瑞山市の料理
| この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
瑞山市(ソサンシ、서산시)は忠清南道の北西部に位置する地域。本ページでは瑞山市の料理、特産品について解説する。
地域概要
瑞山市は忠清南道の北西部に位置する地域。市の北部は黄海に面し、北東部は忠清南道の唐津市、南東部は忠清南道の礼山郡、南部は忠清南道の洪城郡、西部は忠清南道の泰安郡と接する。人口は17万2564人(2025年11月)[1]。
代表的な観光地として、2014年にローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が訪れたことで知られる海美邑城(ヘミウプソン、해미읍성)、百済時代に作られた摩崖仏で国宝84号に指定される瑞山龍賢里摩崖如来三尊像(ソサン ヨンヒョンニ マエヨレサムジョンサン、서산 용현리 마애여래삼존상)、潮の満ち引きにより海割れで参道ができる仏教寺院の看月庵(カヌォラム、간월암)、百済時代の654年に創建した開心寺(ケシムサ、개심사)、渡り鳥の飛来地として知られる浅水湾(チョンスマン、천수만)などがある。
市北部の大山邑(テサヌプ、대산읍)には大規模な工業団地があり、石油化学工業、自動車産業を中心として大企業の工場が集まっている。中でも石油化学工業は国内有数の規模を誇り、蔚山市、全羅南道麗水市と並んで、韓国の3大石油化学団地と称される。
ソウル市から瑞山市までのアクセスは、ソウル高速バスターミナルから瑞山公用バスターミナルまで高速バスで約2時間20分、東ソウルバスターミナルから約2時間30分の距離である。
食文化の背景
忠清南道の唐津市、礼山郡、泰安郡とともに泰安半島(テアンバンド、태안반도)の一角を成し、北部は加露林湾(カロリムマン、가로림만)、南部は浅水湾(チョンスマン、천수만)に面する。ワタリガニ(꽃게)、テナガダコ(낙지)、牡蠣(굴)、クロソイ(우럭)などの魚介類が豊富であることから、郷土料理として海鮮料理が充実する。農業も盛んであり、代表的な特産品にユッチョクマヌル(6片種ニンニク/육쪽마늘)や、海風を受けて育つショウガ(생강)、高麗人参(인삼)、ノビル(달래)、小大根(알타리무、총각무)、ジャガイモ(감자)などがある。韓牛(하우)の人口受精に必要な冷凍精液を供給する種雄牛(씨수소)の生産拠点としても有名である。
代表的な料理
ワタリガニ料理
- 瑞山市はワタリガニ(꽃게)の名産地として知られ、飲食店ではさまざまな調理法で提供される。郷土料理としてケグッチ(ワタリガニのキムチ鍋、게국지)が有名であるほか、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)、ヤンニョムケジャン(ワタリガニの辛味ダレ漬け/양념게장)、コッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)、コッケチム(ワタリガニ蒸し/꽃게찜)などが代表的である。
ケグッチ(ワタリガニのキムチ鍋/게국지)
- ケグッチ(게국지)は、ワタリガニのキムチ鍋。ケックッチ(겟국지、겟국지)とも呼ばれる。ケグッチのケ(게)はカニ、グッ(=クッ、국)は汁、チ(지)はキムチを意味する。カンジャンケジャン(カニの醤油漬け/간장게장)の汁を用いて漬けたキムチを意味するが、そのままでは塩辛く、生ぐささが残るため、チゲ(鍋、찌개)のように煮込んで食べることが多い。もともとは瑞山市や隣接する泰安郡の家庭で作る素朴な郷土料理であったが、近年は飲食店での提供が増えてレシピが多様化し、ワタリガニ(꽃게)などの魚介をふんだんに入れて豪華に作ることが多い。本辞典での日本語訳は「ワタリガニのキムチ鍋」としたが、伝統的な調理法においては必ずしもワタリガニ(꽃게)に限らず、多様なカニが用いられる。
- 伝統的な調理法
- 海岸部の地域では、ワタリガニ、イシガニ(민꽃게、돌게、박하지)、ヤマトオサガニ(칠게、능쟁이)、シオマネキ(논게、황발이)などをカンジャンケジャンにして保存食とした。秋にキムジャン(キムチ漬け、김장)を行った際、余った白菜や大根などの野菜にカンジャンケジャンの汁と、殻のまま細かく刻んだカニを入れて漬けたものがケグッチである。すなわち本来の用語としてはキムチの一種と言える。ただし、そのまま食べるよりも水を加えて塩分を調節し、白菜、カボチャなどの野菜を足して煮込むことが多いため、鍋料理の名称としても用いられる。カニのダシが効いたキムチチゲ(キムチ鍋/김치찌개)と考えても間違いではない。
- 近年の調理法
- もともとのケグッチは保存食の一種だが、飲食店では熟成期間を置かず、コッチョリ(浅漬けキムチ/겉절이)のように即席で野菜とカンジャンケジャンの汁を和えて作ることが多い。具材もより豪華になって、生のワタリガニをぶつ切りにして入れたり、エビや牡蠣などの魚介を加えたりして作るのが主流である。ワタリガニ料理のひとつとして、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)やコッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)と並んでメニューに並ぶため、近年はキムチ入りのコッケタンとして認識されることがほとんどだ。調理法によっては、単にムグンジ(古漬けのキムチ、묵은지)とワタリガニを一緒に煮込んで作ることもある。
