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*ホンドゥビョン
 
*ホンドゥビョン
 
:ホンドゥビョン(홍두변)、は今川焼き。漢字で「紅豆餅」と書き、台湾における今川焼きの名称を韓国語読みしている。チャイナタウンで屋台料理として販売されており、あんこだけでなく、クリームチーズ、ダークチョコ、マンゴーといった味のバリエーションがある。2014年10月に販売を始めたところ、短期間で人気を集めてチャイナタウンの新名物となった。だが同店の社長によると、もともとは単に日本の今川焼きを韓国に持ち込む計画であったが、たまたまチャイナタウンで希望通りの物件があったため中国風の名前にしたという<ref>八田靖史, 2016, 『食の日韓論 ボクらは同じものを食べている』, 三五館, P129-132</ref>。
 
:ホンドゥビョン(홍두변)、は今川焼き。漢字で「紅豆餅」と書き、台湾における今川焼きの名称を韓国語読みしている。チャイナタウンで屋台料理として販売されており、あんこだけでなく、クリームチーズ、ダークチョコ、マンゴーといった味のバリエーションがある。2014年10月に販売を始めたところ、短期間で人気を集めてチャイナタウンの新名物となった。だが同店の社長によると、もともとは単に日本の今川焼きを韓国に持ち込む計画であったが、たまたまチャイナタウンで希望通りの物件があったため中国風の名前にしたという<ref>八田靖史, 2016, 『食の日韓論 ボクらは同じものを食べている』, 三五館, P129-132</ref>。
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=== ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身/밴댕이회) ===
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ペンデンイフェ([[밴댕이회]])は、ツマリエツの刺身。ペンデンイ([[밴댕이]])はツマリエツの仁川市における方言。標準語ではパンジ([[반지]])と呼ぶ。フェ([[회]])は刺身の意(「[[センソンフェ(刺身/생선회)]]」の項目も参照)。ツマリエツはカタクチイワシ科の魚で、春から夏にかけて旬を迎える。仁川市では5月頃を最盛期として春から夏にかけてを旬とするが、近年は需要の高まりもあって、南部で漁獲されたものが急速冷蔵の状態で2月頃から出回る。刺身としてワサビ醤油やチョコチュジャン(唐辛子酢味噌、[[초고추장]])などで味わうほか、生野菜とともに薬味ダレで和えて食べることも多い。これをペンデンイフェムチム([[밴댕이회무침]])とも呼び、ムチム([[무침]])とは和え物を指す。和え物にしたものをごはんに載せてどんぶりとして味わうこともある。ツマリエツは刺身にするほか、焼き魚としても人気があり、これをペンデンイグイ([[밴댕이구이]])と呼ぶ。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物の意。仁川市内の刺身店や、魚介料理店、市場などで食べることができる。市内の中区港洞(チュング ハンドン、중구 항동)の沿岸埠頭(ヨナンブドゥ、연안부두)には刺身店の集まる「ペンデンイフェムチム通り(밴댕이회무침거리)」があり、同じく中区北城洞(チュング プクソンドン、중구 북성동)には「チャイナタウン ペンデンイフェ通り(차이나타운 밴댕이회거리)」がある。
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*標準語でのペンデンイ
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:ペンデンイという魚は本来、日本語でサッパ(ママカリ)を表す。仁川市におけるペンデンイとは方言であり、標準語でパンジと呼ばれるツマリエツのことをペンデンイと称している。韓国でもこの呼び名は誤解が多く、標準語でのペンデンイ(サッパ)はティポリ([[디포리]]、[[뒤포리]])という俗称でダシ用の干物として使われるため、その魚と同一であるとしばしば混同される。
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*全羅南道のソンオ
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:[[全羅南道の料理|全羅南道]]の[木浦市の料理|木浦市]]や[[新安郡の料理|新安郡]]一帯ではツマリエツのことをソンオ(송어)と呼んで刺身、焼き魚、塩辛などにする。標準語でソンオ([[송어]])は川魚のマスを指すため、こちらも混同や誤解が多い。また、同じ魚を仁川市ではペンデンイと呼ぶことから、本来のペンデンイであるサッパと混同されることも多い。
  
