「浦項市の料理」の版間の差分

9,922 バイト追加 、 2023年9月30日 (土) 23:56
 
(同じ利用者による、間の28版が非表示)
4行目: 4行目:
  
 
== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
 +
[[ファイル:23093001.JPG|thumb|300px|九龍浦港を臨む9匹の龍の像]]
 
浦項市は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の東部に位置する地域。市の北部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[盈徳郡の料理|盈徳郡]]、東部は東海岸、南部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[慶州市の料理|慶州市]]、南西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[永川市の料理|永川市]]、北西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[青松郡の料理|青松郡]]と接する。人口は49万4452人で、[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]ではもっとも多い(2023年3月)<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2023年4月8日閲覧</ref>。[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]では唯一行政区域として一般区を設置しており、市全体を北区(プック、북구)と南区(ナムグ、남구)に区画している。市の東部は東海岸に面しており、海に突き出た形になっている虎尾半島(ホミバンド、호미반도)の先端部、虎尾串(ホミゴッ、호미곶)は島嶼部を除くと朝鮮半島でもっとも東に位置する。西部は太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)の最南部に位置する山岳地域である。観光地には日の出の名所として知られる虎尾串をはじめ、同じく虎尾半島に位置する九龍浦港(クリョンポハン、구룡포항)や、迎日湾(ヨンイルマン、영일만)に面した海水浴場などが代表的である。また、浦項は韓国最大の製鉄会社として知られるPOSCO(ポスコ、포스코)や、理系分野で韓国最高峰とされる浦項工科大学校(ポハン コンクァ テハッキョ、포항공과대학교)があることでも知られる。[[ソウル市の料理|ソウル市]]から浦項市までは、ソウル駅から浦項駅まで高速鉄道のKTXで約2時間20分の距離。また、高速バスでは東ソウルバスターミナルから浦項市外バスターミナルまで約4時間30分の距離。金浦空港から浦項空港までは国内線で約50分の距離である。
 
