「英陽郡の料理」の版間の差分

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==== 飲食知味方の特徴 ====
 
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*飲食知味方のタイトル
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:トゥドゥル村で保管された文書の表紙には、『閨壼是議方(규곤시의방)』というタイトルがつけられている。これは「女性の心得」を意味する言葉であるが、当初からのものでなく子孫によって後日付け加えられたものと見られる。一般的には本文の冒頭に書かれた『飲食知味方』が本書のタイトルとして用いられ、これは「料理の味を知る方法」を意味する。なお、現在の表記法では「음식지미방」となるが、本書には「음식디미방」と記されており、現在の呼び名もそれに則るのが通例である。
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:トゥドゥル村で保管された文書の表紙には、『閨壼是議方(규곤시의방)』という題名がつけられている。これは「女性の心得」を意味する言葉であるが、当初からのものでなく子孫によって後日付け加えられたものと見られる。一般的には本文の冒頭に書かれた『飲食知味方』が本書の題名として用いられ、これは「料理の味を知る方法」を意味する。なお、現在の表記法では「음식지미방」となるが、本書には「음식디미방」と記されており、現在の呼び名もそれに則るのが通例である。
  
 
*唐辛子の伝来と普及
 
*唐辛子の伝来と普及
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*現代韓国料理との差異
 
*現代韓国料理との差異
:『飲食知味方』に収録された料理は現代でも共通するものが多い。ただし、料理のレシピを見るとだいぶ異なるものも多く、例えば[[ピンデトク(緑豆のお焼き/빈대떡)]]の場合は、中に蜂蜜を加えたアズキあんが入っている。
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:『飲食知味方』に収録された料理は現代でも共通するものが多い。ただし、料理のレシピを見るとだいぶ異なるものも多く、例えば現代の[[ピンデトク(緑豆のお焼き/빈대떡)]]は緑豆モヤシや白菜キムチ、豚肉などを具として作るが、『飲食知味方』のレシピでは蜂蜜を加えたアズキあんを入れる。
  
 
==== 代表的な料理 ====
 
==== 代表的な料理 ====

2016年4月23日 (土) 19:49時点における版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

英陽郡(ヨンヤングン、영양군)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは英陽郡の料理、特産品について解説する。

奉化マツタケ祭り

地域概要

英陽郡は慶尚北道の北東部に位置し、奉化郡、蔚珍郡、盈徳郡、青松郡、安東市と接する。人口は1万8383人(2013年)[1]。この人口は島嶼地区である慶尚北道鬱陵郡に次いで韓国の全市郡で2番目に少ない。郡の東部を太白山脈が南北に貫いており、標高1219mの日月山(일월산)をはじめとした山岳地域である。郡内には朝鮮時代中期から続く同族村(集姓村)が点在し、載寧李氏の一族が住むトゥドゥル村(두들마을)や、漢陽趙氏のチュシル村(주실마을)、楽安呉氏の甘川村(감촌마을)には貴重な伝統家屋が残る。ほか観光地としては前述の日月山や水下渓谷(수하계곡)、ホタルの生息地として特区に指定されたホタル生態体験村(반딧불이생태체험마을)などがある。ソウル(東ソウルバスターミナル)から英陽バス停留所までは市外バスで約4時間30分の距離。

食文化の背景

タルシル村の青巌亭

英陽には朝鮮時代から続く同族村があり、昔ながらの文化をいまも継承している。中でも象徴的なのがトゥドゥル村における『飲食知味方』の発見であり、これは載寧李氏の家系に伝えられた料理書である。英陽市ではこの料理を再現し、実際に味を見ることのできる体験プログラムを観光の目玉にしている。また、この地域の主な産業は農業であり、全国的に名産地として有名な唐辛子をはじめ、高冷地野菜や、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、スイカといった果物類、シイタケ、ツルニンジンなどを特産品とする。

代表的な料理

特産品の韓方材を食べさせて飼育した韓薬牛の焼肉や、タルシル村の伝統菓子が有名である。

ウムシクティミバン(飲食知味方/음식디미방)