牡蠣料理
- 浮石面(プソンミョン、부석면)の看月島(カヌォルド、간월도)は、牡蠣(굴)の名産地である。オリグルジョッ(小さい牡蠣の塩辛/어리굴젓)や、ヨンヤンクルバプ(牡蠣ごはん、영양굴밥)が代表的な郷土料理として知られる。
ミルクッナクチタン(テナガダコの鍋/밀국낙지탕)
- ミルクッナクチタン(밀국낙지탕)は、テナガダコの鍋(「ヨンポタン(テナガダコのスープ/연포탕)」の項目も参照)。ミルクッ(밀국)は小麦粉のスープを意味し、カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)やスジェビ(韓国式のすいとん/수제비)のこと。ナクチタン(낙지)はテナガダコ、タン(탕)は鍋料理を意味する。ミルクッナクチ(밀국낙지)とも呼ぶ。テナガダコを具とした澄まし仕立ての鍋料理を指し、残ったスープにカルグクスやスジェビを入れてシメとする。
ウロクチョックッ(クロソイの塩辛鍋/우럭젓국)
- ウロクチョックッ(우럭젓국)は、クロソイの塩辛鍋。ウロク(우럭)はクロソイ、チョックッ(젓국)は塩辛で味付けをしたスープを意味する。ウロクは生干しにしたもの、塩辛は主にセウジョッ(アミの塩辛、새우젓)を用いる。瑞山市や隣接する忠清南道泰安郡の郷土料理として知られる。類似の料理として、全羅南道木浦市の郷土料理にウロクカンクッ(クロソイの干物鍋/우럭간국)がある。
キョファンパン(教皇パン/교황빵)
- キョファンパン(교황빵)は、教皇パン。市の名産品であるユッチョクマヌル(6片種ニンニク/육쪽마늘)を使用したリング型のデニッシュで、2014年にローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が海美邑城(ヘミウプソン、해미읍성)を訪れた際、このパンを食べたエピソードから教皇パンの俗称で呼ばれるようになった。製造元は京畿道坡州市に本店を構える「PROVENCE BAKERY(프로방스 베이커리)」で、正式名称はキスリング(키스링)である。教皇パンのほか、マヌルパン(ニンニクパン、마늘빵)とも呼ばれる。
センガンハングァ(ショウガ菓子/생강한과)
センガンハングァ(생강한과)は、ショウガ菓子。センガン(생강)はショウガ、ハングァ(한과)は伝統菓子を総称する。ユグァ(油菓/유과)などの菓子を作る際、瑞山市の特産品であるショウガ入りの水飴を用いて作る。南西部の浮石面(プソンミョン、부석면)を中心に製造業者が集まっている。
代表的な特産品
ユッチョクマヌル(6片種ニンニク/육쪽마늘)
- ユッチョクマヌル(육쪽마늘)は、6片種ニンニク。寒地型の在来種で、鱗片数が6片(7、8片の場合もある)と、鱗片のひとつひとつが大きいことを特徴とする。外来種である暖地型に比べて生産量では劣るものの、辛味、香味が強く、貯蔵性に優れるとされる。2005年3月には、農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第4号として「瑞山6片種ニンニク(서산 육쪽마늘)」が登録された。
種雄牛
代表的な酒類・飲料
マッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)
- 地元銘柄として、海美邑城酒家(해미읍성주가)のイェンナルマッコリ(옛날막걸리)、地谷八峰合同醸造場(지곡팔봉합동양조장)の地谷八峰生マッコリ(지곡팔봉생막걸리)、雲山醸造場(운산양조장)の雲山生米マッコリ(운산생쌀막걸리)、浮石仁旨合同醸造場(부석인지합동양조장)の瑞山浮石仁旨生マッコリ(서산부석인지 생막걸리)などがある。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- チョンウォンコッケジャン(청원꽃게장)
- 住所:忠清南道瑞山市栗枝8路80(東門洞193-7)
- 住所:충청남도 서산시 율지8로 80(동문동 193-7)
- 電話:041-667-2012
- 料理:カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)
エピソード
脚注
- ↑ 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2025年12月17日閲覧
- ↑ 20억짜리 소 100마리가 산다고?…서산 핫플 'JP목장'의 비밀 、中央日報(2023年11月3日記事)、2025年12月17日閲覧
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)