「インジョルミ(きなこ餅/인절미)」の版間の差分

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:1795年に朝鮮王朝第22代王の正祖(정조)が水原華城まで出かけたときの記録である『園幸乙卯整理儀軌(원행을묘정리의궤)』には、インジョルミが「各色引切味餅」という名称で記録されている。合わせて使用された食材も「高五寸粘米二斗赤豆大棗石耳各五升実荏子三升実栢子二升乾柿二串清一升」と併記されており、もち米以外に、アズキ、ナツメ、キクラゲ、エゴマ、松の実、干し柿、蜂蜜が使われていたことがわかる。
 
:1795年に朝鮮王朝第22代王の正祖(정조)が水原華城まで出かけたときの記録である『園幸乙卯整理儀軌(원행을묘정리의궤)』には、インジョルミが「各色引切味餅」という名称で記録されている。合わせて使用された食材も「高五寸粘米二斗赤豆大棗石耳各五升実荏子三升実栢子二升乾柿二串清一升」と併記されており、もち米以外に、アズキ、ナツメ、キクラゲ、エゴマ、松の実、干し柿、蜂蜜が使われていたことがわかる。
  
;『朝鮮料理製法』(1921年)の記述
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;『是議全書』(19世紀末)の記述
:方信栄(방신영)によって1917年に初めて書かれ、その後も増補を重ねた『朝鮮料理製法(조선요리제법)』にはカクトゥギの調理法が紹介されている。カクトゥギという名前で文献に登場するのはこれが初めてである(目次では「깍둑이」、本文では「각뚝이」と表記されている。1921年、1937年の版で確認)<ref>[http://www.koreantk.net/ktkp2014/kfood/kfood-view.view?foodCd=106660 깍두기, 조선요리제법(1921)] 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧</ref><ref>方信栄, 1937, 『朝鮮料理製法』, 悦話堂, P3, 99-100</ref>。
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:19世紀末に書かれた『是議全書』(原著者不詳)のテチュインジョルミ(대추인절미)という項目には、ナツメ([[대추]])を用いたインジョルミの作り方が紹介されている。該当の記述は以下の通りである。
  
;『朝鮮無双新式料理製法』(1930年)の記述
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:「よいもち米をしっかり水に浸した後に引き上げ、1升ぶん作るのであれば、ナツメひと升の種を取り、蒸し器に載せてじっくりと蒸し、一緒につけばよい。アズキ粉やきな粉をまぶす。」(原文1)
:李用基(이용기)によって1924年に書かれた『朝鮮無双新式料理製法(조선무쌍신식요리제법)』にはカクトゥギ(表記は깍뚝이)、ウェカクトゥギ(キュウリの角切りキムチ、表記は외깍뚝이)、クルカクトゥギ(牡蠣を入れた大根の角切りキムチ、表記は굴깍뚝이)、ヘッカクトゥギ(初物の大根を使った角切りキムチ、表記は햇깍뚝이)、チェカクトゥギ(大根の千切りキムチ、表記は채깍뚝이)、スッカクトゥギ(茹でた大根の角切りキムチ、表記は숙깍뚝이)という6種類が掲載されている<ref>李用基, 1930, 『朝鮮無双新式料理製法』, 永昌書館, P103-105</ref>
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:【原文1】
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:좋은 찹쌀을 담가 흠씬 불린 후 건져 1말하려면 대추 1말을 씨를 바르고, 지에 시루 위에 얹어 푹 쪄서 함께 찧으면 좋다. 거피팥고물이나 콩가루를 묻힌다.<ref>이효지 외(엮음), 2004,『시의전서』, 신광출판사, P222</ref>
  
 
=== 逸話 ===
 
=== 逸話 ===

2019年4月2日 (火) 20:57時点における版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

インジョルミ인절미)は、きなこ餅。

カクトゥギ

名称

飲食店の卓上に常備されたカクトゥギ。ハサミで食べやすい大きさに切って味わう

インジョルミは「引切味」「引切米」などの漢字を当てることが多く、引っ張って長く伸ばし食べやすいように切った餅との意味を表す。かつてはインジョルビョン(引切餅、인절병)とも呼んだ。本辞典ではインジョルミと表記する。発音表記は[인절미]。

概要

インジョルミ인절미)は、きなこ餅。もち米を蒸してついたものに、きな粉をまぶして作る。少量の砂糖を加えることも多い。韓国ではうるち米を使って作る餅も多いが、もち米を使って作る餅としては代表的な種類のひとつである。伝統餅店、市場などで販売されるほか、伝統茶店でも提供される。近年はインジョルミときな粉をトッピングしたスイーツの人気も高く、中でもデザートカフェ「ソルビン(설빙)」のインジョルミピンス(きな粉餅カキ氷、인절미빙수)は2013年から14年にかけて大ブームとなった。こうしたインジョルミ風のスイーツは定番化しており、インジョルミ味のスナック菓子や、アイスクリームなども登場している。

