「麗水市の料理」の版間の差分

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== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
*カッキムチ(カラシナのキムチ/갓김치)突山邑
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=== 麗水10味(여수10미) ===
*ケッチャンオ テチムフェ(ハモの湯引き/갯장어 데침회)鏡湖洞
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:麗水10味([[여수10미]])は、麗水市を代表する10種類の料理。一部の食材ではふたつの料理をまとめて1味に数えている。詳細は以下の通り。
*ケッチャンオフェ(ハモの刺身/갯장어회)鏡湖洞
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*クムプンセンイグイ(セトダイの焼き魚/금풍생이구이)
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==== トルサンガッキムチ(突山島産カラシナのキムチ/돌산갓김치) ====
*トルケジャン(イシガニ漬け/돌게장)鳳山洞
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::トルサンガッキムチ([[돌산갓김치]])は、市南東部の突山島(トルサンド、돌산도)でとれる名産のトルサンガッ(突山島産カラシナ、[[돌산갓]])を用いたキムチ(「[[カッキムチ(カラシナのキムチ/갓김치)]]」の項目も参照)。トルサンガッは香り高く、食感が柔らかで、ツンと来る刺激が少ないのを特徴としている<ref>[https://www.yeosu.go.kr/tour/lodge_food/10tastes/dolsan_gatkimchi 여수10미 > 돌산갓김치] 、麗水観光文化ウェブサイト、2023年8月31日閲覧</ref>。夏場は[[ムルキムチ(水キムチ/물김치)]]に仕立てたトルサンガッムルキムチ(突山島産カラシナの水キムチ、[[돌산갓물김치]])も爽快な味わいである。のトルサンガッと、トルサンガッキムチは、それぞれ農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第67号、第68号に指定されている<ref>[http://kpgi.co.kr/page/?mo_id=specialty&id=181&wr_id=239 여수돌산갓] 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2023年8月31日閲覧</ref><ref>[http://kpgi.co.kr/page/?mo_id=specialty&id=181&wr_id=240 여수돌산갓김치] 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2023年8月31日閲覧</ref>。
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==== ケジャンペッパン(カニの醤油・薬味ダレ漬け定食/게장백반) ====
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::ケジャンペッパン([[게장백반]])は、カニの醤油・薬味ダレ漬け定食。ケジャン([[게장]])はカニを薬味醤油や薬味ダレ([[양념]])で漬けた料理の総称。ペッパン([[백반]])は漢字で「白飯」と書いて定食のこと。全国的にケジャンはワタリガニで作るコッケジャン(ワタリガニの醤油・薬味ダレ漬け、[[꽃게장]])が有名だが、麗水市ではイシガニ([[돌게]]、[[민꽃게]])を漬けたトルゲジャン(イシガニの醤油・薬味ダレ漬け、[[돌게장]])が郷土料理として知られる。市内にはトルゲジャンの専門店があり、コッケジャンや他の郷土料理と組み合わせながら定食として提供するところが多い。イシガニはワタリガニよりも小ぶりであるため、器にどさっと大量に盛られて出てきたり、店によってはおかわりも自由であったりするのが魅力のひとつである。市内の鳳山洞(ポンサンドン、봉산동)地区に専門店が多く、一帯は「鳳山ケジャンペッパン通り(봉산게장백반거리)」と呼ばれる。
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==== ソデフェ(シタビラメの刺身和え/서대회) ====
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::ソデフェ([[서대회]])は、シタビラメの刺身和え。ソデ([[서대]])はシタビラメ、フェは刺身を意味する。フェ([[회]])は漢字で「膾」、または「鱠」と書いて刺身を表す(「[[センソンフェ(刺身/생선회)]]」の項目も参照)。直訳では「シタビラメの刺身」であるが、サンチュ、エゴマの葉、キュウリといった生野菜とともに、甘辛酸っぱいタレで和えて食べることが多い。和え物を意味する「ムチム([[무침]])」をつけて、ソデフェムチム([[서대회무침]])とも呼ぶ。ソデフェをごはんに載せて、[[フェトッパプ(刺身丼/회덮밥)]]のように食べるのも定番である。ソデフェの味付けには[[マッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)]]を発酵させて作ったマッコリ酢([[막걸리식초]])を用いるのが秘訣であり、トゲのない柔らかな酸味と甘味を持ち味とする。市内の郷土料理店では自家製のマッコリ酢を自慢とするところも多く、家庭でも作られる。
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==== ヨスハンジョンシク(麗水式の韓定食/여수한정식) ====
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::ヨスハンジョンシク(여수한정식)は、麗水式の韓定食(「[[ハンジョンシク(韓定食/한정식)]]」の項目も参照)。地魚を用いた[[センソンフェ(刺身/생선회)]]や、[[センソングイ(焼き魚/생선구이)]]を中心に、たくさんの郷土料理をテーブルいっぱいに並べた定食を指す。