浦項市は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の東部に位置する地域。市の北部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[盈徳郡の料理|盈徳郡]]、東部は東海岸、南部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[慶州市の料理|慶州市]]、南西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[永川市の料理|永川市]]、北西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[青松郡の料理|青松郡]]と接する。人口は49万4452人で、[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]ではもっとも多い(2023年3月)<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2023年4月8日閲覧</ref>。[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]では唯一行政区域として一般区を設置しており、市全体を北区(プック、북구)と南区(ナムグ、남구)に区画している。市の東部は東海岸に面しており、海に突き出た形になっている虎尾半島(ホミバンド、호미반도)の先端部、虎尾串(ホミゴッ、호미곶)は島嶼部を除くと朝鮮半島でもっとも東に位置する。西部は太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)の最南部に位置する山岳地域である。観光地には日の出の名所として知られる虎尾串をはじめ、同じく虎尾半島に位置する九龍浦港(クリョンポハン、구룡포항)や、迎日湾(ヨンイルマン、영일만)に面した海水浴場などが代表的である。また、浦項は韓国最大の製鉄会社として知られるPOSCO(ポスコ、포스코)や、理系分野で韓国最高峰とされる浦項工科大学校(ポハン コンクァ テハッキョ、포항공과대학교)があることでも知られる。[[ソウル市の料理|ソウル市]]から浦項市までは、ソウル駅から浦項駅まで高速鉄道のKTXで約2時間20分の距離。また、高速バスでは東ソウルバスターミナルから浦項市外バスターミナルまで約4時間30分の距離。金浦空港から浦項空港までは国内線で約50分の距離である。
 +
 +
*九龍浦港
 +
:九龍浦港(クリョンポハン、구룡포항)は、市南東部の南区九龍浦邑(ナムグ クリョンポウプ、남구 구룡포읍)に位置する港。東海岸を代表する港のひとつで、ズワイガニ([[대게]])などの名産地として知られる。19世紀末までは人口の少ない寒村であったが、1902年に山口県豊浦郡からタイ(도미)漁を行う漁船50余隻が来航したのを始まりとして通漁者の開拓が進み、1900年代後半からは香川県や岡山県などから多くの日本人が移り住んだ<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/70/595/70_KJ00004390262/_pdf/-char/ja 韓国・九龍浦の日本人移住漁村の居住空間構成とその変容(朴重信、金泰永、布野修司)] 、J-STAGEウェブサイト、2023年9月29日閲覧</ref><ref>迎日郡史編纂委員会, 1990, 『迎日郡史』), 迎日郡史編纂委員会, P306-309</ref>。当時、建てられた日本家屋は修復されて現在も残り、その町並みは「九龍浦近代文化歴史通り(구룡포 근대문화역사거리)」として観光地化されている。有力者のひとり香川県出身の橋本善吉が建てた家は、「九龍浦近代歴史館(구룡포 근대역사관)」として利用されており、資料の展示や記録映像の上映がなされている。九龍浦の地名は新羅時代の逸話に基づいており、真興王(第24代)の時代に地域の県監(地方官)が巡察していたところ、突然の嵐とともに10匹の龍が天へとのぼったが、そのうちの1匹が雷に打たれて海に落ちたことから「九龍浦」と名前がついたとされる。
 +
 +
*延烏郎と細烏女の伝説
 +
[[ファイル:23100101.jpg|thumb|300px|虎尾串の延烏郎細烏女像]]
 +
:高麗時代の僧侶、一然(イリョン、일연)が13世紀末に編纂した『三国遺事(삼국유사)』(巻1紀異第一)には、新羅の阿達羅王(第8代)4年(157年)の出来事として、延烏郎(ヨノラン、연오랑)と細烏女(セオニョ、세오녀)夫婦の話が掲載されている<ref>[https://db.history.go.kr/item/compareViewer.do?levelId=sy_001r_0020_0240_0010 연오랑과 세오녀가 바위를 타고 일본에 가다(삼국유사 > 권 제1 > 제1 기이(紀異第一) )] 、韓国史データベース、2023年10月1日閲覧</ref><ref>[https://db.history.go.kr/item/compareViewer.do?levelId=sy_001r_0020_0240_0020 신라는 연오가 짜 준 명주로 해와 달의 광채를 되찾다(삼국유사 > 권 제1 > 제1 기이(紀異第一) )] 、韓国史データベース、2023年10月1日閲覧</ref>。
 +
:ある日、延烏郎が東海岸で海藻を採っていると、突然岩に載せられて日本に行ってしまった(魚が連れていったとの説もある)。日本では延烏郎をただならぬ人物だと考え、王として迎えた。帰ってこない延烏郎を心配して探しに出た細烏女は、海辺で延烏郎の脱いだ靴を見つけ、やはり岩に載せられて日本へと渡った。細烏女は延烏郎と再会して王妃になった。一方の新羅では、日と月の光を失った。気象の担当官によれば「日と月の精気が我が国から日本へと渡ってしまったための異変である」とのことだった。王が日本に使臣を送ってふたりを探したところ、延烏郎は「私が来たのは天の思し召しであって、いまどうして帰れようか。妃が編んだ絹織物があるので、これを天に捧げて祭祀を行うように」と答えた。使臣が伝える通りに祭祀を行ってみると、その後は日と月が元通りになった。その絹織物は王の蔵で大事に保管し、その蔵を「貴妃庫」と呼んだ。その祭祀を行った場所を迎日県(ヨンイリョン、영일현)、または都祈野(도기야)と呼んだ。
 +
:祭祀を行った迎日県は現在の浦項市に相当し、虎尾串(ホミゴッ、호미곶)にはこの伝説をモチーフとした延烏郎細烏女像(연오랑세오녀상)が置かれている。
  
