「星州郡の料理」の版間の差分

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'''星州郡'''(ソンジュグン、성주군)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは星州郡の料理、特産品について解説する。
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'''星州郡'''(ソンジュグン、성주군)は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]に位置する地域。本ページでは星州郡の料理、特産品について解説する。
  
[[ファイル:16041201br.JPG|thumb|400px|奉化マツタケ祭り]]
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[[ファイル:16122301.JPG|thumb|400px|ハンゲマウル]]
  
 
== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
星州郡は慶尚北道の南西部に位置し、金泉市、漆谷郡、高霊郡、大邱広域市、慶尚南道の陜川郡、居昌郡と接する。人口は4万5184人(2016年11月)<ref>[http://rcps.egov.go.kr:8081/jsp/stat/ppl_stat_jf.jsp 주민등록 인구통계] 、行政自治部ウェブサイト、2016年12月22日閲覧</ref>。南西部に位置する伽耶山(1430m)を筆頭に、郡全体を山々に囲まれる盆地地形である。代表的な観光地としては、世宗大王子胎室(王族の胎盤やへその緒を安置)や、朝鮮時代の集姓村(同族村)であるハンゲマウル(한개마을)などがある。また星山里には星山洞古墳群があり、伽耶諸国のひとつであった星山伽耶の支配層が眠っていると推定される。ソウル(南部ターミナル)から星州バス停留所までは市外バスで約3時間10分。大邱の西部停留所からは市外バスで約1時間20分の距離。
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星州郡は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の南西部に位置する地域。郡の北東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[漆谷郡の料理|漆谷郡]]、西部は広域市の[[大邱市の料理|大邱市]]、南部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[高霊郡の料理|高霊郡]]、南西部は[[慶尚南道の料理|慶尚南道]]の[[居昌郡の料理|居昌郡]]、西部から北部にかけては[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[金泉市の料理|金泉市]]と接する。人口は4万4640人(2018年14月)<ref>[http://www.mois.go.kr/frt/sub/a05/totStat/screen.do 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月14日閲覧</ref>。南西部に位置する標高1430mの伽耶山(カヤサン、가야산)は小白山脈の一角を成し、西部から北部、南部にかけては全体的に山の深い地形をしている。東部には洛東江(ナクトンガン、낙동강)が流れ、[[大邱市の料理|大邱市]]との境界となっている。洛東江に注ぐ支流の伊川(イチョン、이천)や白川(ペクチョン、백천)が郡の中央部を流れ、その周囲に広がる平野部が地域の中心地となっている。代表的な観光地としては、世宗大王子胎室(王族の胎盤やへその緒を安置)や、朝鮮時代の集姓村(同族村)であるハンゲ村(ハンゲマウル、한개마을)などがある。また星山里(ソンサルリ、성산리)地区には星山洞古墳群(ソンサンドンコブングン、성산동고분군)があり、伽耶諸国のひとつであった星山伽耶の支配層が埋葬されていると推定される。[[ソウル市の料理|ソウル市]]から星州郡までは、ソウル南部ターミナルから星州バス停留所まで高速バスで約3時間10分の距離。隣接する[[大邱市の料理|大邱市]]の大邱西部停留場からは市外バスで約1時間20分の距離である。
  
