ソウル市の料理

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ソウル市(서울시)は韓国の北西部に位置する地域。本ページではソウル市の料理、特産品について解説する。

昌徳宮の正殿である仁政殿

目次

地域概要

ソウル駅

ソウル市(ソウルシ、서울시)は韓国の北西部に位置する地域。正式にはソウル特別市(ソウルトゥッピョルシ、서울특별시)と呼ぶ。韓国の首都であり、唯一の特別市である。ソウル(서울)とは固有語で都を意味する。市全体を大きく囲むように京畿道と接しており、西部は仁川市と接する。人口は980万6538人(2018年7月)で、韓国の市としてはもっとも多い[1]。主要な観光地としては、朝鮮時代の王宮である景福宮(キョンボックン、경복궁)、徳寿宮(トクスグン、덕수궁)といった歴史的なスポットに加え、ソウルを一望できるNソウルタワー(エヌソウルタウォ、N서울타워)や、東大門市場(トンデムンシジャン、동대문시장)、南大門市場(ナムデムンシジャン、남대문시장)といったショッピングスポットもある。繁華街の明洞(ミョンドン、명동)、弘大(ホンデ、홍대)、梨泰院(イテウォン、이태원)、カロスキル(カロスキル、가로수길)といった地域の人気も高い。ソウルへのアクセスは金浦国際空港が市内にあるほか、仁川国際空港からも空港鉄道や地下鉄で結ばれている。また、国内交通の中心であるソウル駅や龍山駅からは高速鉄道が、ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナル、ソウル南部ターミナルからは高速バスが地方都市とを結んでいる。

食文化の背景

宮中料理の神仙炉

ソウル市は朝鮮時代(1392~1910年)に都が置かれ、長らく国の中心として栄えてきた。ソウル市の食文化を語るうえで、王宮において王や王族の食事として作られた宮中料理の存在は欠かせないものである。宮中料理は国家の催す宴会などを通じて両班(官僚を輩出する支配階級、양반)の家庭にも広まり、また1910年からの日本統治時代には、宮中出身の調理人が料亭に勤めたことで大衆化が進んだ。市内の鍾路区楽園洞(チョンノグ ナグォンドン、종로구 낙원동)には伝統餅の専門店が集まっているが、これも宮中で働いていた尚宮(女官、상궁)らが店を出したことが始まりである。現在のソウル市にはこうした流れを汲む、宮中料理店、韓定食店、伝統茶店などが営業をする。このほかソウル市を発祥とする料理としては、ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)や、タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)が有名である。また、各地域に特定料理の専門店が集まる通りが形成されており、中区奨忠洞(チュング チャンチュンドン、중구 장충동)のチョッパル(豚足の煮物/족발)や、中区新堂洞(チュング シンダンドン、중구 신당동)のシンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)、冠岳区新林洞(クァナック シルリムドン、관악구 신림동)のスンデボックム(腸詰炒め/순대볶음)などが名物として知られる。

代表的な料理

ソウルは朝鮮時代から国の都として栄え、各地からの進上品が集まってさまざまな食文化が育まれた。その粋と言えるものが朝鮮王朝宮中飲食(宮中料理)であり、ソウルを代表する食文化のひとつに数えられる。ソウルを発祥とする料理には、ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)があり、このほかソウルの各地にある専門店通りや市場名物などを指して、ソウル料理を特徴づけることができる。

朝鮮王朝宮中飲食

宮中料理店におけるコースの一部

朝鮮王朝宮中飲食(チョソンワンジョ クンジュンウムシク、조선왕조 궁중음식)は、朝鮮時代(1392~1910年)に宮中で食べられていた料理、飲料の総称(「宮中飲食(宮中料理)」の項目も参照)。料理の中には新羅時代、高麗時代に完成されたものも含まれる。その調理方法と配膳方法は「朝鮮王朝宮中飲食」の名前で国の重要無形文化財第38号に指定されている。初代の技能保有者は宮中の尚宮(女官)であった韓煕順(ハン・ヒスン、한희순)氏が認定を受けた。以後、2代目を黄慧性(ファン・ヘソン、황혜성)氏、現在の3代目を韓福麗(ハン・ボンニョ、한복려)氏と、鄭吉子(チョン・ギルジャ、정길자)氏の2名が引き継いでいる。朝鮮王朝宮中飲食の伝承機関として、鍾路区苑西洞(チョンノグ ウォンソドン、종로구 원서동)に「宮中飲食研究院(궁중음식연구원)」がある。

