牙山市の料理

提供: 韓食ペディア
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この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

牙山市(アサンシ、아산시)は忠清南道に位置する地域。本ページでは牙山市の料理、特産品について解説する。

江華支石墓

地域概要

牙山市は忠清南道の北部に位置し、同じ忠清南道の天安市、公州市、礼山郡、唐津市、京畿道の平沢市と接する。人口は30万8007人(2015年4月)[1]。韓国でも有数の温泉地として知られ、温陽温泉、牙山温泉、道高温泉などを有する。中でも温陽温泉の歴史は記録上、百済時代、統一新羅時代までさかのぼるとされ、高麗時代にはこの地域を温水郡と呼んだ。朝鮮時代には歴代の王も温陽温泉を訪れ、休養をしたり、病気の治療を行っている[2]

江華郡は仁川市の北部に位置し、同じ仁川市の西区と甕津郡、京畿道の金浦市と接する。また、北部は川を挟んで北朝鮮の黄海北道開豊郡や、黄海南道白川郡、延安郡と向かい合う。人口は6万7118人(2015年1月)[3]。郡全体が黄海に浮かぶ島嶼地域であり、韓国で5番目の面積を誇る江華島(강화도)をはじめ、喬桐島(교동도)、席毛島(석모도)といった15の島で構成されている。観光地としても人気が高く、古代から近現代に至るまで幅広い歴史遺産を残しているのが大きな特徴である。ユネスコの世界文化遺産にも指定された青銅器時代の支石墓群(高敞、和順、江華の支石墓群跡)や、神話上の始祖である檀君が天に祭祀を行った摩尼山(마니산)、高句麗時代の381年に創建されたとされる伝燈寺(전등사)、高麗時代の13世紀に臨時首都として使用された宮殿跡の高麗宮址(고려궁지)、朝鮮時代の19世紀後半に諸外国と対峙した防衛拠点の草芝鎮(초지진)など、各時代における歴史がこの地域に凝縮している。ソウル(新村、弘大入口などの各バス停)から広域バスで約2時間の距離。

食文化の背景

島嶼地域という特性から漁業、養殖業が盛んに行われている。郡内では四季折々の魚介が食卓にのぼり、春はイイダコ(주꾸미)、メフグ(황복)、春から初夏にかけてはワタリガニ(꽃게)や、マナガツオ(병어)、ツマリエツ(반지, 밴댕이)、秋はコノシロ(전어)や、コウライエビ(대하)、冬はボラ(숭어)といった魚介が旬を迎える。塩辛用として使われるアキアミ(젓새우)は5~6月を中心に秋冬もとれる。また江華郡は漢江、臨津江、礼成江という3つの河川が流れ込む河口地域に位置するため、堆積地として肥沃な土壌を有することから、漁業のみならず農業も盛んに行われている。米()、サツマイモ(고구마)、カブ(순무)、ブドウ(포도)、高麗人参(인삼)、ヨモギ()といった特産品があり、これらを利用した加工品も多く作られている。食品以外では、花紋席(화문석)と呼ばれる花ござの生産が盛んである。

代表的な料理

江華郡の料理には旬の魚介を使った料理が多い。また、高麗時代に臨時首都が置かれた経緯から、王に献上された料理との逸話を持つものもある。

ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)

ペンデンイフェムチム
ペンデンイフェはツマリエツの刺身。ペンデンイ(밴댕이)の和名はサッパであるが、仁川・江華島地域では見た目のよく似たツマリエツ(반지)をペンデンイと呼んでいる。4~7月を最盛期とするが、最近は冬でも全羅南道から冷蔵品が直送されており、旬以外の時期でも見かけるようになった。ペンデンイフェは新鮮なものを刺身にしたものか、または刺身を生野菜とともに辛いタレで和えたフェムチム(刺身和え、회무침)でも味わう。フェムチムの場合は丼ごはんが用意され、フェドッパプ(刺身丼、회덮밥)のように混ぜて食べることも多い。華道(화도)地区の後浦港(후포항)には「船首ペンデンイ村(선수밴댕이마을)」と呼ばれる地域があり、ペンデンイフェを中心とした刺身専門店が集まっている。

チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)

チャンオグイはウナギ焼き。江華島と金浦市を分かつ江華海峡(강화해협)は、塩辛い川のようだという意味で塩河(염하)と呼ばれ、一帯では古くからウナギがよくとれた。近年は天然物の減少から漁獲量は激減しているが、それでも塩河沿いのトリミ(더리미)地区にはウナギ料理の専門店が集まっており、養殖、または天然環境で育てた養殖ウナギのチャンオグイを味わうことができる。

ススブクミ(餡を入れたキビ餅/수수부꾸미)

コッケタン
コッケタンはワタリガニ鍋。江華島沖はワタリガニの好漁場であり、4~6月には卵を持ったメスが西海岸の各漁港に水揚げされる。地元ではこの時期をいちばんの旬と考えるが、秋にももう1度旬があり、9月にはオスのワタリガニを、10~12月にはメスのワタリガニを味わう。内可面外浦里(내가면 외포리)にはコッケタンや、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け、간장게장)を提供するワタリガニ料理の専門店が集まっており、「外浦里ワタリガニ村(외포리 꽃게마을)」と呼ばれる。

代表的な特産品

島嶼地域であることから魚介類が豊富であり、また農業も盛んに行われている。高麗人参の産地として知られるほか、獅子足ヨモギ(사자발쑥)と呼ばれる薬用ヨモギの栽培も盛んであるなど、漢方材の生産地という側面もある。