 
=== ムルトムボンイタン(アンコウ鍋/물텀벙이탕) ===
 
=== ムルトムボンイタン(アンコウ鍋/물텀벙이탕) ===
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:1970年代初め、中区京洞(チュング キョンドン、중구 경동)の製麺工場「クァンシン製麺(광신제면)」で[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]用の麺を製造していたところ、麺を押し出す穴のサイズを間違えて、普段よりも太い麺ができてしまった。捨てるのはもったいないので近隣の粉食店に持ち込み、使ってもらうことにしたところ、その麺で作った料理が意外な評判を得た。冷麺よりもシコシコと食感がよく、こうした食感を韓国語ではチョルギッチョルギッ([[쫄깃쫄깃]])と表現することから、[[チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면)|チョルミョン]]と名付けられて全国的に広まった。
 
:1970年代初め、中区京洞(チュング キョンドン、중구 경동)の製麺工場「クァンシン製麺(광신제면)」で[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]用の麺を製造していたところ、麺を押し出す穴のサイズを間違えて、普段よりも太い麺ができてしまった。捨てるのはもったいないので近隣の粉食店に持ち込み、使ってもらうことにしたところ、その麺で作った料理が意外な評判を得た。冷麺よりもシコシコと食感がよく、こうした食感を韓国語ではチョルギッチョルギッ([[쫄깃쫄깃]])と表現することから、[[チョルミョン(生野菜入りの和え麺/쫄면)|チョルミョン]]と名付けられて全国的に広まった。
  
=== ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身/밴댕이회) ===
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=== セスッテヤネンミョン(洗面器冷麺/세숫대야냉면) ===
ペンデンイフェ([[밴댕이회]])は、ツマリエツの刺身。ペンデンイ([[밴댕이]])はツマリエツの仁川市における方言。標準語ではパンジ([[반지]])と呼ぶ。フェ([[회]])は刺身の意(「[[センソンフェ(刺身/생선회)]]」の項目も参照)。ツマリエツはカタクチイワシ科の魚で、春から夏にかけて旬を迎える。仁川市では5月頃を最盛期として春から夏にかけてを旬とするが、近年は需要の高まりもあって、南部で漁獲されたものが急速冷蔵の状態で2月頃から出回る。刺身としてワサビ醤油やチョコチュジャン(唐辛子酢味噌、[[초고추장]])などで味わうほか、生野菜とともに薬味ダレで和えて食べることも多い。これをペンデンイフェムチム([[밴댕이회무침]])とも呼び、ムチム([[무침]])とは和え物を指す。和え物にしたものをごはんに載せてどんぶりとして味わうこともある。ツマリエツは刺身にするほか、焼き魚としても人気があり、これをペンデンイグイ([[밴댕이구이]])と呼ぶ。グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物の意。仁川市内の刺身店や、魚介料理店、市場などで食べることができる。市内の中区港洞(チュング ハンドン、중구 항동)の沿岸埠頭(ヨナンブドゥ、연안부두)には刺身店の集まる「ペンデンイフェムチム通り(밴댕이회무침거리)」があり、同じく中区北城洞(チュング プクソンドン、중구 북성동)には「チャイナタウン ペンデンイフェ通り(차이나타운 밴댕이회거리)」がある。
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セスッテヤネンミョン(세숫대야냉면)は、洗面器冷麺。セスッテヤ(세숫대야)が洗面器を意味し、ネンミョンは冷麺を意味する(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。洗面器サイズの器に盛り付けられた巨大サイズの冷麺を指し、東区花平洞(トング ファピョンドン、중구 화평동)に専門店が集まっている。この地域に冷麺店が増え始めたのは1970年代で、周辺の工場で働く人たちが頻繁に麺の追加を求めたことから、徐々に麺のボリュームが増えていった<ref>[http://www.icdonggu.go.kr/open_content/culture/street/noodle.jsp 화평동 세숫대야 냉면거리] 、仁川市東区ウェブサイト、2019年1月7日閲覧</ref>。
*標準語でのペンデンイ
 
:ペンデンイという魚は本来、日本語でサッパ(ママカリ)を表す。仁川市におけるペンデンイとは方言であり、標準語でパンジと呼ばれるツマリエツのことをペンデンイと称している。韓国でもこの呼び名は誤解が多く、標準語でのペンデンイ(サッパ)はティポリ([[디포리]]、[[뒤포리]])という俗称でダシ用の干物として使われるため、その魚と同一であるとしばしば混同される。
 
*全羅南道のソンオ
 
:[[全羅南道の料理|全羅南道]]の[木浦市の料理|木浦市]]や[[新安郡の料理|新安郡]]一帯ではツマリエツのことをソンオ(송어)と呼んで刺身、焼き魚、塩辛などにする。標準語でソンオ([[송어]])は川魚のマスを指すため、こちらも混同や誤解が多い。また、同じ魚を仁川市ではペンデンイと呼ぶことから、本来のペンデンイであるサッパと混同されることも多い。
 
