江華郡の料理

2015年5月24日 (日) 08:01時点におけるHatta (トーク | 投稿記録)による版 (→‎飲食店情報)
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江華郡(カンファグン、강화군)は仁川広域市に位置する地域。本ページでは江華郡の料理、特産品について解説する。

江華支石墓

地域概要

江華郡は仁川市の北部に位置し、同じ仁川市の西区と甕津郡、京畿道の金浦市と接する。また、北部は川を挟んで北朝鮮の黄海北道開豊郡や、黄海南道白川郡、延安郡と向かい合う。人口は6万7118人(2015年1月)[1]。郡全体が黄海に浮かぶ島嶼地域であり、韓国で5番目の面積を誇る江華島(강화도)をはじめ、喬桐島(교동도)、席毛島(석모도)といった15の島で構成されている。観光地としても人気が高く、古代から近現代に至るまで幅広い歴史遺産を残しているのが大きな特徴である。ユネスコの世界文化遺産にも指定された青銅器時代の支石墓群(高敞、和順、江華の支石墓群跡)や、神話上の始祖である檀君が天に祭祀を行った摩尼山(마니산)、高句麗時代の381年に創建されたとされる伝燈寺(전등사)、高麗時代の13世紀に臨時首都として使用された宮殿跡の高麗宮址(고려궁지)、朝鮮時代の19世紀後半に諸外国と対峙した防衛拠点の草芝鎮(초지진)など、各時代における歴史がこの地域に凝縮している。ソウル(新村、弘大入口などの各バス停)から広域バスで約2時間の距離。

食文化の背景

島嶼地域という特性から漁業、養殖業が盛んに行われている。郡内では四季折々の魚介が食卓にのぼり、春はイイダコ(주꾸미)、メフグ(황복)、春から初夏にかけてはワタリガニ(꽃게)や、マナガツオ(병어)、ツマリエツ(반지, 밴댕이)、秋はコノシロ(전어)や、コウライエビ(대하)、冬はボラ(숭어)といった魚介が旬を迎える。塩辛用として使われるアキアミ(젓새우)は5~6月を中心に秋冬もとれる。また江華郡は漢江、臨津江、礼成江という3つの河川が流れ込む河口地域に位置するため、堆積地として肥沃な土壌を有することから、漁業のみならず農業も盛んに行われている。米()、サツマイモ(고구마)、カブ(순무)、ブドウ(포도)、高麗人参(인삼)、ヨモギ()といった特産品があり、これらを利用した加工品も多く作られている。食品以外では、花紋席(화문석)と呼ばれる花ござの生産が盛んである。

代表的な料理

江華郡の料理には旬の魚介を使った料理が多い。また、高麗時代に臨時首都が置かれた経緯から、王に献上された料理との逸話を持つものもある。

ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身/밴댕이회)

 
ペンデンイフェムチム
ペンデンイフェはツマリエツの刺身。ペンデンイ(밴댕이)の和名はサッパであるが、仁川・江華島地域では見た目のよく似たツマリエツ(반지)をペンデンイと呼んでいる。4~7月を最盛期とするが、最近は冬でも全羅南道から冷蔵品が直送されており、旬以外の時期でも見かけるようになった。ペンデンイフェは新鮮なものを刺身にしたものか、または刺身を生野菜とともに辛いタレで和えたフェムチム(刺身和え、회무침)でも味わう。フェムチムの場合は丼ごはんが用意され、フェドッパプ(刺身丼、회덮밥)のように混ぜて食べることも多い。華道(화도)地区の後浦港(후포항)には「船首ペンデンイ村(선수밴댕이마을)」と呼ばれる地域があり、ペンデンイフェを中心とした刺身専門店が集まっている。

チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)

チャンオグイはウナギ焼き。江華島と金浦市を分かつ江華海峡(강화해협)は、塩辛い川のようだという意味で塩河(염하)と呼ばれ、一帯では古くからウナギがよくとれた。近年は天然物の減少から漁獲量は激減しているが、それでも塩河沿いのトリミ(더리미)地区にはウナギ料理の専門店が集まっており、養殖、または天然環境で育てた養殖ウナギのチャンオグイを味わうことができる。

コッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)

 
コッケタン
コッケタンはワタリガニ鍋。江華島沖はワタリガニの好漁場であり、4~6月には卵を持ったメスが西海岸の各漁港に水揚げされる。地元ではこの時期をいちばんの旬と考えるが、秋にももう1度旬があり、9月にはオスのワタリガニを、10~12月にはメスのワタリガニを味わう。内可面外浦里(내가면 외포리)にはコッケタンや、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け、간장게장)を提供するワタリガニ料理の専門店が集まっており、「外浦里ワタリガニ村(외포리 꽃게마을)」と呼ばれる。

