33,794
回編集
(→老舗) |
(→代表的な料理) |
||
| 51行目: | 51行目: | ||
:地域を代表する10種類の料理が「大邱10味([[대구십미]])」として選定されている。2006年に大邱市が専門家らの意見を総合して作成した<ref>[https://tour.daegu.go.kr/index.do?menu_id=00002947 대구가 자랑하는 10가지 별미] 、大邱観光案内ウェブサイト、2025年4月25日閲覧</ref>。なお、[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]は、大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]と説明される場合もあり、店によって微差はあるものの、基本的には同じ料理として考えられる。 | :地域を代表する10種類の料理が「大邱10味([[대구십미]])」として選定されている。2006年に大邱市が専門家らの意見を総合して作成した<ref>[https://tour.daegu.go.kr/index.do?menu_id=00002947 대구가 자랑하는 10가지 별미] 、大邱観光案内ウェブサイト、2025年4月25日閲覧</ref>。なお、[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]は、大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]と説明される場合もあり、店によって微差はあるものの、基本的には同じ料理として考えられる。 | ||
| − | :*[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]] | + | :*[[大邱市の料理#タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]] |
| − | ::*[[ | + | ::*[[大邱市の料理#ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장)|ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장)]] |
| − | :*[[ | + | :*[[大邱市の料理#マクチャングイ(豚の直腸焼き/막창구이)|マクチャングイ(豚の直腸焼き/막창구이)]] |
| − | :*[[ | + | :*[[大邱市の料理#ムンティギ(牛刺身/뭉티기)|ムンティギ(牛刺身/뭉티기)]] |
| − | :*[[ | + | :*[[大邱市の料理#チムカルビ(牛カルビの辛煮/찜갈비)|チムカルビ(牛カルビの辛煮/찜갈비)]] |
| − | :*[[ | + | :*[[大邱市の料理#ノンメギメウンタン(ナマズの辛口鍋/논메기매운탕)|ノンメギメウンタン(ナマズの辛口鍋/논메기매운탕)]] |
| − | :*[[ | + | :*[[大邱市の料理#ポゴプルコギ(フグの炒め焼き/복어불고기)|ポゴプルコギ(フグの炒め焼き/복어불고기)]] |
| − | :*[[ | + | :*[[大邱市の料理#ヌルングクス(大邱式の手打ちうどん/누른국수)|ヌルングクス(大邱式の手打ちうどん/누른국수)]] |
| − | :*[[ | + | :*[[大邱市の料理#ムチムフェ(刺身和え/무침회)|ムチムフェ(刺身和え/무침회)]] |
| − | :* | + | :*[[大邱市の料理#ヤキウドン(辛口焼きうどん/야끼우동)|ヤキウドン(辛口焼きうどん/야끼우동)]] |
| − | :*[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]] | + | :*[[大邱市の料理#ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)|ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]] |
| − | === タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥) === | + | ==== タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥) ==== |
:タロクッパプ([[따로국밥]])は、別盛のスープごはん(「[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]」の項目も参照)。スープにごはんを入れた料理を[[クッパプ(クッパ/국밥)]]と総称するが、そのごはんとスープを別々に盛り付けたものを[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]と呼ぶ。大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]から派生した料理として解釈され、牛肉のスープにごはんを入れた状態で提供していたものを、客の要望によってごはんを分けて出したのが始まりとされる。一説には、大衆料理店に似つかわしくない両班(朝鮮時代の支配層)がやってきて、格式を求めてリクエストしたと伝わる。[[クッパプ(クッパ/국밥)|クッパプ]]に格式を求める時点でずれた話だが、そのおかしみも含めて広まったのではないかと思われる。傾向として[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]にはソンジ(牛の血、[[선지]])を加えることが多く、その点で[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]との差異を見出すこともできる。 | :タロクッパプ([[따로국밥]])は、別盛のスープごはん(「[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]」の項目も参照)。スープにごはんを入れた料理を[[クッパプ(クッパ/국밥)]]と総称するが、そのごはんとスープを別々に盛り付けたものを[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]と呼ぶ。大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]から派生した料理として解釈され、牛肉のスープにごはんを入れた状態で提供していたものを、客の要望によってごはんを分けて出したのが始まりとされる。一説には、大衆料理店に似つかわしくない両班(朝鮮時代の支配層)がやってきて、格式を求めてリクエストしたと伝わる。[[クッパプ(クッパ/국밥)|クッパプ]]に格式を求める時点でずれた話だが、そのおかしみも含めて広まったのではないかと思われる。傾向として[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]にはソンジ(牛の血、[[선지]])を加えることが多く、その点で[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]との差異を見出すこともできる。 | ||
| − | === ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장) === | + | ==== ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장) ==== |
[[ファイル:17081403.JPG|300px|thumb|大邱式ユッケジャン]] | [[ファイル:17081403.JPG|300px|thumb|大邱式ユッケジャン]] | ||
:ユッケジャン([[육개장]])は、牛肉の辛口スープ(「[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]」の項目も参照)。他地域の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]が細く裂いた牛肉にワラビ、豆モヤシ、溶き卵などの具を加えて作るのに対し、ごろんと大きく切った牛肉と、とろとろになるまで煮込んだ長ネギの2種だけで作る。少量の芋茎や大根を入れることもあるが、牛肉の旨味と長ネギから出る甘味が味の要となる。慶尚道(キョンサンド、경상도)式の[[ソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥)]]ともほぼ共通する。スープにごはんを添えて提供するのが一般的だが、かわりに麺を入れて食べるユッククス(牛肉の辛口スープ麺、[[육국수]])という派生メニューもある。 | :ユッケジャン([[육개장]])は、牛肉の辛口スープ(「[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]」の項目も参照)。他地域の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]が細く裂いた牛肉にワラビ、豆モヤシ、溶き卵などの具を加えて作るのに対し、ごろんと大きく切った牛肉と、とろとろになるまで煮込んだ長ネギの2種だけで作る。少量の芋茎や大根を入れることもあるが、牛肉の旨味と長ネギから出る甘味が味の要となる。慶尚道(キョンサンド、경상도)式の[[ソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥)]]ともほぼ共通する。スープにごはんを添えて提供するのが一般的だが、かわりに麺を入れて食べるユッククス(牛肉の辛口スープ麺、[[육국수]])という派生メニューもある。 | ||
