全州市の料理

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この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。
全州韓屋村

全州市(チョンジュシ、전주시)は全羅北道の中央部に位置する地域。本ページでは全州市の料理、特産品について解説する。なお、忠清北道に名前のよく似た清州市(チョンジュシ、청주시)があって混同しやすいので注意。

地域概要

慶基殿

全州市は全羅北道の道庁所在地。道の中央部に位置し、市の北部から東部、南部にかけては全羅北道完州郡、西部は全羅北道金堤市、北西部は全羅北道益山市と接する。また、西部の一部は飛び地になっている完州郡の伊西面(イソミョン、이서면)地区と接する。人口は64万4389人で、全羅北道ではもっとも多い(2023年9月)[1]。代表的な観光地として、伝統家屋の韓屋(ハノク、한옥)が集まった全州韓屋村(チョンジュハノクマウル、전주한옥마을)があり、生活空間でありながら、飲食店、博物館、伝統工房、宿泊施設などに利用している。全州韓屋村の一帯には、朝鮮王朝の開祖である李成桂(イ・ソンゲ、이성계)の肖像画を祀る慶基殿(キョンギジョン、경기전)や、全州韓屋村を眺められる高台の梧木台(オモクテ、오목대)、全州南部市場(チョンジュナムブシジャン、전주남부시장)などが集まっている。ソウル市から全州市までのアクセスは、龍山駅から全州駅まで高速鉄道で約1時間40分。ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから全州高速バスターミナルまで高速バスで約2時間40~50分の距離である。

  • 日本の姉妹都市
2002年4月より、石川県金沢市と姉妹都市の関係にある[2]。また、全州市の「国立全州博物館(국립전주박물관)」と、金沢市の「石川県立歴史博物館」は姉妹館交流をしている。

食文化の背景

全州南部市場

全州市とその周辺地域には、朝鮮半島で最大の面積を誇る湖南平野(ホナムピョンヤ、호남평야)が広がっており、古くから米や野菜の産地として栄えた。地域の名産品を総称する「全州10味(전주십미)」には、大根の間引き菜(열무)、カボチャ(호박)、大根()、セリ(미나리)、大豆モヤシ(콩나물)といった野菜が多く含まれている。これらの米や野菜を用いて作るチョンジュピビムパプ(全州式のビビンバ/전주비빔밥)や、コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん/콩나물국밥)は、地域を代表する郷土料理として有名である。また、全州市は古くから全羅道の中心的な都市として発達し、周辺地域の文物が集まることから、全羅道全体の特産品や郷土料理を組み合わせて作るハンジョンシク(韓定食/한정식)が有名である。近年は国内外からの観光客も多く、マッコリ専門の居酒屋が集まるマッコリタウンや、全州韓屋村の一帯で味わえるテイクアウトグルメ、全州南部市場の夜市に並ぶ屋台料理などが人気を集める。

  • 全州10味(전주십미)
全州10味(チョンジュシムミ、전주십미)は、全州市を代表する10種類の名産品。全州8味(チョンジュパルミ、전주팔미)、または全州の旧称から完山8味(ワンサンパルミ、완산팔미)とも呼ぶ。早生柿(파라시)、大根の間引き菜(열무)、ファンポムク(クチナシで黄色く染めた緑豆寒天、황포묵)、タバコ(서초)、カボチャ(호박)、カマツカ(모래무지)、カニ()、大根()の8種を8味とし、これにセリ(미나리)と大豆モヤシ(콩나물)を加えて10味とする。選定者やその時期は明らかになっておらず、1953年に詩人の李秉岐(イ・ビョンギ、이병기)が雑誌『新調(신조)第3集』で発表した3編の詩、「近吟三首(근음 삼수)」内の「ヨルム(열무)」で触れているのが全州8味のもっとも古い記録であるとされる[3]。また、1967年に全州市観光協会が発刊した『全州野史(전주야사)』には、セリ(미나리)と大豆モヤシ(콩나물)を加えた全州10味の記載がある[3]
  • 全州南部市場
全州南部市場(チョンジュナムブシジャン、전주남부시장)は、完山区殿洞(ワンサング チョンドン、완산구 전동)に位置する在来市場。全州市の特産品である大豆モヤシ(콩나물)、セリ(미나리)、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)といった野菜類に加え、鮮魚、精肉、惣菜、日用品などの専門店が並ぶ。コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん/콩나물국밥)や、スンデクッ(腸詰入りのスープ/순대국)が市場の名物料理として知られる。毎週金・土曜日には夜市(야시장)が開催されて大勢の観光客で賑わう。