ハニャググイ

『飲食知味方』は1670年頃に書かれた料理書。載寧李氏の一族が住むトゥドゥル村(두들마을)に伝わるもので、1640年にこの村を開いた李時明(イ・シミョン、이시명)の妻、張桂香(チャン・ゲヒャン、장계향)が子孫のために台所仕事の要点を書き残したものである。本書には当時の両班家庭で作られていた料理のレシピが詳細に紹介されているほか、酒類の醸造法や、食品の保管方法についても記されている。その項目は実に146種類にも及び、当時の食文化を知るうえでたいへん貴重な資料である。また、『飲食知味方』より以前にも料理のレシピを記した文献はあるが、それらはすべて漢文であり、ハングルで記された料理書としてはもっとも古い。

  • 体験プログラム
英陽郡では『飲食知味方』の料理を復元し、実際に味わえるように体験プログラムを組んでいる。トゥドゥル村内に設けられた「飲食知味方体験館」で提供しており、飲食知味方保存会の会員らが調理を担当する。なお、体験プログラムに参加するには最低3日前までの事前予約が必要であり、また最低でも10人以上集まるのが条件となる(自分たち以外の予約客も含めて10人以上揃えばよい)。

飲食知味方の特徴

  • 飲食知味方の題名
トゥドゥル村で保管された文書の表紙には、『閨壼是議方(규곤시의방)』という題名がつけられている。これは「女性の心得」を意味する言葉であるが、当初からのものでなく子孫によって後日付け加えられたものと見られる。一般的には本文の冒頭に書かれた『飲食知味方』が本書の題名として用いられ、これは「料理の味を知る方法」を意味する。なお、現在の表記法では「음식지미방」となるが、本書には「음식디미방」と記されており、現在の呼び名もそれに則るのが通例である。
  • 唐辛子の伝来と普及
『飲食知味方』の大きな特徴のひとつに唐辛子が一切使われていないことがあげられる。中米を原産とする唐辛子は16世紀後半から17世紀初頭にかけて日本を経由して伝わったとされ、もっとも古い記録は1614年に書かれた『芝峰類説(지봉유설)』に見られる。『飲食知味方』の執筆年代よりも50年以上もさかのぼるが、少なくとも英陽郡の周辺ではまだ一般的な食材でなかったと考えられる。韓国料理は唐辛子の普及によって大きく姿を変えたが、『飲食知味方』のレシピはそれ以前の姿を知るのに役立つ。なお、唐辛子が料理のレシピに登場するのは、1766年に書かれた『増補山林経済』が初めてであり、この時期には普及が進んでいたと見られる。
  • 現代韓国料理との差異
『飲食知味方』に収録された料理は現代でも共通するものが多い。ただし、料理のレシピを見るとだいぶ異なるものも多く、例えば現代のピンデトク(緑豆のお焼き/빈대떡)は緑豆モヤシや白菜キムチ、豚肉などを具として作るが、『飲食知味方』のレシピでは蜂蜜を加えたアズキあんを入れる。

代表的な料理

  • スジュンゲ(수증계)
  • チャプチェ(잡채)
  • カジェユク(가제육)
  • トンアヌルミ(동아누루미)
  • トトリジュク(도토리죽)

サンチェピビムパプ(山菜ビビンバ/산채비빔밥)