| 73行目: | 73行目: | ||
:大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]は20世紀初めにテグタン(大邱湯、[[대구탕]])、またはテグタンバン(大邱湯飯、[[대구탕반]])の名前でも親しまれた。[[ソウル市の料理|ソウル市]]にもテグタンを出す店ができて流行料理となったが、現在はほぼ名称としては残っていない。日本の焼肉店で牛肉の辛いスープをテグタンと呼ぶのはテグタンバンがルーツである(詳細は「[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)#1920年代(テグタンバンの流行)]]」の項目を参照)。 | :大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]は20世紀初めにテグタン(大邱湯、[[대구탕]])、またはテグタンバン(大邱湯飯、[[대구탕반]])の名前でも親しまれた。[[ソウル市の料理|ソウル市]]にもテグタンを出す店ができて流行料理となったが、現在はほぼ名称としては残っていない。日本の焼肉店で牛肉の辛いスープをテグタンと呼ぶのはテグタンバンがルーツである(詳細は「[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)#1920年代(テグタンバンの流行)]]」の項目を参照)。 | ||
| − | === マクチャングイ(豚の直腸焼き/막창구이) === | + | ==== マクチャングイ(豚の直腸焼き/막창구이) ==== |
[[ファイル:17081404.JPG|300px|thumb|マクチャングイ]] | [[ファイル:17081404.JPG|300px|thumb|マクチャングイ]] | ||
:マクチャングイ([[막창구이]])は、ギアラ(牛の第4胃、[[소막창]])、または豚の直腸([[돼지막창]])を焼いたもの(「[[テジマクチャン(豚の直腸焼き/돼지막창)]]」の項目も参照)。マクチャン([[막창]])とはマジマクチャン(最後の腸、[[마지막창]])を意味し、牛の場合はギアラ、豚の場合は直腸を表す。いずれも練炭や炭火で網焼きにして味わう。 | :マクチャングイ([[막창구이]])は、ギアラ(牛の第4胃、[[소막창]])、または豚の直腸([[돼지막창]])を焼いたもの(「[[テジマクチャン(豚の直腸焼き/돼지막창)]]」の項目も参照)。マクチャン([[막창]])とはマジマクチャン(最後の腸、[[마지막창]])を意味し、牛の場合はギアラ、豚の場合は直腸を表す。いずれも練炭や炭火で網焼きにして味わう。 | ||
| 80行目: | 80行目: | ||
:地下鉄1号線のアンジラン(안지랑)駅近くに、アンジランコプチャン通り(안지랑 곱창골목)と呼ばれる一角があり、長さ500mほどの通りに、2017年6月時点で52軒ものホルモン焼き専門店が並んでいる(八田靖史の取材記録より、2017年6月23日)。ほとんどの店で豚ホルモンを看板メニューとしており、通りの名称としてはコプチャン(小腸、[[곱창]])だが、豚のマクチャンも一緒に扱う店が多い。また、串に刺した鶏のヨムトン(ハツ、[[염통]])も通りの名物とされる。 | :地下鉄1号線のアンジラン(안지랑)駅近くに、アンジランコプチャン通り(안지랑 곱창골목)と呼ばれる一角があり、長さ500mほどの通りに、2017年6月時点で52軒ものホルモン焼き専門店が並んでいる(八田靖史の取材記録より、2017年6月23日)。ほとんどの店で豚ホルモンを看板メニューとしており、通りの名称としてはコプチャン(小腸、[[곱창]])だが、豚のマクチャンも一緒に扱う店が多い。また、串に刺した鶏のヨムトン(ハツ、[[염통]])も通りの名物とされる。 | ||
| − | === ムンティギ(牛刺身/뭉티기) === | + | ==== ムンティギ(牛刺身/뭉티기) ==== |
[[ファイル:17081405.JPG|300px|thumb|ムンティギ]] | [[ファイル:17081405.JPG|300px|thumb|ムンティギ]] | ||