  
 
=== パジラッカルグクス(アサリウドン/바지락칼국수) ===
 
=== パジラッカルグクス(アサリウドン/바지락칼국수) ===
 
パジラッカルグクス([[바지락칼국수]])は、アサリ入り手打ちうどん(「[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)]]」の項目も参照)。仁川国際空港のある永宗島(ヨンジョンド、영종도)の西側には古くからの海水浴場があり、空港から車で10分ほどの距離にパジラッカルグクスや、[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]などの専門店が集まる。パジラッカルグクスは巨大などんぶりで出てくるボリュームたっぷりのもので、アサリのみならず、ホタテ、ムール貝、干しダラ、エビなども入る。
 
パジラッカルグクス([[바지락칼국수]])は、アサリ入り手打ちうどん(「[[パジラッカルグクス(アサリ入り手打ちうどん/바지락칼국수)]]」の項目も参照)。仁川国際空港のある永宗島(ヨンジョンド、영종도)の西側には古くからの海水浴場があり、空港から車で10分ほどの距離にパジラッカルグクスや、[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]などの専門店が集まる。パジラッカルグクスは巨大などんぶりで出てくるボリュームたっぷりのもので、アサリのみならず、ホタテ、ムール貝、干しダラ、エビなども入る。
 
=== セスッテヤネンミョン(洗面器冷麺/세숫대야냉면) ===
 
セスッテヤネンミョン(세숫대야냉면)は、洗面器冷麺。セスッテヤ(세숫대야)が洗面器を意味し、ネンミョンは冷麺を意味する(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。洗面器サイズの器に盛り付けられた巨大サイズの冷麺を指し、東区花平洞(トング ファピョンドン、중구 화평동)に専門店が集まっている。この地域に冷麺店が増え始めたのは1970年代で、周辺の工場で働く人たちが頻繁に麺の追加を求めたことから、徐々に麺のボリュームが増えていった<ref>[http://www.icdonggu.go.kr/open_content/culture/street/noodle.jsp 화평동 세숫대야 냉면거리] 、仁川市東区ウェブサイト、2019年1月7日閲覧</ref>。
 
  
 
=== サムチグイ(サワラの焼き魚/삼치구이) ===
 
=== サムチグイ(サワラの焼き魚/삼치구이) ===
 
サムチグイ(삼치구이)は、サワラの焼き魚。サムチ([[삼치]])はサワラ、グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物を表す(「[[サムチグイ(サワラの焼き魚/삼치구이)]]」の項目も参照)。東仁川駅近くの中区銭洞(チュング チョンドン、중구 전동)に専門店が集まっており、一帯は「東仁川サワラ通り」(トンインチョン サムチゴリ、동인천 삼치거리)と呼ばれる。通りの歴史は1968年に元祖店とされる「イナエチプ」(인하의집)が開店したことに始まり、店によれば「当時の仁川港にはニュージーランド産のサワラが大量に水揚げされており、それに目をつけた創業初代がたっぷりの油で揚げるように焼き、特製のコチュジャンダレ、醤油ダレを添えて提供したところ、身の大きな魚なのでボリュームがあったことから学生を中心に圧倒的な人気を集めた」という(八田靖史の取材記録より、2009年11月24日)。この人気が周囲にも波及して類似の専門店が増え、2002年には中区よりサワラ通りとして指定を受けるに至った。地元醸造場が造るマッコリと合わせるのが定番である。
 
サムチグイ(삼치구이)は、サワラの焼き魚。サムチ([[삼치]])はサワラ、グイ(=クイ、[[구이]])は焼き物を表す(「[[サムチグイ(サワラの焼き魚/삼치구이)]]」の項目も参照)。東仁川駅近くの中区銭洞(チュング チョンドン、중구 전동)に専門店が集まっており、一帯は「東仁川サワラ通り」(トンインチョン サムチゴリ、동인천 삼치거리)と呼ばれる。通りの歴史は1968年に元祖店とされる「イナエチプ」(인하의집)が開店したことに始まり、店によれば「当時の仁川港にはニュージーランド産のサワラが大量に水揚げされており、それに目をつけた創業初代がたっぷりの油で揚げるように焼き、特製のコチュジャンダレ、醤油ダレを添えて提供したところ、身の大きな魚なのでボリュームがあったことから学生を中心に圧倒的な人気を集めた」という(八田靖史の取材記録より、2009年11月24日)。この人気が周囲にも波及して類似の専門店が増え、2002年には中区よりサワラ通りとして指定を受けるに至った。地元醸造場が造るマッコリと合わせるのが定番である。
 
