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== 地域概要 == | == 地域概要 == | ||
| + | [[ファイル:25052206.jpg|300px|thumb|顕忠祠]] | ||
牙山市は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の北部に位置する地域。市の北部は[[京畿道の料理|京畿道]]の[[平沢市の料理|平沢市]]、東部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[天安市の料理|天安市]]、南部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[公州市の料理|公州市]]、南西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[礼山郡の料理|礼山郡]]、西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[唐津市の料理|唐津市]]と接する。また、市の北西部は牙山湾(아산만)に面し、黄海へとつながる。人口は35万6963人で、[[忠清南道の料理|忠清南道]]では[[天安市の料理|天安市]]に次いで2番目に多い(2025年4月)<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 행정동별 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2025年5月22日閲覧</ref>。 | 牙山市は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の北部に位置する地域。市の北部は[[京畿道の料理|京畿道]]の[[平沢市の料理|平沢市]]、東部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[天安市の料理|天安市]]、南部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[公州市の料理|公州市]]、南西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[礼山郡の料理|礼山郡]]、西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[唐津市の料理|唐津市]]と接する。また、市の北西部は牙山湾(아산만)に面し、黄海へとつながる。人口は35万6963人で、[[忠清南道の料理|忠清南道]]では[[天安市の料理|天安市]]に次いで2番目に多い(2025年4月)<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 행정동별 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2025年5月22日閲覧</ref>。 | ||
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== 食文化の背景 == | == 食文化の背景 == | ||
| + | [[ファイル:15062502.JPG|300px|thumb|塩峙韓牛村]] | ||
牙山市の北部は牙山湾(アサンマン、아산만)に面し、かつては汽水域でとれるウナギ([[장어]])をはじめ多くの海産物が名産であった。ところが1970年代になって牙山湾防潮堤(아산만방조제)、挿橋川防潮堤(삽교천방조제)が相次いで建設されたことで、それまで海だった場所は人造湖へと変貌を遂げた。現在は仁州面(インジュミョン、인주면)の傑梅里(コルメリ、걸매리)と貢税里(コンセリ、공세리)がわずかに海と面しているのみで、漁業人口は激減している。一方で、ウナギ料理の専門店は仁州面にまだ多く、養殖物が主となってはいるが、仁州ウナギ(インジュジャンオ、[[인주장어]])の名前で地元の名物になっている。一部店舗では数少ないながら天然物のウナギも扱う。そのほか市中央部の塩峙邑(ヨムチウプ、염치읍)には牛焼肉の専門店が集っており、松岳面駅村里(ソンアンミョン ヨクチョルリ、송악면 역촌리)の「外岩民俗村(ウェアムミンソマウル、외암민속마을)」では自家製の味噌や酒などを販売するとともに、入口付近の飲食店ではススブクミ(タカキビ餅、[[수수부꾸미]])が名物となっている。 | 牙山市の北部は牙山湾(アサンマン、아산만)に面し、かつては汽水域でとれるウナギ([[장어]])をはじめ多くの海産物が名産であった。ところが1970年代になって牙山湾防潮堤(아산만방조제)、挿橋川防潮堤(삽교천방조제)が相次いで建設されたことで、それまで海だった場所は人造湖へと変貌を遂げた。現在は仁州面(インジュミョン、인주면)の傑梅里(コルメリ、걸매리)と貢税里(コンセリ、공세리)がわずかに海と面しているのみで、漁業人口は激減している。一方で、ウナギ料理の専門店は仁州面にまだ多く、養殖物が主となってはいるが、仁州ウナギ(インジュジャンオ、[[인주장어]])の名前で地元の名物になっている。一部店舗では数少ないながら天然物のウナギも扱う。そのほか市中央部の塩峙邑(ヨムチウプ、염치읍)には牛焼肉の専門店が集っており、松岳面駅村里(ソンアンミョン ヨクチョルリ、송악면 역촌리)の「外岩民俗村(ウェアムミンソマウル、외암민속마을)」では自家製の味噌や酒などを販売するとともに、入口付近の飲食店ではススブクミ(タカキビ餅、[[수수부꾸미]])が名物となっている。 | ||
== 代表的な料理 == | == 代表的な料理 == | ||
| + | [[ファイル:22122834.JPG|300px|thumb|恋春の[[チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)|チャンオグイ]]。上がヤンニョムグイ(薬味ダレ焼き)、下がソグムグイ(塩焼き)]] | ||
牙山市の料理には国内有数の温泉地としての姿が密接にかかわっている。他地域から大勢の観光客が訪れるためウナギ焼きや牛焼肉といった高級料理が発達した。 | 牙山市の料理には国内有数の温泉地としての姿が密接にかかわっている。他地域から大勢の観光客が訪れるためウナギ焼きや牛焼肉といった高級料理が発達した。 | ||