代表的な料理

チョンジュピビムパプ

チョンジュピビムパプ(全州式のビビンバ/전주비빔밥)

チョンジュピビムパプ(전주비빔밥)は、全州式のビビンバ(「ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)」の項目も参照)。20種類前後の具を用いて豪華に作るのが特徴であり、60度前後に温めた真鍮器(놋그릇)に盛り付けて提供する。全州市は朝鮮半島で最大の面積を誇る湖南平野(ホナムピョンヤ、호남평야)の一角を成し、古くから良質の米や野菜のとれる地域として有名であった。チョンジュピビムパプはこうした地の利を活かした料理で、代表的な具材として用いられる大豆モヤシ(콩나물)、セリ(미나리)、大根()、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)、ファンポムク(クチナシで黄色く染めた緑豆寒天、황포묵)は、いずれも全州10味(전주십미)に含まれる。専門店によっては近隣である金堤市のブランド米や、淳昌郡のコチュジャンなど、周辺地域の名産品も取り入れている。市内の有名店に「盛味堂(성미당)」「韓国館(한국관)」「家族会館(가족회관)」「ハングッチプ(한국집)」などがある。
  • ごはん
専門店によっては、牛骨スープを混ぜた水でごはんを炊いてうま味の下支えとする。炊く際に大豆モヤシを加え、コンナムルバプ(大豆モヤシごはん、콩나물밥)にする店もある。有名専門店の「盛味堂(성미당)」では、炊いたごはんをコチュジャンとゴマ油で炒めてから具材を載せて提供する。人によって、混ぜる際に米粒をつぶさないよう、スプーンでなく箸で混ぜるのがよいとの主張もある。
  • スープ
コンナムルクッ(大豆モヤシのスープ、콩나물국)を添えるのが定番である。人によってはチョンジュピビムパプを混ぜる際に、このスープを少量加えたりもする。
  • 具材
使用される具材は季節によっても変わるが、一例として、以下のような食材が用いられる。生野菜(サンチュ、ニンジン、キュウリなど)、ナムル(大豆モヤシ、緑豆モヤシ、セリ、ワラビ、ホウレンソウ、ニンジン、大根、カボチャの未熟果、キキョウ、ツルニンジン、シラヤマギクなど)、キノコ(シイタケなど)、牛肉(ユッケ、炒めた牛肉など)、卵(卵黄、目玉焼きなど)、堅果類(松の実、栗、ゴマ、ギンナン、ナツメなど)、海藻類(海苔、揚げ昆布など)、その他(ファンポムクなど)。
朝鮮3大料理
20世紀初頭の新聞記者で歴史家、独立運動家の文一平(ムン・イルピョン、문일평)は、1936年8月27日の『朝鮮日報(조선일보)』紙面で「朝鮮人と飲食物」[4]というコラムを書き、地方の代表的な名物料理として「ケソンタンバン(開城湯飯=開城式のクッパ、개성탕반)」「ピョンヤンネンミョン(平壌式の冷麺、평양냉면)」「チョンジュコルトンバン(全州骨董飯=全州式のビビンバ、전주골동반)」の3種をあげた。この評価は現代まで継承されており、今日では「朝鮮3大料理(조선3대음식)」と称される。
朝鮮3大ビビンバ(韓国3大ビビンバ)
チョンジュピビムパプは朝鮮3大ビビンバ、または韓国3大ビビンバのひとつに数えられる。残りの2つには慶尚南道晋州市のチンジュピビムパプ(晋州式のビビンバ、진주비빔밥ユッケピビムパプ(牛刺身載せビビンバ/육회비빔밥))がほぼ確定で入り、朝鮮3大ビビンバとした場合は残りのひとつに黄海南道海州市のヘジュピビムパプ(海州式のビビンバ、해주비빔밥=鶏肉とワラビ、海苔などを具材としたビビンバ)が入ることが多い。韓国だけに限定する場合は、語り手によって慶尚北道安東市のアンドンピビムパプ(安東式のビビンバ、안동비빔밥ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥))や、慶尚南道統営市のトンヨンピビムパプ(統営式のビビンバ、통영비빔밥=野菜や海藻、貝と豆腐のスープなどを具材としたビビンバ)、全羅北道益山市のファンドゥンピビムパプ(黄登市場式のビビンバ、황등비빔밥=コチュジャン味のごはんを使用)などのいずれかが選ばれる。
ピビムパプコロッケ
全州韓屋村の「校洞コロッケ(교동고로케)」では、ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)を具としたコロッケ(揚げパン、고로케)を販売している。

コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん/콩나물국밥)

コンナムルクッパプ
コンナムルクッパプ(콩나물국밥)は、大豆モヤシのスープごはん(「コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん/콩나물국밥)」の項目も参照)。チョンジュピビムパプ(全州式のビビンバ/전주비빔밥)とともに全州市を代表する郷土料理として名高い。大豆モヤシ(콩나물)は全州市の名産品であり、全州10味(전주십미)のひとつに数えられる。市内の有名店に「現代屋(현대옥)」「三百チプ(삼백집)」「ウェンイコンナムルクッパプチプ(왱이콩나물국밥집)」などがある。24時間営業の店も多く、深夜や早朝にヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ/해장국)として利用する人も多い。
一般にコンナムルクッパプは、ぐつぐつ煮立てずに作る「南部市場式(남부시장식)」と、煮立てて作るクリヌン式(끓이는식)に分けられるが、前者は全州市の南部市場(남부시장)にある「現代屋(현대옥)」のスタイルで、後者は「三百チプ(삼백집)」のスタイルを踏襲するものである。

ハンジョンシク(韓定食/한정식)

ハンジョンシク
ハンジョンシク(한정식)は、韓定食(「ハンジョンシク(韓定食/한정식)」の項目も参照)。全州市は全羅道の中心都市であり、さまざまな食材が集まってくることから、周辺地域の特産品や郷土料理を含めつつ構成される。一例として、ホンオフェ(ガンギエイの刺身/홍어회)ナクチボックム(テナガダコ炒め/낙지볶음)クルビグイ(イシモチの干物/굴비구이)トッカルビ(叩いた牛カルビ焼き/떡갈비)などがあげられる。市内では1958年創業の「百番チプ(백번집)」が有名で、料理を盛り付けたテーブルごと厨房から運んでくる昔ながらのスタイルを継承している。

トルソッパプ(釜飯/돌솥밥)

トルソッパプ(돌솥밥)は、釜飯(「トルソッパプ(釜飯/돌솥밥)」の項目も参照)。1人前用の石釜(돌솥)を用い、ニンジン、ゴボウ、シイタケ、栗、銀杏などの具を加えて炊きあげる。1980年創業の「飯野トルソッパプ(반야돌솥밥)」が有名。

カルビジョンゴル(豚カルビの鍋/갈비전골)

カルビジョンゴル(갈비전골)は、豚カルビの鍋。カルビ(갈비)は肋骨、およびそのまわりの肉のこと。ジョンゴル(=チョンゴル、전골)は鍋料理の意。ムルカルビ(물갈비)とも呼ぶ。豚カルビを、大豆モヤシ、長ネギ、ヒラタケ(느타리버섯)、春雨などと辛口に煮込んで作る。専門店としては、「ナムノカルビ(남노갈비)」「姉妹カルビジョンゴル(자매갈비전골)」が有名。

ヤンニョムチョッパル(豚足の辛味ダレ焼き/양념족발)

ヤンニョムチョッパル
ヤンニョムチョッパル(양념족발)は、豚足の辛味ダレ焼き(「チョッパル(豚足の煮物/족발)」の項目も参照)。下茹でした豚足にヤンニョム(辛味ダレ、양념)を絡めて炭火で焼いて作る。徳津区八福洞(トクチング パルボクトン、덕진구 팔복동)に専門店が集まっており、1968年創業の「カウンデチプ(가운데집)」が老舗店として有名。同店によれば、もともとはテジプルコギ(豚肉の味付け焼肉/돼지불고기)の味付けをベースにしているとのこと(八田靖史の取材記録より、2010年11月15日)。

