32,549
回編集
(→代表的な料理) |
|||
| (同じ利用者による、間の3版が非表示) | |||
| 5行目: | 5行目: | ||
== 地域概要 == | == 地域概要 == | ||
[[ファイル:19091805.JPG|thumb|300px|大田近現代史展示館を併設する旧・忠清南道庁舎]] | [[ファイル:19091805.JPG|thumb|300px|大田近現代史展示館を併設する旧・忠清南道庁舎]] | ||
| − | 大田市は韓国の中西部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。正式には大田広域市(テジョンクァンヨクシ、대전광역시)と呼ぶ。もともとは[[忠清南道の料理|忠清南道]]に属していたが、1989年より直轄市として独立し、1995年より広域市となった。地域の北部から北東部にかけては[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[清州市の料理|清州市]]と[[報恩郡の料理|報恩郡]]と接し、東部は[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[沃川郡の料理|沃川郡]]、南部から南西部にかけては[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[錦山郡の料理|錦山郡]]と[[論山市の料理|論山市]]、西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[鶏竜市の料理|鶏竜市]]と[[公州市の料理|公州市]]、北西部は特別自治市の[[世宗市の料理|世宗市]]と接する。人口は144万1272人(2024年4月)で、韓国の市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]、[[仁川市の料理|仁川市]]、[[大邱市の料理|大邱市]]に次いで5番目に多い<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2024年5月26日閲覧</ref>。面積は539.5平方キロ(2021年)<ref>[https://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=116&tblId=DT_MLTM_2300&conn_path=I2 행정구역별・지목별 국토이용현황_시군구] 、KOSIS(国家統計ポータル)、2023年1月26日閲覧</ref> | + | 大田市は韓国の中西部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。正式には大田広域市(テジョンクァンヨクシ、대전광역시)と呼ぶ。もともとは[[忠清南道の料理|忠清南道]]に属していたが、1989年より直轄市として独立し、1995年より広域市となった。地域の北部から北東部にかけては[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[清州市の料理|清州市]]と[[報恩郡の料理|報恩郡]]と接し、東部は[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[沃川郡の料理|沃川郡]]、南部から南西部にかけては[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[錦山郡の料理|錦山郡]]と[[論山市の料理|論山市]]、西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[鶏竜市の料理|鶏竜市]]と[[公州市の料理|公州市]]、北西部は特別自治市の[[世宗市の料理|世宗市]]と接する。人口は144万1272人(2024年4月)で、韓国の市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]、[[仁川市の料理|仁川市]]、[[大邱市の料理|大邱市]]に次いで5番目に多い<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2024年5月26日閲覧</ref>。面積は539.5平方キロ(2021年)<ref>[https://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=116&tblId=DT_MLTM_2300&conn_path=I2 행정구역별・지목별 국토이용현황_시군구] 、KOSIS(国家統計ポータル)、2023年1月26日閲覧</ref>。 |
| + | |||