  • トク(餅/떡)
鍾路区楽園洞(チョンノグ ナグォンドン、종로구 낙원동)には伝統餅の専門店が多く、祭祀用、贈答用など種類豊富な餅を販売する。かつて宮中で働いた厨房女官や待令熟手(男性調理人)らがこの地で店を開いたのが始まりである。

ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)

ソルロンタンは、牛スープ。詳細はソルロンタン(牛スープ/설렁탕)を参照。

タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)

タッカンマリは、丸鶏の鍋。詳細はタッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)を参照。

シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)

シンダンドントッポッキは、新堂洞式の餅炒め。詳細はシンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)を参照。

ペクスンデ(辛くない腸詰炒め/백순대)

ペクスンデは、辛くない腸詰炒め。スンデボックム(腸詰炒め/순대볶음)の一種であるが、辛い薬味ダレを用いずに、塩、コショウ、エゴマの粉などで味付けをするのが特徴である。冠岳区新林洞(クァナック シルリムドン)の名物であり、「元祖民俗スンデタウン(원조민속순대타운)」、「ヤンジスンデタウン(양지순대타운)」というふたつのビル内に小規模なスンデ専門店が多数集まっている。周辺にある店も含めて、一帯は「新林洞スンデタウン(신림동 순대타운)」と呼ばれる。もともとこの地域でスンデの専門店が増えたのは1970年代後半であり、露店として営業していた店が再開発によって移転を余儀なくされ、1992年に「元祖民俗スンデタウン」として建物の中に入ったのが始まりである。

ソウルの専門店通り

ソウルの各地域に専門店の集まった一角があり、これらはソウルの名物料理として扱われる。

ソウルの市場グルメ

広蔵市場の屋台

ソウルには各地域に伝統市場があり、市場ごとに名物となっている料理がある。

広蔵市場

広蔵市場(クァンジャンシジャン、광장시장)は、鍾路区礼智洞(チョンノグ イェジドン、종로구 예지동)に位置する市場。かつてソウルの3大市場と呼ばれた、梨峴市場(ペオゲ市場)、鐘楼市場(雲従街)、七牌市場のうち、梨峴市場を前身とする。梨峴市場は1905年に当時の漢城府から韓国初の常設市場として認可を受け、開設当初は東大門市場と呼ばれたのち、1960年代に入って広蔵市場と改称した。当初は農産物を中心とする食品市場であったが、1960年代に入って織物や衣類を扱う店が増え、これが現在にも引き続いて韓服などの伝統衣服、絨毯、カーテン、寝具、手工芸品などを多く販売する。1990年代以降は、市街地にあって韓国の伝統的な市場を見られるとして海外からの観光客が増加。屋台などのB級グルメが注目されるようになっている。主要な名物には、マヤッキムパプ(ひと口大の海苔巻き、마약김밥)ピンデトク(緑豆のお焼き/빈대떡)ポリパプ(麦飯のビビンバ、보리밥)などがある。

南大門市場

南大門市場のカルチジョリム

南大門市場(ナムデムンシジャン、남대문시장)は、中区南倉洞(チュング ナムチャンドン、중구 남창동)に位置する市場。朝鮮時代にソウル(漢陽)の正門である南大門(崇礼門)付近において商いの場として発達し、1414年には正式な許可を得て市場の形式となった。約2万坪の敷地に1万を超える店舗が集まっており、1日の訪問客は約30万人という巨大市場である[2]。食料品、日用品、衣料品などを中心に、観光客向けのお土産なども多数扱う。代表的な名物としては、カルチジョリム(タチウオの煮付け/갈치조림)カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)ワンマンドゥ(肉まん、왕만두)などがある。ホットク(蜜入りのお焼き/호떡)の専門店も多く、中でも2番ゲート前に出ている屋台のヤチェホットク(春雨入りのお焼き/야채호떡)が有名である。

