コリアうめーや!!第184号

コリアうめーや!!第184号

<ごあいさつ>
11月になりました。
朝晩めっきり寒くなって秋も本番。
夕方になるとあっという間に真っ暗ですね。
時計を見てまだ5時なのに! と驚いたりも。
秋の日はつるべ落としとはよくいったもので、
短くなった午後に慌てふためく毎日です。
これだけ秋が深まってくると、気分はもう冬。
熱燗がうまい。鍋がうまい。ミカンがうまい。
木枯らし吹き荒れる寒さは厳しいですが、
そのぶん寒さに引き立てられる美食もあります。
魚も脂が乗って美味しくなる頃ですね。
寒ブリ、寒ビラメ、タラ、アンコウ。
牡蠣やカニあたりも旬を迎えます。
寒さの中にもポジティブに!
そんなことを心に言い聞かせつつ、
今号のメルマガは先日の訪韓、3泊4日の報告です。
ずいぶん盛りだくさんな旅だったので数回に分け、
ゆっくりじっくりまとめたいと思います。
コリアうめーや!!第184号。
まずは飲む話題から、スタートです。

<全州はマッコルリの町なのだ!!>

10月12日から15日までの3泊4日。
韓国の南西部、全羅北道(チョルラブクト)を旅した。
全羅北道の中心地は食都と呼ばれる全州(チョンジュ)。
ビビンバの本場としても有名な街だ。

記憶力のよい方であれば、第176号のメルマガで、
全州取材の裏話について書いたのを覚えているかもしれない。

テーマとなったのは全州ビビンバが美味しい理由。

全州のみならず、近郊の町までをくまなく取材し、
全州ビビンバがなぜ美味しいかを、ひとつの記事にまとめた。
いま振り返っても、あのときの取材は波乱万丈、美味三昧。
過去の取材と比べても抜群の楽しさであった。

その楽しさが記事に反映されたのかもしれない。
アルクの『韓国語ジャーナル第25号』に掲載されると、
大変ありがたいことに予想以上の好評を頂いた。

驚いたのは、読者のみならず旅行社からも反応があった点。

「こういう素材を求めていた」
「ぜひこの記事を丸ごとツアーにしたい」
「担当ライターに会えないだろうか」

出版社の担当編集者を仲介として打診が来た。
たいへんに光栄なことで、早速打ち合わせを開始し、
旅行社の担当者と具体的な話に詰めていく。

話はとんとん拍子に進み、やがて正式な募集が出された。
タイトルに掲げたのは全州ビビンバツアー。

ビビンバの本場である全州を訪ねてその真価を味わい、
かつその周辺地域の美食も一緒に食べ歩く。
僕が取材して感動した要素を、すべて盛り込んだ上で、
いっそう食に貪欲なツアーとして仕上げたつもりだった。

僕の役割はプランナーでありナビゲーター。
旅行の全日程に同行し、先頭切って楽しむ役目だ。

ちなみに前号のメルマガはその旅先からの配信。
深夜にひとり、宿を出てPCバンで作業をしていた。
今号からは何度かに分けて、旅での収穫をまとめてみたい。
まずはメインの目的地となった全州の話からだ。

全州は韓国を代表するビビンバの本場。
全州でビビンバを食べると、その豪華さにまず驚く。
僕が初めて全州を訪れたときもそこが衝撃だった。

ソウルや他地域で食べるビビンバが10種類前後なら、
全州ビビンバはその倍、20種類ほどになる。

ある店で食べた具の一覧を示してみると……。

大豆モヤシ、緑豆モヤシ、キキョウ、ワラビ、ホウレンソウ、
ニンジン、キュウリ、大根のセンチェ、シイタケ、セリ、
シラヤマギク、ファンポムク、揚げコンブ、ツルニンジン、
ギンナン、栗、松の実、ナツメ、卵黄、ユッケ(計20種)

