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この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
太白市(テベクシ、태백시)は江原道の南東部に位置する地域。本ページでは太白市の料理、特産品について解説する。
地域概要
太白市は江原道の南東部に位置する地域。北部から東部にかけては江原道の三陟市、南部は慶尚北道の奉化郡、西部は江原道の寧越郡、旌善郡と接する。人口は4万4146人(2019年8月)[1]。地域全体が太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)の一角を成し、標高1567mの太白山(テベクサン、태백산)や、1573mの咸白山(ハムベクサン、함백산)など1000m級の山々が連なる。こうした山間部を蛇行するように洛東江(ナクトンガン、낙동강)の支流である、黄池川(ファンジチョン、황지천)、鉄岩川(チョラムチョン、철암천)が流れ、その周辺の平野部に町がある。またこの地域は洛東江、漢江(ハンガン、한강)の最上流域であり、両河川の源流点があるのも地域の特徴である。主要な観光地としては、太白山を中心とする太白山国立公園(テベクサン クンニプコンウォン、태백산국립공원)や、龍淵洞窟(ヨンヨントングル、용연동굴)、1950~60年代に石炭の生産で栄えた歴史を伝える太白石炭博物館(テベク ソクタン パンムルグァン、태백석탄박물관)などがある。ソウル市から太白市までのアクセスは、東ソウル総合ターミナルから太白バスターミナルまで高速バスで約3時間10分の距離である。
- 太白市の発足
食文化の背景
現在の太白市一帯から、隣接する江原道旌善郡、三陟市にかけては良質の無煙炭を産出する地域で、1930年代より炭鉱の開発が進んだ。1960〜80年代には全国から多くの労働者が集まり、炭鉱の町として賑わいを増していく。1981年に太白市が発足すると、1987年には人口がピークとなる12万0208人まで増えたが[3]、1980年代末になって石炭から石油へとエネルギーの主軸が移ると、石炭産業は合理化政策が進められ、多くの炭鉱が廃鉱となっていく。この時期を境に太白市の人口は減少が進み、2012年には市の昇格条件である5万人を割り、現在の人口は市単位で見ると忠清南道鶏龍市に次いで少ない。炭鉱の町としての栄華はすっかりかつてのものとなったが、それでも地域の食文化を見ると炭鉱で賑わっていた時代の名残が色濃く見える。炭鉱労働者らが仕事の後に食べたという、ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋、물닭갈비)や、ハヌヨンタングイ(韓牛の練炭焼き、한우연탄구이)は地域の名物となっており、また地元の老舗飲食店は創業者の出身地域を屋号として掲げている場合が多く、働き先を求めて全国各地から人が集まった時代を反映している。
代表的な料理
ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋/물닭갈비)
ムルタッカルビ(물닭갈비)は、鶏肉と野菜の鍋。ムル(물)は水を意味し、この場合は汁気がある鍋料理であることを指す。タッカルビ(닭갈비)は鶏肉と野菜の鉄板炒め(「タッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)」の項目を参照)。タッカルビを鍋料理としてアレンジした料理を指す。スープのことをクンムル(국물)とも呼ぶことからクンムルタッカルビ(국물닭갈비)、または太白市が発祥であることからテベクタッカルビ(태백닭갈비)とも呼ばれる。ぶつ切りにして味付けをした鶏肉をピリ辛の煮汁で煮込みながら味わうが、店によってナズナ、エゴマの葉、セリ、春菊など香りの強い野菜を加えて作るのが特徴。また、各店ともトッピングが充実しており、ウドン(우동)、インスタントラーメン(라면)、チョルミョン(でんぷん麺、쫄면)、春雨(당면)、韓国餅(떡)などを好みで注文する。ひと通りの具を食べた後は、残った煮汁にごはんを加えて炒めて食べるところまでが定番のコースである。ムルタッカルビが誕生した背景としては、炭鉱で働く人たちが仕事終わりに食べる際、喉に絡んだ粉塵を洗い流す意味から汁気を求めたのが始まりとされる。太白市内には数多くのムルタッカルビ専門店があり、黄池洞(ファンジドン、황지동)に位置する「太白タッカルビ(태백닭갈비)」と「金書房ネタッカルビ(김서방네닭갈비)」の2軒が有名店として知られる。ただし、店によって具の選択肢や味付けが大きく異なるため、地元の人におすすめ店を聞くと意見がだいぶ分かれる傾向にある。ほかに「スンソタッカルビ(승소닭갈비)」、「オンマソン太白ムルタッカルビ(엄마손태백물닭갈비)」、「ファンブジャタッカルビ(황부자닭갈비)」などの有名店がある。