東大門市場

東大門市場(トンデムンシジャン、동대문시장)は、中区乙支路6街(チュング ウルチロユッカ、중구 을지로6가)、鍾路区鍾路6街(チョンノグ チョンノユッカ、종로구 종로6가)一帯に広がる商業施設群の総称。2002年5月に「東大門ファッションタウン観光特区(동대문패션관광특구)」として指定されており、計31ヶ所の商業施設群(伝統市場10ヶ所、新興卸売市場13ヶ所、複合ショッピングモール8ヶ所)に35,000店舗が集まる[3]。主要な品目には衣類、カバン、靴、皮製品、アクセサリーなどがある。扱う商品の中に食料品は含まれないものの、巨大な商圏とあって市場関係者や観光客が利用する飲食店は多い。代表的な名物としては、タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)センソングイ(焼き魚/생선구이)などがある。また、東大門総合市場(トンデムン チョンハプシジャン、동대문종합시장)の建物西側には「東大門総合市場モッコリジャント(동대문종합시장 먹거리장터)」と呼ばれる軽食の屋台通りがある。

通仁市場

通仁市場にてオリジナルの弁当を作っている様子

通仁市場(トンインシジャン、통인시장)は、鍾路区通仁洞(チョンノグ トンインドン)に位置する市場。日本統治時代の1941年に、近隣に住む日本人のための公設市場として開かれたのが始まりである[4]。朝鮮時代の正宮である景福宮の西側に位置するという意味から、西村(ソチョン、서촌)と呼ばれるエリアにある。西村地域は朝鮮時代に通訳、医師といった専門職の人たちが多く住んでおり、一帯には当時の伝統家屋が残っていることから、近年は観光地として注目を集めるようになった。それまでは住宅街の中にある在来市場であったが、観光客の増加を受けて2012年1月に「弁当カフェ(도시락카페)」というプロジェクトを開始。空の弁当箱を持って市場内の加盟店を練り歩き、好みのおかずを少量ずつ購入して、自分だけのオリジナル弁当を作るという企画である。これがおおいに好評を得たことから、現在は市場を象徴する名物として人気を集めている。そのほか鉄板で餅を炒めて作る、キルムトッポッキ(餅炒め/기름떡볶이)が市場の名物として知られる。

馬場畜産物市場

馬場畜産物市場の焼肉

馬場畜産物市場(マジャンチュクサンムルシジャン、마장축산물시장)は、城東区馬場洞(ソンドング マジャンドン、마장동)に位置する畜産物市場。1958年に家畜市場として設立されたのち、1961年に屠畜場が開場して本格的な畜産物市場となった(屠畜場は1998年に閉鎖)[5]。1988年に周辺で営業していた焼肉店が北門付近に集まると、質の高い焼肉をリーズナブルに楽しめる場所として人気を集めるようになった。現在も10数軒が集まって営業しており、希少部位や鮮度のよい内臓肉などを楽しむことができる。また、2011年8月には市場の振興事業協同組合が安全行政部、ソウル市、城東区の支援を得て「コギインヌンマウル(고기있는마을)」という焼肉店の運営を開始。市場内の加盟店で購入した肉を持ち込んで食べられることができるようになった。

  • トゥンコル(脊髄刺し/등골)
  • ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)

鷺梁津水産物卸売市場

鷺梁津水産物卸売市場(ノリャンジンスサンムルドメシジャン、노량진수산물도매시장)は、銅雀区鷺梁津洞(トンジャック ノリャンジンドン、동작구 노량진동)に位置する水産市場。1927年に韓国初の水産市場として開場した京城水産市場を前身とし、1971年に韓国冷蔵株式会社として鷺梁津洞へと移転している[6]。2015年10月には建物を全面的にリニューアルした。市場内では新鮮な水産物を購入できるほか、飲食店も揃っており、センソンフェ(刺身/생선회)や、メウンタン(魚入りの辛い鍋/매운탕)などの魚介料理を味わうことができる。

