楊平郡の料理

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楊平ムルマルグン市場

楊平郡(ヤンピョングン、양평군)は京畿道の東部に位置する地域。本ページでは楊平郡の料理、特産品について解説する。

地域概要

楊平郡は京畿道の東部に位置する地域。郡の北部は京畿道加平郡江原道洪川郡、東部は江原道横城郡、南東部は江原道原州市、南部は京畿道驪州市、南西部は京畿道広州市、北西部は京畿道南楊州市と接する。人口は12万2323人。(2022年12月)[1]。郡の面積は877.8平方キロ(2022年)で、京畿道の中ではもっとも大きい[2]。郡中心部にそびえる標高1157mの龍門山(ヨンムンサン、용문산)をはじめとして山地が多く、郡全体の69.9%を山林が占めている[3]。郡の北西部から西部へと北漢江(プカンガン、북한강)が、南部から西部へと南漢江(ナマンガン、남한강)が流れて合流する。代表的な観光地としては、北漢江と南漢江の合流地点であるトゥムルモリ(두물머리)や、自然公園の「洗美苑(세미원)」、古刹の「龍門寺(용문사)」などがある。ソウル市からのアクセスは、京義・中央線が両水(ヤンス、양수)駅、楊平(ヤンピョン、양평)駅、砥平(チピョン、지평)駅などまで通っているほか、ソウル駅から楊平駅まで高速鉄道のKTXを利用すると約50分の距離である。

食文化の背景

楊平郡はソウル市の中心部を流れる漢江(ハンガン、한강)の上流域にあたり、北漢江(プカンガン、북한강)と南漢江(ナマンガン、남한강)が出合う水運の要衝地として、江原道忠清道一帯から文物の集まる場所として古くから栄えた。その象徴的な存在が五日市場の「葛山場(カルサンジャン、갈산장)」で、1770年に編纂された『東国文献備考(동국문헌비고)』に記録が残ることから[4]、その歴史は少なくともそれ以前までさかのぼる。葛山場は現在の「楊平ムルマルグン市場(ヤンピョンムルマルグンシジャン、양평물맑은시장)」にあたり、常設市場ながら、3と8のつく日には五日市も開かれて大勢の人で賑わう。楊平ムルマルグン市場内の名物料理には、トレチャン(豚の腸間膜焼き/도래창)がある。そのほかの郷土料理として、玉泉面(オクチョンミョン、옥천면)地区には朝鮮戦争時に黄海道海州市から避難してきた人たちが広めたオクチョンミョン(玉泉冷麺/옥천냉면)があり、郡南部の介軍面貢税里(ケグンミョン コンセリ、개군면 공세리)地区にはヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ/해장국)の専門店が集まっている。楊平郡のヘジャンクッは全国的に有名で、「楊平ヘジャンクッ(양평해장국)」の名前で広く知られている。

代表的な料理

オクチョンネンミョン

オクチョンネンミョン(玉泉冷麺/옥천냉면)

オクチョンネンミョン(옥천냉면)は、楊平郡の玉泉面(オクチョンミョン、옥천면)で名物となっている冷麺(「ネンミョン(冷麺/냉면)」の項目も参照)。朝鮮戦争時に黄海道海州市(ファンヘド ヘジュシ、황해도 해주시)から避難してきた人たちが広めたもので、その製法は黄海道式をルーツとし、太めのそば麺と、豚肉でとったスープを特徴とする。玉泉面玉泉里(オクチョンミョン オクチョンニ、옥천면 옥천리)に位置する1952年創業の「玉泉冷麺 黄海食堂(옥천냉면 황해식당)」が元祖店として知られる。
  • ワンジャ(ひき肉のチヂミ)
ワンジャ(완자)は、ひき肉のチヂミ。一般にワンジャは肉団子を意味するが、オクチョンネンミョンの専門店では、ハンバーグほどの大きな塊に溶き卵の衣をつけて焼いて提供する。トングランテン(ひき肉のチヂミ/동그랑땡)にも近い。オクチョンネンミョンとともに注文されることが多いが、大皿に載って7~8個も出てくるため、かなりのボリュームがある。ハーフサイズ(반접시)での注文も可能。

トレチャン(豚の腸間膜焼き/도래창)

トレチャン
トレチャン(도래창)は、豚の腸間膜焼き。希少部位のひとつであり、野菜、キノコとともに鉄板で炒めて味わう。脂の多い部位であり、香ばしく焼きあげると表面はカリッとしながらも、内側はクニッとして独特の食感を楽しめる。楊平ムルマルグン市場内に位置する「モンシル食堂(몽실식당)」の看板料理として有名。

ヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ/해장국)

ヘジャンクッ
ヘジャンクッ(해장국)は、酔い覚ましのスープ(「ヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ/해장국)」の項目も参照)。郡南部の介軍面貢税里(ケグンミョン コンセリ、개군면 공세리)一帯はシンネ村(シンネマウル、신내마을)と呼ばれ、この地域で作られた牛肉、牛の内臓、牛血(선지)などを煮込んだヘジャンクッが人気を集めて広まったとされる。現在も同地域をはじめ、楊平郡にはヘジャンクッの専門店が多い。

代表的な特産品

「ムルマルグン楊平(水の澄んだ楊平)」をブランドとして、環境に配慮した農畜産物の生産に力を入れている。代表的なものに「ムルマルグン楊平米(물맑은양평쌀)」と、「ムルマルグン楊平韓牛(물맑은양평한우)」がある。

代表的な酒類・飲料

砥平マッコリ

砥平マッコリ

砥平マッコリ(チピョンマッコルリ、지평막걸리)は、砥平面砥平里(チピョンミョン チピョンニ、지평면 지평리)に位置する「砥平酒造(지평주조)」が生産するマッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)。1925年の創業と古く、創業当時に建てられた醸造場は国家登録文化財第594号に指定されている[5]。朝鮮戦争時の1950年には国連軍の司令部として使用された歴史もある[6]。1960年に創業者のイ・ジョンファン氏から、キム・ギョシプ氏が事業を継承し、その息子のキム・ドンギョ氏、孫のキム・ギファン氏へと代を継いでいる[7]

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • モンシル食堂(몽실식당)
住所:京畿道楊平郡楊平邑楊平チャントキル9-1(楊根里167-27)
住所:경기도 양평군 양평읍 양평장터길 9-1(양근리 167-27)
電話:031-771-9296
料理:トレチャン(豚の腸間膜焼き)
  • 玉泉冷麺 黄海食堂(옥천냉면 황해식당)
住所:京畿道楊平郡玉泉面古邑路140(玉泉里760)
住所:경기도 양평군 옥천면 고읍로 140(옥천리 760)
電話:031-772-9693
料理:オクチョンネンミョン(玉泉冷麺)
  • 玉泉麺屋(옥천면옥)
住所:京畿道楊平郡玉泉面玉泉キル13(玉泉里740-8)
住所:경기도 양평군 옥천면 옥천길 13(옥천리 740-8)
電話:031-772-5187
料理:オクチョンネンミョン(玉泉冷麺)
  • チンガブ本家楊平ヘジャンクッ(진가부 본가 양평해장국)
住所:京畿道楊平郡江上面江南路841(屏山里135-2)
住所:경기도 양평군 강상면 강남로 841(병산리 135-2)
電話:031-772-2577
料理:ヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ)
  • テラロサ西宗店(테라로사 서종점)
住所:京畿道楊平郡西宗面北漢江路992(汶湖里623)
住所:경기도 양평군 서종면 북한강로 992(문호리 623)
電話:031-773-6966
料理:コーヒー

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年5月に初めて楊平郡を訪れた。日帰りでの打ち合わせが目的であったが、そのとき食べたオクチョンネンミョン(玉泉冷麺、옥천냉면)があまりに美味しく、翌週すぐまたオクチョンネンミョンをもう1度食べに行った。オクチョンネンミョンの見事さもさることながら、サイドメニューであるワンジャ(ひき肉のチヂミ、완자)の立派なサイズと食べごたえも感動が大きかった。

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2023年1月29日閲覧
  2. 행정구역별・지목별 국토이용현황_시군구 、KOSIS(国家統計ポータル)、2023年6月3日閲覧
  3. 2020 산림기본통계(개정판)/행정구역별 산림면적・임목축적 、山林庁 山林林業統計プラットホーム、2023年6月3日閲覧
  4. 東國文獻備考巻七十二(郷市/京畿/楊根) 、デジタル蔵書閣(韓国中央研究院)、2023年5月18日閲覧
  5. 양평 지평양조장 (楊平 砥平醸造場) 、文化財庁国家文化遺産ポータル、2023年6月2日閲覧
  6. HISTORY 、砥平酒造ウェブサイト、2023年6月2日閲覧
  7. 10년새 매출 200배…지평 "막걸리는 손맛 아닌 과학" 、韓国経済(2021年12月23日付記事)、2023年6月2日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目