といった感じ。

ちなみにこの中で特筆したいのはファンポムク。
緑豆のデンプンをプルプルのゼリー状に固め、
クチナシで黄色く染めた風流な一品である。

味は特についていないものの、柔らかな食感が独特で、
彩りも含め、全州ビビンバには欠かせない一品とされる。
実際に食べていても、時折り口に当たる柔らかさが、
ファンポムクの存在感をよく示している。

そして、この点こそが全州ビビンバの真髄。

全州のビビンバは圧倒的に具の種類が多いものの、
素材ひとつひとつに力があって埋没しない。
ファンポムク以外の、野菜やキノコ類もそうだ。

わしわしと豪快に混ぜてもなお画一にならない、
素材の力強さが全州ビビンバのうまさを決定づける。

と、ひと通り本題であるビビンバを褒めた上で。
そのビビンバを食べた後の話をメインとしてみたい。

1日目の夜、全州に到着してすぐにビビンバを食べ、
直後に有志を募って、2度目の夕食を取った直後さらに。
もう1軒を目指すという、韓食尽くしの展開があった。

こんなナビゲーターに付き合う人たちも災難だが、
それをわかっていて参加したのだと勝手に解釈。
もちろん強制的ではなく、あくまでも有志を募ってだが、
夕食、夕食、夕食という3連コンボを初日から実施してみた。

もちろん2度目の夕食からはツアーに含まれないので、
僕を含めて自腹、自由参加の食事である。

2度目の夕食は市内の有名店でトッカルビ。
3度目は三川洞(サムチョンドン)のマッコルリタウンを訪れた。
そしてこの、マッコルリタウンが実に感動的だったのだ。

行く前から、あそこはいいと話に聞いていたが、
実際に行ってみて、そこが完璧な酔いどれ天国であると確信。
結果、日程中は毎晩マッコルリを飲みに訪れた。

これまで全州はビビンバの街だと強弁していたが、
今後はマッコルリの街だと、鞍替えするかもしれない。

まず、全州マッコルリタウンの素晴らしい点。

1、ヤカンで出てくる
2、ヤカンにはマッコルリが1.5リットルも入る
3、ヤカン1杯がなんと1万ウォンの格安値

テーブルにどかっと置かれる巨大ヤカン。
そのサイズは、かつて倒れたラグビー部員にぶっかけた
俗称「魔法の水」サイズと同じぐらいである。

ただしラグビー部員は水をかけられてシャキッとするが、
マッコルリタウンでは、逆に酩酊してフラフラになる。
その点を除けば、金色の模範的なヤカンで見ていて頼もしい。

また、マッコルリのほかにマルグンスルという酒もあり、
こちらを頼むと、若干ではあるが量が少なくなる。

マルグンスルはマッコルリを4、5日間ほど寝かせておき、
底に溜まった沈殿物を取り除いた上澄み部分の液体。
「マルグンスル=澄んだ酒」というネーミングの通り、
マッコルリに比べて、すっきりと飲みやすい味わいだ。

値段は同じだが、沈殿物の分だけやや量が少ない。
イコール、高級な酒として全州では親しまれている。
他地域ではあまり見られない、全州ならではの味だ。

ということで素晴らしい点に以下を追加。

4、マッコルリのほかにマルグンスルが飲める

そして何より嬉しいのが、おつまみの提供方法。
この部分だけでも、全州でマッコルリを飲む意義がある。
そのシステムというのがこんな感じ。

5、注文しなくても料理が続々と登場
6、料理はマッコルリの代金に含まれており無料

もう永遠に全州へ移住したいぐらいの喜び。
日本の感覚からすれば、マッコルリだけでも激安なのに、
そこに料理までついてくるという大盤振る舞いだ。

それも、ちまちまとした副菜レベルではなく、
きちんとした主菜がたっぷりと出てくる。

1日目の店では……。

・カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)
・クルビグイ(イシモチの干物)
・コドゥンオジョリム(サバの煮物)
・センソンチリタン(魚スープ)
・ヘムルパジョン(海産物とネギのチヂミ)
・トゥブギムチ(豆腐キムチ)