孔徳市場

孔徳市場(コンドクシジャン、공덕시장)は、麻浦区孔徳洞(マポグ コンドクトン)に位置する市場。1949年に設立された漢興市場(ハヌンシジャン、한흥시장)を前身とする。チョッパル(豚足の煮物/족발)や、チョン(チヂミ/전)ティギム(天ぷら/튀김)の専門店が集まっている。また、市場周辺にはテジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)チュムルロク(揉みダレ牛焼肉/주물럭)の専門店も多い。

中部市場

中部市場(チュンブシジャン、중부시장)は、中区乙支路4街(チュング ウルチロサガ、중구 을지로4가)、乙支路5街(ウルチロオガ、을지로5가)、五壮洞(オジャンドン、오장동)に位置する市場。1957年に開設され、干物、海苔、煮干し、昆布などの乾物を主力商品とする。市場内ではススブクミ(キビ餅、수수부꾸미)や、チャプサルドノッ(もち米ドーナツ、찹쌀도넛)などの軽食も人気が高い。南側の入口は五壮洞(오장동)にはハムンネンミョン(咸興冷麺/함흥냉면)の専門店が集まっている。

代表的な特産品

首都のソウルは都市化が進んでおり、農地は少ないながらも景福宮米、モッコル梨といった特産品がある。

キョンボックンサル(景福宮米/경복궁쌀)

江西区(カンソグ、강서구)の開花洞(ケファドン、개화동)、五谷洞(オゴクトン、오곡동)一帯で栽培されている米。キョンボックンとはソウルにある朝鮮王朝の王宮名に由来する。

モッコルベ(モッコル梨/먹골배)

中浪区(チュンナング、중랑구)の墨洞(ムクトン、묵동)一帯で栽培されている梨。ファンシルベ(黄実梨、황실배)とも呼ぶ。モッコルは地域名を指し、直訳すると「墨の谷」という意味である。日本統治時代に栽培が始まり、宮中へも進上された歴史を持つが、近年は都市化が進んだことで生産量は減少している。現在、モッコルベは京畿道南楊州市での生産が盛んである。

代表的な酒類・飲料

ソウル市には大手酒造メーカーの本社が多く、その主力製品がソウル市を代表する酒として扱われることが多い。また、伝統酒やマッコリ、クラフトビールにおいては小規模な醸造場も存在する。

長寿マッコリ

マッコリ

ソウル市では「ソウル濁酒製造協会」の生産する「長寿マッコリ(チャンスマッコルリ、장수막걸리)」が地域を代表するマッコリとして親しまれている。2009年頃からのマッコリブーム以降は、既存の伝統酒メーカーや、小規模なマッコリ醸造場の新規参入も増えている。

長寿マッコリ
長寿マッコリは、麻浦区望遠洞(マポグ マンウォンドン、마포구 망원동)に本社を置く「ソウル濁酒製造協会(서울탁주제조협회)」が生産するマッコリ。「ソウル濁酒製造協会」は1962年2月に設立された韓国でもっとも古く、また最大規模を誇る濁酒製造業団体であり、ソウルおよび近郊で操業していた51ヶ所の醸造場が集まってできた[7]。現在に至るまでマッコリのシェア1位を誇る人気ブランドである。日本へも輸出されており、2011年2月からはサントリーが「ソウルマッコリ」として販売している(2月より業務用の扱いが正式に始まり、一般向けの缶入りタイプは同3月22日より発売された)[8]
ヌリンマウルマッコリ
ヌリンマウルマッコリ(느린마을막걸리)は、瑞草区良才洞(ソギョグ ヤンジェドン、서초구 양재동)に本社を置く「ペサンミョン酒家(배상면주가)」が生産するマッコリ。銘柄名のヌリンマウルとは、ゆっくりとした村という意味である。「ペサンミョン酒家」は1996年に創業した伝統酒メーカーであり、サンザシ酒の「山査春(산사춘)」や、タンポポを原料に加えた「ミンドゥルレデポ(민들레대포)」といった銘柄がよく知られている。2010年6月に本社の1階を醸造場として改装し、ヌリンマウルマッコリの生産をスタートさせた。当初は試飲、販売のみを行っていたが、後にマッコリダイニングとしてリニューアルした。人工甘味料や保存料などを使用しない自然な味わいを売りにしており、また店舗では搾ってからの日数を四季に例えて、フレッシュな1~3日目のものを春、4~6日目を夏、7~9日目を秋、熟成が進んだ10日以上のものを冬と名付けている。
トンネバンネ醸造場
トンネバンネ醸造場(トンネバンネ ヤンジョジャン、동네방네 양조장)は、伝統酒メーカーの「ペサンミョン酒家(배상면주가)」が主導する小規模な地域マッコリを育成するプロジェクト。2017年4月開始。トンネバンネとは「村じゅう」、または「あの村、この村」という意味である。各醸造場は地域名を掲げたマッコリを生産し、その地域内でのみ販売を行う。ソウル市においては、麻浦区孔徳洞(マポグ コンドクドン、마포구 공덕동)を地盤とする「孔徳洞マッコリ(공덕동막걸리)と、城東区聖水洞(ソンドング ソンスドン、성동구 성수동)を地盤とする「聖水洞マッコリ(성수동막걸리)」の2種類がある。

