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'''タンスユク'''([[탕수육]])は、酢豚。
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'''トッポッキ'''([[떡볶이]])は、棒状に仕立てたうるち米の餅をコチュジャン(唐辛子味噌、[[고추장]])のタレで甘辛く炒めたもの。
  
[[ファイル:22030801.JPG|400px|thumb|タンスユク]]
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== 名称 ==
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トッ([[]])は餅。ポッキ(볶이)は炒める(ポクタ、[[볶다]])という動詞の名詞形。日本語ではトッポギ、トッポキとの表記も見られるが、本辞典においては「トッポッキ」を使用する。発音表記は[떡뽀끼]。
  
== 名称 ==
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*日本における「トッポギ」と「トック」
タンスユク([[탕수육]])は漢字で「糖水肉」と書いて、日本でいう酢豚のこと。中国語の「糖醋肉」を漢字として当てる場合が多く、その場合、韓国語の読み方では「タンチョユク(탕초육)」となるが、それとは関係なしにタンスユクと読ませる場合がほとんどである。また、「糖」の字は「엿 당」「엿 탕」とふたつの読みがあるが、国立国語院の見解では「엿 당」の俗音としている<ref>[https://www.korean.go.kr/front/onlineQna/onlineQnaView.do?mn_id=216&qna_seq=24680 온라인가나다 적극/탕수육] 、国立国語院ウェブサイト、2022年3月7日閲覧</ref>
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:近年の日本においてはトッポッキ用の棒状に切られた餅を「トッポギ」と称する場合があり、同様に[[トックッ(韓国式の雑煮/떡국)]]用の小判型にスライスした餅を「トック」と呼び分けることがあるが、この分類は日本独自のもので韓国とは異なる。韓国語では棒状の餅をカレトク([[가래떡]]、棒状の餅の意)、またはヒントク([[흰떡]]、白い餅の意)と称し、小判型にスライスしたものはトックットク(トックッの餅、떡국떡)のように呼ぶ。
。「糖醋肉」をタンスユクと呼んだ経緯は明らかでないが、中国語の「糖醋肉(탕추러우、tangcurou)」から「탕추」が「탕수」へと変化し、漢字語の「肉([[육]])」と結びついたのではないかとの説がある<ref>[https://www.pressian.com/pages/articles/137644 탕수육은 왜 탕수육일까?] 、프레시안、2022年3月2日閲覧</ref>。なお、タンスユクとの呼び名は1920~30年代から新聞、雑誌などに多く見られる(本項目「[[タンスユク(酢豚/탕수육)#歴史|歴史]]」参照)。日本での表記は「タンスユッ」とすることもある。本辞典においては「タンスユク」を使用する。発音表記は[탕수육]。
 
  
 
== 概要 ==
 
== 概要 ==
細切りの豚肉に片栗粉などの衣をつけて揚げ、別途作った甘酢あんをかけて作る。甘酢あんにはニンジン、タマネギ、ピーマン、キュウリ、キクラゲなどの具を加えることが多く、醤油、砂糖、酢などで味付けをする。韓国では中華料理店における代表的な大皿料理として人気が高く、[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]や、[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]といった麺料理をそれぞれが注文したうえで、タンスユクをシェアするのが定番である。
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うるち米で作った棒状の餅を、長ネギ、ニンジンなどの野菜とともに炒めて作る。具にはオデン(魚肉練り製品、[[오뎅]])、ゆで卵なども用いられる。コチュジャン、水飴などを混ぜた甘辛いソースで具材を炒め、全体にとろみがつくまで煮詰めるようにして仕上げる。韓国では屋台料理の定番として人気があるほか、粉食店(粉物料理を専門とする食堂、[[분식점]])で提供されることが多く、また専門店も多く営業している。老若男女に好まれるが、特に女性や子どもからの人気が高い料理である。主に間食、または軽めの食事として利用されるが、後述する[[シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)]]は食事としても充分なボリュームがある。
 
 
=== 豚肉 ===
 
:タンスユクには、ロース([[등심]])、モモ([[뒷다리살]])などを細切りにして使うことが多い。
 
 
 
=== 衣 ===
 
[[ファイル:22030802.JPG|thumb|300px|チャプサルタンスユク]]
 
:衣には片栗粉([[감자전분]])やトウモロコシのでんぷん([[옥수수전분]])を用いるが、近年はもち粉を使ってサクサクもっちりとした食感に仕上げることも多く、これをチャプサルタンスユク([[찹쌀탕수육]])と呼ぶ(本項目「[[タンスユク(酢豚/탕수육)#チャプサルタンスユク|チャプサルタンスユク]]」参照)。
 
 
 
=== 甘酢あん ===
 
:醤油、砂糖、酢などで味付けをした甘酢あんが多い。味付けにケチャップを用い、パイナップルなどのフルーツを加えた、広東式酢豚の「古老肉」風タンスユクもあり、1980年代頃に普及したが、現在の主流ではなく懐かしのテイストとして語られることが多い。ケチャップ味のものは、ケチャップタンスユク([[케찹탕수육]]、[[케첩탕수육]])などと呼ばれる。
 
 
 
=== つけダレ ===
 
:粉唐辛子を振った醤油を、つけダレにして食べることも多い。酢を足す場合もある。
 
  
 
== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
[[ファイル:19050301.JPG|thumb|300px|仁川駅前のチャイナタウン]]
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=== 文献上の記録 ===
1883年に[[仁川市の料理|仁川市]]で仁川港(インチョンハン、인천항)が開かれると、中国の山東省などから大勢の中国人が渡ってきた。現在の韓国で親しまれている主要な中華料理は、19世紀後半から20世紀初頭に伝えられ、時代とともにローカライズしていった。タンスユクの詳細な伝来時期やルーツは明らかになっていないが、山東料理の糖醋裡脊(タンツーリージー)が原型ではないかと推測されている。1920年代以降は新聞、雑誌などに記述が見られ、早くからウドン(ダールー麺、[[우동2|우동]])、[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め、잡채)]]、ヤンジャンピ(板春雨の冷菜、[[양장피2|양장피]])などと並んで、代表的な中華料理として親しまれた。1950年代以降は、[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]や[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]が中華料理の代表格として台頭していくが、タンスユクはこれらの麺料理と組み合わせて注文する大皿料理として定着する。1990年代にはタンスユク専門のフランチャイズ店が急増する大きなブームがあり、2000~10年代にはクォバロウ(豚肉の唐揚げ、[[꿔바로우]])や、チャプサルタンスユク(もち粉酢豚、[[찹쌀탕수육]])、キムピタン(キムチピザ酢豚、[[김피탕]])といった派生料理が登場するなど、途切れることなく話題を集め続けている。
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トッポッキに関する文献上の記録は19世紀後半から見られる。宮中で食べられていたトッポッキはもともと坡平尹氏(パピョンユンシ、파평윤씨)の家門に伝わる料理であり、17世紀頃には存在したとされる。
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;『飲食知味方』(1670年頃)の記述
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:張桂香(チャン・ゲヒャン、장계향)によって1670年頃に書かれた『飲食知味方(음식티미방)』にはトッポッキに関する直接の記述はないものの、餅を焼いて食べる料理法が紹介されている。<ref>황혜성(감수), 2000, 『다시 보고 배우는 음식디미방』, 궁중음식연구원, P97、140</ref>
  