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==== ケッチャンオフェ・シャブシャブ(갯장어회·샤브샤브/ハモの刺身・しゃぶしゃぶ) ====
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::代表的なハモ料理を2つまとめて1味に数えている。市中心部から船で5分ほどの大鏡島(テギョンド、대경도)が主産地として有名で、島内にはハモ料理の専門店が集まっている。麗水市では1990年代のはじめまで、とれたハモのほとんどを日本に輸出していたことから、日本語のハモ([[하모]])が通称として広く使用されている。慶尚道方言の「하모하모(=그래그래、そうそう、ぐらいのあいづち表現)」が転じて、「ハモハモ([[하모하모]])と重ねて呼ばれることもある。5~10月頃を旬として、それ以外の季節はメニューから消えることも多い。専門店では冬場の料理としてアナゴ([[붕장어]])料理やトリガイ([[새조개]])料理を提供する。
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:;ケッチャンオフェ
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::ケッチャンオフェ([[갯장어회]])は、ハモの刺身(「[[ケッチャンオフェ(ハモの刺身/갯장어회)]]」の項目も参照)。ケッチャンオ([[갯장어]])はハモ。フェ([[회]])は漢字で「膾」、または「鱠」と書いて刺身を表す(「[[センソンフェ(刺身/생선회)]]」の項目も参照)。日本語のハモが転用され、「ハモフェ([[하모회]])」「ハモサシミ([[하모사시미]])」の名前でメニューに載ることも多い。骨切りをしたハモを細造りにし、ワサビ醤油やチョコチュジャン(唐辛子味噌、[[초고추장]])につけて味わうほか、生タマネギに載せてサムジャン(包み味噌、[[쌈장]])と一緒に味わう食べ方もある。
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:;ケッチャンオシャブシャブ
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::ケッチャンオシャブシャブ([[갯장어샤브샤브]])は、ハモのしゃぶしゃぶ(「[[ケッチャンオデチムフェ(ハモのしゃぶしゃぶ/갯장어데침회)]]」の項目も参照)。。ケッチャンオ([[갯장어]])はハモ。シャブシャブは日本語の「しゃぶしゃぶ」が定着している。テチムフェ(=デチムフェ、ゆがいた刺身、[[데침회]])という表現もあり、ケッチャンオデチムフェ([[갯장어데침회]])とも呼ぶ。また、日本語のハモが転用され、「ハモシャブシャブ([[하모샤브샤브]])」「ハモユビキ([[하모유비끼]])」の名前でメニューに載ることも多い。骨切りをしたハモをひと口大にし、ニラと合わせて韓方ダシにくぐらせ韓方醤油で味わう。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、著書『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品! ぶっちぎり108料理』において、麗水市のケッチャンオシャブシャブを厳選したベスト8の1位として紹介した<ref>八田靖史, 2014, 『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品! ぶっちぎり108料理』, 三五館, P8-9</ref>。
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==== クルグイ(焼き牡蠣/굴구이) ====
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::クルグイ([[굴구이]])は、焼き牡蠣。クル([[굴]])は牡蠣、グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物を総称する。殻付きの牡蠣を網焼きにし、ナイフで殻を外しながら焼きたてを味わう。主に専門店で味わう料理であり、クルチム(蒸し牡蠣、[[굴찜]])、[[クルジョン(牡蠣のチヂミ/굴전)]]、セングル(生牡蠣、[[생굴]])などのメニューもある。店によっては食べ放題([[무한리필]])で提供する。11~2月頃を最盛期とする。
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==== チャンオグイ・タン(アナゴ焼き・スープ/장어구이·탕) ====
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::代表的なアナゴ料理を2つまとめて1味に数えている。チャンオはウナギ([[뱀장어]]、[[민물장어]])、アナゴ([[붕장어]]、[[바다장어]])を総称するが、麗水10味ではアナゴを指す。市内には多くのアナゴ料理専門店があり、どちらも代表的なメニューとして味わえる。夏場のスタミナ料理としても親しまれる。
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:;チャンオグイ
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::チャンオグイ([[장어구이]])は、アナゴ焼き(「[[パダジャンオグイ(アナゴ焼き/바다장어구이)]]」の項目も参照)。塩焼き([[소금구이]])、薬味ダレ焼き([[양념구이]])が代表的な食べ方である。
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:;チャンオタン
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::チャンオタン([[장어탕]])は、アナゴのスープ。骨を外してぶつ切りにしたアナゴの身に、セリ、緑豆モヤシ、白菜、春菊などの野菜を加え、ピリ辛の味噌仕立てにする。