伝統酒

三亥酒

ソウル市には市の無形文化財に指定されている伝統酒が3種類ある。

松節酒
松節酒(ソンジョルジュ、송절주)は、うるち米やもち米を原料として造る醸造酒。朝鮮時代から造られてきた伝統酒のひとつであり、松節と呼ばれる松の木の枝分かれした部分を煎じた水を用いることから、松節酒という名前がつけられている。松節のほかにも松葉や、当帰(당귀)、豨薟(희렴)といった韓方材を一緒に煎じたり、ツツジ、菊といった花を加えることもある。1989年にソウル市の無形文化財第2号に指定されており、技能保有者は瑞草区(ソチョグ、서초구)在住の李成子(イ・ソンジャ、이성자)氏である[9]
三亥酒
三亥酒(サメジュ、삼해주)は、もち米を原料とした醸造酒および焼酎。焼酎は三亥焼酒(サメソジュ、삼해소주)とも呼ぶ。その歴史は高麗時代までさかのぼり、宮中酒として造られてきたものを、朝鮮時代に純祖(第23代王)の次女、福温公主が安東金氏の家系に嫁いだことから民間に伝えられた。1993年にソウル市の無形文化財第8号に指定されており、三亥酒の技能保有者は瑞草区(ソチョグ、서초구)在住の権熙子(クォン・ヒジャ、권희자)氏、三亥焼酒は鍾路区苑西洞(チョンノグ ウォンソドン、종로구 원서동)に醸造場を構えるキム・テクサン(김택상)氏である[10][11]。三亥酒とは旧正月が明けて最初の亥の日に仕込みを始め、次の亥の日、その次の亥の日と3度作業をすることから名付けられた。なお、韓国では亥はイノシシではなく豚を指し、豚(돈)とお金(돈)が同音異義語であることから、三亥酒は富の象徴として縁起のよい酒とされる。
香醞酒
香醞酒(ヒャンオンジュ、향온주)は、うるち米やもち米を原料として造る蒸留酒。朝鮮時代から造られてきた伝統酒のひとつであり、かつては宮中にて王が臣下に下賜をしたり、外国からの賓客をもてなすために用いられた酒である。1993年にソウル市の無形文化財第9号に指定されており、技能保有者は松坡区(ソンパグ、송파구)在住の朴賢淑(パク・ヒョンスク、박현숙)氏である[12]

焼酎

1973年より韓国では地域の焼酎メーカーを保護、育成するとの名目で、ひとつの地域に対してひとつの企業と限定する制度を設けた。これを「自道酒義務購買制度(자도주의무구매제도)」と呼び、卸売業者は50%以上を地元企業から購入しなければならないとの規制であった。この規制は1996年に廃止されるまで続き、結果として各地域ごとに巨大メーカーをもたらした。ソウル市、京畿道仁川市を地盤としたのは、現在の「ハイト眞露(하이트진로)」である。