全州市の麺料理

カルグクス
カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)
カルグクス(칼국수)は、韓国式の手打ちうどん(「カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)」の項目も参照)。1977年創業の「ベテランカルグクス(베테랑칼국수)」が有名で、その独特なスタイルから全州市ならではの名物と評価される。カルグクスにしてはずいぶん細い自家製麺と、煮干ダシをベースに半熟の溶き卵を加えたとろとろのスープ、仕上げに振りかけられたエゴマの粉、粉唐辛子、揉み海苔のコントラストなどが大きな特徴と言える。エゴマの粉は粗めにひいてあるため、実の形を残しており、香ばしさだけでなくぷちぷちとした食感がアクセントとなる。同店ではチョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면)や、マンドゥ(餃子/만두)の人気も高い。
ソバ(そば/소바)
ソバ(소바)は、韓国式のそば(「メミルグクス(そば/메밀국수)」の項目も参照)。ソバ(소바)は、日本語の「そば」に由来する。でんぷんを加えたそば麺に、冷たい煮干しダシのつゆをかけて味わう。全国的にはメミルグクスと呼ばれることの多い料理だが、全州市では「ソバ」の呼び名が一般的で、ウィリョンソバ(宜寧そば、의령소바)が有名な慶尚南道宜寧郡とともに、ソバの有名な地域として知られている。ソバの専門店では、同様の麺を用いてコングクス(豆乳麺/콩국수)を提供することも多い。市内の有名店に「メルミルチンミチプ(메르밀진미집)」がある。
ムルチャジャン(あんかけチャンポン/물짜장)
ムルチャジャン
ムルチャジャン(물짜장)は、あんかけチャンポン。ムル()は水、チャジャン(炸醤、짜장)はチャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)の炒め味噌を意味するが、実際には黒味噌を使わず醤油と粉唐辛子などで味付けをする。エビ、イカ、アサリなどの魚介を具としてピリ辛のあんかけを作り、中華麺と絡めて味わう。名前はチャジャンでも、味わいはむしろチャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)に近い。全国的には馴染みの薄いメニューだが、全州市を中心として全羅北道の近隣地域では中国料理店の定番となっている。市内の有名店に「ノーベル飯店(노벨반점)」「一品香(일품향)」「真味飯店(진미반점)」などがある。

全州市のB級グルメ

チョコパイ(手前)とブッセ
チョコパイ(チョコパイ/초코파이)
1951年創業の老舗ベーカリー「PNB豊年製菓(PNB풍년제과)」の看板商品。中にクリームとイチゴジャムが入っている。ふちの部分をチョコレートでコーティングしており、表面に四角模様ができるのが特徴的である。これは中央部分を手に持って、90度ずつ回転させながら側面部分だけを溶かしたチョコレートに浸す過程で生まれる。「PNB豊年製菓」が元祖店として有名ではあるが、同名の「豊年製菓(풍년제과)」が別途あり、こちらでもチョコパイを販売している。また、他メーカーからも類似の商品が販売されている。

代表的な特産品

ファンポムクムチム

ファンポムク(クチナシ入り緑豆寒天/황포묵)

ファンポムク(황포묵)は、クチナシ入り緑豆寒天。緑豆のでんぷんを寒天状に固めたものをチョンポムク(=青泡ムク、청포묵)と呼ぶが、それをクチナシで黄色く色付けたものをファンポムク(=黄泡ムク、황포묵)と呼ぶ。ほとんど無味に近く、食感を楽しむ食品と言える。全州10味(전주10미)のひとつに数えられ、チョンジュピビムパプ(全州式のビビンバ/전주비빔밥)の具としても欠かせないものとされる。ファンポムク単体でも、薬味ダレをかけて味わうほか、生野菜や揉み海苔などと和えたファンポムクムチム(クチナシ入り緑豆寒天の和え物、황포묵무침)という料理がある。

