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== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
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[[ファイル:19050302.JPG|thumb|300px|仁川国際空港の第2ターミナル]]
 
仁川市(インチョンシ、인천시)は韓国の北西部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。正式には仁川広域市(インチョンクァンヨクシ、인천광역시)と呼ぶ。北部は[[北朝鮮の料理|北朝鮮]]との軍事分界線に面し、東部と南部は[[京畿道の料理|京畿道]]と、東部の一部は[[ソウル市の料理|ソウル市]]と接する。西部は西海岸に面しており、数多くの島嶼を有する。韓国で5番目の面積を誇る[[江華郡の料理|江華島]](カンファド、강화도)をはじめ、仁川国際空港のある永宗島(ヨンジョンド、영종도)、韓国の最西端に位置する白翎島(ペンニョンド、백령도)といった島がある([[北朝鮮の料理|北朝鮮]]を含む場合は平安北道薪島郡の馬鞍島が最西端である)。人口は295万2476人(2018年4月)で、韓国の市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]に次いで3番目に多い<ref>[http://www.mois.go.kr/frt/sub/a05/totStat/screen.do 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2018年5月11日閲覧</ref>。主要な観光地としては、仁川駅前に韓国最大のチャイナタウン(中華街)があり、またそれに隣接して日本の租界跡も残る。前述の[[江華郡の料理|江華島]]は歴史的な魅力に富む観光地でもあり、ユネスコの世界文化遺産にも指定された支石墓群や、神話上の始祖である檀君が天に祭祀を行った摩尼山(マニサン、마니산)、高句麗時代の381年に創建されたとされる伝燈寺(チョンドゥンサ、전등사)などがある(「[[江華郡の料理]]」の項目も参照)。ソウルからのアクセスは、地下鉄1号線が仁川駅まで結ばれているほか、仁川市内を走る仁川都市鉄道1号線、2号線に、ソウルの地下鉄1号線や空港鉄道などが接続している。仁川国際空港までは空港鉄道のほか、リムジンバスが市内各地から往復している。[[江華郡の料理|江華島]]の市外バスターミナル「江華旅客自動車ターミナル」までは、ソウル(新村、弘大入口などの各バス停)から広域バスで約2時間の距離。
 
仁川市(インチョンシ、인천시)は韓国の北西部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。正式には仁川広域市(インチョンクァンヨクシ、인천광역시)と呼ぶ。北部は[[北朝鮮の料理|北朝鮮]]との軍事分界線に面し、東部と南部は[[京畿道の料理|京畿道]]と、東部の一部は[[ソウル市の料理|ソウル市]]と接する。西部は西海岸に面しており、数多くの島嶼を有する。韓国で5番目の面積を誇る[[江華郡の料理|江華島]](カンファド、강화도)をはじめ、仁川国際空港のある永宗島(ヨンジョンド、영종도)、韓国の最西端に位置する白翎島(ペンニョンド、백령도)といった島がある([[北朝鮮の料理|北朝鮮]]を含む場合は平安北道薪島郡の馬鞍島が最西端である)。人口は295万2476人(2018年4月)で、韓国の市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]に次いで3番目に多い<ref>[http://www.mois.go.kr/frt/sub/a05/totStat/screen.do 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2018年5月11日閲覧</ref>。主要な観光地としては、仁川駅前に韓国最大のチャイナタウン(中華街)があり、またそれに隣接して日本の租界跡も残る。前述の[[江華郡の料理|江華島]]は歴史的な魅力に富む観光地でもあり、ユネスコの世界文化遺産にも指定された支石墓群や、神話上の始祖である檀君が天に祭祀を行った摩尼山(マニサン、마니산)、高句麗時代の381年に創建されたとされる伝燈寺(チョンドゥンサ、전등사)などがある(「[[江華郡の料理]]」の項目も参照)。ソウルからのアクセスは、地下鉄1号線が仁川駅まで結ばれているほか、仁川市内を走る仁川都市鉄道1号線、2号線に、ソウルの地下鉄1号線や空港鉄道などが接続している。仁川国際空港までは空港鉄道のほか、リムジンバスが市内各地から往復している。[[江華郡の料理|江華島]]の市外バスターミナル「江華旅客自動車ターミナル」までは、ソウル(新村、弘大入口などの各バス停)から広域バスで約2時間の距離。
  
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== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
[[ファイル:19050302.JPG|thumb|300px|仁川国際空港の第2ターミナル]]
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[[ファイル:19050303.JPG|thumb|300px|チャイナタウンには中華料理店が立ち並ぶ]]
 