 
== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
東海岸に面しており海の幸が豊富である。中でも九龍浦港に水揚げされるズワイガニや、黒アナゴ、マダコ、天然アワビなどが名産として知られる。ヒラメやカレイなどの白身魚を[[センソンフェ(刺身/생선회)]]として味わうほか、刺身を冷たいスープ仕立てにした[[ムルフェ(水刺身/물회)]]、サンマを生干しにした[[クァメギ(サンマの生干し/과메기)]]、魚介満載のスープに麺を入れたモリグクス(海鮮麺、[[모리국수]])など、海産物を利用した郷土料理が豊富である。海産物以外ではホウレンソウの名産地として知られ、地域の名前を取ってポハンチョ(浦項草、[[포항초]])と呼ばれる。
+
[[ファイル:23093002.JPG|thumb|300px|竹島市場]]
 +
東海岸に面しており海の幸が豊富である。中でも九龍浦港に水揚げされるズワイガニ([[대게]])や、黒アナゴ([[검은돌장어]])、マダコ([[돌문어]])、天然アワビ([[전복]])などが名産として知られる。ヒラメ([[광어]])やカレイ([[가자미]])などの白身魚を[[センソンフェ(刺身/생선회)]]として味わうほか、刺身を冷たいスープ仕立てにした[[ムルフェ(水刺身/물회)]]、サンマを生干しにした[[クァメギ(サンマの生干し/과메기)]]、魚介満載のスープに麺を入れたモリグクス(海鮮麺、[[모리국수]])など、海産物を利用した郷土料理が豊富である。海産物以外ではホウレンソウ([[시금치]])の名産地として知られ、地域の名前を取ってポハンチョ(浦項草、[[포항초]])と呼ばれる。
  
 
== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
16行目: 27行目:
 
=== ムルフェ(冷汁風の刺身/물회) ===
 
=== ムルフェ(冷汁風の刺身/물회) ===
 
[[ファイル:23081401.JPG|thumb|300px|浦項式のムルフェ]]
 
[[ファイル:23081401.JPG|thumb|300px|浦項式のムルフェ]]
:ムルフェ([[물회]])は、冷汁風の刺身(「[[ムルフェ(水刺身/물회)]]」の項目も参照)。一般にムルフェは刺身を冷たいスープとともに味わう料理だが、浦項市では白身魚などの刺身を生野菜と和えて[[フェムチム(刺身和え/회무침)]]のように提供する。これに別途、冷水か、または酸味と辛味のある冷たいスープを用意し、食べる人が好みで加えてムルフェとするが、そのまま混ぜて食べたり、ごはんを入れてフェトッパプ(刺身丼/회덮밥)として食べたり、それらを複合的に楽しんだりもする。
+
:ムルフェ([[물회]])は、冷汁風の刺身(「[[ムルフェ(水刺身/물회)]]」の項目も参照)。一般にムルフェは刺身を冷たいスープとともに味わう料理だが、浦項市ではスープを入れず、白身魚などの刺身を生野菜と和えて[[フェムチム(刺身和え/회무침)]]のように提供する。これに別途、冷水か、または酸味と辛味のある冷たいスープを用意し、食べる人が好みで加えてムルフェとするが、そのまま混ぜて食べたり、ごはんを入れてフェトッパプ(刺身丼/회덮밥)として食べたり、それらを複合的に楽しんだりもする。
 
:1950年代から60年代にかけて浦項市では、ムルフェを看板料理とする「浦項ムルフェ(포항물회)」(1951年創業?)、「嶺南ムルフェ(영남물회)」(1961年創業?)などの専門店が登場し、浦項市における元祖格として親しまれた(いずれも現在は閉店)<ref>[https://www.yeongnam.com/web/view.php?key=20060905.010220813000001 [경상도 맛길기행 .76] 日食 이야기- (10) 물회] 、嶺南日報2006年9月5日付記事、2023年8月13日閲覧</ref>。1973年8月4日の朝鮮日報には、「松島海水浴場(송도해수욕장)内、80ヶ所の飲食店で販売されるこの地方の特味、ムルフェは最高の人気」とあることから、この時期には浦項市の名物として広く定着していたと考えられる<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1973080400239106001 [「비키니 群像」…原色의 파노라마] 、NAVERニュースライブラリー(朝鮮日報1973年8月4日記事)、2023年8月13日閲覧</ref>。
 
:1950年代から60年代にかけて浦項市では、ムルフェを看板料理とする「浦項ムルフェ(포항물회)」(1951年創業?)、「嶺南ムルフェ(영남물회)」(1961年創業?)などの専門店が登場し、浦項市における元祖格として親しまれた(いずれも現在は閉店)<ref>[https://www.yeongnam.com/web/view.php?key=20060905.010220813000001 [경상도 맛길기행 .76] 日食 이야기- (10) 물회] 、嶺南日報2006年9月5日付記事、2023年8月13日閲覧</ref>。1973年8月4日の朝鮮日報には、「松島海水浴場(송도해수욕장)内、80ヶ所の飲食店で販売されるこの地方の特味、ムルフェは最高の人気」とあることから、この時期には浦項市の名物として広く定着していたと考えられる<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1973080400239106001 [「비키니 群像」…原色의 파노라마] 、NAVERニュースライブラリー(朝鮮日報1973年8月4日記事)、2023年8月13日閲覧</ref>。
  