 
== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
[[ファイル:16041202br.JPG|thumb|300px|タルシル村の青巌亭]]
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星州郡では朝鮮時代に多くの両班(支配階級)が集姓村(同族村)を作った。星州郡を発祥地とする本貫は他地域と比較しても群を抜いて多く、星州李氏、星州裵氏、星州都氏、星州(星山)呂氏など28姓氏を数える。その代表が2007年に重要民俗文化財第255号にも指定された月恒面大山里(ウォランミョン テサルリ、월항면 대산리)地区のハンゲマウルである。こうした両班の食文化が現代にも伝えられており、祭祀料理をもとにしたコノムルチム(干物の蒸し煮、[[건어물찜]])はその象徴的な存在だと言える。また、星州は全国的に有名なマクワウリ([[참외]])の名産地であり、農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第10号として星州マクワウリ(성주참외)が登録されている<ref>[http://kpgi.co.kr/page/?mo_id=specialty&id=181&wr_id=184 성주참외] 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2023年8月31日閲覧</ref>。星州では大半の農家がマクワウリを栽培しており、その生産量は実に全国の7割を超える。そのほか、スイカ、リンゴ、ナシ、完熟トマト、ミニトマト、キュウリなどの農作物も栽培されている。
高麗時代後期より、奉化を本貫とする奉化琴氏(봉화금씨)、奉化鄭氏(봉화정씨)の一族が中央で要職を担うようになり、安東(アンドン、안동)地域の士族らが奉化へと移住するようになる。その代表的な人物が現在のタルシル村(달실마을)に移り住んだ権橃(クォン・ボル)であり<ref>[http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=577210&cid=46618&categoryId=46618 봉화군(경상북도)] 、韓国民族文化大百科、2015年4月3日閲覧</ref>、こうした地域では現在も古くからの伝統を守り、両班家の食文化を現在に伝えている。そのほか地域の基幹産業としては農業、畜産業があり、米や雑穀、リンゴ、ブルーベリー、イチゴ、スイカ、トマトなどの果物類、マツタケ、シイタケ、トウガラシ、ジャガイモ、アユ、韓牛(ハヌ、[[한우]])、韓方材といった特産品がある。また、食品以外では鍮器(ユギ、[[유기]])と呼ばれる真鍮食器や、麻布の産地としても有名。鍮器の技能保有者は慶尚北道無形文化財第22号に指定されている。
 
  
 
== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
特産品の韓方材を食べさせて飼育した韓薬牛の焼肉や、タルシル村の伝統菓子が有名である。
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祭祀料理をもとにしたコノムルチムや、キジ肉を使った料理が名物である。
  
 
=== コノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜) ===
 
=== コノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜) ===
[[ファイル:16041203br.JPG|thumb|300px|ハニャググイ]]
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[[ファイル:16122302.JPG|thumb|300px|コノムルチム]]
:奉化郡では韓方材の栽培が盛んであり、それを利用した韓牛の飼育も盛んである。これらを韓方材(韓薬)を食べさせた牛という意味で、韓薬牛(ハニャグ、한약우)、または奉化韓薬牛(ポンファハニャグ、봉화한약우)と呼ぶ。ハニャググイのグイは焼き物の総称。韓薬牛と呼ばれるのは奉化郡で生まれた牛に、生後28ヶ月以上、専用の飼料を食べさせて育てたものを指し、また肉質は1等級以上に限る<ref>安東奉化畜産業協同組合作成の奉化韓薬牛パンフレット</ref>。韓薬牛の飼料として使われる韓方材は6種類あり、当帰(トウキの根、[[당귀]])、白朮(オオバオケラの根、[[백출]])、陳皮(ミカンの皮、[[진피]])、桔梗(キキョウの根、[[도라지]])、芍薬(シャクヤクの根、[[작약]])、黄耆(キバナオウギの根[[황기]])を混ぜ合わせて作る。韓薬牛の飼育は1993年に始まった。
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:星州郡では祭祀膳にコノムル([[건어물]])と呼ばれる干物類を多く捧げる。これを祭祀後にまとめて醤油で甘辛く煮付けたものをコノムルチムと呼ぶ。チム([[]])は蒸し煮の総称。有名食堂である「カムコル食堂(감골식당)」ではコノムルチムを看板料理のひとつとしており、干しダラ([[북어]])、アカエイ([[가오리]])、スルメイカ([[오징어]])、鶏肉、鶏の玉ひも(排卵前の卵と卵管)、昆布といった食材を煮込んで提供する。
  
