コリアうめーや!!第203号

コリアうめーや!!第203号

<ごあいさつ>
8月15日になりました。
毎日、暑い日々が続くかと思ったら、
不思議と涼しい日も混ざったりしていますね。
強めの地震も頻繁に起こったりして、
微妙に不安な夏でもあったりするようです。
どこぞに脱出してスカッと遊びたいところですが、
なにせ仕事三昧が確定しているこのお盆連休。
自宅にこもってひたすらパソコンに向かっています。
唯一、久しぶりに購入したドラクエ9だけが、
多忙な日々における心の潤いです。
さて、そんな中、今号のメルマガですが、
先日行ったマッコリの聖地を再び取り上げます。
テーマになるのはもうひとつの名物。
地元産マッコリとも密接にかかわるあの料理を、
おなかいっぱいに平らげてきました。
コリアうめーや!!第203号。
両手に力を込めて、スタートです。

<焼肉でマッコリ飲んで何が悪い!!>

韓国旅行に出かけて牛焼肉。
少し前までは否定的に見ていたこのセリフが、
いまや逆に脚光を浴びている。

「韓国で本場の牛焼肉を食べなきゃね!」
「何いってんの、韓国では豚のほうがメジャーなんだよ!」
「へー、そうなんだ!」

という韓国ビギナーとリピーターの会話が、

「韓国で本場の牛焼肉を食べなきゃね!」
「いいね、いまちょうど韓牛ブームだしね!」
「へー、そうなんだ!」

と180度転換してしまった。
昨年、話題となった米国産牛肉の輸入問題以降、
韓国では国内産牛の評価が高まっている。

中でも日本の和牛に相当する高級な国産牛、
韓牛(ハヌ)人気はウシでありながらもウナギのぼり。
その勢いは丑のウナギ人気に匹敵するほどである。

ただし、韓牛は需要が高いぶん値段も高く、
不景気のご時勢に、そうはたくさん食べられない。
そこで人気の韓牛を安価に味わえる店というのが、
ここ最近、急速に勢力を伸ばしているのだ。

それが精肉店兼焼肉店(精肉食堂)。

一般消費者への販売を中心業務とする精肉店が、
同じ店内で飲食店をも兼ねるという便利なスタイルだ。
精肉店が焼肉店を兼ねることで中間マージンを減らし、
良質の肉をリーズナブルに提供することができる。

こうした店は1頭買い、または半頭買いで仕入れるので、
希少な特殊部位を豊富に揃えているのも大きな魅力。
また余った骨やスジで煮込むスープ料理も充実している。

こうしたスタイルの店は昔からあったものの、
韓牛ブームのおかげで、近年はいっそう増えている。
日本にまで名前の轟く有名店もちらほら出ており、
群雄割拠の時代に入ったといっても過言ではない。

こうした趨勢を見ながら、ひとつ思った。

いうなれば牛焼肉店は生まれ変わりの時代である。
激動の時代においては、新しいことへのチャレンジが容易。
むしろ各店舗が生き残りをかけて新たなことを考える。

となれば、僕にとって念願だったあの試みも、
どこか実現してくれる店が登場するのではないか。
そう考えて韓国人の友人に話をしてみた。

「そろそろ牛焼肉店でマッコリが飲めてもいいよね!」
「アホか、腹が膨れて肉が食えなくなるだろ! 焼酎飲め!」

即座に全否定であった。

韓国では焼肉といえば焼酎というのが当たり前で、
ビールですら腹が膨れるからと敬遠されることが多い。
マッコリに至ってはメニューにそもそもないのが普通だ。

観光客向けにマッコリを用意する店は少数あるものの、
それはマッコリ「も」あるという程度で積極的ではない。
前号で書いたように、いまの韓国は空前のマッコリブーム。
加えての牛焼肉ブームなのだから融合してもいいじゃないか。

そんな主張を友人にぶつけていたら、実際にあった。

牛焼肉を食べながらマッコリが飲める店、というか地域。
町ぐるみで「牛焼肉&マッコリ」を推奨する町があったのだ。

ソウルから車で北へ1時間程度。
京畿道抱川市に属する二東(イドン)という町がある。
ソウルから1時間といえども山に囲まれた田舎町。
山あいに小川がさらさらと流れる、のどかな場所だった。

