「青松郡の料理」の版間の差分

667 バイト追加 、 2023年8月25日 (金) 13:00
 
(同じ利用者による、間の5版が非表示)
6行目: 6行目:
  
 
== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
青松郡は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の中東部に位置する地域。郡の北部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[英陽郡の料理|英陽郡]]、東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[盈徳郡の料理|盈徳郡]]、南東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[浦項市の料理|浦項市]]、南部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[永川市の料理|永川市]]、南西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[軍威郡の料理|軍威郡]]、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[義城郡の料理|義城郡]]、北西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[安東市の料理|安東市]]と接する。人口は2万5821人(2018年7月)<ref>[http://www.mois.go.kr/frt/sub/a05/totStat/screen.do 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月16日閲覧</ref>。郡の北部から東部、南部にかけては太白山脈の一角をなし、周王山(チュワンサン、주왕산)、太行山(テヘンサン、태행산)といった山々に囲まれる。周王山一帯は1976年に周王山国立公園(チュワンサンクンニプコンウォン、주왕산국립공원)として指定されており、また2011年6月には韓国で9ヶ所目のスローシティにも指定されるなど<ref>[http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/TE/TE_JA_7_3_8_10_9.jsp スローシティ青松の魅力に迫る!] 、青松郡ウェブサイト、2014年11月23日閲覧</ref>、自然の景観が美しい地域である。代表的な観光地に18世紀初頭に作られた貯水池の注山池(チュサンジ、주산지)や、新羅時代の672年に創建された大典寺(テジョンサ、대전사)、1880年に建てられた伝統家屋の松韶古宅(ソンソゴテク、송소고택)などがある。[[ソウル市の料理|ソウル市]]から青松郡までは、東ソウル総合バスターミナルから青松バスターミナルまで高速バスで約4時間10分の距離、周王山市外バスターミナルまで約4時間30分の距離である。
+
青松郡は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の中東部に位置する地域。郡の北部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[英陽郡の料理|英陽郡]]、東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[盈徳郡の料理|盈徳郡]]、南東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[浦項市の料理|浦項市]]、南部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[永川市の料理|永川市]]、南西部は広域市の[[大邱市の料理|大邱市]]、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[義城郡の料理|義城郡]]、北西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[安東市の料理|安東市]]と接する。人口は2万5821人(2018年7月)<ref>[http://www.mois.go.kr/frt/sub/a05/totStat/screen.do 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月16日閲覧</ref>。郡の北部から東部、南部にかけては太白山脈の一角をなし、周王山(チュワンサン、주왕산)、太行山(テヘンサン、태행산)といった山々に囲まれる。周王山一帯は1976年に周王山国立公園(チュワンサンクンニプコンウォン、주왕산국립공원)として指定されており、また2011年6月には韓国で9ヶ所目のスローシティにも指定されるなど<ref>[http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/TE/TE_JA_7_3_8_10_9.jsp スローシティ青松の魅力に迫る!] 、青松郡ウェブサイト、2014年11月23日閲覧</ref>、自然の景観が美しい地域である。代表的な観光地に18世紀初頭に作られた貯水池の注山池(チュサンジ、주산지)や、新羅時代の672年に創建された大典寺(テジョンサ、대전사)、1880年に建てられた伝統家屋の松韶古宅(ソンソゴテク、송소고택)などがある。[[ソウル市の料理|ソウル市]]から青松郡までは、東ソウル総合バスターミナルから青松バスターミナルまで高速バスで約4時間10分の距離、周王山市外バスターミナルまで約4時間30分の距離である。
  
 
== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
18行目: 18行目:
 
=== タッペクスク(丸鶏の水炊き/닭백숙) ===
 
=== タッペクスク(丸鶏の水炊き/닭백숙) ===
 
[[ファイル:14112303.JPG|thumb|300px|達基薬水湯のタッペクスク]]
 