代表的な酒類・飲料

マルグンスル用に寝かせているマッコリ。ラベルのないいちばん右が仕入れたその日で、いちばん左が7日目

マッコリタウン

全州市では1990年代後半頃から、マッコリを専門とする居酒屋が増え、その密集地域をマッコリタウン(막걸리타운)と呼ぶようになった。代表的な地域として、完山区(ワンサング、완산구)の三天洞(サムチョンドン、삼천동)と西新洞(ソシンドン、서신동)があげられる。以前はマッコリを注文するごとに料理がついてくるシステムが多かったが、現在では最初から人数に応じたセットを注文し、テーブルいっぱいに料理が並ぶ方式が増えている。全州市ならではの飲み方として、マッコリの上澄みだけを飲む「マルグンスル(上澄み酒、맑은술)」が特徴的である。
  • マルグンスル(맑은술)
マルグンスル(맑은술)は、マッコリの上澄み。マッコリのボトルを立てた状態で冷蔵庫に保管すると、酒かすなどの内容物が沈殿し、上澄み部分を分離することができる。この上澄み部分をマルグンスル(直訳は澄んだ酒)と呼び、一般のマッコリよりもすっきり爽やかな味わいを楽しめると人気が高い。値段は同様であるが、沈殿物のぶんだけ内容量が減るため、量との比較においてより高級酒であるとの意見もある。保管期間は店によって3~5日程度とさまざまだが、7日間は保管すべしとこだわる店もある。ただし、保管の期間が長くなり過ぎると、発酵が進んで酸味が出てくるため注意が必要である。

カメク(店ビール/가맥)

カメクの店頭風景
カメク(가맥)は、全州式の角打ち。カゲメクチュ(가게맥주)の略で、カゲ(가게)は店、メクチュ(맥주)はビールを意味する。小規模な商店の店頭で販売しているビンビールを飲むスタイルを指す。店側でも、マルンオジンオ(スルメ、마른오징어)や、ファンテポ(干しダラ、황태포)、ケランマリ(卵焼き/계란말이)といった簡単な肴を提供するほか、スナック菓子やカップ麺も購入して食べることができる。カボジンオ(コウイカ、갑오징어)のスルメを自慢とする「全一カボ(전일갑오)」が老舗店として有名。

イガンジュ(梨薑酒/이강주)

イガンジュ(이강주)は、全州市の徳津区院洞(トクチング ウォンドン、덕진구 원동)で生産されている伝統焼酎。漢字で「梨薑酒」と書き、原料に梨とショウガ(薑)を用いることから名付けられた。全羅北道の無形文化財第6-2号として登録されおり[5]、技能保有者のチョ・ジョンヒョン(조정형)氏は大韓民国食品名人第9号にも指定されている[6]

モジュ(母酒/모주)

モジュ(모주)は、漢字で「母酒」と書いて、マッコリにナツメ、ショウガ、シナモン、砂糖などを加えて煮込んだ飲料。濁酒の一種に含まれるが、アルコールは加熱によってほぼ飛んだ状態である。全州市の地酒、伝統飲料として知られ、酔い覚ましによいとされることから、地域のヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ/해장국)であるコンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん/콩나물국밥)の専門店などで提供される。ペットボトル飲料としても販売されている。

