
HP:なし

店名:シンソンソルロンタン明洞店
住所:ソウル市中区明洞2街2-2
電話:02-777-4531
HP:http://www.sinsunfood.co.kr/(韓国語)

店名:青紗草籠
住所:ソウル市竜山区漢南2洞738-34
電話:02-794-1177
HP:なし

店名:Congee House明洞店
住所:ソウル市中区明洞2街2-1
電話:02-757-8460
HP:http://congee.co.kr/(韓国語)

店名:南浦麺屋
住所:ソウル市中区茶洞125
電話:02-777-2269
HP:なし

<お知らせ>
4歳と食べた韓国料理の写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
考えさせられることの多い旅でした。
4歳およびご家族皆様に深く感謝致します。

コリアうめーや!!第109号
2005年9月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

 

 
 
previous next