現在の仁川市には[[ソウル市の料理|ソウル市]]の玄関口となる仁川国際空港や、釜山港に次いで韓国2位の規模を誇る仁川港があり、貿易や交通の拠点となる港湾都市として栄えている。しかし、主要都市としての歴史は意外に浅く、1876年に締結された日朝修好条規を背景として、1883年に仁川港が開港したことに端を発する。それまでの仁川港一帯は済物浦(チェムルポ、제물포)と呼ばれる小さな漁村であったが、開港によって日本や中国の租界が置かれ、多くの外国人が住むようになって大きく発展した。現在も仁川駅前には韓国最大のチャイナタウンが広がっており、[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]や、[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]、[[タンスユク(酢豚/탕수육)]]など、コリアナイズされた[[:Category:中国料理の一覧|中国料理]]の本場として知られる。また、チャイナタウンの裏手には開港以降、外国人に向けて新鮮な野菜などを販売した新浦国際市場(シンポクッチェシジャン、신포국제시장)があり、[[マンドゥ(餃子/만두)]]、[[コンガルパン(中国式の大きなパン/공갈빵)]]といった中国由来の料理を現在も名物としている(「[[下書き用ページ#新浦国際市場|仁川市の市場グルメ/新浦国際市場]]」参照)。一方で仁川市は港町としての魚介料理も豊富であり、特産品であるワタリガニを用いた[[カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)]]や、[[コッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)]]をはじめ、[[アグタン(アンコウ鍋/아구탕)]]、ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身、[[밴댕이회]])、[[ヘムルタン(海鮮鍋/해물탕)]]といった郷土料理がある。このほか、仁川市は[[チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면)]]や、[[ケランパン(目玉焼き入り今川焼き/계란빵)]]の発祥地としても知られる。
 
現在の仁川市には[[ソウル市の料理|ソウル市]]の玄関口となる仁川国際空港や、釜山港に次いで韓国2位の規模を誇る仁川港があり、貿易や交通の拠点となる港湾都市として栄えている。しかし、主要都市としての歴史は意外に浅く、1876年に締結された日朝修好条規を背景として、1883年に仁川港が開港したことに端を発する。それまでの仁川港一帯は済物浦(チェムルポ、제물포)と呼ばれる小さな漁村であったが、開港によって日本や中国の租界が置かれ、多くの外国人が住むようになって大きく発展した。現在も仁川駅前には韓国最大のチャイナタウンが広がっており、[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]や、[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]、[[タンスユク(酢豚/탕수육)]]など、コリアナイズされた[[:Category:中国料理の一覧|中国料理]]の本場として知られる。また、チャイナタウンの裏手には開港以降、外国人に向けて新鮮な野菜などを販売した新浦国際市場(シンポクッチェシジャン、신포국제시장)があり、[[マンドゥ(餃子/만두)]]、[[コンガルパン(中国式の大きなパン/공갈빵)]]といった中国由来の料理を現在も名物としている(「[[下書き用ページ#新浦国際市場|仁川市の市場グルメ/新浦国際市場]]」参照)。一方で仁川市は港町としての魚介料理も豊富であり、特産品であるワタリガニを用いた[[カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)]]や、[[コッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)]]をはじめ、[[アグタン(アンコウ鍋/아구탕)]]、ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身、[[밴댕이회]])、[[ヘムルタン(海鮮鍋/해물탕)]]といった郷土料理がある。このほか、仁川市は[[チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면)]]や、[[ケランパン(目玉焼き入り今川焼き/계란빵)]]の発祥地としても知られる。
  
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== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
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[[ファイル:19050304.JPG|thumb|300px|チャジャンミョン]]
 
=== チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면) ===
 
=== チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면) ===
 
チャジャンミョンは、韓国式のジャージャー麺。漢字では「炸醤麺」と書き、チャジャン(炸醤、짜장)は炒め味噌、ミョン(麺、면)は麺を意味する([[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]の項目も参照)。1883年に仁川港が開かれると、西海(黄海)を挟んで対岸である中国の山東省から多くの人が渡ってきた。彼らの伝えた代表的な中華料理のひとつが[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)|チャジャンミョン]]であり、当初は同胞向けに作って食べたものが、徐々に韓国でもローカライズして浸透した。中区北城洞(チュング プクソンドン、중구 북성동)の仁川駅前には韓国最大のチャイナタウンが広がっており、この町が韓国における[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)|チャジャンミョン]]発祥の地として知られる。当時の代表的な中華料理店としては1908年頃に創業した「共和春(공화춘)」があり、1983年に閉店したが、その跡地は現在[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)|チャジャンミョン]]博物館として歴史を伝えている。
 