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==== カルチジョリム(タチウオの煮付け/갈치조림) ====
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::カルチジョリム([[갈치조림]])は、タチウオの煮付け(「[[カルチジョリム(タチウオの煮付け/갈치조림)]]」の項目も参照)。ぶつ切りにしたタチウオを、大根などの野菜とともに煮込んで作る。麗水市は[[全羅南道の料理|全羅南道]][[木浦市の料理|木浦市]]とともにモッカルチ(網で獲ったタチウオ、[[먹갈치]])の名産地として知られ、これを麗水モッカルチとも呼ぶ。また、南部の巨文島(コムンド、거문도)一帯ではウンガルチ(釣り物のタチウオ、[[은갈치]])が有名で、一帯の海をウンビッパダ(銀の光の海、은빛바다)と表現することにちなんで、ウンビッカルチ(銀の光のタチウオ、[[은빛갈치]])とも呼ぶ。
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==== セジョゲシャブシャブ(トリガイのしゃぶしゃぶ/새조개샤브샤브) ====
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::セジョゲシャブシャブ(새조개샤브샤브)は、トリガイのしゃぶしゃぶ。セジョゲが、トリガイ。シャブシャブは日本語の「しゃぶしゃぶ」が定着している。内臓を取った生のトリガイを、セリやホウレンソウなどの野菜とともに、卓上の鍋でゆがいて味わう。トリガイは1~3月頃を旬とする。
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==== チョノフェ・グイ(コノシロの刺身・焼き魚/전어회·구이) ====
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::代表的なコノシロ料理を2つまとめて1味に数えている。チョノ([[전어]])は、漢字で「銭魚」と書いてコノシロのこと。フェ([[회]])は漢字で「膾」、または「鱠」と書いて刺身を(「[[センソンフェ(刺身/생선회)]]」の項目も参照)。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物を総称する。秋を代表する魚のひとつで、9~10月頃を最盛期とする。刺身、焼き魚のほか、[[フェムチム(刺身和え/회무침)]]として味わうことも多い。また、麗水市ではチョノバムジョッ(コノシロの内臓の塩辛、[[전어밤젓]])を特産品としており、名称のバムはコノシロの胃袋を栗([[밤]])に見立てたもので、ジョッ([[젓]])は塩辛を意味する。
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:;チョノフェ
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::チョノフェ([[전어회]])は、コノシロの刺身(「[[チョノフェ(コノシロの刺身/전어회)]]」の項目も参照)。背骨ごと細切りにするセコシ(背越し、[[세꼬시]])にすることが多く、その食感を含めて楽しむ。
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:;チョノグイ
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::チョノグイ([[전어구이]])は、コノシロの焼き魚(「[[チョノグイ(コノシロ焼き/전어구이)]]」の項目も参照)。丸ごとのコノシロを網やフライパンなどで塩焼きにする。
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=== クムプンセンイグイ(セトダイの焼き魚/금풍생이구이) ===
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:クムプンセンイグイ([[금풍생이구이]])は、セトダイの焼き魚。クムプンセンイ([[금풍생이]])は、セトダイの[[全羅南道の料理|全羅南道]]方言(標準語は「クンピョンソニ([[군평선이]])」)。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物を総称する。塩焼きにしたうえで、薬味醤油([[양념간장]])を添えたり、かけることもある。[[全羅南道の料理|全羅南道]]ではセトダイを「タットム([[딱돔]])」、または「セッソバンゴギ([[샛서방고기]])」とも呼ぶ。セッソバンゴギは直訳すると「間男の魚」という意味で、妻が夫よりも愛人に食べさせたいほど美味しい魚を意味する。
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=== ヘムルサマプ(海鮮と豚バラ肉の炒め物/해물삼합) ===
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:ヘムルサマプ([[해물삼합]])は、海鮮と豚バラ肉の炒め物。ヘムル([[해물]])は、漢字で「海物」と書いて海産物のこと。サマプ([[삼합]])は、漢字で「三合」と書いて相性のよい3種類の食材を意味する。地名を冠して「ヨスサマプ(麗水三合、[[여수삼합]])」とも呼ぶ。店によっても解釈は異なるが、海産物と豚バラ肉([[삼겹살]])に、熟成キムチ([[묵은지]])か、麗水市の名産である[[カッキムチ(カラシナのキムチ/갓김치)]]を加えて3種とすることが多い。市中心部の喬桐(キョドン、교동)地区にある喬桐市場(キョドンシジャン、교동시장)の屋台通り名物として知られ、市内の海鮮料理店や屋台などでも広く提供される。名産である「トルムノ(マダコ、[[돌문어]])」を主役とするトルムノサマプ(マダコと豚バラ肉の炒め物、[[돌문어삼합]])や、海産物の種類を増やしたヘムルオハプ(海物五合=5種食材の炒め物、[[해물오합]])など派生メニューも豊富である。
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=== その他の魚介料理 ===
 