23行目: 34行目:
  
 
:*語源
 
:*語源
::モリグクスのグクス(=ククス、[[국수]])は麺の意。モリの語源は諸説ある。もっとも代表的なひとつが、「モイダ(集まる、모이다)」の慶尚道方言である「モディダ(모디다)」を語源とするもので、大勢の人が集まって食べる麺、またはたくさんの海産物が集まって作られた麺との意味から、「モディグクス(集まる麺)」がモリグクスへと変化したと考える。同じく、「モルダ(わからない、모르다)」の慶尚道方言である「モリダ(わからない、모리다)」から、特に名前のない漁師料理であったが、料理名を問われた際に「モリンダ(모린다、わからない)」と答えたことからモリグクスになったとの説もある。モリグクスが生まれた九龍浦邑は、かつて日本人が多く暮らした町であり、日本語の「盛り(大盛り)」を語源とする説もある。
+
::モリグクスのグクス(=ククス、[[국수]])は麺の意。モリの語源は諸説ある。もっとも代表的なひとつが、「モイダ(集まる、모이다)」の慶尚道方言である「モディダ(모디다)」を語源とするもので、大勢の人が集まって食べる麺、またはたくさんの海産物が集まって作られた麺との意味から、「モディグクス(集まる麺、모디국수)」がモリグクスへと変化したと考える。同じく、「モルダ(わからない、모르다)」の慶尚道方言である「モリダ(わからない、모리다)」から、特に名前のない漁師料理であったが、料理名を問われた際に「モリンダ(모린다、わからない)」と答えたことから、「モリングクス(わからない麺、모린국수)」がモリグクスになったとの説もある。モリグクスが生まれた九龍浦邑は、かつて日本人が多く暮らした町であり、日本語の「盛り(大盛り)」を語源とする説もある。
  
 
=== チョンボッチュク(アワビ粥/전복죽) ===
 
=== チョンボッチュク(アワビ粥/전복죽) ===
チョンボッチュク([[전복죽]])は、アワビ粥(「[[チョンボッチュク(アワビ粥/전복죽)]]」の項目も参照)。市南東部に位置する南区九龍浦邑(ナムグ クリョンポウプ、남구 구룡포읍)に専門店の集まる地域がある。九龍浦邑の近海では海女([[전복죽]])による天然アワビ漁が行われている。
+
[[ファイル:23093003.JPG|thumb|300px|浦項市産の天然アワビを用いたチョンボッチュク]]
 +
:チョンボッチュク([[전복죽]])は、アワビ粥(「[[チョンボッチュク(アワビ粥/전복죽)]]」の項目も参照)。市南東部に位置する南区九龍浦邑(ナムグ クリョンポウプ、남구 구룡포읍)に専門店の集まる地域がある。九龍浦邑の近海では海女([[해녀]])による天然アワビ漁が行われている。
  
 
=== フェ(刺身/회) ===
 
=== フェ(刺身/회) ===
32行目: 44行目:
  
 
=== コッセウフェ(シマエビの刺身/꽃새우회) ===
 
=== コッセウフェ(シマエビの刺身/꽃새우회) ===
:コッセウフェ([[꽃새우회]])は、シマエビの刺身。迎日台海水浴場(ヨンイルデ ヘスヨクチャン、영일대 해수욕장)の付近には海鮮料理を自慢とする室内屋台が立ち並び、コッセウフェや、[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]などを提供している。コッセウフェは頭の部分をハサミで切り、別途塩焼きで提供する。
+
[[ファイル:23093004.JPG|thumb|300px|コッセウフェ]]
 +
:コッセウフェ([[꽃새우회]])は、シマエビ([[꽃새우2|꽃새우]])の刺身。迎日台海水浴場(ヨンイルデ ヘスヨクチャン、영일대 해수욕장)の付近には海鮮料理を自慢とする室内屋台が立ち並び、コッセウフェや、[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]などを提供している。コッセウフェは頭の部分をハサミで切り、別途塩焼きで提供する。
 +
 