=== 1920~30年代 ===
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;『是議全書』(1800年代後半)の記述
タンスユクは1920~30年代から、主要な中華料理として新聞、雑誌記事に記述が多く見られる。外食としての需要のみならず、レシピの紹介や講習会の案内もあり、家庭料理としての普及も進んでいたとみられる。
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:1800年代後半に書かれた『是議全書(시의전서)』(原著者不詳)にはトッポッキという項目があり、「他の蒸し煮料理と同じく、上等な餅をサトウダイコンのように切り、少し炒めて作る。蒸し煮料理の材料はすべて入るが、とろみはつけない」(原文1)と記述されている。現代語訳された原文は以下の通りである。
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:【原文1】
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:다른 찜과 같이 하되 잘 된 흰떡을 탕무처럼 썰어 잠깐 볶아서 한다. 찜 재료가 모두 들어가나 가루즙만 넣지 않는다.<ref>이효지 외(엮음), 2004,『시의전서』, 신광출판사, P179</ref>
  
==== 飲食店での普及 ====
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;『酒食方文』(1907年)の記述
:飲食店では、中国酒のパイカル(高粱酒、[[배갈]])と一緒に注文している例も多く、酒肴として人気があったと考えられる。
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:1907年(1847年の可能性もある)に書かれた『酒食方文(주식방문)』(原著者不詳)には、トッポッキ(表記は떡복기)という項目があり、以下のように調理法が記述されている。
;『別乾坤』(1927~32年)の記述
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:「醤油味のスープを美味しく作っておき、餅はやや分厚く、細長く切っておく。牛肉と豚肉は血が残らないように洗って細かく刻む。セリと緑豆モヤシを肉とともに味付けをし、全体を和えて炒める。さらに餅とともに炒め、醤油味のスープを注ぐ。シイタケ、イワタケ、卵焼き、干したユウガオ、干したカボチャを入れてもよい」(原文2)
*1927年1月1日発行号(第3号)<ref>[http://db.history.go.kr/id/ma_015_0030_0210 別乾坤變裝記者暗夜探査記(별건곤 제3호)] 、韓国史データベース、2022年3月3日閲覧</ref>
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:【原文2】(韓国伝統知識ポータルによる現代語訳)
::ルポ記事「変装記者暗夜探査記」内に出前料理としてタンスユクの記述がある。饅頭売りに変装した記者が夜の町を探査する内容で、記者は「色酒家(女性の接待する居酒屋、[[색주가]])」に中華料理の出前が届いた際、「女性主人が[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]])、タンスユク、テンプラ(豚肉の唐揚げ、[[덴뿌라1|덴뿌라]])の器を受け取っている間に」(カッコ内は訳注)、饅頭を売るふりをして中にどんな客がいるのかを確かめた。
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:장국을 맛있게 끓여 놓고 흰떡은 도톰하고 길쭉하게 썰어 놓는다. 소고기와 돼지고기는 붉은 핏물이 없도록 씻어서 부드럽게 다진다. 미나리와 숙주를 넣고 고기와 함께 양념하여 무친 다음 볶아 놓는다. 다시 떡과 함께 볶되 장국을 부어 볶고 표고, 석이, 달걀 부친 것, 박우거지, 호박고지도 넣으면 좋다.<ref>[http://www.koreantk.net/ktkp2014/kfood/kfood-view.view?foodCd=121358 떡볶이, 주식방문(1847년(1907년))] 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧</ref>
*1930年1月1日発行号(第25号)<ref>[http://db.history.go.kr/id/ma_015_0230_0300 大大風刺 社会成功 秘術(別乾坤 第25号)] 、韓国史データベース、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::記事「大大風刺 社会成功 秘術」内に、文人になるための皮肉的な秘訣として、「知り合いの文士にタンスユクとパイカル(高粱酒)をご馳走して新聞に『文人印象記』を書いてもらうよう懇願せよ」(カッコ内は訳注)との記述がある。
 
*1931年9月1日発行号(第43号)<ref>[http://db.history.go.kr/id/ma_015_0230_0300 내가 만일 싀집을 간다면 新式 家庭으로 갈까? 舊式 家庭으로 갈까?(별건곤 제43호)] 、韓国史データベース、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::記事「万が一、私が結婚するなら新式家庭にするか? 旧式家庭にするか?」内で、回答者のひとりが新式家庭を指し、「義理の両親が『ライスカレー』や『タンスユク』のようなものをよく召し上がるのが新式だろう(もちろんすべてがそうだという訳ではないが)」と述べている。
 
*1932年7月1日発行号(第53号)<ref>[http://db.history.go.kr/id/ma_015_0510_0180 連作滑稽小說, 시골아저씨의 서울구경 (별건곤 제53호)] 、韓国史データベース、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::記事「連作滑稽小説、田舎のおじさんソウル見物」内に、ソウルの中国料理店に入り、「タンスユク、[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]]、[[マンドゥ(餃子/만두)|マンドゥ(餃子)]]、そしてパイカル(高粱酒)」(カッコ内は訳注)を注文した記述がある。
 
  
;『東亜日報』(1932~34年)の記述
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;『婦人必知』(1915年)の記述
*1932年1月3日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1932010300209207013 한낮에 꿈꾸는 사람들(二)] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
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:憑虚閣李氏(ピンホガク イシ、빙허각 이씨)によって1915年に書かれた『婦人必知(부인필지)』にはトッポッキの調理法が以下のように紹介されている。
::戯曲「昼から夢見る者たち(二)」内に、登場人物のひとりが仕事を円滑に進める賄賂がわりとして、「タンスユク1皿に、ヤンジャンピ(板春雨の冷菜、[[양장피2|양장피]])、[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]]に、パイカル(高粱酒)でも準備しろ」(カッコ内は訳注)と語るセリフがある。
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:「白い餅を切り、茹で肉や牛の胃袋、ロース肉を草の葉のように薄切りする。油醤(油を混ぜた薬味醤油)を作り、ネギ、シイタケ、イワタケを細切りにし熱した鍋で炒め、熱が通ったら、餅とヤンニョム(薬味ダレ)を入れる。油醤を加えてさらに炒め、じっくり火を通した後、器によそい、松の実、塩、コショウなどすべてのものを多めに入れる」(原文3)
*1933年11月3日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1933110300209103015 무지개(40)] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
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:【原文3】
::小説「虹(40)」内に、登場人物のひとりが「食べ終えてソースだけ残ったタンスユクを私のほうにひっくり返し」たとの描写がある。
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:흰떡을 썰어 숙육과 양깃머리, 등심살을 풀잎같이 저민다. 유장을 맞추고, 파, 표고버섯, 석이버섯을 가늘게 썰어 달군 솥에 볶다가 익을 만하거든 떡과 양념을 넣는다. 유장을 더 넣어 다시 볶아 흠씬 익힌 후 퍼서 잣, 소금, 후춧가루 등 온갖 것을 많이 넣는다.<ref>이효지 외(엮음), 2010,『부인필지』, 교문사, P192~193</ref>
*1935年2月5日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1935020500209103005 三曲線(101)] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::小説「三曲線」内に、中華料理店に入った登場人物に対し、店員が「お酒にしましょうか。[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]]になさいますか? タンスユクは?」(カッコ内は訳注)と問いかける描写がある。
 
  
;『朝鮮日報』(1936年)の記述
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;『朝鮮料理製法』(1917年)の記述
*1932年5月25日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1932052500239207009 二等當選長篇小説 제 힘(27)] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
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:方信栄(パン・シニョン、방신영)によって1917年に初めて書かれ、その後も増補を重ねた『朝鮮料理製法(조선요리제법)』にはトッポッキという項目があり、3人分の調理法が詳細に紹介されている。具には薄切りにした牛肉、長ネギ、シイタケ、イワタケ、セリなどが入り、調味料には油、醤油、コショウが使われる。トッピングには錦糸卵と松の実を用いる。<ref>方信栄, 2011, 『朝鮮料理製法(悦話堂韓国近現代書籍復刻叢書)』, 悦話堂, P289~291</ref>
::小説「私の力」内に、中国料理店で登場人物のひとりが「タンスユクひとつ、テンプラ(豚肉の唐揚げ)ひとつ、麺をふたつ、それとビールと牛肉の缶詰をひとつ先に持って来て!」と注文する描写がある。
 