*サムチフェ(サワラの刺身/삼치회)
 
*サムチフェ(サワラの刺身/삼치회)
*ソデフェ(シタビラメの刺身和え/서대회)
 
 
*ソノフェ(鮮魚の刺身/선어회)
 
*ソノフェ(鮮魚の刺身/선어회)
 
*セミタン(オニオコゼ鍋/쎄미탕)
 
*セミタン(オニオコゼ鍋/쎄미탕)
 
*ソムベンイタン(カサゴ鍋/쏨뱅이탕)
 
*ソムベンイタン(カサゴ鍋/쏨뱅이탕)
*チャンオタン(アナゴのスープ/장어탕)
 
*ヘムルサマプ(海鮮と豚バラ肉の炒め物/해물삼합)校洞
 
  
 
== 代表的な特産品 ==
 
== 代表的な特産品 ==

2023年9月12日 (火) 23:55時点における版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

麗水市(ヨスシ、여수시)は全羅南道の南東部に位置する地域。本ページでは麗水市の料理、特産品について解説する。

地域概要

麗水市は全羅南道の南東部に位置する地域。南海岸に伸びる半島と島嶼群で構成され、市の北東部は全羅南道順天市と接する。また、北東部は全羅南道光陽市、南西部は全羅南道高興郡と橋で結ばれている。人口は27万4765人で、全羅南道では順天市に次いで2番目に多い(2022年12月)[1]

食文化の背景

南海岸に面した麗水半島と周辺の島嶼群で構成される港町であり、海の幸が潤沢であり、これらを利用した郷土料理が豊富である。代表的な海産物には、イシガニ(돌게민꽃게)、シタビラメ(서대)、ハモ(갯장어)、牡蠣()、アナゴ(붕장어)、タチウオ(갈치)、トリガイ(새조개)、コノシロ(전어)などがある。南東部の突山島(トルサンド、돌산도)はカラシナ([[갓)の名産地として知られ、トルサンガッ(突山島産のカラシナ、돌산갓)を用いたカッキムチ(カラシナのキムチ/갓김치)は全国的に有名である。市中心部と突山島を結ぶ亀甲船大橋(거북선대교)の一帯には、浪漫屋台(ナンマンポチャ、낭만포차)と呼ばれるテント屋台が集まっており、深夜まで大勢の観光客で賑わう。

  • 海上国立公園
韓国に23ヶ所ある国立公園のうち、海上国立公園として指定されているのは閑麗海上国立公園(한려해상국립공원)と多島海海上国立公園(다도해해상국립공원)の2ヶ所であり、麗水市はその両者にまたがった唯一の地域である。国立公園内は開発が制限されることから、地元では環境が保たれた美しい海の証明として象徴的に語られることが多い。
  • 麗水国際博覧会
2012年5月12日から8月12日まで、麗水市にて麗水国際博覧会(여수세계박람회)が開催された。

代表的な料理

麗水10味(여수10미)