チャジャンミョンは、韓国式のジャージャー麺。漢字では「炸醤麺」と書き、チャジャン(炸醤、짜장)は炒め味噌、ミョン(麺、면)は麺を意味する([[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)]]の項目も参照)。1883年に仁川港が開かれると、西海(黄海)を挟んで対岸である中国の山東省から多くの人が渡ってきた。彼らの伝えた代表的な中華料理のひとつが[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)|チャジャンミョン]]であり、当初は同胞向けに作って食べたものが、徐々に韓国でもローカライズして浸透した。中区北城洞(チュング プクソンドン、중구 북성동)の仁川駅前には韓国最大のチャイナタウンが広がっており、この町が韓国における[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)|チャジャンミョン]]発祥の地として知られる。当時の代表的な中華料理店としては1908年頃に創業した「共和春(공화춘)」があり、1983年に閉店したが、その跡地は現在[[チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)|チャジャンミョン]]博物館として歴史を伝えている。
  
 
*共和春
 
*共和春
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[[ファイル:19050305.JPG|thumb|300px|かつての「共和春」跡地に建てられたチャジャンミョン博物館]]
 
:共和春(コンファチュン、공화춘)は、中国・山東省出身の于希光(ウ・ヒグァン、우희광)氏によって開かれた中華料理店。創業年代は1905年と1908年の両説があり(チャジャンミョン博物館では1908年と説明している<ref>[https://www.icjgss.or.kr/jajangmyeon/introduction/history.asp 역사적배경] 、チャジャンミョン博物館ウェブサイト、2019年5月2日閲覧</ref>)、当時は「山東会館(산동회관)」という名称の宿泊施設を兼ねた飲食店であった。店名を「共和春」としたのは辛亥革命によって中華民国が誕生した1912年で「共和国の春」という意味が込められている。韓国における中華料理店の草分けとして長らく愛されてきたが、1983年に閉店。同店の建物は2006年4月に登録文化財第246号として指定されたのち<ref>[http://www.heritage.go.kr/heri/cul/culSelectDetail.do?pageNo=5_2_1_0&ccbaCpno=4412302460000 등록문화재 제246호 인천 선린동 공화춘(共和春)] 、文化財庁国家文化遺産ポータル、2019年5月2日閲覧</ref>、2012年4月に「チャジャンミョン博物館(짜장면박물관)」として利用されるに至った。なお、現在のチャイナタウンには「共和春」の後継とされる店がふたつある。ひとつは2004年2月に開店した同名の「共和春」で、かつて「共和春」で料理長を務めていた人物を株式会社共和春フランチャイズの代表イ・ヒョンデ(이현대)氏が招聘し新たに始めたものである<ref>[http://gonghwachun.co.kr/welcome 대표인사말] 、共和春ウェブサイト、2019年5月2日閲覧</ref><ref>[http://www.powerkoream.co.kr/news/articleView.html?idxno=1103983 짜장면의 원조 공화춘, 그 잊혀진 맛을 되살리다 공화춘 이현대 대표] 、月刊パワーコリア(2017年2月15日記事)、2019年5月2日閲覧</ref>。もうひとつは于希光氏の娘であるウ・ランヨン(우란영)氏と結婚したワン・イビョン(왕입영)氏が、「共和春」での修行を経て1980年に開店した「新勝飯店(신승반점)」である<ref>[http://daily.hankooki.com/lpage/life/201708/dh20170819070833138910.htm [주간한국] [이야기가 있는 맛집(289)] ‘신승반점’ 왕애주 대표] 、デイリー韓国(2017年8月19日記事)、2019年5月2日閲覧</ref>。現在「新勝飯店」の代表はワン・イビョン、ウ・ランヨン夫婦の娘であり、また于希光の孫に当たるワン・エジュ(왕애주)氏が受け継いでおり、店名は異なるもののこちらを直系の後継店と考える人も多い。
 