といったラインナップ。
2~3日目は西新洞(ソシンドン)という別の街に行き、
若者に人気という店で、さらに多くのマッコルリを飲んだ。
なお、全州のマッコルリタウンでは、

7、ヤカンを追加するほど料理が豪華になる

という暗黙の傾向がある。
また3日目は偶然にも隣席の常連客と仲良くなり、
さらに豪華な料理をずらり並べて食べることができた。
なので、もうひとつ素晴らしい点を追加しておこう。

8、雰囲気が大衆的なので地元の人と仲良くなりやすい

ちなみに2~3日目の店ではこんな料理を楽しんだ。

・テジゴギキムチチム(豚肉とキムチの蒸し煮)
・サムゲタン(雛鶏のスープ)
・チョッパル(豚足)
・プチムゲ(チヂミ)
・ケランフライ(目玉焼き)
・オジンオスッケ(茹でイカ)
・サムチグイ(サワラ焼き)
・チョノグイ(コノシロ焼き)
・テハ(タイショウエビの踊り食い)
・ピョンオフェ(マナガツオの刺身)

もう、ぐうの音も出ないほどの豪華さ。
そしてこれらが全部タダという幸せ。

隣の人にご馳走してもらった料理もあるが、
それも元はといえば、店側が提供したタダ料理だ。
隣の人にも感謝だが、店にはもっと感謝である。

むしろ、隣の人に感謝しなければならないのは、
気になる先の料理を見せてくれた点だろう。

追加をすればするほど料理が出てくるシステムは、
次は何が出てくるだろう、というワクワク感が重要。
そこでふと近隣のテーブルを見回してみると、
自分たちの席には出てきていない、美味しそうな料理がある。

「あの料理はいったい何だろう」
「もうひとヤカン頼んだら出てくるかもしれない」
「出てこなかった……。ええい、もうひとヤカンだ!」

という繰り返し。
ついついおかわりを繰り返してキリがない。
とはいえ……。

9、次の料理が気になってつい追加してしまう

というのは楽しさのひとつでもある。

ちなみに上に書いたラインナップの中では、
チョノグイより下がご馳走になったメニュー。
裏ルートで先の料理を楽しむ不正を犯してしまった。

いい感じに書いていったら、素晴らしい点が9つ集まった。
せっかくなので、これにもうひとつ足して10にしよう。

10、そんなマッコルリタウンが全州にはたくさんある

全州市が配っている観光地図にだけでも5ヶ所。
密集したエリア以外にも、同じシステムの店は多く、
あちこちで同様のマッコルリ体験ができる。

なお、現地で調べたところ、こういうシステムは、
いちばんマッコルリ店の多い三川洞から始まったとのこと。
まず元祖という人は、三川洞をおすすめしたい。

だが、いまいちばんホットな街ということになると、
三川洞よりも、西新洞に勢いはシフトしつつあるようだ。
特に若い世代は、西新洞に集まるケースが多い。
学生街のような雰囲気を味わいたい人は西新洞がいい。

とはいえ飲み好きなら両方行くのが常道。
僕もまた全州に行く機会があったとしたら、
両方の街を訪れつつ、さらなる開拓も行うつもりだ。

そしてもうひとつ大きな野望がある。

全州のマッコルリタウンではヤカンを追加するほど、
また新しい料理がどんどんと出てくるシステム。
だが、そのレパートリーもいつかは尽きることだろう。

「料理を全制覇するには何杯飲めばよいのか!」

これをいつか検証してみたいと思う。
開店から閉店まで、延々飲みながら食べながら、
胃袋と肝臓の限界にチャレンジ。

この野望に協力してくれる方はぜひご連絡を。
次回ツアーが確定したら、声をかけさせて頂きます。

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
といいつつ次回は全州じゃないかも。
江原道、済州島あたりが候補にあがっています。

コリアうめーや!!第184号
2008年11月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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