「タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)」の版間の差分
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| + | [[ファイル:22122817.JPG|thumb|400px|タッペクスク]] | ||
| + | '''タッペクスク'''([[닭백숙]])は、丸鶏の水煮。 | ||
| − | + | == 概要 == | |
| + | タッ([[닭]])は鶏。ペクスク([[백숙]])は漢字で「白熟」と書いて味付けをなしに煮込むこと。丸鶏を鍋、または圧力釜などで煮込んで作る。高麗人参やキバナオウギ、ナツメなどの韓方材を入れて煮ることも多い。韓方材を入れたものはハンバンペクスク(丸鶏の韓方煮、[[한방백숙]])とも呼ぶ。丸鶏に熱が通ったら大皿に盛り付けて食卓に運び、食べやすくハサミで切った後、塩コショウにつけて味わう。また、残った煮汁で米や野菜、緑豆などを煮込み、[[タッチュク(鶏粥/닭죽)]]として味わうのも定番である。かつては家庭ごとに鶏を飼っており、来客があったときや、祝い事の際にタッペクスクを作った。現在でも家庭料理として作られるほか、地鶏専門店や、鶏料理専門店などで提供される。類似の料理として、[[タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)]]、[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]がある。同様の調理法でアヒルを煮たものは[[オリペクスク(アヒルの水炊き/오리백숙)]]と呼ぶ。 | ||
*類似料理との差異 | *類似料理との差異 | ||
| − | : | + | :タッペクスクと比較される類似料理に[[タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)]]と、[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]があり、主に以下のような差異がある。 |
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| − | |+ | + | |+ タッペクスクと類似料理の比較 |
! 料理名 !! タッカンマリ !! サムゲタン !! タッペクスク | ! 料理名 !! タッカンマリ !! サムゲタン !! タッペクスク | ||
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! 料理の後 | ! 料理の後 | ||
| 残ったスープにカルグクスやごはんを入れる || 特になし || 煮汁で粥を作る | | 残ったスープにカルグクスやごはんを入れる || 特になし || 煮汁で粥を作る | ||
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| + | == 歴史 == | ||
| + | 丸鶏を茹でて食べるという簡便な調理法であり、古くから食べられていたと考えられる。文献史料の一例として、1795年に朝鮮王朝第22代王の正祖(チョンジョ、정조)が水原華城まで出かけたときの記録である『園幸乙卯整理儀軌([[원행을묘정리의궤]])』に、恵慶宮洪氏の食事として「陳鶏白熟([[진계백숙]])」が記載されている<ref>[https://jsg.aks.ac.kr/data/serviceFiles/pdf/K2-2897_002.pdf 【PDF】園幸乙卯整理儀軌(巻4饌品/粥水剌十一日、P327、1行目〈132/200〉)] 、デジタル蔵書閣(韓国中央研究院)、2024年8月16日閲覧</ref>。陳鶏([[진계]])とは老鶏のことである。なお、同じ食膳に若鶏を蒸した「軟鶏蒸([[연계증]])」も並んでいる。 | ||
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| + | == 地域 == | ||
| + | *慶尚北道亀尾市 | ||
| + | ::[[慶尚北道の料理|慶尚北道]][[亀尾市の料理|亀尾市]]の金烏山(クモサン、금오산)は登山客に人気の観光地で、その玄関口にあたる南通洞(ナムトンドン、남통동)にハンバンペクスク(丸鶏の漢方煮、[[한방백숙]])を提供する飲食店が多く地域の名物になっている。 | ||
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| + | *慶尚北道青松郡 | ||
| + | ::[[慶尚北道の料理|慶尚北道]][[青松郡の料理|青松郡]]では、天然の炭酸泉で煮込んだタッペクスクが名物であり、炭酸泉の湧出する達基薬水湯(タルギヤクスタン、달기약수탕)と、新村薬水湯(シンチョンヤクスタン、신촌약수탕)の2ヶ所に専門店が集まっている。炭酸泉は鉄分などのミネラルを含み、胃腸病や皮膚病に効果があるとされている。タッペクスクがを提供する飲食店は「旅館食堂(여관식당)」の看板を掲げているところが多く、もともとは温泉の湯治客に対して振る舞ったのが始まりだとされる。タッペクスクは煮込むのに時間がかかるため、タップルコギ(鶏肉の網焼き、[[닭불고기]])を食べながら待つのが定番となっている。 | ||
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| + | *慶尚南道金海市 | ||
| + | ::[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[金海市の料理|金海市]]では、地域ごとの郷土料理や飲食店通りを「金海9味([[김해9미]])」と総称し、そのひとつに進礼面(チルレミョン、진례면)の「進礼タッペクスク([[진례 닭백숙]])」を選定している。 | ||