歴史

インジョルミに関する記録は16世紀頃から見られる。

文献上の記録

『四声通解』(1517年)の記述
崔世珍(최세진)によって編纂された韻書『四声通解』に記載があり、インジョルミのことを「인졀미」と表記している。
『園幸乙卯整理儀軌』(1795年)の記述
1795年に朝鮮王朝第22代王の正祖(정조)が水原華城まで出かけたときの記録である『園幸乙卯整理儀軌(원행을묘정리의궤)』には、インジョルミが「各色引切味餅」という名称で記録されている。合わせて使用された食材も「高五寸粘米二斗赤豆大棗石耳各五升実荏子三升実栢子二升乾柿二串清一升」と併記されており、もち米以外に、アズキ、ナツメ、キクラゲ、エゴマ、松の実、干し柿、蜂蜜が使われていたことがわかる。
『是議全書』(19世紀末)の記述
19世紀末に書かれた『是議全書』(原著者不詳)のテチュインジョルミ(대추인절미)という項目には、ナツメ(대추)を用いたインジョルミの作り方が紹介されている。該当の記述は以下の通りである。
「よいもち米をしっかり水に浸した後に引き上げ、1升ぶん作るのであれば、ナツメひと升の種を取り、蒸し器に載せてじっくりと蒸し、一緒につけばよい。アズキ粉やきな粉をまぶす。」(原文1)
【原文1】
좋은 찹쌀을 담가 흠씬 불린 후 건져 1말하려면 대추 1말을 씨를 바르고, 지에 시루 위에 얹어 푹 쪄서 함께 찧으면 좋다. 거피팥고물이나 콩가루를 묻힌다.[1]

逸話

忠清南道公州市とインジョルミの逸話
忠清南道公州市には、インジョルミの由来について以下のような逸話が伝わっている[2]。1624年に時の王である仁祖(インジョ、인조)は、家臣による反乱事件(李适の乱)が起こった際、公州市まで避難をした。そのとき近所に住む、任(イム、임)という人物が仁祖王にきな粉餅を進上したのだが、仁祖王はこれをことのほか喜び、なんという名前の餅かを尋ねた。ところがその名前を知っている者がいなかったため、仁祖王は「イム氏が作る絶味(ジョルミ=非常に美味しい、절미)の餅)」という意味で、「イムジョルミ(임절미)」と名付けるよう指示をした。これがなまって、後にインジョルミとして定着するに至ったという話である。しかし、実際は1624年以前に書かれた文献にもインジョルミという名前の記述があり、後世に作られたエピソードである可能性も高い。公州市ではこれらの逸話にちなんで、インジョルミを公州餅(コンジュトク、공주떡)と呼ぶとともに、毎年「公州インジョルミ祭り(공주인절미축제)」を開催している。ただし、先にもあるようにインジョルミという名称自体は少なくとも16世紀にはすでに見られる。

種類

アガミカクトゥギ

カクトゥギには次のような種類がある。

材料のバリエーション

キュウリで作るカクトゥギ。

具のバリエーション

  • クルカクトゥギ([[굴깍두기)
生牡蠣を入れて作るカクトゥギ
スケトウダラのエラを入れて作るカクトゥギ。ミョンテソドリカクトゥギ(명태서더리깍두기)とも呼ぶ。ミョンテ(명태)はスケトウダラ、ソドリ(서더리)は魚のアラを意味する。スケトウダラの産地である江原道高城郡の郷土料理として知られる。

調理法のバリエーション

茹でた大根で作る柔らかなカクトゥギ

日本における定着

日本の伝統餅店では他の餅と並んで定番のひとつとなっている。

2010年代

ソルビンの進出
インジョルミピンス(きなこ餅カキ氷、인절미빙수)を看板メニューとするデザートカフェ「ソルビン(설빙)」が2016年5月東京・原宿に日本1号店を出店した。

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、留学時代の2000年に初めてインジョルミを食べた。待ち合わせに遅れた友人のひとりが、「これを買っていて遅くなった」と言い訳したのがインジョルミであり、そのエピソードは著書『八田式「イキのいい韓国語あります。」』にも収録されている[3]

地域

インジョルミの名称は公州市から生まれたとの説がある。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

<ソウル>

  • 河東館(하동관)
住所:ソウル市中区明洞9キル12(明洞1街10-4)
住所:서울시 중구 명동9길 12(명동1가 10-4)
電話:02-776-5656
備考:カクトゥギの汁を入れて食べるコムタン専門店。

脚注

  1. 이효지 외(엮음), 2004,『시의전서』, 신광출판사, P222
  2. 원조 한류스타의 화려한 컴백, 2017 공주 백제문화제 、公州市文化観光、2017年12月23日閲覧
  3. 八田靖史, 2003, 『八田式 イキのいい韓国語あります。』, 学習研究社, P215-216

外部リンク

制作者関連サイト

関連項目