*1936年2月14日<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1936021400239204009 불르기쉬운 탕수육과잡채] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::さまざまな中国料理を紹介する記事。「注文しやすいタンスユクと[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]]) しかし中国料理は世界的 探求すると限りがない」(カッコ内は訳注)と見出しにあり、タンスユクや[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ]]を身近な中国料理と表現しつつ、中国の地方料理や調理法ごとの種類を紹介。
 
*1936年4月21日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1936042100239103003 市内中國料理價引上] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::記事「市内中国料理価引き上げ」は、原材料の高騰を理由に京城府内の中国料理店が4月21日から各料理を5~10銭値上げすることを伝えるもの。「『ウドン(ダールー麺、[[우동2|우동]])、タンスユク、『テンプラ(豚肉の唐揚げ)』などは大衆がよく食べる料理だけに、与える影響が相当に大きいだろうと思われる」(カッコ内は訳注)と分析した。
 
  
==== 家庭料理としての普及 ====
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;『朝鮮無双新式料理製法』(1924年)の記述
:1936年3月10日の「東亜日報」に、中国料理の講習会を告知する記事があり、「中国料理を私たちの家庭で習っておく必要については言うまでも」ないと表現している。また、同記事ではタンスユク、ヤンジャンピチャプチェ(板春雨の冷菜、[[양장피잡채]])、テンプラ(豚肉の唐揚げ、[[덴뿌라1|덴뿌라]])を例示したうえで、これらを出前で取るありふれた料理のように表現し、おそらく講習会で習えるだろう料理をより本格的なものとして比較する書き方をしている。裏を返すと、それだけこの時代にタンスユクなどの料理が身近な存在として根付いていたと推測できる。
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:李用基(イ・ヨンギ、이용기)によって1924年に書かれた『朝鮮無双新式料理製法(조선무쌍신식요리제법)』にはトッポッキという項目があり、牛肉、牛の胃袋、シイタケ、イワタケ、マツタケ、長ネギ、セリ、黄花菜(乾燥させたノカンゾウやヤブカンゾウの花、[[황화채]])を具とし、醤油、砂糖、コショウで味付けをし、糸唐辛子、錦糸卵、松の実をトッピングするレシピが紹介されている。また、アレンジとして緑豆モヤシや、エホバク(カボチャの未熟果、[[애호박]])、乾燥エホバクを具としてもよいとある。<ref>李用基, 1924, 『朝鮮無双新式料理製法』, 永昌書館, P255</ref>
  
;『朝鮮中央日報』(1935年)の記述
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;『李朝宮廷料理通考』(1957年)の記述
*1935年1月26日記事<ref>[https://nl.go.kr/newspaper/detail.do?content_id=CNTS-00093574832 中國料理맨드는 法 탕수육 ()] 、国立中央図書館大韓民国新聞アーカイブ、2022年3月3日閲覧</ref>
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:1957年に書かれた『李朝宮廷料理通考(이조궁정요리통고)』は、宮中にて最末期の厨房尚宮(厨房女官)として勤め、初代の朝鮮王朝宮中料理技能保有者(人間国宝に相当)と指定された韓煕順(ハン・ヒスン、한희순)が[[:Category:宮中料理の一覧|宮中料理]]の調理法をまとめた著書である(共著者に黄慧性、李惠卿)。本書には[[:Category:宮中料理の一覧|宮中料理]]としてトッポッキが紹介されており、その調理法が以下のように紹介されている。
::レシピ記事「中国料理の作り方」としてタンスユクを紹介。料理名はハングルと併記して、漢字で「唐酢肉」と書かれている。
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:「牛肉を細かく刻んで、醤油、砂糖、胡椒、すりゴマ、ゴマ油、ネギ、ニンニクと合わせる。 緑豆モヤシとセリはさっとゆがき、シイタケ、ニンジン、タマネギ、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)、オガリ(干し野菜、오가리)などは細切りにして、ゴマ油でそれぞれ別に炒めておく。餅(うるち米で作る棒状のもの)は4cmの長さに切って、再び4等分して熱湯でゆでる。薬味ダレに漬け込んだ牛肉を炒めたところ、茹でた餅を加えて混ぜ合わせる。餅に牛肉の味が染みたら、油で炒めておいた野菜を足し、塩加減を見て、汁が少なくなるように炒める。これを器に盛り、錦糸卵を飾る」(原文4)
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:【原文4】
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:소고기를 보드랍게 다저서 양념(간장, 설탕, 후추가루, 깨소금, 참기름, 파, 마늘)에 잰다. 숙주와 미나리는 살작 디쳐놓고 표고, 당근, 옥총, 애호박, 오가리 등은 채로 썰어서 참기름에 따로따로 볶아 놓는다. 흰떡은 4cm기리로 짜르고 다시 사절(四切)하여 끓는물에 삶는다. 소고기 잰것을 볶다가 흰떡 삶은것을 한데넣고 소고기와 함께 버무린다. 흰떡에 고기간이 완전히 배게되면 기름에 볶아놓은 채소들을 함께넣고 간을 맞추고 국물기를 적게하여 볶는다. 이것을 그릇에 담고 알지단을 채로 썰어서 뿌린다.<ref>[http://www.koreantk.net/ktkp2014/kfood/kfood-view.view?foodCd=121544 떡볶이, 이조궁정요리통고(1957년)] 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧</ref>
  
;『東亜日報』(1936年)の記述
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=== コチュジャントッポッキの誕生 ===
*1936年3月10日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1936031000239204003 기다리시든 중국료리강습회] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
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*コチュジャン味のトッポッキは朝鮮戦争後に作られ始めたとする説が主流である。[[ソウル市の料理|ソウル市]]の中区新堂洞(チュング シンダンドン、중구 신당동)に位置する「マボンニムハルモニトッポッキ(마복림할머니떡볶이)」は1953年創業を掲げており、コチュジャン味のトッポッキを普及させた象徴的な店舗として語られる。創業者であるマ・ボンニム(마복림)さんがコチュジャンとチャジャン(炒めた黒味噌、[[짜장]])を混ぜたソースを開発し、これで味付けをしたトッポッキがおおいに人気を呼んだ。90年代にはコチュジャンのCMにも出演し「고추장 비밀은 며느리도 몰라, 아무도 몰라(コチュジャンの秘密は嫁も知らない、誰も知らない)」というセリフで話題となっている。<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=VPetcAk-5qI/ 며느리도 몰라] 、YouTube、2014年3月28日閲覧</ref>
::料理講習会の告知記事「待ちに待った中国料理講習会」内で以下の記述がある。「中国料理を私たちの家庭で習っておく必要については言うまでもなく、ご存じの通りですが、技術もなく、レシピもわからず、お客様のおもてなしに便利で費用も掛からないからといって『タンスユク』『ヤンジャンピチャプチェ(板春雨の冷菜)』や『テンプラ(豚肉の唐揚げ)』の出前を取るお宅が多いようです。また、中国料理とはこのようなものが代表的なものだと思っている方もいらっしゃるようです。しかし、中国料理のようにメニュー数が多く、変化にも富み、美味しく、見栄えもする料理において、『タンスユク』『[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]]』のようなものは、もっとも価値の低い料理です。それ以上の料理は名前ですら、ご存じの方はどれだけになるでしょうか」
 