:共和春(コンファチュン、공화춘)は、中国・山東省出身の于希光(ウ・ヒグァン、우희광)氏によって開かれた中華料理店。創業年代は1905年と1908年の両説があり(チャジャンミョン博物館では1908年と説明している<ref>[https://www.icjgss.or.kr/jajangmyeon/introduction/history.asp 역사적배경] 、チャジャンミョン博物館ウェブサイト、2019年5月2日閲覧</ref>)、当時は「山東会館(산동회관)」という名称の宿泊施設を兼ねた飲食店であった。店名を「共和春」としたのは辛亥革命によって中華民国が誕生した1912年で「共和国の春」という意味が込められている。韓国における中華料理店の草分けとして長らく愛されてきたが、1983年に閉店。同店の建物は2006年4月に登録文化財第246号として指定されたのち<ref>[http://www.heritage.go.kr/heri/cul/culSelectDetail.do?pageNo=5_2_1_0&ccbaCpno=4412302460000 등록문화재 제246호 인천 선린동 공화춘(共和春)] 、文化財庁国家文化遺産ポータル、2019年5月2日閲覧</ref>、2012年4月に「チャジャンミョン博物館(짜장면박물관)」として利用されるに至った。なお、現在のチャイナタウンには「共和春」の後継とされる店がふたつある。ひとつは2004年2月に開店した同名の「共和春」で、かつて「共和春」で料理長を務めていた人物を株式会社共和春フランチャイズの代表イ・ヒョンデ(이현대)氏が招聘し新たに始めたものである<ref>[http://gonghwachun.co.kr/welcome 대표인사말] 、共和春ウェブサイト、2019年5月2日閲覧</ref><ref>[http://www.powerkoream.co.kr/news/articleView.html?idxno=1103983 짜장면의 원조 공화춘, 그 잊혀진 맛을 되살리다 공화춘 이현대 대표] 、月刊パワーコリア(2017年2月15日記事)、2019年5月2日閲覧</ref>。もうひとつは于希光氏の娘であるウ・ランヨン(우란영)氏と結婚したワン・イビョン(왕입영)氏が、「共和春」での修行を経て1980年に開店した「新勝飯店(신승반점)」である<ref>[http://daily.hankooki.com/lpage/life/201708/dh20170819070833138910.htm [주간한국] [이야기가 있는 맛집(289)] ‘신승반점’ 왕애주 대표] 、デイリー韓国(2017年8月19日記事)、2019年5月2日閲覧</ref>。現在「新勝飯店」の代表はワン・イビョン、ウ・ランヨン夫婦の娘であり、また于希光の孫に当たるワン・エジュ(왕애주)氏が受け継いでおり、店名は異なるもののこちらを直系の後継店と考える人も多い。
  
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=== ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身/밴댕이회) ===
 
=== ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身/밴댕이회) ===
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[[ファイル:19050306.JPG|thumb|300px|ペンデンイフェムチムをどんぶりごはんに載せたところ]]
 
ペンデンイフェ([[밴댕이회]])は、ツマリエツの刺身。ペンデンイ([[밴댕이]])はツマリエツの仁川市における方言。標準語ではパンジ([[반지]])と呼ぶ。フェ([[회]])は刺身の意(「[[センソンフェ(刺身/생선회)]]」の項目も参照)。ツマリエツはカタクチイワシ科の魚で、春から夏にかけて旬を迎える。仁川市では5月頃を最盛期として春から夏にかけてを旬とするが、近年は需要の高まりもあって、南部で漁獲されたものが急速冷蔵の状態で2月頃から出回る。刺身としてワサビ醤油やチョコチュジャン(唐辛子酢味噌、[[초고추장]])などで味わうほか、生野菜とともに薬味ダレで和えて食べることも多い。これをペンデンイフェムチム([[밴댕이회무침]])とも呼び、ムチム([[무침]])とは和え物を指す。和え物にしたものをごはんに載せてどんぶりとして味わうこともある。ツマリエツは刺身にするほか、焼き魚としても人気があり、これをペンデンイグイ([[밴댕이구이]])と呼ぶ。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物の意。仁川市内の刺身店や、魚介料理店、市場などで食べることができる。市内の中区港洞(チュング ハンドン、중구 항동)の沿岸埠頭(ヨナンブドゥ、연안부두)には刺身店の集まる「ペンデンイフェムチム通り(밴댕이회무침거리)」があり、同じく中区北城洞(チュング プクソンドン、중구 북성동)には「チャイナタウン ペンデンイフェ通り(차이나타운 밴댕이회거리)」がある。
 