 
=== クォンシャブシャブ(キジ肉のシャブシャブ/꿩샤브샤브) ===
 
=== クォンシャブシャブ(キジ肉のシャブシャブ/꿩샤브샤브) ===
[[ファイル:16041204br.JPG|thumb|300px|タルシル村のハングァ]]
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:星州郡にはキジ肉料理を出す店が多く、[[クォンシャブシャブ(キジのシャブシャブ/꿩샤브샤브)]]や、クォンタン(キジ肉の鍋、[[꿩탕]])クォンマンドゥ(キジ肉餃子、[[꿩만두]])といった料理を味わえる。
:郡内の酉谷里(ユゴンニ、유곡리)地区には安東権氏(안동권씨)の同族村であるタルシル村があり、朝鮮時代中期の官僚である権橃が開いた。山に囲まれたこの地域は金の鶏が村全体を抱いているようだと表現され、鶏谷との意味でタルシル、またそれを漢字で酉谷と表現する。この村には現在も安東権氏の末裔30余戸が暮らしており、先祖を祀った共同祭祀を行う。このとき祭祀膳に捧げられるのが伝統菓子のハングァ(韓菓)であり、現在は地域の特産品として販売もされている。その製法は安東権氏の家門に代々受け継がれた門外不出のものであり、嫁いできた女性以外は実の娘であっても教わることができない。実際の製造は村の女性たちが農作業の合間に集まってすべて手作業で行っている。購入する場合は10日前までに予約が必要。
 
  
 
== 代表的な特産品 ==
 
== 代表的な特産品 ==
山間部の地形を活かした特産品があり、中でも秋にとれるマツタケと川魚のアユが有名である。
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かつてはスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が盛んになった。盆地型で降水量が少なく、日射量が多いことからマクワウリ栽培に向いているとされる。
  
 
=== チャメ(マクワウリ/참외) ===
 
=== チャメ(マクワウリ/참외) ===
[[ファイル:16041205br.JPG|thumb|300px|ソンイトルソッパプ]]
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[[ファイル:16122303.JPG|thumb|300px|市場で売られている星州産マクワウリ]]
:奉化郡は面積の83%が山林であり、山林面積の約4割をマツ(アカマツ、チョウセンゴヨウ)が占める。こうした環境により古くからマツタケの産地として知られ、山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第10号として奉化マツタケは登録されている(江原道襄陽郡、慶尚北道盈徳郡、蔚珍郡もマツタケの登録がある)<ref>[https://www.forest.go.kr/newkfsweb/cop/bbs/selectBoardArticle.do?nttId=394459&bbsId=BBSMSTR_1068&pageIndex=5&pageUnit=10&searchtitle=title&searchcont=&searchkey=&searchwriter=&searchdept=&searchWrd=&ctgryLrcls=&ctgryMdcls=&ctgrySmcls=&ntcStartDt=&ntcEndDt=&orgId=kfs&mn=KFS_02_01_07_02_03 지리적표시 임산물 제10호 - 봉화송이] 、山林庁ウェブサイト、2016年4月12日閲覧</ref>。奉化におけるマツタケのシーズンは9月下旬から10月中旬であり、この時期に毎年「奉化マツタケ祭り(봉화송이축제)」が開催される<ref>[http://www.bonghwafestival.com/songi/ 봉화송이축제] 、奉化観光ウェブサイト、2016年4月12日閲覧</ref>。
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:星州郡はかつてスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が主流となった。星州郡の気候条件などがマクワウリ栽培に向いていたのも要因であるが、シーズンに1度しか収穫できないスイカに比べて、マクワウリは最大で3~4回収穫できるメリットが農家にとっては大きかったとされる(八田靖史の取材記録より、2016年10月26日)。現在では全国に流通する約7割のマクワウリを星州郡で生産している<ref>[https://www.sj.go.kr/S0001/page.jsp?site_id=S0001&mnu_uid=2081& 주요작물재배현황] 、星州郡ウェブサイト、2016年12月23日閲覧</ref>。
  
