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*カクテキの由来 | *カクテキの由来 | ||
| − | : | + | :日本ではカクトゥギのことをカクテキと呼ぶことも多い。これは[[江原道の料理|江原道]]、慶尚道、[[全羅南道の料理|全羅南道]]、忠清道で方言として使われる「カクテギ(깍대기)」が語源とされる。在日コリアンは慶尚道出身者が多いため、チョレギ(浅漬けキムチ、[[재래기]])や、チヂミ([[지짐이]])など、日本で定着した料理名に慶尚道方言が使われている事例は多い。 |
== 概要 == | == 概要 == | ||
| − | [[ファイル:17112603.JPG|thumb|300px| | + | [[ファイル:17112603.JPG|thumb|300px|カクトゥギなどに用いる大根]] |
[[ファイル:17112604.JPG|thumb|300px|ソルロンタンとカクトゥギ(右上)]] | [[ファイル:17112604.JPG|thumb|300px|ソルロンタンとカクトゥギ(右上)]] | ||
カクトゥギは、大根の角切りキムチ。さいの目に切って塩漬けにした大根を、粉唐辛子、ニンニク、ショウガ、塩辛などを混ぜ合わせた薬味ダレに漬け込んで作る。カクトゥギに使われる大根はチョソンム(朝鮮大根、[[조선무]])と呼ばれるもので、日本の大根よりも寸が詰まって太い。主に家庭の常備菜、副菜として作られるほか、飲食店でも副菜のひとつとして提供される。中でも[[ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)]]や、[[コムタン(牛スープ/곰탕)]]といったスープ料理との相性がよいとされ、これらを専門とする店ではカクトゥギを自慢とするところが多い。また一部の店ではカクトゥギの汁を、スープに入れて味付けにしたりもする。類似の料理としては、[[ムキムチ(大根のキムチ/무김치)]]、[[チョンガッキムチ(小大根のキムチ/총각김치)]]などがある。 | カクトゥギは、大根の角切りキムチ。さいの目に切って塩漬けにした大根を、粉唐辛子、ニンニク、ショウガ、塩辛などを混ぜ合わせた薬味ダレに漬け込んで作る。カクトゥギに使われる大根はチョソンム(朝鮮大根、[[조선무]])と呼ばれるもので、日本の大根よりも寸が詰まって太い。主に家庭の常備菜、副菜として作られるほか、飲食店でも副菜のひとつとして提供される。中でも[[ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)]]や、[[コムタン(牛スープ/곰탕)]]といったスープ料理との相性がよいとされ、これらを専門とする店ではカクトゥギを自慢とするところが多い。また一部の店ではカクトゥギの汁を、スープに入れて味付けにしたりもする。類似の料理としては、[[ムキムチ(大根のキムチ/무김치)]]、[[チョンガッキムチ(小大根のキムチ/총각김치)]]などがある。 | ||
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| + | *ソッパクチ(섞박지)との違い | ||
| + | :カクトゥギとよく似た大根キムチに、ソッパクチ([[섞박지2|섞박지]])がある。調理法はほぼ同じだが、カクトゥギが大根をさいの目切り([[깍둑썰기]])にするのに対し、ソッパクチは薄い角切り([[나박썰기]])にするとの違いがある。本来、ソッパクチ([[섞박지1|섞박지]])は大根や白菜を主材料として海産物を加えて作るキムチを指すが、近年は大根キムチを指すことが多い。 | ||
== 歴史 == | == 歴史 == | ||
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;『是議全書』(19世紀末)の記述 | ;『是議全書』(19世紀末)の記述 | ||
| − | : | + | :19世紀末に書かれた『是議全書([[시의전서]])』(原著者不詳)のキムチ([[김치]])という項目には、チョンム([[젓무]])という大根を用いたキムチの調理法が紹介されている。チョン(チョッ、[[젓]])は塩辛、ム([[무]])は大根を意味し、直訳をすれば大根の塩辛漬けになるが、材料に粉唐辛子や長ネギ、ニンニクが用いられており、大根を「真四角に切って(네모반듯하게 썰어)」との表現もあることから、カクトゥギの原型であるとされる。また、冒頭にはキュウリを使ったウェジョンム([[외젓무]])の作り方も付記されており、こちらはオイカクトゥギ(キュウリの角切りキムチ、[[오이깍두기]])の原型と考えられる。該当の記述は以下の通りである。 |