:ムンティギ([[뭉티기]])は、牛刺身(「[[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)]]」の項目も参照)。同様の料理をセンゴギ([[생고기]])、[[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)|ユクサシミ]]とも呼ぶが、ムンティギははざくざくと切ることを表す擬音語のムントンムントン([[뭉텅뭉텅]])を由来とする。 | :ムンティギ([[뭉티기]])は、牛刺身(「[[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)]]」の項目も参照)。同様の料理をセンゴギ([[생고기]])、[[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)|ユクサシミ]]とも呼ぶが、ムンティギははざくざくと切ることを表す擬音語のムントンムントン([[뭉텅뭉텅]])を由来とする。 | ||
| 91行目: | 91行目: | ||
:ムンティギの専門店では、ほかに希少部位の網焼きをメニューに載せることが多い。ヤンジモリ(肩バラ肉、[[양지머리]])、オドゥレギ(血管、心臓のつけ根にある大動脈、[[오드레기]])、ヒョッパダク(タン、[[혓바닥]])、テチャン(大腸、[[대창]])などが代表的であり、これらを複合させたヤンジオドゥレギ(肩バラ肉と血管の炭火焼き、[[양지오드레기]])といったメニューもある。 | :ムンティギの専門店では、ほかに希少部位の網焼きをメニューに載せることが多い。ヤンジモリ(肩バラ肉、[[양지머리]])、オドゥレギ(血管、心臓のつけ根にある大動脈、[[오드레기]])、ヒョッパダク(タン、[[혓바닥]])、テチャン(大腸、[[대창]])などが代表的であり、これらを複合させたヤンジオドゥレギ(肩バラ肉と血管の炭火焼き、[[양지오드레기]])といったメニューもある。 | ||
| − | === | + | ==== チムカルビ(牛カルビの辛煮/찜갈비) ==== |
[[ファイル:22122827.JPG|300px|thumb|チムカルビ]] | [[ファイル:22122827.JPG|300px|thumb|チムカルビ]] | ||
:チムカルビ([[찜갈비]])は、カルビの辛い煮物(「[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]」の項目も参照)。ぶつ切りにした牛カルビ([[소갈비]])を甘辛く煮込んだもので、調理法は[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]ともほぼ共通するが、みじん切りのニンニクや粉唐辛子をたっぷりと加えた刺激的な味付けが特徴的である。1972年創業の元祖店「鳳山チムカルビ(봉산찜갈비)」によれば、1970年代の初めに地下鉄工事が行われた際、近隣で働いていた労働者のリクエストに応える形で、辛く濃厚な味付けに仕上がっていったという(八田靖史の取材記録より、2011年12月11日)。アルマイトのチゲ用鍋([[양은 냄비]])で調理、提供され、残ったタレにはごはんを入れて混ぜて食べるのも定番である。 | :チムカルビ([[찜갈비]])は、カルビの辛い煮物(「[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]」の項目も参照)。ぶつ切りにした牛カルビ([[소갈비]])を甘辛く煮込んだもので、調理法は[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]ともほぼ共通するが、みじん切りのニンニクや粉唐辛子をたっぷりと加えた刺激的な味付けが特徴的である。1972年創業の元祖店「鳳山チムカルビ(봉산찜갈비)」によれば、1970年代の初めに地下鉄工事が行われた際、近隣で働いていた労働者のリクエストに応える形で、辛く濃厚な味付けに仕上がっていったという(八田靖史の取材記録より、2011年12月11日)。アルマイトのチゲ用鍋([[양은 냄비]])で調理、提供され、残ったタレにはごはんを入れて混ぜて食べるのも定番である。 | ||
| 101行目: | 101行目: | ||
:西門市場(ソムンシジャン、서문시장)内には豚カルビ([[돼지갈비]])を使用したテジチムカルビ(豚カルビの辛い煮物、[[돼지찜갈비]])を提供する飲食店の集まる一角がある。 | :西門市場(ソムンシジャン、서문시장)内には豚カルビ([[돼지갈비]])を使用したテジチムカルビ(豚カルビの辛い煮物、[[돼지찜갈비]])を提供する飲食店の集まる一角がある。 | ||
| − | === ヌルングクス(大邱式の手打ちうどん/누른국수) === | + | ==== ノンメギメウンタン(ナマズの辛口鍋/논메기매운탕) ==== |
| + | :ノンメギメウンタン([[논메기매운탕]])は、ナマズの辛口鍋(「[[メギタン(ナマズ鍋/메기탕)]]」の項目も参照)。 | ||
| + | |||
| + | ==== ポゴプルコギ(フグの炒め焼き/복어불고기) ==== | ||