ハヌヨンタングイ(韓牛の練炭焼肉/한우연탄구이)
ハヌヨンタングイ(한우연탄구이)は、韓牛の練炭焼き。ハヌ(한우)は朝鮮半島在来種の牛。ヨンタン(연탄)は練炭。グイ(=クイ、구이)は焼き物を総称する。練炭を熱源とした焼肉のことであるが、炭鉱の町として栄えた太白市では身近な練炭を用いた焼肉をヨンタングイ(練炭焼き、연탄구이)と称する。市中心部の黄池洞(ファンジドン、황지동)を中心に実費食堂(シルビシクタン、실비식당)を掲げる専門店が多くあり、韓牛の各部位を練炭の火で網焼きにして提供している。実費食堂とは、実際の費用(材料費)だけを受け取るという意味のリーズナブルな食堂を指し、ドラム缶テーブルを並べただけの簡素な内観が特徴である。近年は牛肉価格の高騰により決して安価とまでは言えないものの、大衆的な雰囲気と練炭の煙に包まれながら味わうという昔ながらの風情を感じられる。元祖店とされる「テソン実費食堂(태성실비식당)」のあるカムチョン路(カムチョンノ、감천로)沿いや、黄池自由市場(ファンジ チャユシジャン、황지자유시장)沿いに専門店が多い。なお、使用している韓牛は必ずしも太白産という訳でなく、近隣である江原道の横城郡や平昌郡、あるいは慶尚北道の奉化郡で飼育されたものが運ばれてきている。ある焼肉店店主の言葉によれば「太白に韓牛を育てる文化はない。食べる文化があるのだ」(八田靖史の取材記録より、2019年7月14日)とのことである。
サンチェピビムパプ(山菜ビビンバ/산채비빔밥)
代表的な特産品
コムチィ(オタカラコウ/곰취)
代表的な酒類・飲料
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- 金書房ネタッカルビ(김서방네닭갈비)
- 住所:江原道太白市市場南1キル7-1(黄池洞30-17)
- 住所:강원도 태백시 시장남1길 7-1(황지동 30-17)
- 電話:033-553-6378
- 料理:ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋)
- 馬山食堂(마산식당)
- 住所:江原道太白市上長南キル44(黄池洞132-11)
- 住所:강원도 태백시 상장남길 44(황지동 132-11)
- 電話:033-552-5857
- 料理:メギタン(ナマズ鍋)
- 釜山カムジャオンシミ(부산감자옹심이)
- 住所:江原道太白市市場アン1キル28(黄池洞38-211)
- 住所:강원도 태백시 시장안1길 28(황지동 38-211)
- 電話:033-552-4498
- 料理:カムジャオンシミ(ジャガイモ団子のスープ)
- 太白タッカルビ(태백닭갈비)
- 住所:江原道太白市中央南1キル10(黄池洞44-63)
- 住所:강원도 태백시 중앙남1길 10(황지동 44-63)
- 電話:033-553-8119
- 料理:ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋)
- テソン実費食堂(태성실비식당)
- 住所:江原道太白市カムチョン路4(黄池洞201-3)
- 住所:강원도 태백시 감천로 4(황지동 201-3)
- 電話:033-552-5287
- 料理:ハヌヨンタングイ(韓牛の練炭焼き)
エピソード
韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2019年7月14日に初めて太白市を訪れた。名物であるムルタッカルビや、ハヌヨンタングイに舌鼓を打ち、食事の面ではたいへん満足したが、その背景を知るべく向かった「太白石炭博物館」が無念の休館日であった。炭鉱文化を学ばずして太白の食は語れないと、2019年9月3日に再度太白市を訪れ、翌4日に「太白石炭博物館」をじっくり見て回った。かつて実際に炭鉱で鉱夫として働いていた文化解説士の方から説明を受けるとの幸運もあり、太白市の食文化に対する理解がおおいに進んだ。
脚注
- ↑ 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2019年6月25日閲覧
- ↑ 태백의 연혁 、太白市ウェブサイト、2019年9月18日閲覧
- ↑ 면적·세대·인구(1970~1991) 、統計庁資料、2019年9月18日閲覧
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)
- 韓国語食の大辞典アプリ版(八田靖史制作の韓国料理専門辞典)