麗水10味(여수10미)は、麗水市を代表する10種類の料理。一部の食材ではふたつの料理をまとめて1味に数えている。詳細は以下の通り。

トルサンガッキムチ(突山島産カラシナのキムチ/돌산갓김치)

トルサンガッキムチ(돌산갓김치)は、市南東部の突山島(トルサンド、돌산도)でとれる名産のトルサンガッ(突山島産カラシナ、돌산갓)を用いたキムチ(「カッキムチ(カラシナのキムチ/갓김치)」の項目も参照)。トルサンガッは香り高く、食感が柔らかで、ツンと来る刺激が少ないのを特徴としている[2]。夏場はムルキムチ(水キムチ/물김치)に仕立てたトルサンガッムルキムチ(突山島産カラシナの水キムチ、돌산갓물김치)も爽快な味わいである。のトルサンガッと、トルサンガッキムチは、それぞれ農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第67号、第68号に指定されている[3][4]

ケジャンペッパン(カニの醤油・薬味ダレ漬け定食/게장백반)

ケジャンペッパン(게장백반)は、カニの醤油・薬味ダレ漬け定食。ケジャン(게장)はカニを薬味醤油や薬味ダレ(양념)で漬けた料理の総称。ペッパン(백반)は漢字で「白飯」と書いて定食のこと。全国的にケジャンはワタリガニで作るコッケジャン(ワタリガニの醤油・薬味ダレ漬け、꽃게장)が有名だが、麗水市ではイシガニ(돌게민꽃게)を漬けたトルゲジャン(イシガニの醤油・薬味ダレ漬け、돌게장)が郷土料理として知られる。市内にはトルゲジャンの専門店があり、コッケジャンや他の郷土料理と組み合わせながら定食として提供するところが多い。イシガニはワタリガニよりも小ぶりであるため、器にどさっと大量に盛られて出てきたり、店によってはおかわりも自由であったりするのが魅力のひとつである。市内の鳳山洞(ポンサンドン、봉산동)地区に専門店が多く、一帯は「鳳山ケジャンペッパン通り(봉산게장백반거리)」と呼ばれる。

ソデフェ(シタビラメの刺身和え/서대회)

ソデフェ(서대회)は、シタビラメの刺身和え。ソデ(서대)はシタビラメ、フェは刺身を意味する。フェ()は漢字で「膾」、または「鱠」と書いて刺身を表す(「センソンフェ(刺身/생선회)」の項目も参照)。直訳では「シタビラメの刺身」であるが、サンチュ、エゴマの葉、キュウリといった生野菜とともに、甘辛酸っぱいタレで和えて食べることが多い。和え物を意味する「ムチム(무침)」をつけて、ソデフェムチム(서대회무침)とも呼ぶ。ソデフェをごはんに載せて、フェトッパプ(刺身丼/회덮밥)のように食べるのも定番である。ソデフェの味付けにはマッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)を発酵させて作ったマッコリ酢(막걸리식초)を用いるのが秘訣であり、トゲのない柔らかな酸味と甘味を持ち味とする。市内の郷土料理店では自家製のマッコリ酢を自慢とするところも多く、家庭でも作られる。

ヨスハンジョンシク(麗水式の韓定食/여수한정식)

ヨスハンジョンシク(여수한정식)は、麗水式の韓定食(「ハンジョンシク(韓定食/한정식)」の項目も参照)。地魚を用いたセンソンフェ(刺身/생선회)や、センソングイ(焼き魚/생선구이)を中心に、たくさんの郷土料理をテーブルいっぱいに並べた定食を指す。

ケッチャンオフェ・シャブシャブ(갯장어회·샤브샤브/ハモの刺身・しゃぶしゃぶ)