| + | :ポゴプルコギ([[복어불고기]])は、フグの炒め焼き(「[[ポップルコギ(フグの炒め焼き/복불고기)]]」の項目も参照)。 | ||
| + | |||
| + | ==== ヌルングクス(大邱式の手打ちうどん/누른국수) ==== | ||
:ヌルングクス([[누른국수]])は、大邱式の手打ちうどん(「[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]」の項目も参照)。ヌルンは、「ヌルダ(押さえる、누르다)」を語源とし、小麦粉の生地を押さえつけながら伸ばしたことに由来するという説と、生地にきな粉([[콩가루]])を混ぜる慶尚道式の製法から、「ノラン(黄色い、노란)」が転化したとの説がある。グクス(=ククス、[[국수]])は麺の意。煮干しでダシを取ったスープで、小麦粉ときな粉を混ぜた生地の麺を茹でて作る。具には青菜やニラ、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)を用い、揉み海苔やすりゴマ、薬味醤油などを加えて味わう。 | :ヌルングクス([[누른국수]])は、大邱式の手打ちうどん(「[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]」の項目も参照)。ヌルンは、「ヌルダ(押さえる、누르다)」を語源とし、小麦粉の生地を押さえつけながら伸ばしたことに由来するという説と、生地にきな粉([[콩가루]])を混ぜる慶尚道式の製法から、「ノラン(黄色い、노란)」が転化したとの説がある。グクス(=ククス、[[국수]])は麺の意。煮干しでダシを取ったスープで、小麦粉ときな粉を混ぜた生地の麺を茹でて作る。具には青菜やニラ、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)を用い、揉み海苔やすりゴマ、薬味醤油などを加えて味わう。 | ||
| 107行目: | 113行目: | ||
:カルジェビ([[칼제비]])は[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|カルグクス]]と、[[スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)]]を掛け合わせた料理。西門市場の名物料理である。 | :カルジェビ([[칼제비]])は[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|カルグクス]]と、[[スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)]]を掛け合わせた料理。西門市場の名物料理である。 | ||
| − | === ヤキウドン(辛口焼きうどん/야끼우동) === | + | ==== ムチムフェ(刺身和え/무침회) ==== |
| + | :ムチムフェ([[무침회]])は、刺身和え(「[[フェムチム(刺身和え/회무침)]]」の項目も参照)。茹でイカ、サザエ、タニシ、白身魚の刺身などを大根やセリなどの野菜とともに甘辛酸っぱいタレで和えて作る。 | ||
| + | |||
| + | ==== ヤキウドン(辛口焼きうどん/야끼우동) ==== | ||
[[ファイル:17081407.JPG|300px|thumb|ヤキウドン]] | [[ファイル:17081407.JPG|300px|thumb|ヤキウドン]] | ||
:ヤキウドン([[야끼우동]])は、辛口の海鮮焼きうどん。エビや、イカなどの海鮮に、ニンジン、キャベツ、タマネギなどの野菜を加え、茹でた中華麺とともに辛口に炒めて作る。韓国式の[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]を汁なしに仕立てたアレンジ料理で、大邱市を発祥とする中国料理として位置付けられる。大邱市と近隣地域でのみ定着するローカルメニューである。中区南一洞(チュング ナミルトン、중구 남일동)に位置する「中和飯店(중화반점)」にて、1970年代に新メニューとして開発されたとされる。 | :ヤキウドン([[야끼우동]])は、辛口の海鮮焼きうどん。エビや、イカなどの海鮮に、ニンジン、キャベツ、タマネギなどの野菜を加え、茹でた中華麺とともに辛口に炒めて作る。韓国式の[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]を汁なしに仕立てたアレンジ料理で、大邱市を発祥とする中国料理として位置付けられる。大邱市と近隣地域でのみ定着するローカルメニューである。中区南一洞(チュング ナミルトン、중구 남일동)に位置する「中和飯店(중화반점)」にて、1970年代に新メニューとして開発されたとされる。 | ||
| 113行目: | 122行目: | ||