=== キョンヤンシク(軽洋食/경양식) ===
 
キョンヤンシク(경양식)は、韓国式の洋食。キョンヤンシクは漢字で「軽洋食」と書き、本格的な西洋料理よりも手軽に作って味わえるものを指す。代表的なメニューとしては[[トンカス(トンカツ/돈가스)]]、[[オムライス(オムライス/오므라이스)]]、[[ハイライス(ハヤシライス/하이라이스)]]、ハンバーグステーキ([[햄버그 스테이크]])などがある。韓国では1970~80年代に流行し、町中に軽洋食を専門とするレストランが増えた。ところが1990年代になるとファミリーレストランやファストフード店の増加により、キョンヤンシクの専門店は次第に数を減らしている。仁川においてはこうしたキョンヤンシクの老舗が残っており、「灯台軽洋食(등대경양식)」、「国際軽洋食(국제경양식)」、「シーサイド(씨사이드)」、「イングランド王トンカツ(잉글랜드왕돈까스)」といった有名店を指して仁川4大軽洋食と呼んだりもする。なお、韓国における洋食の歴史は、1888年に仁川で創業した初めての西洋式ホテル「大仏ホテル(대불호텔)」に始まるとの背景もある。
 
  
 
=== チュオタン(ドジョウ汁/추어탕) ===
 
=== チュオタン(ドジョウ汁/추어탕) ===
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*アルタンとの区別
 
*アルタンとの区別
 
:タガルタンの「鶏(닭)」を省略し、単に「アルタン(卵の鍋、알탕)」と呼ぶこともある。ただし、同名称は一般的にスケトウダラの卵で作る[[アルタン(スケトウダラの卵入り鍋/알탕)]]を指すことから、両者を区別するために「タガルタン(鶏の卵の鍋)」「センソンアルタン(魚の卵の鍋)」と呼び分けることもある。
 
:タガルタンの「鶏(닭)」を省略し、単に「アルタン(卵の鍋、알탕)」と呼ぶこともある。ただし、同名称は一般的にスケトウダラの卵で作る[[アルタン(スケトウダラの卵入り鍋/알탕)]]を指すことから、両者を区別するために「タガルタン(鶏の卵の鍋)」「センソンアルタン(魚の卵の鍋)」と呼び分けることもある。
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=== キョンヤンシク(軽洋食/경양식) ===
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キョンヤンシク(경양식)は、韓国式の洋食。キョンヤンシクは漢字で「軽洋食」と書き、本格的な西洋料理よりも手軽に作って味わえるものを指す。代表的なメニューとしては[[トンカス(トンカツ/돈가스)]]、[[オムライス(オムライス/오므라이스)]]、[[ハイライス(ハヤシライス/하이라이스)]]、ハンバーグステーキ([[햄버그 스테이크]])などがある。韓国では1970~80年代に流行し、町中に軽洋食を専門とするレストランが増えた。ところが1990年代になるとファミリーレストランやファストフード店の増加により、キョンヤンシクの専門店は次第に数を減らしている。仁川においてはこうしたキョンヤンシクの老舗が残っており、「灯台軽洋食(등대경양식)」、「国際軽洋食(국제경양식)」、「シーサイド(씨사이드)」、「イングランド王トンカツ(잉글랜드왕돈까스)」といった有名店を指して仁川4大軽洋食と呼んだりもする。なお、韓国における洋食の歴史は、1888年に仁川で創業した初めての西洋式ホテル「大仏ホテル(대불호텔)」に始まるとの背景もある。
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=== イブクウムシク(北部料理/이북음식) ===
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イブクウムシク(이북음식)は、北部料理。漢字では「以北飲食」と書き、韓国における[[北朝鮮の料理|北朝鮮]]地域の料理を指す。市中央部の南洞区論峴洞(ナムドング ノニョンドン、남동구 논현동)には脱北者が多く住んでおり、両江道や咸鏡道地域の郷土料理を専門とする飲食店がある。両江道出身者の開いた飲食店「胡越一家(호월일같)」では、インジョゴギバプ(大豆肉ごはん、[[인조고기밥]])、トゥブバプ(豆腐ごはん、[[두부밥]])、ノンマグクス(咸興冷麺、[[농마국수]])などのメニューを提供する。
  
 
=== 仁川市のB級グルメ ===
 
=== 仁川市のB級グルメ ===
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