代表的なハモ料理を2つまとめて1味に数えている。市中心部から船で5分ほどの大鏡島(テギョンド、대경도)が主産地として有名で、島内にはハモ料理の専門店が集まっている。麗水市では1990年代のはじめまで、とれたハモのほとんどを日本に輸出していたことから、日本語のハモ(하모)が通称として広く使用されている。慶尚道方言の「하모하모(=그래그래、そうそう、ぐらいのあいづち表現)」が転じて、「ハモハモ(하모하모)と重ねて呼ばれることもある。5~10月頃を旬として、それ以外の季節はメニューから消えることも多い。専門店では冬場の料理としてアナゴ(붕장어)料理やトリガイ(새조개)料理を提供する。
ケッチャンオフェ
ケッチャンオフェ(갯장어회)は、ハモの刺身(「ケッチャンオフェ(ハモの刺身/갯장어회)」の項目も参照)。ケッチャンオ(갯장어)はハモ。フェ()は漢字で「膾」、または「鱠」と書いて刺身を表す(「センソンフェ(刺身/생선회)」の項目も参照)。日本語のハモが転用され、「ハモフェ(하모회)」「ハモサシミ(하모사시미)」の名前でメニューに載ることも多い。骨切りをしたハモを細造りにし、ワサビ醤油やチョコチュジャン(唐辛子味噌、초고추장)につけて味わうほか、生タマネギに載せてサムジャン(包み味噌、쌈장)と一緒に味わう食べ方もある。
ケッチャンオシャブシャブ
ケッチャンオシャブシャブ(갯장어샤브샤브)は、ハモのしゃぶしゃぶ(「ケッチャンオデチムフェ(ハモのしゃぶしゃぶ/갯장어데침회)」の項目も参照)。。ケッチャンオ(갯장어)はハモ。シャブシャブは日本語の「しゃぶしゃぶ」が定着している。テチムフェ(=デチムフェ、ゆがいた刺身、데침회)という表現もあり、ケッチャンオデチムフェ(갯장어데침회)とも呼ぶ。また、日本語のハモが転用され、「ハモシャブシャブ(하모샤브샤브)」「ハモユビキ(하모유비끼)」の名前でメニューに載ることも多い。骨切りをしたハモをひと口大にし、ニラと合わせて韓方ダシにくぐらせ韓方醤油で味わう。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、著書『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品! ぶっちぎり108料理』において、麗水市のケッチャンオシャブシャブを厳選したベスト8の1位として紹介した[5]

クルグイ(焼き牡蠣/굴구이)

クルグイ(굴구이)は、焼き牡蠣。クル()は牡蠣、グイ(=クイ、구이)は焼き物を総称する。殻付きの牡蠣を網焼きにし、ナイフで殻を外しながら焼きたてを味わう。主に専門店で味わう料理であり、クルチム(蒸し牡蠣、굴찜)、クルジョン(牡蠣のチヂミ/굴전)、セングル(生牡蠣、생굴)などのメニューもある。店によっては食べ放題(무한리필)で提供する。11~2月頃を最盛期とする。

チャンオグイ・タン(アナゴ焼き・スープ/장어구이·탕)

代表的なアナゴ料理を2つまとめて1味に数えている。チャンオはウナギ(뱀장어민물장어)、アナゴ(붕장어바다장어)を総称するが、麗水10味ではアナゴを指す。市内には多くのアナゴ料理専門店があり、どちらも代表的なメニューとして味わえる。夏場のスタミナ料理としても親しまれる。
チャンオグイ
チャンオグイ(장어구이)は、アナゴ焼き(「パダジャンオグイ(アナゴ焼き/바다장어구이)」の項目も参照)。塩焼き(소금구이)、薬味ダレ焼き(양념구이)が代表的な食べ方である。
チャンオタン
チャンオタン(장어탕)は、アナゴのスープ。骨を外してぶつ切りにしたアナゴの身に、セリ、緑豆モヤシ、白菜、春菊などの野菜を加え、ピリ辛の味噌仕立てにする。

カルチジョリム(タチウオの煮付け/갈치조림)

カルチジョリム(갈치조림)は、タチウオの煮付け(「カルチジョリム(タチウオの煮付け/갈치조림)」の項目も参照)。ぶつ切りにしたタチウオを、大根などの野菜とともに煮込んで作る。麗水市は全羅南道木浦市とともにモッカルチ(網で獲ったタチウオ、먹갈치)の名産地として知られ、これを麗水モッカルチとも呼ぶ。また、南部の巨文島(コムンド、거문도)一帯ではウンガルチ(釣り物のタチウオ、은갈치)が有名で、一帯の海をウンビッパダ(銀の光の海、은빛바다)と表現することにちなんで、ウンビッカルチ(銀の光のタチウオ、은빛갈치)とも呼ぶ。

セジョゲシャブシャブ(トリガイのしゃぶしゃぶ/새조개샤브샤브)