| + | 市内は5つの行政区に分かれており、大徳区(テドック、대덕구)、東区(トング、동구)、西区(ソグ、서구)、儒城区(ユソング、유성구)、中区(チュング、중구)で構成される。大田市はかつて「ハンバッ(한밭、大きな田畑)」と呼ばれており、これを漢字語にして大田市という名前がついた<ref>[http://www.daejeon.go.kr/drh/DrhContentsHtmlView.do?menuSeq=1717 대전의지명] 、大田市ウェブサイト、2018年7月31日閲覧</ref>。市の中央部は広々とした平野が広がっており、四方は山々に囲まれた盆地型の地形である。市の北東部には[[忠清北道の料理|忠清北道]][[清州市の料理|清州市]]へとまたがってダム湖の大清湖(テチョンホ、대청호)があり、これが韓国四大河川のひとつ錦江(クムガン、금강)の本流でもある。市の中心部を流れる甲川(カプチョン、갑천)、柳等川(ユドゥンチョン、유등천)、大田川(テジョンチョン、대전천)といった河川は錦江へと注いでいる。 | ||
| + | |||
| + | 代表的な観光地としては、北西部の儒城区(ユソング、유성구)地区にある儒城温泉(ユソンオンチョン、유성온천)や、1993年に大田世界博覧会を開催したエキスポ科学公園(エクスポ クァハッコンウォン、엑스포과학공원)、ハンバッ樹木園(ハンバッスモグォン、한밭수목원)などがある。 | ||
| + | |||
| + | [[ソウル市の料理|ソウル市]]から大田市までは、ソウル駅、龍山駅からKTXで約1時間の距離。また、東ソウル総合ターミナル、ソウル高速バスターミナルなどから市内の各バスターミナルまで高速バスで約2時間の距離である。 | ||
*大田近現代史展示館 | *大田近現代史展示館 | ||
| 29行目: | 35行目: | ||
*日本統治時代の駅うどん | *日本統治時代の駅うどん | ||
| − | :1933年7月3日付の釜山日報に「美人のサービスで大田駅食堂繁盛 ホームのうどんも好評」との記事がある。この記事によればホームのうどん店は当時、深夜1時~朝5時まで営業、1杯8銭、多い日で1日に100数十杯を販売したという。「値段に比して頗るの美味とて今や全鮮的に大田駅のウドンが有名となり、多数旅客の中には夜行列車で通過する度毎に、駅の立食を唯一の楽みとして大田到着を待つと言ふ熱心なファンも次第に増し」(原文に句点を追加、漢字は新字に変更)<ref>[http://db.history.go.kr/ | + | :1933年7月3日付の釜山日報に「美人のサービスで大田駅食堂繁盛 ホームのうどんも好評」との記事がある。この記事によればホームのうどん店は当時、深夜1時~朝5時まで営業、1杯8銭、多い日で1日に100数十杯を販売したという。「値段に比して頗るの美味とて今や全鮮的に大田駅のウドンが有名となり、多数旅客の中には夜行列車で通過する度毎に、駅の立食を唯一の楽みとして大田到着を待つと言ふ熱心なファンも次第に増し」(原文に句点を追加、漢字は新字に変更)<ref>[http://db.history.go.kr/common/imageViewer.do?levelId=npbs_1933_07_03_w0003_0150 美人のサービスで大田駅食堂繁盛 ホームのうどんも好評] 、韓国史データベース(釜山日報1933年7月3日記事)、2025年9月6日閲覧</ref>、との評価は、まさに後のカラッククス人気の土台になったと考えられる。 |
=== カルグクス(手打ちウドン/칼국수) === | === カルグクス(手打ちウドン/칼국수) === | ||
| 64行目: | 70行目: | ||
==== 大田両班トルソッパプ(釜飯/대전양반돌솥밥) ==== | ==== 大田両班トルソッパプ(釜飯/대전양반돌솥밥) ==== | ||
| − | :大田両班トルソッパプ(テジョン ヤンバン トルソッパプ、대전양반돌솥밥)は、釜飯(「[[トルソッパプ(釜飯/돌솥밥)]]」の項目も参照)。大田市における[[トルソッパプ(釜飯/돌솥밥)|トルソッパプ]]のブランドである。豆や雑穀などとともに釜で1人前ずつ炊いたごはんに、たくさんの副菜がついてくる。1980年代から繁華街の中区大興洞(チュング テフンドン、중구 | + | :大田両班トルソッパプ(テジョン ヤンバン トルソッパプ、대전양반돌솥밥)は、釜飯(「[[トルソッパプ(釜飯/돌솥밥)]]」の項目も参照)。大田市における[[トルソッパプ(釜飯/돌솥밥)|トルソッパプ]]のブランドである。豆や雑穀などとともに釜で1人前ずつ炊いたごはんに、たくさんの副菜がついてくる。1980年代から繁華街の中区大興洞(チュング テフンドン、중구 대흥동)一帯に、[[トルソッパプ(釜飯/돌솥밥)|トルソッパプ]]の専門店ができ始め、やがて地域の名物として親しまれるようになった。 |
==== ソルロンタン(牛スープ/설렁탕) ==== | ==== ソルロンタン(牛スープ/설렁탕) ==== | ||
| 84行目: | 90行目: | ||
=== 聖心堂のパン === | === 聖心堂のパン === | ||