*1936年8月14日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1936081400209203001 여름철에 먹기조흔 중국요리몇가지] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::料理紹介記事「夏に食べやすい中国料理いろいろ」内に、料理名を漢字で「酢豚」と書いたレシピがある。
 
  
;『毎日申報』(1937年)の記述
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=== 韓食の世界化とトッポッキ ===
*1937年12月7日記事<ref>[https://nl.go.kr/newspaper/detail.do?content_id=CNTS-00094869289 집안에서할수 잇는 뎀뿌라·탕수육 간단한 중국료리 뎀뿌라] 、国立中央図書館大韓民国新聞アーカイブ、2022年3月3日閲覧</ref>
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*2008年に発足した李明博(イ・ミョンバク、이명박)政権は「韓食の世界化(한식세계화)」を掲げ、韓国料理のグローバルな普及を目指した。このとき世界の人々に受け入れられる韓国料理として[[プルコギ(牛焼肉/불고기)]][[キムパプ(海苔巻き/김밥)]]とともにトッポッキの名前もあがり、街中にトッポッキの専門店が増えていく一因となった。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2011年6月にソウルで1日5軒のトッポッキ専門店を取材した際、多くの店で店員が「韓食の世界化」の象徴としてトッポッキを語っている姿にたいへん驚いた。そのエピソードは著書『韓国料理には、ご用心!』でも触れられている。<ref>八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P203-204</ref>
::レシピ記事「家庭で作る簡単な中国料理」で、テンプラ(豚肉の唐揚げ)とタンスユクを取り上げている。先にテンプラのレシピを紹介したうえで、それを踏まえてタンスユクを「テンプラに汁を作ってかけたもの」と表現している。
 
 
 
==== 日中戦争の影響 ====
 
:1937年7月7日に起きた盧溝橋事件をきっかけに日中戦争が始まると、飲食店を経営した華僑の帰国が増え、休廃業が増加した。
 
 
 
;『東亜日報』(1937年)の記述
 
*1937年9月20日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1937092000209201019 横説堅説] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月3日閲覧</ref>
 
::コラム「横説堅説」内に、「日支事変(日中戦争)によって京城市内の支那料理店が八割以上廃、休業! "ウドン(ダールー麺、[[우동2|우동]])" "タンスユク" "[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]]" はおろか、あれほど身近で安価な[[ホットク(蜜入りのお焼き/호떡)]]さえも味わえなくなる」(カッコ内は訳注)との記述がある。
 
 
 
=== 1950年代 ===
 
現在の韓国で中華料理の代表格として知られる[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]は、1950~60年代に普及が進んだ。1950年代の新聞には、タンスユクと[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)|チャジャンミョン]]を今日のように定番の組み合わせとして扱う記述がすでに見られる。
 
 
 
;『京郷新聞』(1953、58年)の記述
 
*1953年3月9日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1953030900329202030 熱風(54)] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月4日閲覧</ref>
 
::小説「熱風(54)」内で、登場人物のふたりが中華料理店に入り、ひとりがあれこれ注文しようとすると、もうひとりが「料理の展覧会でもするんですか? チャジャンミョン1杯とタンスユク1皿でいいものを」と返す描写がある。
 
*1958年1月11日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1958011100329204006 모래알 고금(123)] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月4日閲覧</ref>
 
::童話「砂粒古今(123)」内に、登場人物が出された食事に不満をぶつけながら、「なんだこれは! チャジャンミョンとタンスユクを頼んでこい。急いで」と語る描写がある。
 
 
 
=== 1980~90年代 ===
 
:1980年代になると、ケチャップ味の甘酢あんにパイナップルなどのフルーツを加えた広東風のタンスユクが普及する<ref>[https://weekly.donga.com/List/3/all/11/87596/1 Gundown의 食遊記 황홀한 맛, 옛날 탕수육] 、週刊東亜(2009年5月20日記事)、2022年3月5日閲覧</ref><ref>[http://www.foodtoday.or.kr/news/article.html?no=166690 [레트로 드라마로 보는 식생활의 변화] (7)전원일기-탕수육] 、FOOD TODAY(2021年6月9日記事)、2022年3月5日閲覧</ref>。この時期からタンスユクを専門とする飲食店が登場し、1996年にはフランチャイズ店が全国に乱立する一大ブームとなったが、出店数の飽和や価格競争により、翌1997年には急速に衰退した。
 
 
 
;『毎日経済』(1996、97年)の記述
 
*1996年7月25日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1996072500099120006 탕수육전문점 인기부업 등장] 、NAVERニュースライブラリー)、2022年3月5日閲覧</ref>
 
::「タンスユク専門店 人気の副業として登場」との見出しで、フランチャイズ店の急速な増加を伝えている。同記事では、コンサルティング会社からの情報として、「タンスユクの専門店が全国に1000余軒あり、チェーン店形態で運営する企業数だけでも30社を超える」としている。代表的な店舗としては「ユギョン即席タンスユク専門店(육영 즉석탕수육 전문점)」「チョンバクサネ タンスユク(정박사네 탕수육)」「ティンホア タンスユク(띵호아 탕수육)」「チャウチャウ(챠우챠우)」の名前があげられている。さらに、タンスユクが人気を集める理由として、従来の「中華料理店で1皿1万2000~5000ウォンしていたものを、量を大幅に増やしたうえで価格は5~6000ウォンと安価」であり、出店に際しても「10坪程度の小規模な店舗で、3000万ウォン前後と少ない初期投資で始められる」からと分析している。
 
*1997年5月15日記事<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1997051500099117002 즉석탕수육전문점 폐업 속출] 、NAVERニュースライブラリー、2022年3月5日閲覧</ref>
 
::「即席タンスユク専門店廃業続出」との見出しで、閉店や業態変更、メニューの転換が増えていることを伝えている。その理由を、「競争が激化し、価格破壊の流れが強まったことで収益性に合わなくなったこと」とし、「10余社あったブランドの中で、なんとか命脈を保っているのは2~3社に過ぎ」ないとあり、前年からのブームが急速に衰退したことがわかる。一部の企業はフライドチキンの店に転換したともある。
 
 
 
=== 2010年代 ===
 
:2000年代後半から2010年代にかけて、中国・東北地域の料理であるクォバロウ(豚肉の唐揚げ、[[꿔바로우]])や、チャプサルタンスユク(もち粉酢豚、[[찹쌀탕수육]])が、タンスユクの新たなスタイルとして人気を集めていった(本項目「[[タンスユク(酢豚/탕수육)#種類|種類]]」参照)。2013年頃からは、甘酢あんをかけて食べるか、つけて食べるかの話題が盛り上がり、食にまつわる代表的な派閥論争として注目を集めた(本項目「[[タンスユク(酢豚/탕수육)#プモク派とチンモク派の論争|プモク派とチンモク派の論争]]」参照)。
 
  
 
== 種類 ==
 
== 種類 ==
タンスユクには次のような種類がある。
+
トッポッキには次のような種類がある。
 
 
=== 類似の中国料理 ===
 
[[ファイル:22030803.JPG|thumb|300px|クォバロウ]]
 