セジョゲシャブシャブ(새조개샤브샤브)は、トリガイのしゃぶしゃぶ。セジョゲが、トリガイ。シャブシャブは日本語の「しゃぶしゃぶ」が定着している。内臓を取った生のトリガイを、セリやホウレンソウなどの野菜とともに、卓上の鍋でゆがいて味わう。トリガイは1~3月頃を旬とする。

チョノフェ・グイ(コノシロの刺身・焼き魚/전어회·구이)

代表的なコノシロ料理を2つまとめて1味に数えている。チョノ(전어)は、漢字で「銭魚」と書いてコノシロのこと。フェ()は漢字で「膾」、または「鱠」と書いて刺身を(「センソンフェ(刺身/생선회)」の項目も参照)。グイ(=クイ、구이)は焼き物を総称する。秋を代表する魚のひとつで、9~10月頃を最盛期とする。刺身、焼き魚のほか、フェムチム(刺身和え/회무침)として味わうことも多い。また、麗水市ではチョノバムジョッ(コノシロの内臓の塩辛、전어밤젓)を特産品としており、名称のバムはコノシロの胃袋を栗()に見立てたもので、ジョッ()は塩辛を意味する。
チョノフェ
チョノフェ(전어회)は、コノシロの刺身(「チョノフェ(コノシロの刺身/전어회)」の項目も参照)。背骨ごと細切りにするセコシ(背越し、세꼬시)にすることが多く、その食感を含めて楽しむ。
チョノグイ
チョノグイ(전어구이)は、コノシロの焼き魚(「チョノグイ(コノシロ焼き/전어구이)」の項目も参照)。丸ごとのコノシロを網やフライパンなどで塩焼きにする。

クムプンセンイグイ(セトダイの焼き魚/금풍생이구이)

クムプンセンイグイ(금풍생이구이)は、セトダイの焼き魚。クムプンセンイ(금풍생이)は、セトダイの全羅南道方言(標準語は「クンピョンソニ(군평선이)」)。グイ(=クイ、구이)は焼き物を総称する。塩焼きにしたうえで、薬味醤油(양념간장)を添えたり、かけることもある。全羅南道ではセトダイを「タットム(딱돔)」、または「セッソバンゴギ(샛서방고기)」とも呼ぶ。セッソバンゴギは直訳すると「間男の魚」という意味で、妻が夫よりも愛人に食べさせたいほど美味しい魚を意味する。

ヘムルサマプ(海鮮と豚バラ肉の炒め物/해물삼합)

ヘムルサマプ(해물삼합)は、海鮮と豚バラ肉の炒め物。ヘムル(해물)は、漢字で「海物」と書いて海産物のこと。サマプ(삼합)は、漢字で「三合」と書いて相性のよい3種類の食材を意味する。地名を冠して「ヨスサマプ(麗水三合、여수삼합)」とも呼ぶ。店によっても解釈は異なるが、海産物と豚バラ肉(삼겹살)に、熟成キムチ(묵은지)か、麗水市の名産であるカッキムチ(カラシナのキムチ/갓김치)を加えて3種とすることが多い。市中心部の喬桐(キョドン、교동)地区にある喬桐市場(キョドンシジャン、교동시장)の屋台通り名物として知られ、市内の海鮮料理店や屋台などでも広く提供される。名産である「トルムノ(マダコ、돌문어)」を主役とするトルムノサマプ(マダコと豚バラ肉の炒め物、돌문어삼합)や、海産物の種類を増やしたヘムルオハプ(海物五合=5種食材の炒め物、해물오합)など派生メニューも豊富である。

その他の魚介料理

  • サムチフェ(サワラの刺身/삼치회)
  • ソノフェ(鮮魚の刺身/선어회)
  • セミタン(オニオコゼ鍋/쎄미탕)
  • ソムベンイタン(カサゴ鍋/쏨뱅이탕)

代表的な特産品

代表的な酒類・飲料

飲食店情報

エピソード

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2023年1月18日閲覧
  2. 여수10미 > 돌산갓김치 、麗水観光文化ウェブサイト、2023年8月31日閲覧
  3. 여수돌산갓 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2023年8月31日閲覧
  4. 여수돌산갓김치 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2023年8月31日閲覧
  5. 八田靖史, 2014, 『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品! ぶっちぎり108料理』, 三五館, P8-9

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目