チャミスル(참이슬)
チャミスル(참이슬)は、江南区清潭洞(カンナムグ チョンダムドン、강남구 청담동)に本社を置く「ハイト眞露(하이트진로)」が生産する焼酎。銘柄名のチャミスルとは、社名の眞露を固有語読みしたものである(眞=참、露=이슬)。酒精に水を加えて造る希釈式焼酎(희석식소주)であり、日本の甲類焼酎に相当する。1998年10月に発売されると、既存銘柄よりもアルコール度数を下げて飲みやすさを強調したことから人気を集め、希釈式焼酎としては長らく不動のシェア1位を誇っている。2018年12月現在、アルコール度数が17.2度のチャミスルfresh(참이슬 fresh)、20.1度のチャミスルオリジナル(참이슬 오리지널)、16.9度のチャミスル16.9度(참이슬 16.9도)という3銘柄が販売されている。

ビール

江西ビール

大手ビールメーカーの本社はソウル市に位置する。「hite(하이트)」、「Max(맥스)」、「Dry d(드라이d)」などを生産する「ハイト眞露(하이트진로)」は江南区清潭洞に、「Cass(카스)」、「OB Premier(OB 프리미어)」などを生産する「OBビール(오비맥주)」は江南区三成洞(カンナムグ サムソンドン、강남구 삼성동)に、「Kloud(클라우드)」を生産する「ロッテ酒類(롯데주류)」は松坡区新川洞(ソンパグ シンチョンドン、송파구 신천동)にそれぞれ位置する。そのほかクラフトビールを生産する小規模なブルワリーもある。

江西ビール
江西ビール(カンソメクチュ、강서맥주)は、江原道横城郡に本社を置く「セブンブロイビール(Sevenbrau beer、세븐브로이맥주)」が生産するビール。正式名は「江西マイルドエール(강서마일드에일)」である。「セブンブロイビール」は2011年10月にソウル市の江西区加陽洞(カンソグ カヤンドン、강서구 가양동)にて、ハウスビールの専門店としてビール醸造の免許を取得した。既存の大手ビールメーカー2社は日本統治時代に免許を取得した企業であるため、大韓民国としては第1号だとして話題になった。同社の主力銘柄である「江西ビール」は、発足当初の地域名に由来したものであり、2016年10月に大手スーパーの「ホームプラス」との共同開発で実現した。ラベルには江西区に位置する金浦国際空港の管制塔がデザインされているなど、地域性を前面に出してアピールしている。同時に発売された「達西ビール(달서맥주)」は大邱市の達西郡(タルソグン、달서군)を表しており、これらのヒットがその後に続く地域銘柄ビールの火付け役となった。

老舗

ソウルには多数の老舗がある。鍾路区堅志洞(チョンノグ キョンジドン、종로구 견지동)に位置する「里門ソルロンタン」は1904年創業とされ、韓国に現存するもっとも古い飲食店として知られる。以下には1950年代までに創業した店を列挙する。

  • 1904年:里門ソルロンタン(이문설농탕)鍾路区堅志洞
  • 1926年:兄弟チュオタン(형제추어탕)鍾路区平倉洞
  • 1932年:湧金屋(용금옥)中区茶洞
  • 1932年:ウノ食堂(은호식당)中区南倉洞
  • 1933年:コムボチュタン(곰보추탕)東大門区龍新洞
  • 1933年:チェムベオク(잼배옥)中区西小門洞
  • 1937年:朝鮮屋(조선옥)中区乙支路3街
  • 1937年:清進屋(청진옥)鍾路区鍾路1街
  • 1939年:河東館(하동관)中区明洞1街
  • 1939年:韓一館(한일관)江南区新沙洞
  • 1941年:沃川屋(옥천옥)東大門区新設洞
  • 1942年:迎春屋(영춘옥)鍾路区敦義洞
  • 1946年:又来屋(우래옥)中区舟橋洞
  • 1947年:扶余チプ(부여집)永登浦区堂山洞2街
  • 1948年:江西麺屋(강서면옥)中区西小門洞
  • 1948年:オクトルチプ(옥돌집)城北区吉音洞
  • 1949年:麻浦屋(마포옥)麻浦区龍江洞
  • 1950年:明洞ハルメナクチ(명동할매낙지)中区明洞2街
  • 1950年:晋州チプ(진주집)中区南倉洞
  • 1952年:文化屋(문화옥)中区舟橋洞
  • 1953年:マボンニムハルモニトッポッキ(마복림할머니떡볶이)中区新堂洞
  • 1953年:ヨンナムソ食堂(연남서식당)麻浦区老古山洞
  • 1953年:五壮洞興南チプ(오장동흥남집)中区五壮洞
  • 1954年:美進(미진)鍾路区鍾路街
  • 1956年:麻浦チンチャ元祖チェデポ(마포진짜원조최대포)麻浦区孔徳洞
  • 1956年:ヨルチャチプ(열차집)鍾路区公平洞
  • 1957年:サムゴリモンジマクスンデクク(삼거리먼지막순대국)永登浦区大林1洞
  • 1957年:安城家(안성집)中区乙支路3街
  • 1958年:五壮洞咸興冷麺(오장동함흥냉면)中区五壮洞
  • 1958年:テジョカムジャグク(태조감자국)城北区東小門洞
  • 1959年:全州中央会館(전주중앙회관)中区忠武路1街