タルシル村のハングァ
郡内の酉谷里(ユゴンニ、유곡리)地区には安東権氏(안동권씨)の同族村であるタルシル村があり、朝鮮時代中期の官僚である権橃が開いた。山に囲まれたこの地域は金の鶏が村全体を抱いているようだと表現され、鶏谷との意味でタルシル、またそれを漢字で酉谷と表現する。この村には現在も安東権氏の末裔30余戸が暮らしており、先祖を祀った共同祭祀を行う。このとき祭祀膳に捧げられるのが伝統菓子のハングァ(韓菓)であり、現在は地域の特産品として販売もされている。その製法は安東権氏の家門に代々受け継がれた門外不出のものであり、嫁いできた女性以外は実の娘であっても教わることができない。実際の製造は村の女性たちが農作業の合間に集まってすべて手作業で行っている。購入する場合は10日前までに予約が必要。
  • ユグァ(油菓)
現在は大きく分けて3種類のハングァを作っている。もち米の生地を油で揚げて蜜と炒り米(튀밥)をまぶしたものをユグァ(油菓、유과)と呼び、板状に作ったイムニュグァ(입유과)と、楕円型に作ったチャンニュグァ(잔유과)の2種類がある。このうちチャンニュグァには全体に黒ゴマをまぶした黒いものと、植物のムラサキ(지치)で色をつけた赤いものがあり、プレーンな白を含めて3つの色がある。かつては陰陽五行思想に照らし合わせて5色を作ったそうだが、現在は簡略化されている。また、チャンニュグァには炒り米と干しブドウを用いて、梅の花に見立てた飾りが加わる。
  • ヤックァ(薬菓)
ハングァのもう1種類はもち米の生地にショウガなどを加えて揚げたヤックァ(薬菓、약과)である。一般的なヤックァとは異なって油っぽさがほとんどなく、層状になった生地はクッキーのような食感でサクサクしている。
  • タルシル宗家伝統油菓(달실종가 전통유과)
住所:慶尚北道奉化郡奉化邑沖斎キル6-1(酉谷里1016)
住所:경상북도 봉화군 봉화읍 충재길 6-1(유곡리 1016)
電話:054-674-0788

代表的な特産品

山間部の地形を活かした特産品があり、中でも秋にとれるマツタケと川魚のアユが有名である。

唐辛子(고추)

ソンイトルソッパプ
奉化郡は面積の83%が山林であり、山林面積の約4割をマツ(アカマツ、チョウセンゴヨウ)が占める。こうした環境により古くからマツタケの産地として知られ、山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第10号として奉化マツタケは登録されている(江原道襄陽郡、慶尚北道盈徳郡、蔚珍郡もマツタケの登録がある)[2]。奉化におけるマツタケのシーズンは9月下旬から10月中旬であり、この時期に毎年「奉化マツタケ祭り(봉화송이축제)」が開催される[3]
  • マツタケの食べ方
飲食店においてはソンイグイ(マツタケ焼き、송이구이)、ソンイトルソッパプ(マツタケ釜飯、송이돌솥밥)、ソンイジョンゴル(マツタケ鍋、송이전골)といった食べ方が一般的である。またシーズンになると焼肉店などでもマツタケを扱い、地元名産の韓牛と一緒に焼いて食べるのも人気が高い。

代表的な酒類・飲料

奉化ワイン(봉화와인)

梧田里(오전리)地区にある醸造場「エデンの東(에덴의동쪽)」では、1998年よりヤマブドウ(머루)を用いた「Empery(엠퍼리)」という銘柄のワインを生産、販売している[4]

英陽郡のマッコリ

奉化郡には現在6ヶ所の醸造場があり[5]、法田醸造場(법전양조장)の清凉酒(청량주)、奉化醸造場(봉화양조장)の奉化純麹生マッコリ(봉화 순곡생막걸리)、三洞醸造場(삼동양조장)の清涼山マッコリ(청량산 막걸리)、小川濁・薬酒醸造場(소천탁 약주양조장)の小川長生マッコリ(소천장생막걸리)、春陽醸造場(춘양양조장)の太白山米マッコリ(태백산 쌀막걸리)、石浦醸造場(석포양조장)の石浦マッコリ(석포막걸리)といった銘柄が流通している。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • 飲食知味方体験館(음식디미방 체험관)
住所:慶尚北道英陽郡石保面トゥドゥルマウルキル66(院里303)
住所:경상북도 영양군 석보면 두들마을길 66(원리 303)
電話:054-682-7764
料理:飲食知味方料理

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2015年10月に初めて英陽郡を訪れた。大学時代に卒業論文の重要な資料として『飲食知味方』を読んでいたため、ゆかりの地であるトゥドゥル村を訪ねられたのはたいへん感動的であった。

脚注

  1. 통계연보 、英陽郡ウェブサイト、2016年4月13日閲覧
  2. 지리적표시 임산물 제10호 - 봉화송이 、山林庁ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
  3. 봉화송이축제 、奉化観光ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
  4. 에덴의동쪽 、エデンの東ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
  5. 봉화양조장 상세 정보 、봉화장터、2016年4月12日閲覧

外部リンク

関連項目