*チャメハングァ(マクワウリ味の伝統菓子/등겨장)
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*品種
:飲食店においてはソンイグイ(マツタケ焼き、송이구이)、ソンイトルソッパプ(マツタケ釜飯、송이돌솥밥)、ソンイジョンゴル(マツタケ鍋、송이전골)といった食べ方が一般的である。またシーズンになると焼肉店などでもマツタケを扱い、地元名産の韓牛と一緒に焼いて食べるのも人気が高い。
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:現在の韓国で栽培されているマクワウリは大半がクムサラギ(금싸라기)の系統であり、もともとは日本品種の銀泉を改良したものである。星州においてもクムサラギ系統のマクワウリが主流として栽培されている。
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*栽培方法
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:病害虫を防ぐ目的から、カボチャに接ぎ木をして栽培する方法が主流である。もっともはやい2月末の収穫を目指す場合、10~11月に種をまき、接ぎ木をしたうえで12~1月に畑へと植え替える。
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*旬
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:本来は4~6月がいちばんの旬であるが、近年は出荷が早まっており、2月末頃から市場に出回る。9月から10月にはすべての出荷が終わり、貯蔵がきかないこともあって冬場に出回ることはない。
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*輸出
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:星州郡では日本、シンガポール、香港、マレーシアなどにマクワウリを輸出している。中でも日本への輸出がもっとも多く、2015年は168.4トンに上っている<ref>[https://www.sj.go.kr/S0001/page.jsp?site_id=S0001&mnu_uid=2083& 농산물 수출 실적] 、星州郡ウェブサイト、2016年12月23日閲覧</ref>。
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*関連施設
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[[ファイル:16122304.JPG|thumb|300px|マクワウリ生態学習院]]
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:玉星里(オクソンニ、옥성리)地区には星州農業技術センターに併設されて「マクワウリ生態学習院(참외생태학습원)」がある。ここではマクワウリの栽培方法や、品種改良の歩み、歴史について学ぶことができる。また、郡内各地にある流通センターには、シーズンになると簡易販売場が設けられ、そこでマクワウリを購入することもできる。
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*利用
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[[ファイル:16122305.JPG|thumb|300px|マクワウリの水飴を用いた伝統菓子]]
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:星州郡ではマクワウリを使った加工食品作りも行われている。星山里(ソンサルリ、성산리)地区にある「スミダム(수미담)」では、マクワウリを煮詰めて水飴を作り、それを販売するとともにこれを利用した伝統菓子([[한과]])の生産も行っている。また、白雲里(ペグンニ、백운리)地区の農家レストラン「ミル(밀)」では、マクワウリの漬物([[장아찌]])や、マクワウリ入りの[[ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)]]や[[チンパン(あんまん/찐빵)]]などを作るとともに、マクワウリで甘味をつけた酢、水飴、コチュジャンなどを料理の味付けに利用している。
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:*スミダム(수미담)
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::住所:慶尚北道星州郡大家面星山2キル95-33(星山里1222-4)
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::住所:경상북도 성주군 성주읍 성산2길 95-33(성산리 1222-4)
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::電話:054-931-6464
  