飲食店情報

詳細はソウル市の飲食店を参照。

上記ページには韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

各地域の料理

江南区(강남구)

江東区(강동구)

  • カムジャタン(豚の背骨とジャガイモの鍋/감자탕)千戸洞

江北区(강북구)

江西区(강서구)

  • キョンボックンサル(景福宮米/경복궁쌀)

冠岳区(관악구)

  • ペクスンデ(辛くない腸詰炒め/백순대)新林洞
  • スンデボックム(腸詰炒め/순대볶음)新林洞

広津区(광진구)

  • ヤンコチ(羊肉の串焼き/양꼬치)紫陽洞

九老区(구로구)

衿川区(금천구)

芦原区(노원구)

道峰区(도봉구)

東大門区(동대문구)

銅雀区(동작구)

  • メウンタン(魚入りの辛い鍋/매운탕)鷺梁津洞
  • センソンフェ(刺身/생선회)鷺梁津洞

麻浦区(마포구)

  • カルメギサル(豚ハラミ焼き/갈매기살)桃花洞
  • カルメギサル(豚ハラミ焼き/갈매기살)敦義洞
  • テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)孔徳洞
  • ソグムグイ(豚肉の塩焼き/소금구이)西橋洞
  • チョン(チヂミ/전)孔徳洞
  • チョッパル(豚足/족발)孔徳洞
  • チュムルロク(揉みダレ牛焼肉/주물럭)龍江洞
  • ティギム(天ぷら/튀김)孔徳洞

西大門区(서대문구)

  • コプテギ(豚皮の焼肉/껍데기)滄川洞
  • シンゲチ(卵チーズ入りラーメン/신계치)滄川洞

瑞草区(서초구)

  • カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)方背洞
  • カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)新沙洞
  • コプチャングイ(牛ホルモン焼き/곱창구이)端草洞
  • サメジュ(三亥酒、삼해주)方背洞
  • ソンジョルジュ(松節酒、송절주)良才洞
  • アグチム(アンコウの蒸し煮/아구찜)方背洞
  • アグチム(アンコウの蒸し煮/아구찜)新沙洞

城東区(성동구)

  • トゥンコル(脊髄刺し/등골)馬場洞
  • ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)馬場洞

城北区(성북구)

松坡区(송파구)

  • ヒャンオンジュ(香醞酒、향온주)風納洞

陽川区(양천구)

永登浦区(영등포구)

竜山区(용산구)

  • カムジャタン(豚の背骨とジャガイモの鍋/감자탕)漢江路2街 ※再開発により専門店通りは消失
  • ステイク(牛肉とソーセージ炒め/스테이크)南営洞

恩平区(은평구)

  • カムジャクッ(豚の背骨とジャガイモの鍋/감자국)鷹岩洞、碌磻洞

鍾路区(종로구)