ペンデンイフェ([[밴댕이회]])は、ツマリエツの刺身。ペンデンイ([[밴댕이]])はツマリエツの仁川市における方言。標準語ではパンジ([[반지]])と呼ぶ。フェ([[회]])は刺身の意(「[[センソンフェ(刺身/생선회)]]」の項目も参照)。ツマリエツはカタクチイワシ科の魚で、春から夏にかけて旬を迎える。仁川市では5月頃を最盛期として春から夏にかけてを旬とするが、近年は需要の高まりもあって、南部で漁獲されたものが急速冷蔵の状態で2月頃から出回る。刺身としてワサビ醤油やチョコチュジャン(唐辛子酢味噌、[[초고추장]])などで味わうほか、生野菜とともに薬味ダレで和えて食べることも多い。これをペンデンイフェムチム([[밴댕이회무침]])とも呼び、ムチム([[무침]])とは和え物を指す。和え物にしたものをごはんに載せてどんぶりとして味わうこともある。ツマリエツは刺身にするほか、焼き魚としても人気があり、これをペンデンイグイ([[밴댕이구이]])と呼ぶ。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物の意。仁川市内の刺身店や、魚介料理店、市場などで食べることができる。市内の中区港洞(チュング ハンドン、중구 항동)の沿岸埠頭(ヨナンブドゥ、연안부두)には刺身店の集まる「ペンデンイフェムチム通り(밴댕이회무침거리)」があり、同じく中区北城洞(チュング プクソンドン、중구 북성동)には「チャイナタウン ペンデンイフェ通り(차이나타운 밴댕이회거리)」がある。
 
*標準語でのペンデンイ
 
*標準語でのペンデンイ
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=== ムルトムボンイタン(アンコウ鍋/물텀벙이탕) ===
 
=== ムルトムボンイタン(アンコウ鍋/물텀벙이탕) ===
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[[ファイル:19050307.JPG|thumb|300px|ムルトムボンイタン(アグタン)。左奥はムルトムボンイチム(アグチム)]]
 
ムルトムボンイタンは、アンコウ鍋。ムルトムボンイ([[물텀벙이]])はアンコウ([[아귀]])の別称。ムルトムボン([[물텀벙]])とも呼ぶ。直訳すると「水にドボンする魚」という意味であり、かつてはとれても捨てられていたことに由来する。タン([[탕]])は漢字で「湯」と書いて鍋料理の意(「[[アグタン(アンコウ鍋/아구탕)]]」の項目も参照)。韓国でアンコウが食用として利用され始めたのは1960年代であり、この時期に仁川市では鍋料理などにする調理法が普及していった。鍋料理のほかにはチム(蒸し煮、[[찜]])にすることも多い。彌鄒忽区龍峴洞(ミチュホルグ ヨンヒョンドン、미추홀구 용현동)に専門店が集まっており、一帯は「龍峴洞ムルトムボンイ通り」(용현동 물텀벙이거리)と呼ばれる。
 
ムルトムボンイタンは、アンコウ鍋。ムルトムボンイ([[물텀벙이]])はアンコウ([[아귀]])の別称。ムルトムボン([[물텀벙]])とも呼ぶ。直訳すると「水にドボンする魚」という意味であり、かつてはとれても捨てられていたことに由来する。タン([[탕]])は漢字で「湯」と書いて鍋料理の意(「[[アグタン(アンコウ鍋/아구탕)]]」の項目も参照)。韓国でアンコウが食用として利用され始めたのは1960年代であり、この時期に仁川市では鍋料理などにする調理法が普及していった。鍋料理のほかにはチム(蒸し煮、[[찜]])にすることも多い。彌鄒忽区龍峴洞(ミチュホルグ ヨンヒョンドン、미추홀구 용현동)に専門店が集まっており、一帯は「龍峴洞ムルトムボンイ通り」(용현동 물텀벙이거리)と呼ばれる。
  
 
=== チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면) ===
 
=== チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면) ===
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[[ファイル:19050308.JPG|thumb|300px|チョルミョン]]
 
チョルミョンは、シコシコとしたでんぷん麺を用いる生野菜との和え麺。チョル(쫄)はもちもち、しこしことした食感を表す「チョルギタダ([[쫄깃하다]])」の一部。ミョン([[면]])は麺を意味する([[チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면)]]の項目も参照)。1970年代初め、中区京洞(チュング キョンドン、중구 경동)の製麺工場「クァンシン製麺(광신제면)」で[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]用の麺を製造していたところ、麺を押し出す穴のサイズを間違えて、普段よりも太い麺ができてしまった。捨てるのはもったいないので近隣にあった「マンナダン(맛나당)」という粉食店に持ち込み、使ってもらったところ、その麺で作った料理が意外な評判を得た<ref>[http://m-itour.incheon.go.kr/mobile/explore/detail.do?cid=91 원조맛기행 신포동으로 가자] 、仁川ツアー、2019年5月3日閲覧</ref>。これが周辺へと広まり、やがて全国区の料理へと拡大していった。
 