| − | :「キュウリのチョンム(カクトゥギ)は、[[オイキムチ(キュウリのキムチ/오이김치)]]のように具を入れ、アミの塩辛([[새우젓]])は刻んで粉唐辛子と長ネギ、ニンニクも刻んで合わせ馴染ませる。白菜の内側部分は四等分に切り、大根はザクザクと真四角に切って、オイジ(キュウリ漬け、[[오이지]] | + | :「キュウリのチョンム(カクトゥギ)は、[[オイキムチ(キュウリのキムチ/오이김치)]]のように具を入れ、アミの塩辛([[새우젓]])は刻んで粉唐辛子と長ネギ、ニンニクも刻んで合わせ馴染ませる。白菜の内側部分は四等分に切り、大根はザクザクと真四角に切って、オイジ(キュウリ漬け、[[오이지]])も入れる。アミの塩辛は刻んでおき、長ネギとニンニクはすりばちでつぶし、粉唐辛子と混ぜてひとつの混ぜ合わせ、味を調えておく。チョンムは上に覆いをかけてこそよく漬かり味もよい」【原文1】 |
:【原文1】 | :【原文1】 | ||
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;『朝鮮料理製法』(1921年)の記述 | ;『朝鮮料理製法』(1921年)の記述 | ||
| − | : | + | :方信栄(방신영)によって1917年に初めて書かれ、その後も増補を重ねた『朝鮮料理製法(조선요리제법)』にはカクトゥギの調理法が紹介されている。カクトゥギという名前で文献に登場するのはこれが初めてである(目次では「깍둑이」、本文では「각뚝이」と表記されている。1921年、1937年の版で確認)<ref>[http://www.koreantk.net/ktkp2014/kfood/kfood-view.view?foodCd=106660 깍두기, 조선요리제법(1921)] 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧</ref><ref>方信栄, 1937, 『朝鮮料理製法』, 悦話堂, P3, 99-100</ref>。 |
;『朝鮮無双新式料理製法』(1930年)の記述 | ;『朝鮮無双新式料理製法』(1930年)の記述 | ||
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: 日本統治時代に朝鮮食饌研究所(조선식찬연구소)を運営していた洪善杓(홍선표)は、1937年11月10日付けの東亜日報にてカクトゥギに関する逸話を以下のように紹介している<ref>[http://newslibrary.naver.com/viewer/index.nhn?articleId=1937111000209203001&editNo=2&printCount=1&publishDate=1937-11-10&officeId=00020&pageNo=3&printNo=5821&publishType=00020 지상김장강습 일년중 제일 큰 행사인 조선가정의 김장 (2)] 、NAVERニュースライブラリー、2017年11月23日閲覧</ref>。 | : 日本統治時代に朝鮮食饌研究所(조선식찬연구소)を運営していた洪善杓(홍선표)は、1937年11月10日付けの東亜日報にてカクトゥギに関する逸話を以下のように紹介している<ref>[http://newslibrary.naver.com/viewer/index.nhn?articleId=1937111000209203001&editNo=2&printCount=1&publishDate=1937-11-10&officeId=00020&pageNo=3&printNo=5821&publishType=00020 지상김장강습 일년중 제일 큰 행사인 조선가정의 김장 (2)] 、NAVERニュースライブラリー、2017年11月23日閲覧</ref>。 | ||
| − | : | + | : 「カクトゥギは200年前、正祖王の時代に正祖の婿である永明尉、洪顕周(ホン・ヒョンジュ)の夫人が王にさまざまな料理を新しく作って捧げたとき、初めて大根を切ってカクトゥギを作って差し上げたところ、たいへん賞賛なさり、召し上がった日から下々にまで伝播した。そのとき名前を刻毒気(カクトッキ)と称した。民間に伝播したのは、大臣の中で名前は記録されていないものの、公州に落郷した人物がカクトゥギを作って食べたことから、カクトゥギが公州より民間で作られ始めた関係で、今日まで公州カクトゥギとして有名なのである」【原文2】 |
:【原文2】 | :【原文2】 | ||
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=== 具のバリエーション === | === 具のバリエーション === | ||
| − | *クルカクトゥギ([[ | + | *クルカクトゥギ([[굴깍두기]]) |
:生牡蠣を入れて作るカクトゥギ | :生牡蠣を入れて作るカクトゥギ | ||
*アガミカクトゥギ([[아가미깍두기]]) | *アガミカクトゥギ([[아가미깍두기]]) | ||
:スケトウダラのエラを入れて作るカクトゥギ。ミョンテソドリカクトゥギ([[명태서더리깍두기]])とも呼ぶ。ミョンテ([[명태]])はスケトウダラ、ソドリ([[서더리]])は魚のアラを意味する。スケトウダラの産地である[[江原道の料理|江原道]][[高城郡の料理|高城郡]]の郷土料理として知られる。 | :スケトウダラのエラを入れて作るカクトゥギ。ミョンテソドリカクトゥギ([[명태서더리깍두기]])とも呼ぶ。ミョンテ([[명태]])はスケトウダラ、ソドリ([[서더리]])は魚のアラを意味する。スケトウダラの産地である[[江原道の料理|江原道]][[高城郡の料理|高城郡]]の郷土料理として知られる。 | ||