:名称は日本料理の「焼きうどん」と想像させるが、直接の関係はない。ただし、韓国の中国料理店には日本語が多く浸透しており、焼き餃子をヤキマンドゥ([[야끼만두]])、ダールー麺をウドン([[우동2|우동]])と呼ぶことから、両者を総合してヤキウドンという名称に至った。 | :名称は日本料理の「焼きうどん」と想像させるが、直接の関係はない。ただし、韓国の中国料理店には日本語が多く浸透しており、焼き餃子をヤキマンドゥ([[야끼만두]])、ダールー麺をウドン([[우동2|우동]])と呼ぶことから、両者を総合してヤキウドンという名称に至った。 | ||
| − | === ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두) === | + | ==== ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두) ==== |
[[ファイル:23010242.JPG|300px|thumb|ナプチャクマンドゥ]] | [[ファイル:23010242.JPG|300px|thumb|ナプチャクマンドゥ]] | ||
:ナプチャクマンドゥ([[납작만두]])は、平焼きの餃子(「[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]」の項目も参照)。ナプチャク([[납작]])は平たいという意味の副詞。マンドゥ([[만두]])は漢字で「饅頭」と書き、韓国では餃子のこと(「[[マンドゥ(餃子/만두)]]」の項目も参照)。餃子の皮に春雨と野菜の具をごく少量詰めて、鉄板などで平べったく焼いて作る。粉唐辛子や刻みネギ、醤油などをかけて味わう。 | :ナプチャクマンドゥ([[납작만두]])は、平焼きの餃子(「[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]」の項目も参照)。ナプチャク([[납작]])は平たいという意味の副詞。マンドゥ([[만두]])は漢字で「饅頭」と書き、韓国では餃子のこと(「[[マンドゥ(餃子/만두)]]」の項目も参照)。餃子の皮に春雨と野菜の具をごく少量詰めて、鉄板などで平べったく焼いて作る。粉唐辛子や刻みネギ、醤油などをかけて味わう。 | ||
| 119行目: | 128行目: | ||
=== 大邱10味以外の料理 === | === 大邱10味以外の料理 === | ||
:大邱10味として選定された料理以外にも大邱名物とされる料理は多い。 | :大邱10味として選定された料理以外にも大邱名物とされる料理は多い。 | ||
| − | + | ||
| + | ==== タットンチプ(砂肝揚げ/닭똥집) ==== | ||
:タットンチプ([[닭똥집]])は、砂肝揚げ(「[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]」の項目も参照)。トンチプ([[똥집]])とも呼ぶ。東区新岩洞(トング シナムドン、동구 신암동)の平和市場(ピョンファシジャン、평화시장)を発祥とし、専門店の集まる一帯は「平和市場タットンチプ通り(평화시장 닭똥집 골목)」と呼ばれ、2017年6月現在、26軒の店がタットンチプを提供する(八田靖史の取材記録より、2017年6月25日)。1972年創業の元祖店「サマトンダク(삼아통닭)」によれば、当初は[[マッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)|マッコリ]]を専門とする居酒屋を営んでおり、おつまみとして砂肝を揚げて出したところ好評だったため、そちらが専門になって広まったという。砂肝だけでなく拍子切りにしたサツマイモも一緒に揚げ、味付けは塩味のほか、ヤンニョム(辛味ダレ、[[양념]])味、醤油味、ニンニク味などのバリエーションがある。 | :タットンチプ([[닭똥집]])は、砂肝揚げ(「[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]」の項目も参照)。トンチプ([[똥집]])とも呼ぶ。東区新岩洞(トング シナムドン、동구 신암동)の平和市場(ピョンファシジャン、평화시장)を発祥とし、専門店の集まる一帯は「平和市場タットンチプ通り(평화시장 닭똥집 골목)」と呼ばれ、2017年6月現在、26軒の店がタットンチプを提供する(八田靖史の取材記録より、2017年6月25日)。1972年創業の元祖店「サマトンダク(삼아통닭)」によれば、当初は[[マッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)|マッコリ]]を専門とする居酒屋を営んでおり、おつまみとして砂肝を揚げて出したところ好評だったため、そちらが専門になって広まったという。砂肝だけでなく拍子切りにしたサツマイモも一緒に揚げ、味付けは塩味のほか、ヤンニョム(辛味ダレ、[[양념]])味、醤油味、ニンニク味などのバリエーションがある。 | ||