[[ファイル:19091814.JPG|thumb|300px|聖心堂のパン]] | [[ファイル:19091814.JPG|thumb|300px|聖心堂のパン]] | ||
| − | :聖心堂(ソンシムダン、성심당)は、中区銀杏洞(チュング ウネンドン、중구 | + | :聖心堂(ソンシムダン、성심당)は、中区銀杏洞(チュング ウネンドン、중구 은행동)に本店を構えるベーカリー。創業者のイム・ギルスン(임길순)氏、ハン・スンドク(한순덕)氏夫妻は[[北朝鮮の料理|咸鏡南道咸州郡]]の出身で、朝鮮戦争時に故郷から避難をして大田市へと移り住んだ。1956年に大田駅前で[[チンパン(あんまん/찐빵)]]の露店を開いたのが始まりで、やがて本格的なベーカリーとして成長するに至った。1980年発売のティギムソボロ(揚げソボロパン、[[튀김소보로]])と、1986年発売のパンタロンプチュパン(ニラパン、[[판타롱 부추빵]])が看板商品であり、大田市を代表する名物として人気を集める。大田駅構内やロッテ百貨店大田店などにも支店があるほか、ケーキ専門の「聖心堂ケーキブティック(성심당 케익부띠끄)」、ベーカリーレストランの「聖心堂テラスキッチン(성심당 테라스키친) 」などの関連店舗も運営する。いずれの店舗も大田市内にあり、他地域には進出しないことを原則としている。 |
| + | |||
:*ティギムソボロ(튀김소보로) | :*ティギムソボロ(튀김소보로) | ||
::ティギムソボロ([[튀김소보로]])は、あんこ入りの[[ソボロパン(ソボロパン/소보로빵)]]を揚げたもの。ティギム([[튀김]])は揚げ物、ソボロ([[소보로]])は[[ソボロパン(ソボロパン/소보로빵)|ソボロパン]]を意味する。1980年5月25日に、当時「聖心堂」の主力商品であった[[タンパッパン(あんパン/단팥빵)]]、[[ソボロパン(ソボロパン/소보로빵)|ソボロパン]]、[[ドノッ(ドーナツ/도넛)]]を同時に味わえる商品として考案、発売された<ref>김태훈, 2016, 『우리가 사랑한 빵집 성심당』, 남해의봄날, P82-83</ref>。サクサクとしたソボロ生地の食感が揚げることでよりクリスピーになり、中に詰まったあんことも相まって濃厚な味わいに仕上がる。クッキー生地をコーティングしたあんドーナツのようなパンである。 | ::ティギムソボロ([[튀김소보로]])は、あんこ入りの[[ソボロパン(ソボロパン/소보로빵)]]を揚げたもの。ティギム([[튀김]])は揚げ物、ソボロ([[소보로]])は[[ソボロパン(ソボロパン/소보로빵)|ソボロパン]]を意味する。1980年5月25日に、当時「聖心堂」の主力商品であった[[タンパッパン(あんパン/단팥빵)]]、[[ソボロパン(ソボロパン/소보로빵)|ソボロパン]]、[[ドノッ(ドーナツ/도넛)]]を同時に味わえる商品として考案、発売された<ref>김태훈, 2016, 『우리가 사랑한 빵집 성심당』, 남해의봄날, P82-83</ref>。サクサクとしたソボロ生地の食感が揚げることでよりクリスピーになり、中に詰まったあんことも相まって濃厚な味わいに仕上がる。クッキー生地をコーティングしたあんドーナツのようなパンである。 | ||
| 95行目: | 102行目: | ||
:*シルケーキ(시루케이크) | :*シルケーキ(시루케이크) | ||
::シルケーキ([[시루케이크]])は、2021年1月に発売されたタルギシル(イチゴケーキ、[[딸기시루]])をはじめとするフルーツケーキ。シルトク(蒸し餅、[[시루떡]])のように、シート状のスポンジケーキと大量のフルーツを層状に仕立てることから名付けられた。マンゴシル(マンゴーケーキ、[[망고시루]])、ムファグァシル(イチジクケーキ、[[무화과시루]])などのバリエーションもある。近年はクリスマスシーズンなどに大行列ができるほど人気のアイテムとなっている。 | ::シルケーキ([[시루케이크]])は、2021年1月に発売されたタルギシル(イチゴケーキ、[[딸기시루]])をはじめとするフルーツケーキ。シルトク(蒸し餅、[[시루떡]])のように、シート状のスポンジケーキと大量のフルーツを層状に仕立てることから名付けられた。マンゴシル(マンゴーケーキ、[[망고시루]])、ムファグァシル(イチジクケーキ、[[무화과시루]])などのバリエーションもある。近年はクリスマスシーズンなどに大行列ができるほど人気のアイテムとなっている。 | ||
| + | :*聖心堂広域市 | ||
| + | ::大田市の名物として「聖心堂」のパンがあまりに有名であることから、大田市のことを冗談で「聖心堂広域市(성심당 광역시)」と呼ぶことがある。この表現には「聖心堂」以外に見どころや名物が少ないことを揶揄する意味合いも含まれるので、使用には注意が必要である。 | ||
=== 大田市の市場グルメ === | === 大田市の市場グルメ === | ||