| + | *チャンナンジョッカクトゥギ([[창난젓깍두기]]) | ||
| + | :[[チャンナンジョッ(スケトウダラの内臓の塩辛/창난젓)]]を入れて作るカクトゥギ。詩人、白石(ペク・ソク、백석)の詩『北関(북관)』に登場する。 | ||
=== 調理法のバリエーション === | === 調理法のバリエーション === | ||
| 103行目: | 108行目: | ||
== 地域 == | == 地域 == | ||
[[ファイル:17112609.JPG|thumb|300px|カクトゥギを添えたチュンムキムパプ]] | [[ファイル:17112609.JPG|thumb|300px|カクトゥギを添えたチュンムキムパプ]] | ||
| − | *[[ | + | *仁川市江華郡 |
| − | + | :[[仁川市の料理|仁川市]][[江華郡の料理|江華郡]]では、名産品のカブ([[순무]])を大きめの角切りにし、カクトゥギのように漬け込む。大根に比べて食感がしんなりとしており、カブの風味が活きているのが特徴である。 | |
| − | *[[ | + | *江原道高城郡 |
| − | + | :[[江原道の料理|江原道]][[高城郡の料理|高城郡]]では、スケトウダラのエラを入れて作るアガミカクトゥギ([[아가미깍두기]])が郷土料理として知られる。 | |
| − | *[[ | + | *忠清南道公州市 |
| + | :カクトゥギの製法は[[忠清南道の料理|忠清南道]][[公州市の料理|公州市]]から広まったとの説がある。 | ||
| + | *慶尚南道統営市 | ||
:[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[統営市の料理|統営市]]の郷土料理である[[チュンムキムパプ(ひと口海苔巻き/충무김밥)]]には、カクトゥギとオジンオムチム(スルメイカの和え物、[[오징어무침]])が添えられる。 | :[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[統営市の料理|統営市]]の郷土料理である[[チュンムキムパプ(ひと口海苔巻き/충무김밥)]]には、カクトゥギとオジンオムチム(スルメイカの和え物、[[오징어무침]])が添えられる。 | ||
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*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト) | *[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト) | ||
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール) | *[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール) | ||
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== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
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*[[コムタン(牛スープ/곰탕)]] | *[[コムタン(牛スープ/곰탕)]] | ||
*[[ムキムチ(大根のキムチ/무김치)]] | *[[ムキムチ(大根のキムチ/무김치)]] | ||
*[[ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)]] | *[[ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)]] | ||
*[[オイキムチ(キュウリのキムチ/오이김치)]] | *[[オイキムチ(キュウリのキムチ/오이김치)]] | ||
| + | *[[チャンナンジョッ(スケトウダラの内臓の塩辛/창난젓)]] | ||
*[[チョンガッキムチ(小大根のキムチ/총각김치)]] | *[[チョンガッキムチ(小大根のキムチ/총각김치)]] | ||
*[[忠清南道の料理]] | *[[忠清南道の料理]] | ||
*[[公州市の料理]] | *[[公州市の料理]] | ||
| + | [[Category:韓食ペディア]] | ||
| + | [[Category:キムチ・漬物の一覧]] | ||
| + | [[Category:野菜料理の一覧]] | ||
| + | [[Category:忠清南道・大田市・世宗市の料理]] | ||