コリアうめーや!!第12号

コリアうめーや!!第12号

<ごあいさつ>
9月です。もう秋です。
たとえ残暑がきびしくとも、まだまだ中ジョッキを手放せなくても、
9月と聞いてしまったら、気持ちは秋なのです。
果物が出ます。新米が登場します。サンマが食卓に上ります。
食に情熱を燃やす人達のパラダイス。それが秋なのです。

って、ここまでしつこくいうのには訳がありまして、
なんか今年はいつもより秋が短いそうです。
残暑がしぶとく居座り、冬が例年よりも早くやってくる。
だからみなさん。気持ちだけでも「秋」になってしまいましょう。
「食欲の秋」の方には「コリアうめーや!!」を。
「読書の秋」の方にも「コリアうめーや!!」を。
秋にふさわしい食のメルマガ、スタートです。

<ふるさと恋ひしサンマに涙> 

大学3年生の頃、沖縄の島々をテント担いで旅をした。
9月のアタマに出発して帰ってきたのは10月の終り頃だった。
沖縄の10月は、まだまだ海で泳げるほど暖かい。

やる気充分の夏の太陽にジリジリ焦がされ、夏気分まんまんのまま
飛行機でビューンと羽田に到着したら、あろうことか東京はもう冬だった。
サンマがない。キノコがない。食卓に湯豆腐なんかがハバを利かせてる。 

「俺の秋を返せ!!」と思いましたね。
スーパーに走っていって、あわててサンマ買って食べました。

そんなサンマは韓国でも愛されております。

八田氏が韓国に留学して最初の秋。
鐘路(チョンノ)という街の、異常にごちゃごちゃした路地の一角で、
「君と僕」などというおよそ似つかわしくない名前の小さな定食屋に1人もぐりこみ、
「サンマ定食」4500ウォン也(約450円)を食べた。

その時の話。
サンマ定食を注文し、サンマサンマと浮かれ気分で待っていると、
なぜかおばちゃんがキムチチゲをかかえてやってきた。
テーブルの上のカセットコンロに鍋をのせ、カチンと火をつける。

「え!?」

ハニワ顔のまま何も言えず呆けていると、チゲに続き、いくら韓国とはいえあまりにも大
量のキムチ、ナムルがテーブル狭しと並べられ、さらに大盛ごはんがどーんと置かれた。
4500ウォンで食べるにはあまりにもボリュームたっぷりで嬉しすぎるが、
どうしたことかサンマがまだ来ない。
もしやと思いあわててメニューを見なおし、念には念を入れて辞書まで引いたが、
確かに「サンマ定食」で間違いない。

「すいません、あの、その、サンマ……。」
と、おそるおそる言いかけたところ、

「ちょっと待っときんしゃーい!!」
と、でっかいダミ声が返ってきた。

仕方ないのでキムチチゲをすすりつつ待っていると、
「あいよ、やけたよー!!」とおばちゃんがサンマを持ってきてくれた。
皮が焦げてプチプチと音を立て、頭としっぽが皿からはみ出す、
極めて正統派のサンマの塩焼きである。しかも2匹。

残念なことに、大根おろしがついていない。スダチものっていない。
でも許してしまう特大のサンマ2匹、大盤振る舞い、太っ腹、いよっ商売人の鏡。
4500ウォンの定食にチゲがついて、サンマ2匹も出てきて、
僕の人生こんなに幸せでいいのだろうか、と涙ちょちょ切れそうになった。

うまかったですね。満腹でした。
あんまり嬉しかったので、後日友達を連れてもう1度行きました。
鼻息荒くおおいばりです。

「ここはサンマ2匹出てくるから、2人で別の定食を頼んでサンマは1匹ずつ分けて食べ
よう。キムチチゲもついてくるんだぞ。おかずも死ぬほど出てくるからな。どうだすごい
だろう。」
「すごいすごい。いやあ、サンマ久し振りだなあ。」
「おばちゃーん。サンマ定食ひとつと、タチウオ定食ひとつ。サンマ2人で分けて食べる
から別の皿で持ってきてねー。」

程なくしてキムチチゲ登場。コンロをカチン。
大量のキムチ、ナムル登場。テーブルが一杯。
そして、いよいよメインのサンマ登場。

ところが、出てきたサンマは、僕の皿にアタマ半分、友達の皿にしっぽ半分だった。

「おおお、おばちゃん!! こないだはサンマ2匹だったじゃん。なんでこれ……。」
「あー、ごめんねー。サンマ高くなっちゃったんだよね―。」
「高くなった? それで2匹が1匹に?」

サンマが半分になったほかは前とかわらなかった。
でも僕の鼻息はむなしいため息にかわった。
2人で半分ずつのサンマをぼそぼそとつつき、
むっつりと黙ったまま店を出たのだった。

<おまけ>
北方領土周辺の海域における韓国のサンマ漁が日韓の問題となっています。
漁業問題のみならず、政治的な問題も絡み合ってそう簡単には解決されないと思われます
が、幸いにして今年はサンマが豊漁だそうです。
根本的な解決にはなりませんが、少なくとも卑しい気持ちにはならなくてよさそうです。

<八田氏の独り言>
コンビニのバイトの女の子が韓国人でした。
おつりを渡す時、韓国の礼法にのっとり右肘に左手を添えてくれました。
八田氏も思わず左手を添えて受け取りました。
なんかあったかい気持ちで店を出ました。

コリアうめーや!!第12号
2001年9月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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