| − | + | ==== ヤンニョムオデン(辛口のオデン/양념오뎅) ==== | |
:ヤンニョムオデン([[양념오뎅]])は、辛口のオデン(「[[オデン(おでん/오뎅)]]」の項目も参照)。パルガンオデン(赤いオデン、[[빨간오뎅]])とも呼ぶ。ワタリガニなどを加えた魚介ダシで、串に刺したオムク(魚の練り物、[[어묵]])を煮込んで作る。このとき大量の大豆モヤシも一緒に煮込み、オムクと併せて皿に盛り付けて提供する。同様の料理は[[忠清北道の料理|忠清北道]][[堤川市の料理|堤川市]]でも名物として知られる。 | :ヤンニョムオデン([[양념오뎅]])は、辛口のオデン(「[[オデン(おでん/오뎅)]]」の項目も参照)。パルガンオデン(赤いオデン、[[빨간오뎅]])とも呼ぶ。ワタリガニなどを加えた魚介ダシで、串に刺したオムク(魚の練り物、[[어묵]])を煮込んで作る。このとき大量の大豆モヤシも一緒に煮込み、オムクと併せて皿に盛り付けて提供する。同様の料理は[[忠清北道の料理|忠清北道]][[堤川市の料理|堤川市]]でも名物として知られる。 | ||
| − | + | ==== ネンミョン(冷麺/냉면) ==== | |
:ネンミョン([[냉면]])は、冷麺(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。大邱市内には老舗の[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]専門店が点在し、朝鮮戦争によって北部から避難してきた人たちによってその歴史が始まっている。1950年6月に朝鮮戦争が始まると、当初は北側が大きく南へと戦線を押し下げ、南側では大邱市の西方および北方を流れる洛東江を最終的な防御線と定めるに至る。[[ソウル市の料理|ソウル]]を失ったことから首都機能は一時、[[大田市の料理|大田市]]を経て大邱市へと移り、1950年7月16日~8月17日まで大邱市が臨時首都となった後、さらに[[釜山市の料理|釜山市]]へ移った。この前後、大邱市へは北部からの避難民が多く移り住んでおり、[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]の本場である[[北朝鮮の料理|平壌]]の出身者も多く含まれた。1951年に創業した中区校洞(チュング キョドン、중구 교동)の「江山麺屋(강산면옥)」と、1953年に[[釜山市の料理|釜山市]]で創業したのち1969年に大邱市へと移転した中区公平洞(チュング コンピョンドン、중구 공평동)の「釜山安麺屋(부산안면옥)」はいずれも創業者が[[北朝鮮の料理|平壌]]出身であり、これに「釜山安麺屋」から分かれて1960年代後半に創業した中区桂山洞(チュング ケサンドン、중구 계산동)の「大同麺屋(대동면옥)」を加えて、3店舗を「大邱3大冷麺」と称することも多い。 | :ネンミョン([[냉면]])は、冷麺(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。大邱市内には老舗の[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]専門店が点在し、朝鮮戦争によって北部から避難してきた人たちによってその歴史が始まっている。1950年6月に朝鮮戦争が始まると、当初は北側が大きく南へと戦線を押し下げ、南側では大邱市の西方および北方を流れる洛東江を最終的な防御線と定めるに至る。[[ソウル市の料理|ソウル]]を失ったことから首都機能は一時、[[大田市の料理|大田市]]を経て大邱市へと移り、1950年7月16日~8月17日まで大邱市が臨時首都となった後、さらに[[釜山市の料理|釜山市]]へ移った。この前後、大邱市へは北部からの避難民が多く移り住んでおり、[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]の本場である[[北朝鮮の料理|平壌]]の出身者も多く含まれた。1951年に創業した中区校洞(チュング キョドン、중구 교동)の「江山麺屋(강산면옥)」と、1953年に[[釜山市の料理|釜山市]]で創業したのち1969年に大邱市へと移転した中区公平洞(チュング コンピョンドン、중구 공평동)の「釜山安麺屋(부산안면옥)」はいずれも創業者が[[北朝鮮の料理|平壌]]出身であり、これに「釜山安麺屋」から分かれて1960年代後半に創業した中区桂山洞(チュング ケサンドン、중구 계산동)の「大同麺屋(대동면옥)」を加えて、3店舗を「大邱3大冷麺」と称することも多い。 | ||