チョックッカルビ(豚カルビの塩辛鍋/젓국갈비)

チョックッカルビは豚カルビの塩辛鍋。料理名のチョックッが塩辛の汁を意味する。ぶつ切りにした豚カルビを白菜、カボチャ、長ネギ、豆腐などとともに鍋で煮込む際、特産品であるアミの塩辛(새우젓)で味付けをするのが特徴である。料理の発祥として、高麗時代に臨時の都となった際、王に献上するための料理として開発されたと語られることがある。ただし、それを裏付ける史料はなく、あくまでも俗説のひとつと言わざるをえない。

ファンボクフェ(メフグの刺身/황복회)

ファンボクフェはメフグの刺身。春を旬とするが、近年は漁獲量が減っている。倉後里(창후리)に専門店が集まっている。

スンムギムチ(カブのキムチ/순무김치)

スンムギムチはカブのキムチ。カブを大きめの角切りにし、カクトゥギ(大根の角切りキムチ、깍두기)のように漬け込む。韓国ではあまりカブを食べる習慣がなく、カブのキムチといえば江華郡を連想するほど独特な存在である。

代表的な特産品

島嶼地域であることから魚介類が豊富であり、また農業も盛んに行われている。高麗人参の産地として知られるほか、獅子足ヨモギ(사자발쑥)と呼ばれる薬用ヨモギの栽培も盛んであるなど、漢方材の生産地という側面もある。

高麗人参

 
江華高麗人参センター
江華郡は高麗人参の名産地であり、その経緯を江華郡のウェブサイトでは、「朝鮮戦争が起こると高麗人参の本拠地である開城の人たちがここに避難し、1953年から本格的に栽培が行われた」(原文1)[2]と説明している。現在も江華郡では高麗人参の栽培が盛んに行われており、また2010年頃からは田んぼを再利用しての栽培も始まっている。もともと高麗人参栽培は畑作が中心であるが、土地の栄養を吸い尽くしてしまうため連作ができないとの特性があり、農地の確保が難しかった。田んぼでの栽培はまだ技術的に難しい部分も残るが、農地拡充の可能性を広げるため江華郡でも盛んに技術が研究されている。また、江華高麗人参農協では外部へのPRを目的として、観光客向けに高麗人参堀りの体験プログラムなども実施している(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。
【原文1】한국전쟁이 터지자 인삼의 본거지인 개성사람들이 이곳에 피난와 1953년부터 본격 재배가 이루어 졌다.
  • 江華高麗人参センター
江華郡庁や江華市外バスターミナルからほど近い中心部の江華邑甲串里には、五日市場の風物市場(풍물시장)と並んで江華高麗人参センター(강화인삼센터)がある。交通の便利な場所であるため、江華島観光では人気のスポットとなっており、生の高麗人参をはじめ、蜂蜜漬けや韓方茶、菓子などの高麗人参製品も購入できる。なお、生の高麗人参を日本に持ち込む場合は、丁寧に土を除いたうえで検疫を通す必要がある[3]

アミの塩辛

江華郡は韓国を代表するアミの塩辛(새우젓)の一大生産地である。江華島西部の外浦里には外浦港塩辛水産市場(외포항젓갈수산시장)があり、毎年10月頃には「江華島アミの塩辛祭り(강화도새우젓축제)」が開催される。郡内の市場ではアミの塩辛を豊富に扱っており、5月に漬け込むオジョッ(오젓)、6月に漬け込むユッチョッ(육젓)、秋に漬け込むチュジョッ(추젓)、冬に漬け込むトンベッカジョッ(동백하젓)が代表的な分類である。これらはキムチを漬け込む際の調味用に使われるほか、茹で豚につけて食べたり、鍋料理の味付けにも利用する。

獅子足ヨモギ

獅子足ヨモギ(사자발쑥)は江華郡で栽培されるヨモギのブランド名である。食用としてよりも薬用としての利用が多く、ヤクスッ(薬ヨモギ、약쑥)との呼び名でも広く浸透している。特産品としての歴史は古く、1530年に編纂された「新増東国輿地勝覧」を見ると、第12巻江華都護府の項目に特産品として「獅子足艾」との記載がある[4]。郡内ではエキスを搾ったものを生薬として服用したり、または灸や、スッチム(ヨモギ蒸し)の素材としても利用される。石鹸や化粧品に利用することもあり、これらは土産物にもなっている。食用としての利用は少ないが、ヨモギ茶(쑥차)にしたり、または獅子足ヨモギを飼料として育てた韓牛(한우)を提供する飲食店もある。