*クォバロウ
 
:クォバロウ([[꿔바로우]])は、豚肉の唐揚げ。中国・東北地域の料理である「鍋包肉(锅包肉)」が韓国で定着したものである。クォバオロウ([[궈바오러우]])と呼ぶこともある。クォバロウ、クォバオロウともに中国での呼び名をハングルで表記したものだが、「鍋包肉」という漢字を韓国式に読んでクァポユク(과포육)と表記する場合もある。タンスユクのような細切りではなく、平たく薄切りにした豚肉に片栗粉(ジャガイモのでんぷん)で衣をつけて揚げ、甘酢ソースを絡めて味わう。もちもちとした食感がチャプサルタンスユクと似るため、両者が混用されることもままある。韓国では[[ヤンコチ(羊肉の串焼き/양꼬치)]]とともに2010年代前半から人気が高まり、延辺料理(中国・延辺朝鮮自治州の料理)の専門店や中華料理店での提供が増えた。
 
  
=== 派生形 ===
+
=== 具のバリエーション ===
*テンプラ
+
*[[ラポッキ(ラーメン入り餅炒め/라볶이)]]
:テンプラ([[덴뿌라1|덴뿌라]])は、豚肉の唐揚げ。コギティギム([[고기튀김]])とも呼ぶ。タンスユクから甘酢あんを抜いたもので、日本語の「天ぷら」が語源と見られる。1920~30年代にはタンスユクや、[[チャプチェ(春雨炒め/잡채)|チャプチェ(肉炒め)]]とともに中華料理店の主力料理であったが、現在はほぼメニューから消え、一部の老舗店に残るのみである。
+
:インスタントラーメンをトッピングしたトッポッキ。間食というよりも、食事に近いボリューム感がある。
*チャプサルタンスユク
+
*チーズトッポッキ(치즈떡볶이)
:チャプサルタンスユク([[찹쌀탕수육]])は、もち粉を衣にした酢豚。チャプサル([[찹쌀]])はもち米を意味する。もち粉だけを用いる場合と、もち粉に片栗粉などのでんぷんを加える場合がある。揚げたてのサクサクとした衣に、もっちりとした食感が加わるのが特徴である。
+
:スライスチーズやシュレッドチーズをトッピングしたトッポッキ。辛さがマイルドになり、濃厚なコクも加わる。
*サチョンタンスユク
+
*ヘムルトッチム([[해물떡찜]]
:サチョンタンスユク([[사천탕수육]])は、辛口の酢豚。サチョン([[사천]])は漢字で「四川」と書き、激辛料理で有名な中国の四川省を意味するが、四川風の酢豚ではなく、辛さのイメージとして使用される。辛味には激辛種の青陽唐辛子([[청양고추]])や、唐辛子油([[고추기름]])、豆板醤([[두반장]])などを用いる。
+
:蒸し煮仕立ての海鮮トッポッキ。エビや、ムール貝などを具とした豪華なトッポッキで鍋料理のように提供される。韓国の飲食店「ヘムルトッチム0410(해물떡찜0410)」が火付け役となって2008年に大流行した。
*キムピタン
 
:キムピタン([[김피탕]])は、キムチとチーズをトッピングしたピザ風の酢豚。キムチ([[김치]])、ピザ([[피자]])、タンスユク([[탕수육]])の頭文字を取ったもので、ピタン([[피탕]])とも呼ぶ。[[忠清南道の料理|忠清南道]][[公州市の料理|公州市]]のローカルグルメとして知られ、近隣の[[大田市の料理|大田市]]や[[忠清南道の料理|忠清南道]]の各地域にも波及している。2020年12月19日に、BTSのウェブバラエティ番組「Run BTS! 2020 - EP.122」<ref>[https://www.vlive.tv/video/229649 Run BTS! 2020 - EP.122] 、VLIVE、2022年3月6日閲覧</ref>でキムピタンが取り上げられて話題になった。
 
  
=== 豚肉以外 ===
+
=== 味付けのバリエーション ===
*ソゴギタンスユク
+
*カンジャントッポッキ([[간장떡볶이]]
:ソゴギタンスユク([[소고기탕수육]])は、酢豚を牛肉で作ったもの。ソゴギ([[소고기]])は牛肉を意味する。
+
:醤油味のトッポッキ。牛肉を具として用いることが多い。かつて宮中でも作られたとの逸話から[[クンジュントッポッキ(醤油味の餅炒め/궁중떡볶이)]]との呼び名もある。2003年に韓国で放映されたドラマ『宮廷女官チャングムの誓い(대장금)』に登場して話題となった。劇中(第14話)では主人公のチャングムが牛肉や干し野菜を具としたトッポッキを作り、梨で加えて甘味を出した醤油を用いて味付けをしている。韓国では『宮廷女官チャングムの誓い』によってカンジャントッポッキの知名度が向上し、一時期ブームにもなった。なお、カンジャントッポッキに対して、一般的なコチュジャン味のトッポッキをコチュジャントッポッキ(고추장떡볶이)と呼ぶこともある。
*チキンタンスユク
+
*カルボナーラトッポッキ(까르보나라 떡볶이)
:チキンタンスユク([[치킨탕수육]])は、酢豚をチキン([[치킨]])=鶏肉で作ったもの。
+
:カルボナーラ風に仕立てたトッポッキ。韓国の飲食店「SCHOOL FOOD」の人気メニューとしても有名。
*タンス
+
*クリームソーストッポッキ(크림소스 떡볶이)
:豚肉以外の食材に衣をつけて揚げ、甘酢ソースをかけたものを「〇〇タンス」と呼ぶ。白身魚を用いたセンソンタンス([[생선탕수]])や、シイタケを用いたピョゴボソッタンス([[표고버섯탕수]])、豆腐を用いた([[두부탕수]])などがある。
+
:クリームソースに絡めたトッポッキ。日本の食品メーカー「モランボン」は2012年7月15日に2種類のチーズとクリームソースを用いた「おうち韓食 チーズクリームトッポギ」を発売した。
 +
*キルムトッポッキ([[기름떡볶이]]
 +
:直訳をすると「油トッポッキ」。油に絡めながら鉄板で炒めて作るトッポッキを指す。[[ソウル市の料理|ソウル市]]の通仁市場名物として有名。
 +
*カレートッポッキ(카레떡볶이)
 +
:カレールーを絡めたトッポッキ。
 +
*チャジャントッポッキ(짜장떡볶이)
 +
:[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]風に黒味噌を絡めたトッポッキ。
  
== 日本における定着 ==
+
=== 提供方法のバリエーション ===
東京では1980~90年代には韓国式中華料理店がオープンしており、これらの店でタンスユクを提供していたとみられる。
+
*チュクソクトッポッキ([[즉석떡볶이]])
 +
:直訳をすると「即席トッポッキ」。乾麺、餃子、ソーセージなど多様な具材を入れて鍋料理のように調理する。一般的なトッポッキが調理済のものを販売するのに対し、チュクソクトッポッキは客の注文ごとに、テーブル上に置いたコンロに鍋を置いて即席で調理することから名付けられた。このスタイルは[[ソウル市の料理|ソウル市]]の新堂洞(シンダンドン、신당동)が特に有名である。新堂洞には同業の店が林立するトッポッキタウンが形成されており、[[シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)]]の名前は全国に広く知られている。2008年以降にブームとなって専門店が増加した。
 +
*クンムルトッポッキ(국물떡볶이)
 +
:直訳をすると「スープトッポッキ」。甘辛のソースに汁気を持たせたもので、餅をはじめとした具だけでなくスープも味わうことを目的としている。このスープに[[ティギム(天ぷら/튀김)]]や[[キムパプ(海苔巻き/김밥)]]を浸して食べるのも定番。
 +
*トッコチ(떡꼬치)
 +
:串に刺した餅にトッポッキのソースをかけたもの。食べやすい新種の屋台料理として登場。
  