 
=== トゥンギョジャン(大麦の糠味噌/등겨장) ===
 
=== トゥンギョジャン(大麦の糠味噌/등겨장) ===
[[ファイル:16041205br.JPG|thumb|300px|ソンイトルソッパプ]]
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:大麦の糠を原料に作った促成味噌の一種。シグムジャン([[시금장]])とも呼ぶ。かつて春窮期に味噌やコチュジャンの代替として即席で作った。主に包み味噌([[쌈장]])や、混ぜ味噌([[비빔장]])、チゲ([[찌개]])用として使われる。
:奉化郡は面積の83%が山林であり、山林面積の約4割をマツ(アカマツ、チョウセンゴヨウ)が占める。こうした環境により古くからマツタケの産地として知られ、山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第10号として奉化マツタケは登録されている(江原道襄陽郡、慶尚北道盈徳郡、蔚珍郡もマツタケの登録がある)<ref>[https://www.forest.go.kr/newkfsweb/cop/bbs/selectBoardArticle.do?nttId=394459&bbsId=BBSMSTR_1068&pageIndex=5&pageUnit=10&searchtitle=title&searchcont=&searchkey=&searchwriter=&searchdept=&searchWrd=&ctgryLrcls=&ctgryMdcls=&ctgrySmcls=&ntcStartDt=&ntcEndDt=&orgId=kfs&mn=KFS_02_01_07_02_03 지리적표시 임산물 제10호 - 봉화송이] 、山林庁ウェブサイト、2016年4月12日閲覧</ref>。奉化におけるマツタケのシーズンは9月下旬から10月中旬であり、この時期に毎年「奉化マツタケ祭り(봉화송이축제)」が開催される<ref>[http://www.bonghwafestival.com/songi/ 봉화송이축제] 、奉化観光ウェブサイト、2016年4月12日閲覧</ref>。
 
  
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 
=== 星州郡のマッコリ ===
 
=== 星州郡のマッコリ ===
:奉化郡には現在6ヶ所の醸造場があり<ref>[http://bmall.go.kr/shop/index.php?doc=program/doc.php&do_id=18 봉화양조장 상세 정보] 、봉화장터、2016年4月12日閲覧</ref>、法田醸造場(법전양조장)の清凉酒(청량주)、奉化醸造場(봉화양조장)の奉化純麹生マッコリ(봉화 순곡생막걸리)、三洞醸造場(삼동양조장)の清涼山マッコリ(청량산 막걸리)、小川濁・薬酒醸造場(소천탁 약주양조장)の小川長生マッコリ(소천장생막걸리)、春陽醸造場(춘양양조장)の太白山米マッコリ(태백산 쌀막걸리)、石浦醸造場(석포양조장)の石浦マッコリ(석포막걸리)といった銘柄が流通している。
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:星州郡には伽泉醸造場の「星州伽耶山伽泉米生マッコリ(성주 가야산 가천 쌀생막걸리)」や、星州濁酒醸造場の「龍巌マッコリ(용암막걸리)」がある。
 
 
=== 奉化仙酒(봉화선주) ===
 
:刀川里(도천리)地区の海軒古宅(해헌고택)に代々住む安東金氏の家系に受け継がれた伝統酒。米と小麦麹を原料として五加皮、松葉、桂皮などの韓方材を加えた蒸留酒で、種類としては五加皮酒([[오가피술]])に当たるが、五加皮([[오가피]])の薬効から不老不死の酒になぞらえて仙酒と名付けられている<ref>[http://www.sunzu.co.kr/sunzuhome/01sunzu/01-00.html 봉화선주] 、奉化仙酒ウェブサイト、2016年5月7日閲覧</ref>。
 
  
 
== 飲食店情報 ==
 
== 飲食店情報 ==
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== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活]
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;関連サイト
 
*[https://www.sj.go.kr/tour/ 星州文化観光(韓国語)]
 
*[https://www.sj.go.kr/tour/ 星州文化観光(韓国語)]
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;制作者関連サイト
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*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
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*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
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*[https://itunes.apple.com/us/app/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E9%A3%9F%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%BE%9E%E5%85%B8/id1220010846?l=ja&ls=1&mt=8 韓国語食の大辞典アプリ版](八田靖史制作の韓国料理専門辞典)
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
 
 
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[[Category:韓食ペディア]]
 
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[[Category:慶尚北道・大邱市の料理]]
 
[[Category:慶尚北道・大邱市の料理]]
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*[[クォンシャブシャブ(キジのシャブシャブ/꿩샤브샤브)]]
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*[[ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)]]
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*[[チンパン(あんまん/찐빵)]]

2023年8月30日 (水) 23:47時点における最新版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

星州郡(ソンジュグン、성주군)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは星州郡の料理、特産品について解説する。