老舗

  • 三百チプ全州本店(삼백집 전주본점)
1945年創業。コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん/콩나물국밥)の専門店。煮込み式の発祥としても知られる。
  • 韓国チプ(한국집)
1952年創業。チョンジュピビムパプ(全州式のビビンバ/전주비빔밥)の専門店としてもっとも古い。
  • 韓一館(한일관)
1954年創業。チョンジュピビムパプ(全州式のビビンバ/전주비빔밥)の専門店。
  • 百番チプ(백번집)
1958年創業。ハンジョンシク(韓定食/한정식)の専門店。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • カウンデチプ(가운데집)
住所:全羅北道全州市徳津区楸川路171(八福洞2街7-3)
住所:전라북도 전주시 덕진구 추천로 171(팔복동2가 7-3)
電話:063-211-5366
料理:ヤンニョムチョッパル(豚足の薬味ダレ焼き)
  • 家族会館(가족회관)
住所:全羅北道全州市完山区全羅監営5キル17、2階(中央洞3街80)
住所:전라북도 전주시 완산구 전라감영5길 17, 2층(중앙동3가 80)
電話:063-284-0982
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • 空間ポム(공간봄)
住所:全羅北道全州市完山区御真キル51(豊南洞3街83-3)
住所:전라북도 전주시 완산구 어진길 51(풍남동3가 83-3)
電話:063-284-3737
料理:カフェ
  • 校洞コロッケ(교동고로케)
住所:全羅北道全州市完山区慶基殿キル126(校洞266-3)
住所:전라북도 전주시 완산구 경기전길 126(교동 266-3)
電話:063-283-5555
料理:ピビムパプコロッケ(ビビンバ揚げパン)
  • ノーベル飯店(노벨반점)
住所:全羅北道全州市完山区豊南門2キル100(殿洞3街56-4)
住所:전라북도 전주시 완산구 풍남문2길 100(전동3가 56-4)
電話:063-284-4318
料理:ムルチャジャン(あんかけチャンポン)
  • 東門酒家マッコリ(동문주가막걸리)
住所:全羅北道全州市完山区東門キル50(豊南洞1街26-1)
住所:전라북도 전주시 완산구 동문길 50(풍남동1가 26-1)
電話:063-288-0606
料理:マッコリ(韓国式の濁酒)
  • メルミルチンミチプ(메르밀진미집)
住所:全羅北道全州市完山区全州川東路94(殿洞237)
住所:전북시 전주시 완산구 전주천동로 94(전동 237)
電話:063-288-4020
料理:ソバ(そば)
  • 百番チプ(백번집)
住所:全羅北道全州市完山区全羅監営2キル15(多佳洞1街44-7)
住所:전라북도 전주시 완산구 전라감영2길 15(다가동1가 44-7)
電話:063-286-0100
料理:ハンジョンシク(韓定食)
  • ベテランカルグクス(베테랑칼국수)
住所:全羅北道全州市完山区慶基殿キル135(校洞84-10)
住所:전라북도 전주시 완산구 경기전길 135(교동 84-10)
電話:063-285-9898
料理:カルグクス(韓国式の手打ちうどん)
  • 三百チプ全州本店(삼백집 전주본점)
住所:全羅北道全州市完山区全州客舎2キル22(高士洞454-1)
住所:전라북도 전주시 완산구 전주객사2길 22(고사동 454-1)
電話:063-284-2227
料理:コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん)
  • 盛味堂中央店(성미당 중앙점)
住所:全羅北道全州市完山区全羅監営5キル19-9(中央洞3街31-2)
住所:전라북도 전주시 완산구 전라감영5길 19-9(중앙동3가 31-2)
電話:063-287-8800
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • シンベンイ(신뱅이)
住所:全羅北道全州市完山区慶基殿キル153-9(校洞98-1)
住所:전라북도 전주시 완산구 경기전길 153-9(교동 98-1)
電話:063-282-3030
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • 新チャムセワパンアッカン(신 참새와 방앗간)
住所:全羅北道全州市徳津区臥龍路32-9(松川洞2街540)
住所:전라북도 전주시 덕진구 와룡로 32-9(송천동2가 540)
電話:063-225-2404
料理:マッコリ(韓国式の濁酒)
  • イェッチョンマッコリ(옛촌막걸리)
住所:全羅北道全州市完山区西新川辺路11(西新洞843-16)
住所:전라북도 전주시 완산구 서신천변로 11(서신동 843-16)
電話:063-272-9992
料理:マッコリ(韓国式の濁酒)
  • オゴリコンナムルヘジャンクッ(오거리콩나물해장국)
住所:全羅北道全州市完山区拱北路83(太平洞6-8)
住所:전라북도 전주시 완산구 공북로 83(태평동 6-8)
電話:なし
料理:コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん)
  • ウェンイコンナムルクッパプチプ(왱이콩나물국밥집)
住所:全羅北道全州市完山区東門キル88(慶園洞2街12-1)
住所:전라북도 전주시 완산구 동문길 88(경원동2가 12-1)
電話:063-287-6980
料理:コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん)
  • ヨンジンチプ(용진집)
住所:全羅北道全州市完山区挙馬山路14(三川洞1街623-5)
住所:전라북도 전주시 완산구 거마산로 14(삼천동1가 623-5)
電話:063-224-8164
料理:マッコリ(韓国式の濁酒)
  • 全一カボ(전일갑오)※旧・全一スーパー(전일슈퍼)
住所:全羅北道全州市完山区玄武2キル16(慶園洞3街13-12)
住所:전라북도 전주시 완산구 현무2길 16(경원동3가 13-12)
電話:063-284-0793
料理:カメク(店ビール)
  • チョンドゥンチプキムヨサネ(정든집김여사네)
住所:全羅北道全州市完山区新村4キル5(中華山洞2街779-1)
住所:전라북도 전주시 완산구 신촌4길 5(중화산동2가 779-1)
電話:063-237-1160
料理:トンテチゲ(スケトウダラ鍋)
  • 鍾路会館(종로회관)
住所:全羅北道全州市完山区殿洞聖堂キル98(殿洞60-2)
住所:전라북도 전주시 완산구 전동성당길 98(전동 60-2)
電話:063-288-4578
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • 豊南ピスンデ(풍남피순대)
住所:全羅北道全州市完山区豊南門2キル63(殿洞3街2-242)
住所:전라북도 전주시 완산구 풍남문2길 63(전동3가 2-242)
電話:063-282-4289
料理:スンデクッ(腸詰入りのスープ)
  • PNB豊年製菓殿洞店(PNB풍년제과 전동점)
住所:全羅北道全州市完山区八達路136(殿洞61-8)
住所:전라북도 전주시 완산구 팔달로 136(전동 61-8)
電話:063-285-6668
料理:ベーカリー、チョコパイ
  • 韓一館(한일관)
住所:全羅北道全州市完山区魚隠路48(中華山洞2街4-34)
住所:전라북도 전주시 완산구 어은로 48(중화산동2가 4-34)
電話:063-226-1569
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • ハスギョンカマソッピビムパプ(하숙영가마솥비빔밥)
住所:全羅北道全州市完山区全羅監営5キル19-3(中央洞3街78-1)
住所:전라북도 전주시 완산구 전라감영5길 19-3(중앙동3가 78-1)
電話:063-285-8288
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • 韓国館(한국관)
住所:全羅北道全州市徳津区麒麟大路425(金岩洞712-3)
住所:전라북도 전주시 덕진구 기린대로 425(금암동 712-3)
電話:063-272-9229
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • 韓国チプ(한국집)
住所:全羅北道全州市完山区御真キル119(殿洞2-1)
住所:전라북도 전주시 완산구 어진길 119(전동 2-1)
電話:063-284-2224
料理:ピビムパプ(ビビンバ)
  • 現代屋南部市場店(현대옥 남부시장점)
住所:全羅北道全州市完山区豊南門2キル63南部市場2棟74号(殿洞3街2-242)
住所:전라북도 전주시 완산구 풍남문2길 63 남부시장 2동 74호(전동3가 2-242)
電話:063-282-7214
料理:コンナムルクッパプ(大豆モヤシのスープごはん)
  • 弘道酒幕(홍도주막)
住所:全羅北道全州市完山区新封路7-1(孝子洞1街620-11)
住所:전라북도 전주시 완산구 신봉로 7-1(효자동1가 620-11)
電話:063-224-3894
料理:マッコリ(韓国式の濁酒)
  • 花心スンドゥブ全州店(화심순두부 전주점)
住所:全羅北道全州市完山区書院路339(中華山洞1街321-10)
住所:전라북도 전주시 완산구 서원로 339(중화산동1가 321-10)
電話:063-231-6500
料理:スンドゥブチゲ(柔らかい豆腐の鍋)