代表的な酒類・飲料

江華郡のマッコリ

主要な銘柄にチャヌムルの「高香(고향)」、江華温水醸造場の「民族(민족)」がある。また、特産品を活かした高麗人参マッコリや、ヨモギマッコリなども市販されている。
  • 江華温水醸造場(강화온수양조장)
 
江華温水醸造場
仁川市江華郡吉祥面に位置する江華温水醸造場は1924年の創業(実際は1923年の創業で法的な登記が1924年)で、ソウル、京畿道地域においてはもっとも古い醸造場である。3代目の社長によれば「ソウル、京畿道地域で現在営業する醸造場の多くが、江華温水醸造場で必要な技術を学んでおり、その人数は3~400人になるだろう」とのことである(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。醸造場の建物は築100年を超えるもので、建築的な価値も高いとされる。

老舗

 
1953年創業のウリオク
  • 仁川市江華郡江華邑に位置する「ウリオク(우리옥)」は1953年創業である。江華郡においてはもっとも古い飲食店であり、また仁川市内においても1945年創業の「平壌屋(평양옥)」に次いで2番目に古い。魚介料理を自慢とする定食店で、ハンシクペッパン(韓国料理定食、한식백반)と呼ばれる5000ウォンの基本定食に、好みでチゲや刺身などを追加するシステムを取っている。追加用の料理にはテグチゲ(タラの鍋、대구찌개)、ピョンオチゲ(マナガツオの鍋、병어찌개)、ピョンオフェ(マナガツオの刺身、병어회)、プルコギ(牛焼肉、불고기)などがある。
店名:ウリオク(우리옥)
住所:仁川市江華郡江華邑南山キル12(新門里184)
住所:인천시 강화군 강화읍 남산길 12(신문리 184)
電話:032-934-2427

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • 江華島ヨモギ韓牛(강화섬약쑥한우)
住所:仁川市江華郡仙源面仙源寺址路32(新井里247-1)
住所:인천시 강화군 선원면 선원사지로 32(신정리 247-1)
電話:032-934-1212
料理:焼肉
  • ソンチャンチプ(선창집)
住所:仁川市江華郡仙源面海岸東路1199(神井里320-3)
住所:인천시 강화군 선원면 해안동로 1199(신정리 320-3)
電話:032-933-7628
料理:チャンオグイ
  • 三郎城(삼랑성)
住所:仁川市江華群吉祥面伝燈寺路56(温水里660)
住所:인천시 강화군 길상면 전등사로 56(온수리 660)
電話:032-937-0397
料理:ポリパプ(麦飯定食)
  • ワンジャジョンムッパプ(왕자정묵밥)
住所:仁川市江華郡江華邑北門キル55(官庁里750-7)
住所:인천시 강화군 강화읍 북문길 55(관청리 750-7)
電話:032-933-7807
料理:チョックッカルビ
  • ウリオク(우리옥)
住所:仁川市江華郡江華邑南山キル12(新門里184)
住所:인천시 강화군 강화읍 남산길 12(신문리 184)
電話:032-934-2427
料理:ピョンオチゲ(マナガツオの鍋)
  • 忠南瑞山家(충남서산집)
住所:仁川市江華郡内可面中央路1200(外浦里385)
住所:인천시 강화군 내가면 중앙로 1200(외포리 385)
電話:032-933-8403
料理:コッケタン、カンジャンケジャン

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代である2001年11月に語学堂の卒業旅行として初めて江華郡を訪れた。以後、2009年11月、2014年1月、2月、2015年3月の計5度訪問している。
  • 2001年11月の卒業旅行時、観光中にふざけていた八田靖史は城壁から落下しかけ、危ういところで命が助かるという衝撃的な事件があった。

脚注

  1. 강화군정보 일반현황 、江華郡ウェブサイト、2015年4月4日閲覧
  2. 특산물 강화인삼 、江華郡ウェブサイト、2015年4月7日閲覧
  3. 韓国から生の高麗人参を持ち帰る方法(個人消費用)。 、韓食生活、2015年4月9日閲覧
  4. 신증동국여지승람 제12권 、韓国古典総合DB、2015年4月8日閲覧

外部リンク

関連項目