「下書き用ページ」の版間の差分

編集の要約なし
2行目: 2行目:
  
 
'''太白市'''(テベクシ、태백시)は[[江原道の料理|江原道]]の南東部に位置する地域。本ページでは太白市の料理、特産品について解説する。
 
'''太白市'''(テベクシ、태백시)は[[江原道の料理|江原道]]の南東部に位置する地域。本ページでは太白市の料理、特産品について解説する。
 +
 +
[[ファイル:19121402.JPG|thumb|400px|洛東江の発源地とされる黄池蓮池(ファンジヨンモッ)。近年の調査によって実際の発源地とは異なることがわかったが現在も象徴的な意味での発源地と扱われている]]
  
 
== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
10行目: 12行目:
  
 
== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
 +
[[ファイル:19121403.JPG|thumb|300px|太白石炭博物館]]
 
現在の太白市一帯から、隣接する[[江原道の料理|江原道]][[旌善郡の料理|旌善郡]]、[[三陟市の料理|三陟市]]にかけては良質の無煙炭を産出する地域で、1930年代より炭鉱の開発が進んだ。1960〜80年代には全国から多くの労働者が集まり、炭鉱の町として賑わいを増していく。1981年に太白市が発足すると、1987年には人口がピークとなる12万0208人まで増えたが<ref>[http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=110&tblId=TX_11001_A324 면적·세대·인구(1970~1991)] 、統計庁資料、2019年9月18日閲覧</ref>、1980年代末になって石炭から石油へとエネルギーの主軸が移ると、石炭産業は合理化政策が進められ、多くの炭鉱が廃鉱となっていった。この時期を境に太白市の人口は減少が進み、2012年には市の昇格条件である5万人を割り、現在の人口は市単位で見ると[[忠清南道の料理|忠清南道]][[鶏龍市の料理|鶏龍市]]に次いで少ない。炭鉱の町としての栄華はすっかりかつてのものとなったが、それでも地域の食文化を見ると炭鉱で賑わっていた時代の名残が色濃く見える。炭鉱労働者らが仕事の後に食べたという、ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋、[[물닭갈비]])や、ハヌヨンタングイ(韓牛の練炭焼き、[[한우연탄구이]])は地域の名物となっており、また地元の老舗飲食店は創業者の出身地域を屋号として掲げている場合が多く、働き先を求めて全国各地から人が集まった時代を反映している。
 
現在の太白市一帯から、隣接する[[江原道の料理|江原道]][[旌善郡の料理|旌善郡]]、[[三陟市の料理|三陟市]]にかけては良質の無煙炭を産出する地域で、1930年代より炭鉱の開発が進んだ。1960〜80年代には全国から多くの労働者が集まり、炭鉱の町として賑わいを増していく。1981年に太白市が発足すると、1987年には人口がピークとなる12万0208人まで増えたが<ref>[http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=110&tblId=TX_11001_A324 면적·세대·인구(1970~1991)] 、統計庁資料、2019年9月18日閲覧</ref>、1980年代末になって石炭から石油へとエネルギーの主軸が移ると、石炭産業は合理化政策が進められ、多くの炭鉱が廃鉱となっていった。この時期を境に太白市の人口は減少が進み、2012年には市の昇格条件である5万人を割り、現在の人口は市単位で見ると[[忠清南道の料理|忠清南道]][[鶏龍市の料理|鶏龍市]]に次いで少ない。炭鉱の町としての栄華はすっかりかつてのものとなったが、それでも地域の食文化を見ると炭鉱で賑わっていた時代の名残が色濃く見える。炭鉱労働者らが仕事の後に食べたという、ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋、[[물닭갈비]])や、ハヌヨンタングイ(韓牛の練炭焼き、[[한우연탄구이]])は地域の名物となっており、また地元の老舗飲食店は創業者の出身地域を屋号として掲げている場合が多く、働き先を求めて全国各地から人が集まった時代を反映している。
  
 
== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
 +
[[ファイル:19121404.JPG|thumb|300px|ナズナ入りのムルタッカルビ]]
 
=== ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋/물닭갈비) ===
 
=== ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋/물닭갈비) ===
 
ムルタッカルビ([[물닭갈비]])は、鶏肉と野菜の鍋。ムル([[물]])は水を意味し、この場合は汁気がある鍋料理であることを指す。タッカルビ([[닭갈비]])は鶏肉と野菜の鉄板炒め(「[[タッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)]]」の項目を参照)。タッカルビを鍋料理としてアレンジした料理を指す。スープのことをクンムル([[국물]])とも呼ぶことからクンムルタッカルビ([[국물닭갈비]])、または太白市が発祥であることからテベクタッカルビ([[태백닭갈비]])とも呼ばれる。ぶつ切りにして味付けをした鶏肉をピリ辛の煮汁で煮込みながら味わうが、店によってナズナ、エゴマの葉、セリ、春菊など香りの強い野菜を加えて作るのが特徴。また、各店ともトッピングが充実しており、ウドン([[우동]])、インスタントラーメン([[라면]])、チョルミョン(でんぷん麺、[[쫄면]])、春雨([[당면]])、韓国餅([[떡]])などを好みで注文する。ひと通りの具を食べた後は、残った煮汁にごはんを加えて炒めて食べるところまでが定番のコースである。ムルタッカルビが誕生した背景としては、炭鉱で働く人たちが仕事終わりに食べる際、喉に絡んだ粉塵を洗い流す意味から汁気を求めたのが始まりとされる。太白市内には数多くのムルタッカルビ専門店があり、黄池洞(ファンジドン、황지동)に位置する「太白タッカルビ(태백닭갈비)」と「金書房ネタッカルビ(김서방네닭갈비)」の2軒が有名店として知られる。ただし、店によって具の選択肢や味付けが大きく異なるため、地元の人におすすめ店を聞くと意見がだいぶ分かれる傾向にある。ほかに「スンソタッカルビ(승소닭갈비)」、「オンマソン太白ムルタッカルビ(엄마손태백물닭갈비)」、「ファンブジャタッカルビ(황부자닭갈비)」などの有名店がある。
 
ムルタッカルビ([[물닭갈비]])は、鶏肉と野菜の鍋。ムル([[물]])は水を意味し、この場合は汁気がある鍋料理であることを指す。タッカルビ([[닭갈비]])は鶏肉と野菜の鉄板炒め(「[[タッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)]]」の項目を参照)。タッカルビを鍋料理としてアレンジした料理を指す。スープのことをクンムル([[국물]])とも呼ぶことからクンムルタッカルビ([[국물닭갈비]])、または太白市が発祥であることからテベクタッカルビ([[태백닭갈비]])とも呼ばれる。ぶつ切りにして味付けをした鶏肉をピリ辛の煮汁で煮込みながら味わうが、店によってナズナ、エゴマの葉、セリ、春菊など香りの強い野菜を加えて作るのが特徴。また、各店ともトッピングが充実しており、ウドン([[우동]])、インスタントラーメン([[라면]])、チョルミョン(でんぷん麺、[[쫄면]])、春雨([[당면]])、韓国餅([[떡]])などを好みで注文する。ひと通りの具を食べた後は、残った煮汁にごはんを加えて炒めて食べるところまでが定番のコースである。ムルタッカルビが誕生した背景としては、炭鉱で働く人たちが仕事終わりに食べる際、喉に絡んだ粉塵を洗い流す意味から汁気を求めたのが始まりとされる。太白市内には数多くのムルタッカルビ専門店があり、黄池洞(ファンジドン、황지동)に位置する「太白タッカルビ(태백닭갈비)」と「金書房ネタッカルビ(김서방네닭갈비)」の2軒が有名店として知られる。ただし、店によって具の選択肢や味付けが大きく異なるため、地元の人におすすめ店を聞くと意見がだいぶ分かれる傾向にある。ほかに「スンソタッカルビ(승소닭갈비)」、「オンマソン太白ムルタッカルビ(엄마손태백물닭갈비)」、「ファンブジャタッカルビ(황부자닭갈비)」などの有名店がある。
  
 
=== ハヌヨンタングイ(韓牛の練炭焼肉/한우연탄구이) ===
 
=== ハヌヨンタングイ(韓牛の練炭焼肉/한우연탄구이) ===
 +
[[ファイル:19121405.JPG|thumb|300px|ハヌヨンタングイ]]
 