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2003年1月に初めて全州市を訪れた。3軒の専門店を巡ってピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)を食べ歩き、それまでに食べて来たピビムパプとは次元の違う料理であるとの結論を得た。具の豊富さもさることながら、素材ごとの味付けに気を配り、全体を巧みに調和させた極みの料理であるとして、その味を追求し鍛えあげた全州市に、素直に敬服したいとの感想を残している。
  • 2008月3月に、「韓国語ジャーナル第25号」(アルク)の取材で全州市を訪れ、「全州ビビンバはなぜおいしいのか?」という記事にまとめた[7]。この記事をきっかけとして、韓国専門の旅行会社「三進トラベルサービス」との縁が生まれ、2008年11月に第1回のグルメツアー「まんぷくツアー(全州ビビンバと韓食の魅力を探る旅)」が催行された。同社とのグルメツアーはその後も回を重ね、2023年3月までに21回開催されている。

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2023年10月13日閲覧
  2. 国際交流 全州(韓国) 、金沢市ウェブサイト、2023年10月12日閲覧
  3. 3.0 3.1 전주십(팔)미의유래 、全州市ウェブサイト(全州飲食)、2023年10月12日閲覧
  4. 朝鮮人과飲食物 、NAVERニュースライブラリー(朝鮮日報1936年8月27日記事)、2023年10月5日閲覧
  5. 전라북도무형문화재 향토술담그기-전주이강주 、全羅北道無形文化財連合会ウェブサイト、2023年10月13日閲覧
  6. 명인소개 、社団法人大韓民国食品名人協会ウェブサイト、2023年10月13日閲覧
  7. 八田靖史, 2008, 「全州ビビンバはなぜおいしいのか?」(『韓国語ジャーナル第25号』), アルク, P20-22

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト
  • 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)

関連項目