ハンゲマウル

地域概要

星州郡は慶尚北道の南西部に位置する地域。郡の北東部は慶尚北道漆谷郡、西部は広域市の大邱市、南部は慶尚北道高霊郡、南西部は慶尚南道居昌郡、西部から北部にかけては慶尚北道金泉市と接する。人口は4万4640人(2018年14月)[1]。南西部に位置する標高1430mの伽耶山(カヤサン、가야산)は小白山脈の一角を成し、西部から北部、南部にかけては全体的に山の深い地形をしている。東部には洛東江(ナクトンガン、낙동강)が流れ、大邱市との境界となっている。洛東江に注ぐ支流の伊川(イチョン、이천)や白川(ペクチョン、백천)が郡の中央部を流れ、その周囲に広がる平野部が地域の中心地となっている。代表的な観光地としては、世宗大王子胎室(王族の胎盤やへその緒を安置)や、朝鮮時代の集姓村(同族村)であるハンゲ村(ハンゲマウル、한개마을)などがある。また星山里(ソンサルリ、성산리)地区には星山洞古墳群(ソンサンドンコブングン、성산동고분군)があり、伽耶諸国のひとつであった星山伽耶の支配層が埋葬されていると推定される。ソウル市から星州郡までは、ソウル南部ターミナルから星州バス停留所まで高速バスで約3時間10分の距離。隣接する大邱市の大邱西部停留場からは市外バスで約1時間20分の距離である。

食文化の背景

星州郡では朝鮮時代に多くの両班(支配階級)が集姓村(同族村)を作った。星州郡を発祥地とする本貫は他地域と比較しても群を抜いて多く、星州李氏、星州裵氏、星州都氏、星州(星山)呂氏など28姓氏を数える。その代表が2007年に重要民俗文化財第255号にも指定された月恒面大山里(ウォランミョン テサルリ、월항면 대산리)地区のハンゲマウルである。こうした両班の食文化が現代にも伝えられており、祭祀料理をもとにしたコノムルチム(干物の蒸し煮、건어물찜)はその象徴的な存在だと言える。また、星州は全国的に有名なマクワウリ(참외)の名産地であり、農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第10号として星州マクワウリ(성주참외)が登録されている[2]。星州では大半の農家がマクワウリを栽培しており、その生産量は実に全国の7割を超える。そのほか、スイカ、リンゴ、ナシ、完熟トマト、ミニトマト、キュウリなどの農作物も栽培されている。

代表的な料理

祭祀料理をもとにしたコノムルチムや、キジ肉を使った料理が名物である。

コノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜)

コノムルチム
星州郡では祭祀膳にコノムル(건어물)と呼ばれる干物類を多く捧げる。これを祭祀後にまとめて醤油で甘辛く煮付けたものをコノムルチムと呼ぶ。チム()は蒸し煮の総称。有名食堂である「カムコル食堂(감골식당)」ではコノムルチムを看板料理のひとつとしており、干しダラ(북어)、アカエイ(가오리)、スルメイカ(오징어)、鶏肉、鶏の玉ひも(排卵前の卵と卵管)、昆布といった食材を煮込んで提供する。

クォンシャブシャブ(キジ肉のシャブシャブ/꿩샤브샤브)

星州郡にはキジ肉料理を出す店が多く、クォンシャブシャブ(キジのシャブシャブ/꿩샤브샤브)や、クォンタン(キジ肉の鍋、꿩탕)クォンマンドゥ(キジ肉餃子、꿩만두)といった料理を味わえる。

代表的な特産品

かつてはスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が盛んになった。盆地型で降水量が少なく、日射量が多いことからマクワウリ栽培に向いているとされる。

チャメ(マクワウリ/참외)

