扶余郡の料理

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扶余郡(プヨグン、부여군)は忠清南道の南部に位置する地域。本ページでは扶余郡の料理、特産品について解説する。

地域概要

扶余郡は忠清南道の南部に位置する地域。郡の北部は忠清南道青陽郡、北東部は忠清南道公州市、南東部は全羅北道益山市、南西部は忠清南道舒川郡、西部は忠清南道保寧市と接する。人口は6万14147人(2023年8月)[1]。代表的な観光地として百済時代の遺蹟やゆかりの場所が多く残っており、城跡の扶蘇山城(プソサンソン、부서산성)や、滅亡の際に女官らが身を投げたとの逸話が残る落花岩(ナクァアム、낙화암)、武王(第30代王)時代に造成された人口池の宮南池(クンナムジ、궁남지)、定林寺(チョンニムサ、정림사)址に残る五層石塔(国宝9号)、百済金銅大香炉(国宝第287号)が展示される国立扶余博物館(국립부여박물관)などがある。ソウル市から扶余郡までのアクセスは、ソウル南部ターミナルから扶余市外バスターミナルまで約2時間、東ソウル総合ターミナルから約2時間50分の距離である。

食文化の背景

扶余郡はかつて泗沘(サビ、사비)と呼ばれ、538年から660年まで百済の都であった。地域を代表する料理には百済のイメージと結びついたものが多く、仏教国家であったことからゆかりの深い蓮を利用した、ヨンニプパプ(蓮の葉包みごはん/연잎밥)、ヨンコッパン(蓮花饅頭、연꽃빵)、ヨンコッチャ(蓮花茶、연잎차)などがある。また、ドライエイジングビーフ(乾燥熟成牛)のブランド「薯童韓牛(ソドンハヌ、서동한우)」は、武王(百済第30代王)の幼名にちなんでいる。農業の盛んな地域でもあり、名産であるミニトマト(방울토마토)や、シイタケ(표고버섯)を活かした料理を提供する店もある。

代表的な料理

ヨンニプパプ(蓮の葉包みごはん/연잎밥)

ヨンニプパプ(연잎밥)は、蓮の葉包みごはん(「ヨンニプパプ(蓮の葉包みごはん/연잎밥)」の項目も参照)。もち米、うるち米、雑穀、豆、レンコンなどを混ぜて炊いたおこわを、蓮の葉に包んで蒸して作る。あるいは生米の状態から蓮の葉に包んで蒸してもよい。蓮は仏教国家であった百済のイメージにちなむ。専門店ではポッサム(茹で豚の葉野菜包み/보쌈)プルコギ(牛焼肉/불고기)などの肉料理と組み合わせてセットにしたり、副菜にレンコン料理を添えることで蓮を強調したりもする。

ソドンハヌ(薯童韓牛/서동한우)

ソドンハヌ(서동한우)は、薯童韓牛。郡内の窺岩面羅福里(キュアムミョン ナボンニ、규암면 나복리)に位置する「SD FOOD株式会社(에스디푸드 주식회사)」が生産するドライエイジングビーフ(乾燥熟成牛)のブランドを指す。薯童(ソドン、서동)は武王(百済第30代王)の幼名にちなむ。専用工場にて50~120日間の乾燥熟成を行ったうえで、扶蘇山城(プソサンソン、부서산성)前などにある直営の焼肉店で提供している。

ヨンコッパン(蓮花饅頭/연꽃빵)

ヨンコッパン(연꽃빵)は、蓮花饅頭。生地には蓮の花や葉を練り込んで作った、あんこ入りの焼き菓子を指す。形状も蓮の花を模している。蓮は仏教国家であった百済のイメージにちなむ。扶余邑東南里(プヨウプ トンナムニ、부여읍 동남리)に位置する伝統茶店「百済香(백제향)」が元祖店として有名である。同じく蓮を用いたヨンコッチャ(蓮花茶、연꽃차)や、ヨンニプチャ(蓮葉茶、연잎차)を一緒に提供する店もある。

代表的な特産品

扶余郡は農業の盛んな地域であり、スイカ(수박)、メロン(멜론)、イチゴ(딸기)、栗()、ミニトマト(방울토마토)、キュウリ(오이)、マッシュルーム(양송이)、シイタケ(표고버섯)などが代表的な特産品である。地域の共同ブランドとして「グットゥレ(굿뜨래、goodtrae)」が用いられており、「good(よい)」と自然を象徴する「tree(木)」を掛け合わせた造語である。特産品を活かして、ミニトマトをジュースや料理用のソースとして利用したり、シイタケをキムパプ(海苔巻き/김밥)の具として用いたりする飲食店もある。

  • パンウルトマト(ミニトマト/방울토마토)世道面
  • スバク(スイカ/수박)
  • ヤンソンイボソッ(マッシュルーム/양송이버섯)
  • ピョゴボソッ(シイタケ/표고버섯)

代表的な酒類・飲料

ヨンコッチャ(蓮花茶/연꽃차)

ヨンコッチャ(연꽃차)は、蓮花茶。咲く直前の蓮の花をつぼみの状態で摘み、熱湯や、ヨンニプチャ(蓮葉茶、연잎차)、緑茶などをかけて作る。蓮の花は器の中でゆっくりと花びらが開くので、その美しい姿とともに華やかな香りを楽しむ。花が咲くシーズンは7月なので、その時期の夜明け前に収穫をしなければならない。また、摘んですぐに冷凍することで、シーズン以外の時期にも楽しむことができる。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • ペクチェエチプ(백제의집)
住所:忠清南道扶余郡扶余邑聖王路248(官北里119-3)
住所:충청남도 부여군 부여읍 성왕로 248(관북리 119-3)
電話:041-834-1212
料理:ヨンニプパプ(蓮の葉包みごはん)
  • 薯童韓牛扶余本店(서동한우 부여본점)
住所:忠清南道扶余郡扶余邑聖王路256(官北里118-2)
住所:충청남도 부여군 부여읍 성왕로 256(관북리 118-2)
電話:041-835-7585
料理:薯童韓牛の焼肉
  • 百済香(백제향)
住所:忠清南道扶余郡扶余邑泗沘路30番キル17(東南里653-1)
住所:충청남도 부여군 부여읍 사비로30번길 17(동남리 653-1)
電話:041-837-0110
料理:ヨンコッパン(蓮花饅頭)、ヨンコッチャ(蓮花茶)
  • トジョン(터전)
住所:忠清南道扶余郡窺巌面興首路771(盤山里322-7)
住所:충청남도 부여군 규암면 흥수로 771(반산리 322-7)
電話:041-834-7794
料理:ミニトマト料理
  • サトクッパプ(사또국밥)
住所:忠清南道扶余郡扶余邑義烈路33(東南里429-4)
住所:충청남도 부여군 부여읍 의열로 33(동남리 429-4)
電話:041-836-6800
料理:ソモリクッパプ(牛頭部のスープごはん)コムタン(牛スープ)

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2010年11月に初めて扶余郡を訪れた。ガイドブックの取材であり、ひと通りの歴史スポットを巡ったが、新羅の都である慶州市に比べて残っている遺蹟が少なく、戦いに敗れた国ならではの光景として印象に残った。定林寺址の五層石塔は百済時代から残る数少ないひとつであるが、基壇の一部に「大唐平百済国碑銘」との文字が刻まれており、新羅との連合軍として唐から遠征して来た武将、蘇定方が戦勝碑に見立てて記したものである。残ったというよりは、意図して残されたものであり、失われた国の無念さを見るように感じた。

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2023年9月17日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目