前号でも書いたが、この町はマッコリで大変に有名。

日本で流通するマッコリのほとんどが二東で作られ、
なんと1993年の段階から輸出を始めていたという。

現在テレビで流れている、

「にっこり、まっこり、いーどんまっこり」

というCMソングも二東ジャパンが流しているもの。

韓国系のスカパーチャンネルのみならず、
地上波にも流して、マッコリの知名度アップにつなげた。
日本におけるマッコリ販売の先駆者である。

韓国でも二東マッコリの名前は有名だが、
それとともにもうひとつ欠かせない二東名物がある。

それが二東カルビ。

韓国で二東といえば、カルビとマッコリの両方が、
ほぼ同じぐらいの知名度で全国に知れ渡っている。
二東こそが「牛焼肉&マッコリ」の町なのだ。

店を紹介してくれたのは二東酒造の所長だった。

工場のある場所から車で10分程度。
川に沿った道の両側にカルビ専門店が並んでいる。
ざっと数えて10数軒がしのぎを削っているようだ。

店に入ってまず感動したのが壁かけのメニュー。
カルビとともに、二東マッコリの文字が刻まれている。
ご当地だけに当たり前のことではあるが、

「ああ、ここは焼肉にマッコリが普通なのだ!」

という喜びがじわじわと襲ってきた。

昼間ではあったが、当然のごとくマッコリを頼む。
工場直送のマッコリを茶碗サイズの器にとくとく注ぎ、
威勢よく、ガチャン! と器をぶつけあって乾杯。

ぐびーっと飲むと、爽やかな発泡感と甘味、
ほのかな酸味が米の味わいとともに流れ込んできた。

「ぷはー、幸せ!」

と現地で飲む感動を噛みしめる。
そこへメインのカルビがタイミングよく登場。

「はいよ、お待たせです!」
「ぬわっ!?」

マッコリの感動が一瞬にして霧散し、
大きな衝撃と驚きがその場を包む。

「な、な、なんですか、これは!?」

目の前に現れたのは巨大な肉の塊、というか山。
「酒池肉林」という単語はこれまでにも聞いたことがあるが、
積み重なって「酒池肉山」といった趣であった。
もちろんその場合の池は白濁したマッコリ池である。

「二東ではこれが1人前なんだよね」

とにこやかに語る店のおばちゃん。
僕があっけにとられているのを横目に、手早く肉を鉄板に乗せ、
ジュワーっという刺激的な音と煙を周囲に振りまいた。

「全部で7本あるからね」
「骨の部分までしっかり焼いてかじるんだよ」
「おなかいっぱいになるまで食べなさい」

7本というのは、ひと口大の肉が7切れあるのではなく、
骨にぐるぐるっと巻いた、ひと塊のカルビが7本ということ。
ソウルで見るカルビに比べ、骨の幅こそやや短めだが、
そこから伸びている、切り開かれた肉の長さは充分だった。

そしてもうひとつ驚いたことがある。

カルビ7本1人前と聞いた僕は、
ふと気になって壁のメニューに目をやった。
先ほどはマッコリに気をとられたが、
真に驚くべきはほかにもうひとつあった。

カルビ(7本)……24000ウォン

に、にまんよんせんうぉん!?
1本あたりにして3500ウォン弱ぐらい!?
それは豚肉にしても格安値段じゃない!?

「ちょっ、これってあまりに安くないですか!?」
「あー、それが二東カルビの自慢だからね」

おばちゃんはそんな質問に慣れているのだろう。
なんのこともない、と平然とした表情で肉を焼き続ける。

「すごいですねー、国産でこの価格は驚異的ですよ!」
「へ、国産? いやウチはオーストラリア産だよ」
「ええっ!?」

いったいいくつ驚きが重なればよいのか。

「国産だったらこんな値段になる訳ないじゃない」
「二東カルビって、二東の牛じゃないんですか!?」
「二東じゃ牛は育ててないよ。料理のカルビが有名なだけ」
「ええええええええ!?」

単純に僕の下調べ不足であった。
これまで二東カルビの名声をあちこちで聞いていたので、
てっきり二東は牛の飼育で有名なのだと思っていた。

だが、それは違った。

二東は自前で牛を育てているのではなく、
安価なカルビを腹いっぱい食べさせてくれることで有名な町。
安くて美味しいをモットーにした庶民的焼肉タウンなのだ。

「そ、そんな郷土料理があるなんて……」

僕は衝撃の事実にしばし放心していたが、
焼けたカルビを食べてみると、これはこれで美味しい。
何より値段を気にせず、がっつり食べられる喜びもある。

なるほど。

最高の肉質を求めるこだわりの焼肉店があれば、
ファミリーで気軽に行ける焼肉店があるのは当然のこと。
二東カルビは町をあげて後者を選択しているだけだ。

これはこれでアリかもしれない。

僕はカルビをかじりながら少しずつ頭を整理した。
冷静になってみると、二東カルビならではの魅力も発見される。
香ばしく焼けたカルビをむさぼりながら、
その合間に、マッコリをグビッグビッと飲む。

そのグビグビ感が焼酎とは違った感動につながるようだ。

焼酎の場合はストレートで飲むのでひと口は少量。
マッコリの場合はアルコール度数が低いので、
肉と同じ勢いで、ぐいぐいゴクゴク飲むことができる。

それはどこか原初的かつワイルドな食の喜び。

ふと気付くと僕は、骨を手づかみにして肉をかじりつつ、
反対の手ではマッコリの器を手に持ち、次のひと口に備えていた。
ややガッツキ気味の、食いしん坊スタイルである。

オーストラリア産と聞いて少し下がったテンションが、
すっかり元に戻って、むしろどんどん楽しくなっていった。
僕はわざとらしく、マッコリの器を乱暴にあおったり、
骨まわりについた肉をガッガッとかじってみた。

それはなかなかに気分のよいことで、
食べ終わる頃にはすっかり二東が好きになっていた。

山盛りのカルビを手ごろな価格で楽しめる町。
そのカルビとともにマッコリをぐび飲みできる町。
食べながら野生的かつ豪快な気分に浸れる町。

そんな「酒池肉山」的ワンダーランドがあることを、
全国の肉食系女子&男子に熱くお伝えしたい。

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
肉食系、草食系、植物系などといいますが、
僕は韓食系男子を自称したいと思います。

コリアうめーや!!第203号
2009年8月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com

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http://www.melonpan.net/mag.php?000669



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