ハヌヨンタングイ([[한우연탄구이]])は、韓牛の練炭焼き。ハヌ([[한우]])は朝鮮半島在来種の牛。ヨンタン([[연탄]])は練炭。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物を総称する。練炭を熱源とした焼肉のことであるが、炭鉱の町として栄えた太白市では身近な練炭を用いた焼肉をヨンタングイ(練炭焼き、[[연탄구이]])と称する。市中心部の黄池洞(ファンジドン、황지동)を中心に実費食堂(シルビシクタン、[[실비식당]])を掲げる専門店が多くあり、韓牛の各部位を練炭の火で網焼きにして提供している。実費食堂とは、実際の費用(材料費)だけを受け取るという意味のリーズナブルな食堂を指し、ドラム缶テーブルを並べただけの簡素な内観が特徴である。近年は牛肉価格の高騰により決して安価とまでは言えないものの、大衆的な雰囲気と練炭の煙に包まれながら味わうという昔ながらの風情を感じられる。元祖店とされる「テソン実費食堂(태성실비식당)」のあるカムチョン路(カムチョンノ、감천로)沿いや、黄池自由市場(ファンジ チャユシジャン、황지자유시장)沿いに専門店が多い。なお、使用している韓牛は必ずしも太白産という訳でなく、近隣である[[江原道の料理|江原道]]の[[横城郡の料理|横城郡]]や[[平昌郡の料理|平昌郡]]、あるいは[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[奉化郡の料理|奉化郡]]で飼育されたものが運ばれてきている。ある焼肉店店主の言葉によれば「太白に韓牛を育てる文化はない。食べる文化があるのだ」(八田靖史の取材記録より、2019年7月14日)とのことである。
 
ハヌヨンタングイ([[한우연탄구이]])は、韓牛の練炭焼き。ハヌ([[한우]])は朝鮮半島在来種の牛。ヨンタン([[연탄]])は練炭。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物を総称する。練炭を熱源とした焼肉のことであるが、炭鉱の町として栄えた太白市では身近な練炭を用いた焼肉をヨンタングイ(練炭焼き、[[연탄구이]])と称する。市中心部の黄池洞(ファンジドン、황지동)を中心に実費食堂(シルビシクタン、[[실비식당]])を掲げる専門店が多くあり、韓牛の各部位を練炭の火で網焼きにして提供している。実費食堂とは、実際の費用(材料費)だけを受け取るという意味のリーズナブルな食堂を指し、ドラム缶テーブルを並べただけの簡素な内観が特徴である。近年は牛肉価格の高騰により決して安価とまでは言えないものの、大衆的な雰囲気と練炭の煙に包まれながら味わうという昔ながらの風情を感じられる。元祖店とされる「テソン実費食堂(태성실비식당)」のあるカムチョン路(カムチョンノ、감천로)沿いや、黄池自由市場(ファンジ チャユシジャン、황지자유시장)沿いに専門店が多い。なお、使用している韓牛は必ずしも太白産という訳でなく、近隣である[[江原道の料理|江原道]]の[[横城郡の料理|横城郡]]や[[平昌郡の料理|平昌郡]]、あるいは[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[奉化郡の料理|奉化郡]]で飼育されたものが運ばれてきている。ある焼肉店店主の言葉によれば「太白に韓牛を育てる文化はない。食べる文化があるのだ」(八田靖史の取材記録より、2019年7月14日)とのことである。
  
23行目: 28行目:
  
 
=== 太白市のB級グルメ ===
 
=== 太白市のB級グルメ ===
 +
[[ファイル:19121406.JPG|thumb|300px|タングァンマウルパン]]
 
;タングァンマウルパン
 
;タングァンマウルパン
 
:タングァンマウルパン(탄광마을빵)は、練炭型の饅頭。タングァン(탄광)は炭鉱、マウル(마을)は村、パン([[빵]])はパンや饅頭などの焼き菓子を総称する。練炭を模した形をしており、中にはポップンジャ([[복분자]]、山イチゴ)のあんが入っている。太白石炭博物館内の土産物店など、市内各地で販売される。
 
:タングァンマウルパン(탄광마을빵)は、練炭型の饅頭。タングァン(탄광)は炭鉱、マウル(마을)は村、パン([[빵]])はパンや饅頭などの焼き菓子を総称する。練炭を模した形をしており、中にはポップンジャ([[복분자]]、山イチゴ)のあんが入っている。太白石炭博物館内の土産物店など、市内各地で販売される。
29,495

回編集