 
== エピソード ==
 
== エピソード ==
=== プモク派とチンモク派の論争 ===
+
*ドラマ『冬のソナタ』の第2話にトッポッキが登場する。ヒロインのユジン(チェ・ジウ)が主人公であるチュンサン(ペ・ヨンジュン)に好きな食べ物を問いかけるシーンがあり、チュンサンはトッポッキと答えた。また、焼却場のシーンでは、ユジンがサンヒョク(パク・ヨンハ)とトッポッキを作って食べた話をチュンサンに語っている。一連のシーンは韓流ファンらにトッポッキという料理を印象付けた。
[[ファイル:22030804.JPG|thumb|300px|甘酢あんを別盛りにしたタンスユク]]
+
*韓国ではダッフルコートのことをトッポッキコート(떡볶이 코트)と呼ぶ。ボタンの形がトッポッキの餅に似ていることから。
:タンスユクの甘酢あんを、揚げた豚肉にかけて食べるか、つけて食べるか(つけダレにするか)の論争。プモク([[부먹]])は、「プオ モッキ(かけ食べ、부어 먹기)」の略で、チンモク([[찍먹]])は、「チゴ モッキ(つけ食べ、찍어 먹기)」の略である。タンスユクの甘酢あんは本来、全体にかけられて提供されるが、出前の場合、衣がしなしなにならないよう別の器で届けられることが多く、それをどう食べるかで派閥が生まれた。現在では食にまつわる代表的な派閥論争として有名になり、テレビのバラエティ番組や、韓国ドラマのセリフとしてもしばしば登場する。インターネット上には、自身の立場を明らかにした著名人をプモク派とチンモク派に分けてまとめたページもある<ref>[https://namu.wiki/w/%EB%B6%80%EB%A8%B9%20vs%20%EC%B0%8D%EB%A8%B9/%EB%AA%A9%EB%A1%9D 부먹 vs 찍먹/목록] 、나무위키、2022年3月6日閲覧</ref>。
 
*歴史
 
::この論争がいつ頃からあるかは明らかになっていないが、2013年3月26日に、インターネット上の掲示板「PGR21」にて、「タンスユクで見る朝鮮時代の朋党の理解(탕수육으로 본 조선시대 붕당의 이해)」という投稿がなされたことが盛り上がりの大きなきっかけとなったとされる。この投稿は、すでにあったプモク派とチンモク派の論争を、朝鮮時代の政治的な派閥の対立になぞらえてパロディ的な物語にしたもので、これが話題となって広範囲に拡散された<ref>[https://pgr21.com/freedom/42862
 
탕수육으로 본 조선시대 붕당의 이해] 、PGR21、2022年3月6日閲覧</ref>。
 
  
 
== 地域 ==
 
== 地域 ==
*忠清南道公州市
+
*ソウル市中区新堂洞(トッポッキタウン)
:[[忠清南道の料理|忠清南道]][[公州市の料理|公州市]]では、タンスユクにキムチとチーズをトッピングしたキムピタン(ピザ風酢豚、[[김피탕]])がローカルフードとして親しまれている。
+
:前述の「マボンニムハルモニトッポッキ(마복림할머니떡볶이)」をはじめ、チュクソクトッポッキ(鍋料理風の餅炒め、[[즉석떡볶이]])の専門店が集まっている。
 +
*済州特別自治道西帰浦市
 +
:[[済州道の料理|済州道]][[西帰浦市の料理|西帰浦市]]ではモダッチギ(屋台料理の盛り合わせ、[[모닥치기]])と呼ばれる屋台料理の盛り合わせが地元のB級グルメとして定着している。モダッチギとは済州道の方言で、「みんなで力を合わせる」(모두 합치기)との意味がある。大皿に[[キムパプ(海苔巻き/김밥)]]、[[キムチジョン(キムチ入りのチヂミ/김치전)]]、[[マンドゥ(餃子/만두)]]、ゆで卵、オデンの魚肉練り製品などを盛り付け、上からトッポッキをかけ回して作る。[[西帰浦市の料理|西帰浦市]]の西帰浦毎日オルレ市場(ソグィポ メイル オルレシジャン、서귀포 매일 올레시장)内にある「セロナ粉食(새로나분식)」が元祖として知られ、店では「もともとは客からの[[キムチジョン(キムチ入りのチヂミ/김치전)|キムチジョン]]にトッポッキをかけて欲しいとのリクエストに応えた形で生まれ、それが段々とエスカレートして現在のような形に至った」と説明している(八田靖史の取材記録より、2011年4月1日)。それが他店にも広まって現在は[[西帰浦市の料理|西帰浦市]]の名物として定着している。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
153行目: 105行目:
 
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
 
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
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*[https://itunes.apple.com/us/app/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E9%A3%9F%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%BE%9E%E5%85%B8/id1220010846?l=ja&ls=1&mt=8 韓国語食の大辞典アプリ版](八田靖史制作の韓国料理専門辞典)
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
{{DEFAULTSORT:たんすゆく}}
+
{{DEFAULTSORT:とつほつき}}
 +
*[[キムパプ(海苔巻き/김밥)]]
 +
*[[キムチジョン(キムチ入りのチヂミ/김치전)]]
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*[[クンジュントッポッキ(醤油味の餅炒め/궁중떡볶이)]]
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*[[トックッ(韓国式の雑煮/떡국)]]
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*[[ラポッキ(ラーメン入り餅炒め/라볶이)]]
 
*[[マンドゥ(餃子/만두)]]
 
*[[マンドゥ(餃子/만두)]]
*[[ヤンコチ(羊肉の串焼き/양꼬치)]]
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*[[プルコギ(牛焼肉/불고기)]]
 +
*[[シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)]]
 
*[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]
 
*[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]
*[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]
+
*[[ティギム(天ぷら/튀김)]]
*[[ホットク(蜜入りのお焼き/호떡)]]
 
*[[大田市の料理]]
 
*[[忠清南道の料理]]
 
*[[公州市の料理]]
 
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
[[Category:肉・卵料理の一覧]]
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[[Category:餅・菓子・甘味・軽食の一覧]]
[[Category:豚肉料理の一覧]]
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[[Category:宮中料理の一覧]]
[[Category:外国料理の一覧]]
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[[Category:屋台料理の一覧]]
[[Category:中国料理の一覧]]
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[[Category:ソウル市の料理]]
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[[Category:済州道の料理]]

2022年3月8日 (火) 21:37時点における版

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トッポッキ떡볶이)は、棒状に仕立てたうるち米の餅をコチュジャン(唐辛子味噌、고추장)のタレで甘辛く炒めたもの。

名称

トッ()は餅。ポッキ(볶이)は炒める(ポクタ、볶다)という動詞の名詞形。日本語ではトッポギ、トッポキとの表記も見られるが、本辞典においては「トッポッキ」を使用する。発音表記は[떡뽀끼]。

  • 日本における「トッポギ」と「トック」
近年の日本においてはトッポッキ用の棒状に切られた餅を「トッポギ」と称する場合があり、同様にトックッ(韓国式の雑煮/떡국)用の小判型にスライスした餅を「トック」と呼び分けることがあるが、この分類は日本独自のもので韓国とは異なる。韓国語では棒状の餅をカレトク(가래떡、棒状の餅の意)、またはヒントク(흰떡、白い餅の意)と称し、小判型にスライスしたものはトックットク(トックッの餅、떡국떡)のように呼ぶ。