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=== ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이) === | === ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이) === | ||
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:ソゴギグイ([[소고기구이]])は、牛焼肉(「[[ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)]]」の項目も参照)。1980年代後半から市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には韓牛([[한우]])を扱う焼肉店が集まり始め、塩峙韓牛村、塩峙韓牛特化通りなどと呼ばれている。韓牛を使った焼肉のほか、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]なども名物に数えられる。古株店の「京東食堂(경동식당)」にはコドゥンシム([[고등심]])と呼ばれる希少部位があり、これは[[トゥンシム(牛ロースの焼肉/등심)]]の一部を指すものだが、カットしたときの形状がコドゥンオ(サバ、[[고등어]])に似ていることからコドゥンオトゥンシム(サバロース、[[고등어등심]])、それを略してコドゥンシムと呼んだものである。 | :ソゴギグイ([[소고기구이]])は、牛焼肉(「[[ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)]]」の項目も参照)。1980年代後半から市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には韓牛([[한우]])を扱う焼肉店が集まり始め、塩峙韓牛村、塩峙韓牛特化通りなどと呼ばれている。韓牛を使った焼肉のほか、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]なども名物に数えられる。古株店の「京東食堂(경동식당)」にはコドゥンシム([[고등심]])と呼ばれる希少部位があり、これは[[トゥンシム(牛ロースの焼肉/등심)]]の一部を指すものだが、カットしたときの形状がコドゥンオ(サバ、[[고등어]])に似ていることからコドゥンオトゥンシム(サバロース、[[고등어등심]])、それを略してコドゥンシムと呼んだものである。 | ||
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== 代表的な特産品 == | == 代表的な特産品 == | ||
| + | [[ファイル:15062504.JPG|thumb|300px|温陽温泉伝統市場内にある道後温泉硫黄豚の販売店]] | ||
牙山市では農業、畜産業が盛んで、一部の特産品ではブランド化も進められている。 | 牙山市では農業、畜産業が盛んで、一部の特産品ではブランド化も進められている。 | ||
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=== 道後温泉硫黄豚(도고온천유황돈) === | === 道後温泉硫黄豚(도고온천유황돈) === | ||
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:硫黄泉で有名な道後温泉地区では、硫黄を飼料に加えて育てた豚を特産品として育成している。市内の精肉店で販売されるほか、飲食店でも提供されている。 | :硫黄泉で有名な道後温泉地区では、硫黄を飼料に加えて育てた豚を特産品として育成している。市内の精肉店で販売されるほか、飲食店でも提供されている。 | ||
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== 老舗 == | == 老舗 == | ||
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*;恋春(연춘) | *;恋春(연춘) | ||
:牙山市の得山洞(トゥサンドン、득산동)に位置するウナギ料理店の「恋春(연춘)」は1936年創業である。牙山市においてはもっとも古い飲食店であり、また韓国内でもウナギ料理の専門店としてもっとも古い。1926年に造られた人造湖の神井湖(シンジョンホ、신정호)沿いに位置し、日本統治時代に建てられた家屋をそのまま残している。店主によれば「温泉地である牙山には創業当時、日本人が休養地としてよく訪れており、日本人に向けた高級料理としてウナギを出すようになった。当時は近くに光興楼という楼閣があったため、『光興楼観光食堂』という名前を掲げ、ウナギ料理と韓定食を扱った。後に『迎春』と名前を変え、また現在は『恋春』としている。春を迎える、春に恋するというのは、もともとウナギのオフシーズンである9月末から3月は営業をせず、春を待って営業を始めたことに由来する」(八田靖史の取材記録より、2014年12月17日)。現在も[[チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)]]が看板メニューであり、ウナギと同じタレで焼いたタックイ(鶏肉焼き、[[닭구이]])も他店ではあまり見ない名物として親しまれる。 | :牙山市の得山洞(トゥサンドン、득산동)に位置するウナギ料理店の「恋春(연춘)」は1936年創業である。牙山市においてはもっとも古い飲食店であり、また韓国内でもウナギ料理の専門店としてもっとも古い。1926年に造られた人造湖の神井湖(シンジョンホ、신정호)沿いに位置し、日本統治時代に建てられた家屋をそのまま残している。店主によれば「温泉地である牙山には創業当時、日本人が休養地としてよく訪れており、日本人に向けた高級料理としてウナギを出すようになった。当時は近くに光興楼という楼閣があったため、『光興楼観光食堂』という名前を掲げ、ウナギ料理と韓定食を扱った。後に『迎春』と名前を変え、また現在は『恋春』としている。春を迎える、春に恋するというのは、もともとウナギのオフシーズンである9月末から3月は営業をせず、春を待って営業を始めたことに由来する」(八田靖史の取材記録より、2014年12月17日)。現在も[[チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)]]が看板メニューであり、ウナギと同じタレで焼いたタックイ(鶏肉焼き、[[닭구이]])も他店ではあまり見ない名物として親しまれる。 | ||