  • キルムトッポッキ(餅炒め/기름떡볶이)通仁洞
  • クルタレ(糸飴/꿀타래)仁寺洞
  • タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)鍾路5街
  • テグメウンタン(マダラの辛い鍋/대구매운탕)礼智洞
  • トシラクカペ(弁当カフェ、도시락카페)通仁洞
  • テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)恵化洞
  • テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)鍾路6街
  • トク(餅/떡)楽園洞
  • トンパン(ウンコ型お焼き/똥빵)仁寺洞
  • マヤッキムパプ(ひと口大の海苔巻き/마약김밥)礼智洞
  • ポリパプ(麦飯のビビンバ/보리밥)礼智洞
  • ピンデトク(緑豆のチヂミ/빈대떡)礼智洞
  • サメソジュ(三亥焼酒、삼해소주)苑西洞
  • センソングイ(焼き魚/생선구이)鍾路5街
  • ススブクミ(キビ餅/수수부꾸미)礼智洞
  • ユッケ(牛刺身/육회)礼智洞
  • チパンイクァジャ(杖状の菓子/지팡이과자)仁寺洞
  • カルグクス(手打ちウドン/칼국수)楽園洞
  • ヘジャンクッ(牛の血のスープごはん/해장국)清進洞

中区 (중구)

  • カルチジョリム(タチウオの煮物/갈치조림)南倉洞
  • コルベンイムチム(ツブ貝の和え物/골뱅이무침)苧洞2街
  • ナクチボックム(テナガダコの炒め物/낙지볶음)武橋洞、端林洞
  • トンカス(とんかつ/돈가스)南山洞2街、芸場洞
  • テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)新堂洞
  • テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)黄鶴洞
  • テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)乙支路6街
  • シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)新堂洞
  • ヤチェホットク(春雨入りのお焼き/야채호떡)南倉洞
  • ワンマンドゥ(肉まん/왕만두)南倉洞
  • チョッパル(豚足/족발)奨忠洞
  • チムタク(北部式鶏の丸茹で/찜닭)新堂洞
  • カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)南倉洞
  • ハムンネンミョン(咸興冷麺/함흥냉면)五壮洞

中浪区(중랑구)

  • モッコルベ(モッコル梨/먹골배)

全域

  • ムルネンミョン(冷麺/물냉면)
  • ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)
  • チョソンワンジョ クンジュンウムシク(朝鮮王朝宮中料理/조선왕조 궁중음식)

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は1997年2月に初めてソウルを訪れた。当時は大学2年生であり、日韓交流のプログラムに参加するのが目的であった。プログラムの終了後もしばらくソウルに滞在し、テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)スンドゥブチゲ(柔らかい豆腐の鍋/순두부찌개)スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)などを食べ歩いた。中でも印象的だったのが、当時のソウルで流行していたタッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)であった。そこにまつわる淡い恋物語は当時配信していたメールマガジン「コリアうめーや!!第25号」に記されている[13]

脚注

  1. 주민등록 인구통계 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月6日閲覧
  2. 주요정보 、南大門市場ウェブサイト、2018年12月6日閲覧
  3. 관광특구현황 、東大門ファッションタウン観光特区ウェブサイト、2019年2月22日閲覧
  4. 시장연혁 및 현황 、通仁市場ウェブサイト、2018年12月7日閲覧
  5. 조합유래 、馬場畜産物市場ウェブサイト、2018年12月6日閲覧
  6. 연혁 、鷺梁津水産物卸売市場ウェブサイト、2018年12月7日閲覧
  7. 연혁 、ソウル濁酒製造協会ウェブサイト、2018年12月8日閲覧
  8. 「ソウルマッコリ」新発売 ― 微炭酸タイプの缶入りマッコリが新登場 ― 、サントリーニュースリリース(2011.2.10)、2018年12月8日閲覧
  9. 송절주장 이성자 、ソウル無形文化財教育展示場ウェブサイト、2018年12月9日閲覧
  10. 삼해약주장 권희자 、ソウル無形文化財教育展示場ウェブサイト、2018年12月8日閲覧
  11. 삼해소주장 김택상 、ソウル無形文化財教育展示場ウェブサイト、2018年12月8日閲覧
  12. 향온주장 박현숙 、ソウル無形文化財教育展示場ウェブサイト、2018年12月9日閲覧
  13. コリアうめーや!!第25号 あの日あの時あの人と…… 、韓食生活、2018年12月1日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目