ヨンポタン(テナガダコのスープ/연포탕)

2023年2月25日 (土) 14:24時点におけるHatta (トーク | 投稿記録)による版 (→‎文献上の記録)
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ヨンポタン연포탕)は、テナガダコのスープ。

パクソクヨンポタン

名称

ヨンポ(연포)は漢字で「軟泡」と書いて豆腐のこと。タン()は漢字で「湯」と書いては鍋料理、スープの意。ヨンポタンとは本来豆腐と鶏肉を煮込んだスープを指す料理名であったが、時代の流れとともに鶏肉が牛肉、そしてテナガダコへと変化し、また豆腐も入れなくなって、いつしかテナガダコのスープをヨンポタンと呼ぶようになったと説明される。テナガダコのことをナクチ(낙지)と呼ぶことから、ナクチヨンポタン(낙지연포탕)、あるいはナクチタン(낙지탕)とも呼ぶ。ヨンポタンの発音表記は〔연포탕〕。

  • 日本語訳
1人前のスープ料理として提供される場合と、複数名向けに鍋料理として提供される場合がある。本辞典では「テナガダコのスープ」としているが、鍋料理の場合は「テナガダコの鍋」とするほうがふわさしい。
  • ナクチの語源
ナクチはかつて漢字語で「絡蹄(ナクチェ、낙제)」とも表記し、これがナクチに変化したとの説がある。「絡」はひも状のものが絡まる様子、「蹄」はひづめを意味し、足が絡まった様子から名付けられたのではと推測される。なお、余談であるが、「絡蹄(낙제)」が「落第(낙제)」と同音異義語であることから、試験前にテナガダコを食べてはいけないとの俗説がある。同様に、ミヨックッ(ワカメスープ/미역국)もワカメがぬるぬると「滑る」ことから試験前に避けられる料理である。

概要

丸ごとのテナガダコを、野菜とともに鍋で煮込んで作る。粉唐辛子は入らず、味付けも淡い塩味に仕立て、テナガダコが持つ素材の味を活かして楽しむ。主にテナガダコ料理の専門店や、海鮮料理店などで味わう料理である。テナガダコは西海岸、南海岸で多く水揚げされ、ヨンポタンを含めたテナガダコ料理は忠清南道や、全羅南道の郷土料理としても親しまれる。

ヨンポタンに牛カルビを加えて煮込んだカルラクタン(牛カルビとテナガダコのスープ/갈낙탕)や、ユウガオの実(生のカンピョウ)を加えたパクソクヨンポタン(生カンピョウとテナガダコの鍋、박속연포탕)といったバリエーションもある。

テナガダコを用いた料理としては、ほかにサンナクチ(テナガダコの踊り食い/산낙지)ナクチボックム(テナガダコ炒め/낙지볶음)プルラクジョンゴル(牛肉とテナガダコの鍋/불낙전골)、ナクチスッケ(茹でテナガダコ、낙지숙회)、ナクチチム(テナガダコの蒸し煮、낙지찜)、ナクチチョムチム(テナガダコの酢和え、낙지초무침)、ナクチホロン(テナガダコの串巻き焼き、낙지호롱)などがある。

歴史

文献上の記録

『茲山魚譜』(1814年)の記述
丁若銓の書いた魚類学書『茲山魚譜(자산어보)』には、テナガダコについての記述があり、名称を「石距(석거)」、俗称を「낙제어(絡蹄魚)」と紹介している。その項目内では、テナガダコについて「色は白く甘味があり、刺身やチゲ、干物によく、人に元気を与える」(原文1)とあり、また「疲れた牛にテナガダコを4~5匹食べさせるとすこぶる健康になる」(原文2)とも書かれている[1]
【原文1】色白甘美宣鱠及羹腊人元気
【原文2】牛之疲憊者飼石距四五首則頗健也

種類

日本における定着

韓国式刺身店、海鮮料理店ではメニューに載せているところもある。

地域

  • 忠清南道
忠清南道瑞山市泰安郡、およびその周辺地域はテナガダコの産地であり、ヨンポタンなどのテナガダコ料理を味わえる。ヨンポタンはナクチタン(낙지탕)とも呼ぶが、そこにユウガオの実=生カンピョウ(박속)を入れたパクソクナクチタン(生カンピョウとテナガダコの鍋、박속낙지탕)や、すいとん(수제비)と手打ちうどん(칼국수)を入れたミルクッナクチタン(すいとんとうどん入りのテナガダコ鍋、밀국낙지탕)、あるいはその両方を入れたパクソクミルクッナクチタン(すいとんとうどん入りの生カンピョウとテナガダコの鍋、박속밀국낙지탕)が郷土料理として知られる。なお、ミルクッ(밀국)は「小麦粉(粉もの)の鍋」を意味する。
  • 全羅南道
テナガダコの主産地は全羅南道であり、2021年の生産量は全体の68.4%を占める[2]木浦市務安郡霊岩郡長興郡などが有名であり、テナガダコ料理の専門店や海鮮料理店では各種のテナガダコ料理とともにヨンポタンも提供される。

脚注

  1. 玆山魚譜 / 筆寫本(P60-62) 、高麗大学校図書館、2023年2月20日閲覧
  2. 어업별 품종별 통계 、統計庁ウェブサイト、2023年2月18日閲覧

外部リンク

制作者関連サイト

関連項目