市場で売られている星州産マクワウリ
星州郡はかつてスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が主流となった。星州郡の気候条件などがマクワウリ栽培に向いていたのも要因であるが、シーズンに1度しか収穫できないスイカに比べて、マクワウリは最大で3~4回収穫できるメリットが農家にとっては大きかったとされる(八田靖史の取材記録より、2016年10月26日)。現在では全国に流通する約7割のマクワウリを星州郡で生産している[3]
  • 品種
現在の韓国で栽培されているマクワウリは大半がクムサラギ(금싸라기)の系統であり、もともとは日本品種の銀泉を改良したものである。星州においてもクムサラギ系統のマクワウリが主流として栽培されている。
  • 栽培方法
病害虫を防ぐ目的から、カボチャに接ぎ木をして栽培する方法が主流である。もっともはやい2月末の収穫を目指す場合、10~11月に種をまき、接ぎ木をしたうえで12~1月に畑へと植え替える。
本来は4~6月がいちばんの旬であるが、近年は出荷が早まっており、2月末頃から市場に出回る。9月から10月にはすべての出荷が終わり、貯蔵がきかないこともあって冬場に出回ることはない。
  • 輸出
星州郡では日本、シンガポール、香港、マレーシアなどにマクワウリを輸出している。中でも日本への輸出がもっとも多く、2015年は168.4トンに上っている[4]
  • 関連施設
マクワウリ生態学習院
玉星里(オクソンニ、옥성리)地区には星州農業技術センターに併設されて「マクワウリ生態学習院(참외생태학습원)」がある。ここではマクワウリの栽培方法や、品種改良の歩み、歴史について学ぶことができる。また、郡内各地にある流通センターには、シーズンになると簡易販売場が設けられ、そこでマクワウリを購入することもできる。
  • 利用
マクワウリの水飴を用いた伝統菓子
星州郡ではマクワウリを使った加工食品作りも行われている。星山里(ソンサルリ、성산리)地区にある「スミダム(수미담)」では、マクワウリを煮詰めて水飴を作り、それを販売するとともにこれを利用した伝統菓子(한과)の生産も行っている。また、白雲里(ペグンニ、백운리)地区の農家レストラン「ミル(밀)」では、マクワウリの漬物(장아찌)や、マクワウリ入りのピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)チンパン(あんまん/찐빵)などを作るとともに、マクワウリで甘味をつけた酢、水飴、コチュジャンなどを料理の味付けに利用している。
  • スミダム(수미담)
住所:慶尚北道星州郡大家面星山2キル95-33(星山里1222-4)
住所:경상북도 성주군 성주읍 성산2길 95-33(성산리 1222-4)
電話:054-931-6464

トゥンギョジャン(大麦の糠味噌/등겨장)

大麦の糠を原料に作った促成味噌の一種。シグムジャン(시금장)とも呼ぶ。かつて春窮期に味噌やコチュジャンの代替として即席で作った。主に包み味噌(쌈장)や、混ぜ味噌(비빔장)、チゲ(찌개)用として使われる。

代表的な酒類・飲料

星州郡のマッコリ

星州郡には伽泉醸造場の「星州伽耶山伽泉米生マッコリ(성주 가야산 가천 쌀생막걸리)」や、星州濁酒醸造場の「龍巌マッコリ(용암막걸리)」がある。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • カムコル食堂(감골식당)
住所:慶尚北道星州郡星州邑京山キル9-3(京山里 613-1)
住所:경상북도 성주군 성주읍 경산길 9-3(경산리 613-1)
電話:054-933-2416
料理:コノムルチム
  • ミル(밀)
住所:慶尚北道星州郡修倫面徳雲路1566(白雲里1038)
住所:경상북도 성주군 수륜면 덕운로 1566(백운리 1038)
電話:054-931-2660
料理:韓定食、ビビンバ

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月に初めて星州郡を訪れた。慶尚北道広報大使が取材、執筆する観光冊子『GB-Story Vol.3』にはこの時の取材をもとに、チャメやコノムルチムを中心とした話が掲載されている。

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月14日閲覧
  2. 성주참외 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2023年8月31日閲覧
  3. 주요작물재배현황 、星州郡ウェブサイト、2016年12月23日閲覧
  4. 농산물 수출 실적 、星州郡ウェブサイト、2016年12月23日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目