概要

うるち米で作った棒状の餅を、長ネギ、ニンジンなどの野菜とともに炒めて作る。具にはオデン(魚肉練り製品、오뎅)、ゆで卵なども用いられる。コチュジャン、水飴などを混ぜた甘辛いソースで具材を炒め、全体にとろみがつくまで煮詰めるようにして仕上げる。韓国では屋台料理の定番として人気があるほか、粉食店(粉物料理を専門とする食堂、분식점)で提供されることが多く、また専門店も多く営業している。老若男女に好まれるが、特に女性や子どもからの人気が高い料理である。主に間食、または軽めの食事として利用されるが、後述するシンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)は食事としても充分なボリュームがある。

歴史

文献上の記録

トッポッキに関する文献上の記録は19世紀後半から見られる。宮中で食べられていたトッポッキはもともと坡平尹氏(パピョンユンシ、파평윤씨)の家門に伝わる料理であり、17世紀頃には存在したとされる。

『飲食知味方』(1670年頃)の記述
張桂香(チャン・ゲヒャン、장계향)によって1670年頃に書かれた『飲食知味方(음식티미방)』にはトッポッキに関する直接の記述はないものの、餅を焼いて食べる料理法が紹介されている。[1]
『是議全書』(1800年代後半)の記述
1800年代後半に書かれた『是議全書(시의전서)』(原著者不詳)にはトッポッキという項目があり、「他の蒸し煮料理と同じく、上等な餅をサトウダイコンのように切り、少し炒めて作る。蒸し煮料理の材料はすべて入るが、とろみはつけない」(原文1)と記述されている。現代語訳された原文は以下の通りである。
【原文1】
다른 찜과 같이 하되 잘 된 흰떡을 탕무처럼 썰어 잠깐 볶아서 한다. 찜 재료가 모두 들어가나 가루즙만 넣지 않는다.[2]
『酒食方文』(1907年)の記述
1907年(1847年の可能性もある)に書かれた『酒食方文(주식방문)』(原著者不詳)には、トッポッキ(表記は떡복기)という項目があり、以下のように調理法が記述されている。
「醤油味のスープを美味しく作っておき、餅はやや分厚く、細長く切っておく。牛肉と豚肉は血が残らないように洗って細かく刻む。セリと緑豆モヤシを肉とともに味付けをし、全体を和えて炒める。さらに餅とともに炒め、醤油味のスープを注ぐ。シイタケ、イワタケ、卵焼き、干したユウガオ、干したカボチャを入れてもよい」(原文2)
【原文2】(韓国伝統知識ポータルによる現代語訳)
장국을 맛있게 끓여 놓고 흰떡은 도톰하고 길쭉하게 썰어 놓는다. 소고기와 돼지고기는 붉은 핏물이 없도록 씻어서 부드럽게 다진다. 미나리와 숙주를 넣고 고기와 함께 양념하여 무친 다음 볶아 놓는다. 다시 떡과 함께 볶되 장국을 부어 볶고 표고, 석이, 달걀 부친 것, 박우거지, 호박고지도 넣으면 좋다.[3]
『婦人必知』(1915年)の記述
憑虚閣李氏(ピンホガク イシ、빙허각 이씨)によって1915年に書かれた『婦人必知(부인필지)』にはトッポッキの調理法が以下のように紹介されている。
「白い餅を切り、茹で肉や牛の胃袋、ロース肉を草の葉のように薄切りする。油醤(油を混ぜた薬味醤油)を作り、ネギ、シイタケ、イワタケを細切りにし熱した鍋で炒め、熱が通ったら、餅とヤンニョム(薬味ダレ)を入れる。油醤を加えてさらに炒め、じっくり火を通した後、器によそい、松の実、塩、コショウなどすべてのものを多めに入れる」(原文3)
【原文3】
흰떡을 썰어 숙육과 양깃머리, 등심살을 풀잎같이 저민다. 유장을 맞추고, 파, 표고버섯, 석이버섯을 가늘게 썰어 달군 솥에 볶다가 익을 만하거든 떡과 양념을 넣는다. 유장을 더 넣어 다시 볶아 흠씬 익힌 후 퍼서 잣, 소금, 후춧가루 등 온갖 것을 많이 넣는다.[4]
『朝鮮料理製法』(1917年)の記述
方信栄(パン・シニョン、방신영)によって1917年に初めて書かれ、その後も増補を重ねた『朝鮮料理製法(조선요리제법)』にはトッポッキという項目があり、3人分の調理法が詳細に紹介されている。具には薄切りにした牛肉、長ネギ、シイタケ、イワタケ、セリなどが入り、調味料には油、醤油、コショウが使われる。トッピングには錦糸卵と松の実を用いる。[5]
『朝鮮無双新式料理製法』(1924年)の記述
李用基(イ・ヨンギ、이용기)によって1924年に書かれた『朝鮮無双新式料理製法(조선무쌍신식요리제법)』にはトッポッキという項目があり、牛肉、牛の胃袋、シイタケ、イワタケ、マツタケ、長ネギ、セリ、黄花菜(乾燥させたノカンゾウやヤブカンゾウの花、황화채)を具とし、醤油、砂糖、コショウで味付けをし、糸唐辛子、錦糸卵、松の実をトッピングするレシピが紹介されている。また、アレンジとして緑豆モヤシや、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)、乾燥エホバクを具としてもよいとある。[6]
『李朝宮廷料理通考』(1957年)の記述
1957年に書かれた『李朝宮廷料理通考(이조궁정요리통고)』は、宮中にて最末期の厨房尚宮(厨房女官)として勤め、初代の朝鮮王朝宮中料理技能保有者(人間国宝に相当)と指定された韓煕順(ハン・ヒスン、한희순)が宮中料理の調理法をまとめた著書である(共著者に黄慧性、李惠卿)。本書には宮中料理としてトッポッキが紹介されており、その調理法が以下のように紹介されている。
「牛肉を細かく刻んで、醤油、砂糖、胡椒、すりゴマ、ゴマ油、ネギ、ニンニクと合わせる。 緑豆モヤシとセリはさっとゆがき、シイタケ、ニンジン、タマネギ、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)、オガリ(干し野菜、오가리)などは細切りにして、ゴマ油でそれぞれ別に炒めておく。餅(うるち米で作る棒状のもの)は4cmの長さに切って、再び4等分して熱湯でゆでる。薬味ダレに漬け込んだ牛肉を炒めたところ、茹でた餅を加えて混ぜ合わせる。餅に牛肉の味が染みたら、油で炒めておいた野菜を足し、塩加減を見て、汁が少なくなるように炒める。これを器に盛り、錦糸卵を飾る」(原文4)
【原文4】
소고기를 보드랍게 다저서 양념(간장, 설탕, 후추가루, 깨소금, 참기름, 파, 마늘)에 잰다. 숙주와 미나리는 살작 디쳐놓고 표고, 당근, 옥총, 애호박, 오가리 등은 채로 썰어서 참기름에 따로따로 볶아 놓는다. 흰떡은 4cm기리로 짜르고 다시 사절(四切)하여 끓는물에 삶는다. 소고기 잰것을 볶다가 흰떡 삶은것을 한데넣고 소고기와 함께 버무린다. 흰떡에 고기간이 완전히 배게되면 기름에 볶아놓은 채소들을 함께넣고 간을 맞추고 국물기를 적게하여 볶는다. 이것을 그릇에 담고 알지단을 채로 썰어서 뿌린다.[7]