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| + | *慶尚南道咸陽郡 | ||
| + | ::[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[咸陽郡の料理|咸陽郡]]では、地域の代表的な料理を総称する「咸陽8味([[함양8미]])」のひとつにタッペクスクとサニャンサムオッペクスク(高麗人参とウルシ入りの茹で丸鶏、[[산양삼옻백숙]])をひとつにまとめて選定している。 | ||
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| + | *済州道済州市 | ||
| + | ::[[済州道の料理|済州道]][[済州市の料理|済州市]]の朝天邑橋来里(チョチョヌプ キョレリ、조천읍 교래리)には、地鶏([[토종닭]])料理の専門店が集まっており、タッペクスクシャブシャブ(鶏の丸茹でしゃぶしゃぶ、[[닭백숙샤브샤브]])が名物となっている。タッペクスクとタッシャブシャブ([鶏しゃぶしゃぶ、[[닭샤브샤브]])をセットにした料理で、タッペクスクを作る間に胸肉だけを薄切りにし、先にタッシャブシャブとして提供するようになったのが始まりである。 | ||
== 脚注 == | == 脚注 == | ||
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*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト) | *[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト) | ||
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール) | *[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール) | ||
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== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
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2025年4月21日 (月) 23:30時点における最新版
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タッペクスク(닭백숙)は、丸鶏の水煮。
概要
タッ(닭)は鶏。ペクスク(백숙)は漢字で「白熟」と書いて味付けをなしに煮込むこと。丸鶏を鍋、または圧力釜などで煮込んで作る。高麗人参やキバナオウギ、ナツメなどの韓方材を入れて煮ることも多い。韓方材を入れたものはハンバンペクスク(丸鶏の韓方煮、한방백숙)とも呼ぶ。丸鶏に熱が通ったら大皿に盛り付けて食卓に運び、食べやすくハサミで切った後、塩コショウにつけて味わう。また、残った煮汁で米や野菜、緑豆などを煮込み、タッチュク(鶏粥/닭죽)として味わうのも定番である。かつては家庭ごとに鶏を飼っており、来客があったときや、祝い事の際にタッペクスクを作った。現在でも家庭料理として作られるほか、地鶏専門店や、鶏料理専門店などで提供される。類似の料理として、タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)、サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)がある。同様の調理法でアヒルを煮たものはオリペクスク(アヒルの水炊き/오리백숙)と呼ぶ。
- 類似料理との差異
- タッペクスクと比較される類似料理にタッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)と、サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)があり、主に以下のような差異がある。
| 料理名 | タッカンマリ | サムゲタン | タッペクスク |
|---|---|---|---|
| 鶏のサイズ | 700g~1.2kg程度の鶏を用いて1羽が2~4人前となる | 3~500g程度のひな鶏を用いて1羽が1人前となる | 700g~1.2kg程度の鶏を用いて1羽が2~4人前となる |
| 具 | 野菜や餅を一緒に煮込み、漢方材を足すこともある | 腹にもち米や漢方材を詰めて煮る | 基本的には鶏だけを煮て漢方材を加える |
| 味付け | 鶏を辛いつけダレで味わう | 薄い塩味、好みで塩を足してもよい | 鶏を塩、コショウで味わう |
| 提供方式 | 金ダライのような鍋で煮ながら味わう | 1人前のトゥッペギ(뚝배기、素焼きの器)に盛り付ける | 鶏だけを大皿に盛り付ける |
| 料理の後 | 残ったスープにカルグクスやごはんを入れる | 特になし | 煮汁で粥を作る |
歴史
丸鶏を茹でて食べるという簡便な調理法であり、古くから食べられていたと考えられる。文献史料の一例として、1795年に朝鮮王朝第22代王の正祖(チョンジョ、정조)が水原華城まで出かけたときの記録である『園幸乙卯整理儀軌(원행을묘정리의궤)』に、恵慶宮洪氏の食事として「陳鶏白熟(진계백숙)」が記載されている[1]。陳鶏(진계)とは老鶏のことである。なお、同じ食膳に若鶏を蒸した「軟鶏蒸(연계증)」も並んでいる。
地域
- 慶尚北道亀尾市
- 慶尚北道青松郡
- 慶尚南道金海市
- 慶尚南道咸陽郡
- 済州道済州市
脚注
- ↑ 【PDF】園幸乙卯整理儀軌(巻4饌品/粥水剌十一日、P327、1行目〈132/200〉) 、デジタル蔵書閣(韓国中央研究院)、2024年8月16日閲覧
外部リンク
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)