チョルミョンは、シコシコとしたでんぷん麺を用いる生野菜との和え麺。チョル(쫄)はもちもち、しこしことした食感を表す「チョルギタダ([[쫄깃하다]])」の一部。ミョン([[면]])は麺を意味する([[チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면)]]の項目も参照)。1970年代初め、中区京洞(チュング キョンドン、중구 경동)の製麺工場「クァンシン製麺(광신제면)」で[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]用の麺を製造していたところ、麺を押し出す穴のサイズを間違えて、普段よりも太い麺ができてしまった。捨てるのはもったいないので近隣にあった「マンナダン(맛나당)」という粉食店に持ち込み、使ってもらったところ、その麺で作った料理が意外な評判を得た<ref>[http://m-itour.incheon.go.kr/mobile/explore/detail.do?cid=91 원조맛기행 신포동으로 가자] 、仁川ツアー、2019年5月3日閲覧</ref>。これが周辺へと広まり、やがて全国区の料理へと拡大していった。
  
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=== セスッテヤネンミョン(洗面器冷麺/세숫대야냉면) ===
 
=== セスッテヤネンミョン(洗面器冷麺/세숫대야냉면) ===
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[[ファイル:19050309.JPG|thumb|300px|セスッテヤネンミョン]]
 
セスッテヤネンミョン(세숫대야냉면)は、洗面器冷麺。セスッテヤ(세숫대야)が洗面器を意味し、ネンミョンは冷麺を意味する(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。洗面器サイズの器に盛り付けられた巨大サイズの冷麺を指し、東区花平洞(トング ファピョンドン、중구 화평동)に専門店が集まっている。この地域に冷麺店が増え始めたのは1970年代で、周辺の工場で働く人たちが頻繁に麺の追加を求めたことから、徐々に麺のボリュームが増えていった<ref>[http://www.icdonggu.go.kr/open_content/culture/street/noodle.jsp 화평동 세숫대야 냉면거리] 、仁川市東区ウェブサイト、2019年1月7日閲覧</ref>。
 
セスッテヤネンミョン(세숫대야냉면)は、洗面器冷麺。セスッテヤ(세숫대야)が洗面器を意味し、ネンミョンは冷麺を意味する(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。洗面器サイズの器に盛り付けられた巨大サイズの冷麺を指し、東区花平洞(トング ファピョンドン、중구 화평동)に専門店が集まっている。この地域に冷麺店が増え始めたのは1970年代で、周辺の工場で働く人たちが頻繁に麺の追加を求めたことから、徐々に麺のボリュームが増えていった<ref>[http://www.icdonggu.go.kr/open_content/culture/street/noodle.jsp 화평동 세숫대야 냉면거리] 、仁川市東区ウェブサイト、2019年1月7日閲覧</ref>。
  
 
=== パジラッカルグクス(アサリウドン/바지락칼국수) ===
 
=== パジラッカルグクス(アサリウドン/바지락칼국수) ===
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[[ファイル:19050310.JPG|thumb|300px|パジラッカルグクス]]
 
パジラッカルグクス([[바지락칼국수]])は、アサリ入り手打ちうどん(「[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)]]」の項目も参照)。仁川国際空港のある永宗島(ヨンジョンド、영종도)の西側には古くからの海水浴場があり、空港から車で10分ほどの距離に[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)|パジラッカルグクス]]や、[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]などの専門店が集まる。[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)|パジラッカルグクス]]は巨大などんぶりで出てくるボリュームたっぷりのもので、アサリのみならず、ホタテ、ムール貝、干しダラ、エビなども入る。
 
パジラッカルグクス([[바지락칼국수]])は、アサリ入り手打ちうどん(「[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)]]」の項目も参照)。仁川国際空港のある永宗島(ヨンジョンド、영종도)の西側には古くからの海水浴場があり、空港から車で10分ほどの距離に[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)|パジラッカルグクス]]や、[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]などの専門店が集まる。[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)|パジラッカルグクス]]は巨大などんぶりで出てくるボリュームたっぷりのもので、アサリのみならず、ホタテ、ムール貝、干しダラ、エビなども入る。
  
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