高麗人参

江華高麗人参センター
江華郡は高麗人参の名産地であり、その経緯を江華郡のウェブサイトでは、「朝鮮戦争が起こると高麗人参の本拠地である開城の人たちがここに避難し、1953年から本格的に栽培が行われた」(原文1)[4]と説明している。現在も江華郡では高麗人参の栽培が盛んに行われており、また2010年頃からは田んぼを再利用しての栽培も始まっている。もともと高麗人参栽培は畑作が中心であるが、土地の栄養を吸い尽くしてしまうため連作ができないとの特性があり、農地の確保が難しかった。田んぼでの栽培はまだ技術的に難しい部分も残るが、農地拡充の可能性を広げるため江華郡でも盛んに技術が研究されている。また、江華高麗人参農協では外部へのPRを目的として、観光客向けに高麗人参堀りの体験プログラムなども実施している(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。
【原文1】한국전쟁이 터지자 인삼의 본거지인 개성사람들이 이곳에 피난와 1953년부터 본격 재배가 이루어 졌다.
  • 江華高麗人参センター
江華郡庁や江華市外バスターミナルからほど近い中心部の江華邑甲串里には、五日市場の風物市場(풍물시장)と並んで江華高麗人参センター(강화인삼센터)がある。交通の便利な場所であるため、江華島観光では人気のスポットとなっており、生の高麗人参をはじめ、蜂蜜漬けや韓方茶、菓子などの高麗人参製品も購入できる。なお、生の高麗人参を日本に持ち込む場合は、丁寧に土を除いたうえで検疫を通す必要がある[5]

代表的な酒類・飲料

江華郡のマッコリ

主要な銘柄にチャヌムルの「高香(고향)」、江華温水醸造場の「民族(민족)」がある。また、特産品を活かした高麗人参マッコリや、ヨモギマッコリなども市販されている。
  • 江華温水醸造場(강화온수양조장)
江華温水醸造場
仁川市江華郡吉祥面に位置する江華温水醸造場は1924年の創業(実際は1923年の創業で法的な登記が1924年)で、ソウル、京畿道地域においてはもっとも古い醸造場である。3代目の社長によれば「ソウル、京畿道地域で現在営業する醸造場の多くが、江華温水醸造場で必要な技術を学んでおり、その人数は3~400人になるだろう」とのことである(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。醸造場の建物は築100年を超えるもので、建築的な価値も高いとされる。

老舗

1953年創業のウリオク
  • 牙山市得山洞に位置するウナギ料理店の「恋春」は1936年創業である。牙山市においてはもっとも古い飲食店であり、また韓国内でもウナギ料理の専門店としてもっとも古い。1926年に造られた人造湖の神井湖畔に位置し、日本統治時代に建てられた家屋をそのまま残している。店主によれば「温泉地である牙山には創業当時、日本人が休養地としてよく訪れており、日本人に向けた高級料理としてウナギを出すようになった。当時は近くに光興楼という楼閣があったため、『光興楼観光食堂』という名前を掲げ、ウナギ料理と韓定食を扱った。後に『迎春』と名前を変え、また現在は『恋春』としている。春を迎える、春に恋するというのは、もともとウナギのオフシーズンである9月末から3月は営業をせず、春を待って営業を始めたことに由来する」(八田靖史の取材記録より、2014年12月17日)。現在もメニューにはチャンオグイ(ウナギ焼き、장어구이)を筆頭に掲げ、ウナギと同じタレで焼いたタックイ(鶏肉焼き、닭구이)も他店ではあまり見ない名物として親しまれる。
店名:恋春(연춘)
住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
電話:041-545-2866

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • ソルメジャント(솔뫼장터)
住所:忠清南道牙山市松岳面講堂路36(駅村里71-1)
住所:충청남도 아산시 송악면 강당로 36(역촌리 71-1)
電話:041-544-7554
料理:ススブクミ、チャンチグクス
  • 恋春(연춘)
住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
電話:041-545-2866
料理:チャンオグイ、タックイ
  • 塩峙食堂(염치식당)
住所:忠清南道牙山市塩峙邑塩星キル110(塩峙邑268-10)
住所:충청남도 아산시 염치읍 염성길 110(염치읍 268-10)
電話:041-542-2768
料理:ソゴギグイ
  • イルシンチョクタン(일신족탕)
住所:忠清南道牙山市市民路382(温泉洞221-11)
住所:충청남도 아산시 시민로 382(온천동 221-11)
電話:041-545-2696
料理:ウジョクタン

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年11月に初めて牙山市を訪れた。以後、2014年12月、2015年2月の計3度訪問している。
  • 2014年12月に八田靖史が牙山市観光課を訪れた際、担当者にチョクタン(牛足のスープ、족탕)の店を尋ねたつもりが、同音異義語である足湯のパンフレットを出され、慌てて訂正したことがある。

脚注

  1. 인구현황 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧
  2. 1300년 온천역사 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧
  3. 강화군정보 일반현황 、江華郡ウェブサイト、2015年4月4日閲覧
  4. 특산물 강화인삼 、江華郡ウェブサイト、2015年4月7日閲覧
  5. 韓国から生の高麗人参を持ち帰る方法(個人消費用)。 、韓食生活、2015年4月9日閲覧

外部リンク

関連項目