コチュジャントッポッキの誕生

  • コチュジャン味のトッポッキは朝鮮戦争後に作られ始めたとする説が主流である。ソウル市の中区新堂洞(チュング シンダンドン、중구 신당동)に位置する「マボンニムハルモニトッポッキ(마복림할머니떡볶이)」は1953年創業を掲げており、コチュジャン味のトッポッキを普及させた象徴的な店舗として語られる。創業者であるマ・ボンニム(마복림)さんがコチュジャンとチャジャン(炒めた黒味噌、짜장)を混ぜたソースを開発し、これで味付けをしたトッポッキがおおいに人気を呼んだ。90年代にはコチュジャンのCMにも出演し「고추장 비밀은 며느리도 몰라, 아무도 몰라(コチュジャンの秘密は嫁も知らない、誰も知らない)」というセリフで話題となっている。[8]

韓食の世界化とトッポッキ

  • 2008年に発足した李明博(イ・ミョンバク、이명박)政権は「韓食の世界化(한식세계화)」を掲げ、韓国料理のグローバルな普及を目指した。このとき世界の人々に受け入れられる韓国料理としてプルコギ(牛焼肉/불고기)キムパプ(海苔巻き/김밥)とともにトッポッキの名前もあがり、街中にトッポッキの専門店が増えていく一因となった。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2011年6月にソウルで1日5軒のトッポッキ専門店を取材した際、多くの店で店員が「韓食の世界化」の象徴としてトッポッキを語っている姿にたいへん驚いた。そのエピソードは著書『韓国料理には、ご用心!』でも触れられている。[9]

種類

トッポッキには次のような種類がある。

具のバリエーション

インスタントラーメンをトッピングしたトッポッキ。間食というよりも、食事に近いボリューム感がある。
  • チーズトッポッキ(치즈떡볶이)
スライスチーズやシュレッドチーズをトッピングしたトッポッキ。辛さがマイルドになり、濃厚なコクも加わる。
蒸し煮仕立ての海鮮トッポッキ。エビや、ムール貝などを具とした豪華なトッポッキで鍋料理のように提供される。韓国の飲食店「ヘムルトッチム0410(해물떡찜0410)」が火付け役となって2008年に大流行した。

味付けのバリエーション

醤油味のトッポッキ。牛肉を具として用いることが多い。かつて宮中でも作られたとの逸話からクンジュントッポッキ(醤油味の餅炒め/궁중떡볶이)との呼び名もある。2003年に韓国で放映されたドラマ『宮廷女官チャングムの誓い(대장금)』に登場して話題となった。劇中(第14話)では主人公のチャングムが牛肉や干し野菜を具としたトッポッキを作り、梨で加えて甘味を出した醤油を用いて味付けをしている。韓国では『宮廷女官チャングムの誓い』によってカンジャントッポッキの知名度が向上し、一時期ブームにもなった。なお、カンジャントッポッキに対して、一般的なコチュジャン味のトッポッキをコチュジャントッポッキ(고추장떡볶이)と呼ぶこともある。
  • カルボナーラトッポッキ(까르보나라 떡볶이)
カルボナーラ風に仕立てたトッポッキ。韓国の飲食店「SCHOOL FOOD」の人気メニューとしても有名。
  • クリームソーストッポッキ(크림소스 떡볶이)
クリームソースに絡めたトッポッキ。日本の食品メーカー「モランボン」は2012年7月15日に2種類のチーズとクリームソースを用いた「おうち韓食 チーズクリームトッポギ」を発売した。
直訳をすると「油トッポッキ」。油に絡めながら鉄板で炒めて作るトッポッキを指す。ソウル市の通仁市場名物として有名。
  • カレートッポッキ(카레떡볶이)
カレールーを絡めたトッポッキ。
  • チャジャントッポッキ(짜장떡볶이)
チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)風に黒味噌を絡めたトッポッキ。

提供方法のバリエーション

直訳をすると「即席トッポッキ」。乾麺、餃子、ソーセージなど多様な具材を入れて鍋料理のように調理する。一般的なトッポッキが調理済のものを販売するのに対し、チュクソクトッポッキは客の注文ごとに、テーブル上に置いたコンロに鍋を置いて即席で調理することから名付けられた。このスタイルはソウル市の新堂洞(シンダンドン、신당동)が特に有名である。新堂洞には同業の店が林立するトッポッキタウンが形成されており、シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)の名前は全国に広く知られている。2008年以降にブームとなって専門店が増加した。
  • クンムルトッポッキ(국물떡볶이)
直訳をすると「スープトッポッキ」。甘辛のソースに汁気を持たせたもので、餅をはじめとした具だけでなくスープも味わうことを目的としている。このスープにティギム(天ぷら/튀김)キムパプ(海苔巻き/김밥)を浸して食べるのも定番。
  • トッコチ(떡꼬치)
串に刺した餅にトッポッキのソースをかけたもの。食べやすい新種の屋台料理として登場。

エピソード

  • ドラマ『冬のソナタ』の第2話にトッポッキが登場する。ヒロインのユジン(チェ・ジウ)が主人公であるチュンサン(ペ・ヨンジュン)に好きな食べ物を問いかけるシーンがあり、チュンサンはトッポッキと答えた。また、焼却場のシーンでは、ユジンがサンヒョク(パク・ヨンハ)とトッポッキを作って食べた話をチュンサンに語っている。一連のシーンは韓流ファンらにトッポッキという料理を印象付けた。
  • 韓国ではダッフルコートのことをトッポッキコート(떡볶이 코트)と呼ぶ。ボタンの形がトッポッキの餅に似ていることから。

地域

  • ソウル市中区新堂洞(トッポッキタウン)
前述の「マボンニムハルモニトッポッキ(마복림할머니떡볶이)」をはじめ、チュクソクトッポッキ(鍋料理風の餅炒め、즉석떡볶이)の専門店が集まっている。
  • 済州特別自治道西帰浦市
済州道西帰浦市ではモダッチギ(屋台料理の盛り合わせ、모닥치기)と呼ばれる屋台料理の盛り合わせが地元のB級グルメとして定着している。モダッチギとは済州道の方言で、「みんなで力を合わせる」(모두 합치기)との意味がある。大皿にキムパプ(海苔巻き/김밥)キムチジョン(キムチ入りのチヂミ/김치전)マンドゥ(餃子/만두)、ゆで卵、オデンの魚肉練り製品などを盛り付け、上からトッポッキをかけ回して作る。西帰浦市の西帰浦毎日オルレ市場(ソグィポ メイル オルレシジャン、서귀포 매일 올레시장)内にある「セロナ粉食(새로나분식)」が元祖として知られ、店では「もともとは客からのキムチジョンにトッポッキをかけて欲しいとのリクエストに応えた形で生まれ、それが段々とエスカレートして現在のような形に至った」と説明している(八田靖史の取材記録より、2011年4月1日)。それが他店にも広まって現在は西帰浦市の名物として定着している。

脚注

  1. 황혜성(감수), 2000, 『다시 보고 배우는 음식디미방』, 궁중음식연구원, P97、140
  2. 이효지 외(엮음), 2004,『시의전서』, 신광출판사, P179
  3. 떡볶이, 주식방문(1847년(1907년)) 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧
  4. 이효지 외(엮음), 2010,『부인필지』, 교문사, P192~193
  5. 方信栄, 2011, 『朝鮮料理製法(悦話堂韓国近現代書籍復刻叢書)』, 悦話堂, P289~291
  6. 李用基, 1924, 『朝鮮無双新式料理製法』, 永昌書館, P255
  7. 떡볶이, 이조궁정요리통고(1957년) 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧
  8. 며느리도 몰라 、YouTube、2014年3月28日閲覧
  9. 八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P203-204

外部リンク

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関連項目