[[ファイル:14112303.JPG|thumb|300px|達基薬水湯のタッペクスク]]
:青松は天然の炭酸泉で煮込んだ[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]が名物であり、達基薬水湯、新村薬水湯の2ヶ所に専門店が集まっている。[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]を提供する飲食店は「旅館食堂(여관식당)」の看板を掲げているところが多く、もともとは温泉の湯治客に対して振る舞ったのが始まりだとされる。炭酸泉で煮込んだ丸鶏は、食べやすい大きさに手で裂き、粗塩につけて味わう。また、鶏を煮込んだスープで粥を作り、一緒に提供するのも定番である。店によってはメニューが細分化され、地鶏を用いたトジョンタッペクスク(토종닭백숙)、ウルシの木を一緒に煮込んだオッタッペクスク(옻닭백숙)、アヒルを使った[[オリペクスク(アヒルの水炊き/오리백숙)]]といったバリエーションがある。一方、鶏肉を叩いてコチュジャンなどで味付けをし、炭火で網焼きにしたタップルコギ(닭불고기)はほぼすべての飲食店に用意があり、[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]と並んで地域の名物となっている。[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]は煮込むのに時間がかかるため、タップルコギを食べながら待つというのが定番となっている。[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]とタップルコギのセット(または、丸鶏でなく鶏肉の一部をタップルコギとして使用し、残りの部位を[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]にしたもの)をタップルペクスク(닭불백숙)とも呼ぶ。
+
:青松は天然の炭酸泉で煮込んだ[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]が名物であり、達基薬水湯、新村薬水湯の2ヶ所に専門店が集まっている。炭酸泉は鉄分などのミネラルを含み、胃腸病や皮膚病に効果があるとされている。[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]を提供する飲食店は「旅館食堂(여관식당)」の看板を掲げているところが多く、もともとは温泉の湯治客に対して振る舞ったのが始まりだとされる。炭酸泉で煮込んだ丸鶏は、食べやすい大きさに手で裂き、粗塩につけて味わう。また、鶏を煮込んだスープで粥を作り、一緒に提供するのも定番である。店によってはメニューが細分化され、地鶏を用いたトジョンタッペクスク(토종닭백숙)、ウルシの木を一緒に煮込んだオッタッペクスク(옻닭백숙)、アヒルを使った[[オリペクスク(アヒルの水炊き/오리백숙)]]といったバリエーションがある。一方、鶏肉を叩いてコチュジャンなどで味付けをし、炭火で網焼きにしたタップルコギ(닭불고기)はほぼすべての飲食店に用意があり、[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]と並んで地域の名物となっている。[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]は煮込むのに時間がかかるため、タップルコギを食べながら待つというのが定番となっている。[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]とタップルコギのセット(または、丸鶏でなく鶏肉の一部をタップルコギとして使用し、残りの部位を[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|タッペクスク]]にしたもの)をタップルペクスク(닭불백숙)とも呼ぶ。
  
 
*達基薬水湯(タルギヤクスタン)
 
*達基薬水湯(タルギヤクスタン)
86行目: 86行目:
 
== エピソード ==
 
== エピソード ==
 
*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年9月に初めて青松郡を訪れた。その際、東京、三河島の韓国料理店「ママチキン」と、湯島の「周王山」を経営する姉弟が青松郡の出身であることから、知人の郡庁関係者を紹介してもらうなど多大なる協力を得た。関係諸氏には特別に謝意を表すとともに、三河島の「ママチキン」では青松郡から直送された山菜料理やマツタケ料理が季節の特別メニューとして稀に提供されることを付記しておく。また、「ママチキン」に併設された「周王山醸造場」では自家製のマッコリを造っているが、その製法は青松郡にある「周王山濁酒」と同様である。
 
*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年9月に初めて青松郡を訪れた。その際、東京、三河島の韓国料理店「ママチキン」と、湯島の「周王山」を経営する姉弟が青松郡の出身であることから、知人の郡庁関係者を紹介してもらうなど多大なる協力を得た。関係諸氏には特別に謝意を表すとともに、三河島の「ママチキン」では青松郡から直送された山菜料理やマツタケ料理が季節の特別メニューとして稀に提供されることを付記しておく。また、「ママチキン」に併設された「周王山醸造場」では自家製のマッコリを造っているが、その製法は青松郡にある「周王山濁酒」と同様である。
 +
*BYC
 +
:[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[奉化郡の料理|奉化郡(Bonghwa-gun)]]、[[英陽郡の料理|英陽郡(Yeongyang-gun)]]、青松郡(Cheongsong-gun)の頭文字を取って「BYC」と総称することがある。隣接する3地域を韓国の有名な下着メーカーにちなんでまとめた語呂合わせだが、韓国を代表する「奥地」のまとめとして揶揄を含むことが多い。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、その「奥地」度を認めたうえで、それでも「わざわざ目掛けて行くべき美味しい3地域」と勝手な再定義を提唱している<ref>八田靖史, 2022, 『ラジオ まいにちハングル講座 2022年9月号(韓国おいしい町めぐり)』, NHK出版, P96</ref>。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
96行目: 98行目:
 
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
 
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
*[https://itunes.apple.com/us/app/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E9%A3%9F%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%BE%9E%E5%85%B8/id1220010846?l=ja&ls=1&mt=8 韓国語食の大辞典アプリ版](八田靖史制作の韓国料理専門辞典)
 
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
29,495

回編集