 +
:*名称
 +
::日本語のシマエビは俗称であり、標準和名ではモロトゲアカエビと呼ばれ、スジエビとの別称もある。韓国語ではトクトセウ(独島エビ、[[독도새우1|독도새우]])と呼ばれることもあり、トクトセウは独島(日本名、竹島)の近海でとれるエビを総称する。トクトセウにはシマエビのほか、トヤマエビ([[도화새우]])、イバラモエビ([[가시배새우]])が含まれる。
  
 
=== コドゥンオチュオタン(サバのスープ/고등어추어탕) ===
 
=== コドゥンオチュオタン(サバのスープ/고등어추어탕) ===
42行目: 58行目:
 
== 代表的な特産品 ==
 
== 代表的な特産品 ==
 
[[ファイル:23010209.JPG|300px|thumb|九龍浦港のテゲチム]]
 
[[ファイル:23010209.JPG|300px|thumb|九龍浦港のテゲチム]]
*コムントルジャンオ(アナゴ/검은돌장어)南区東海面
+
=== ズワイガニ(대게) ===
:東海面の迎日台海水浴場でとれる黒いアナゴ。地元の名物としてブランド化に力を入れている。
+
:市南東部の九龍浦港は、全国でもっとも多くズワイガニ([[대게]])を水揚げしている。港近くにはズワイガニ料理の専門店が並び、[[テゲチム(蒸しズワイガニ/대게찜)]]やテゲタン(ズワイガニ鍋、[[대게탕]])、テゲラミョン(ズワイガニラーメン、[[대게라면]])などの料理を味わえる。ズワイガニの漁期は12月1日から5月31日までと決まっており、国産物はこの時期をシーズンとする。
*テゲ(ズワイガニ/대게)南区九龍浦邑
+
 
:ズワイガニ。九龍浦港におけるズワイガニの水揚げは全国でもっとも多い。港にはズワイガニ料理の専門店が並び、スチームや鍋料理として味わえる。通年でロシアなどからの輸入物は出回るが、国産のズワイガニは12月1日から5月31日まで。
+
:*ドラマ『椿の花咲く頃』の撮影
*トルムノ(マダコ/돌문어)南区九龍浦邑
+
::2019年9~11月にKBSで放送されたドラマ『椿の花咲く頃(동백꽃 필 무렵)』は、浦項市の九龍浦港一帯を主要なロケ地としている。劇中の舞台となったのは[[忠清南道の料理|忠清南道]]のオンサン(온산)という架空の町で、浦項市の「九龍浦近代文化歴史通り(구룡포근대문화역사거리)」を、[[カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)]]の専門店が立ち並ぶ「オンサンケジャン通り(온산게장거리)」とした。ワタリガニ([[꽃게]])の主産地は西海岸沿いであり、東海岸に面した九龍浦港とは位置的に正反対であるが、カニの名産地という点では共通している。第14話など一部シーンでは、ズワイガニの看板を掲げた飲食店の街並みがそのまま放送された。
*ポハンチョ(ホウレンソウ/포항초)
+
 
:浦項で生産される改良種のホウレンソウ。
+
=== 黒アナゴ(검은돌장어) ===
 +
:南区東海面(ナムグ トンヘミョン、남구 동해면)の近海でとれる黒いアナゴ。コムンドルジャンオ(검은돌장어)と呼ばれ、直訳すると「黒い岩アナゴ」となる。[[パダジャンオグイ(アナゴ焼き/바다장어구이)|チャンオグイ(アナゴ焼き/장어구이)]]や、チャンオタン(アナゴのスープ、[[장어탕]])で味わう。
 +
 
 +
=== マダコ(돌문어) ===
 +
:虎尾串(ホミゴッ、호미곶)地区とれるマダコ。海底の岩場に生息することから、トルムノ(直訳は石ダコ、[[돌문어]])と呼ばれる。トルムノスッケ(茹でたマダコの刺身、[[돌문어숙회]])がもっとも一般的な食べ方であるが、トルムノヨンポタン(マダコ鍋、[[돌문어연포탕]])、トルムノドッパプ(マダコの煮付け丼、[[돌문어덮밥]])といった料理もある。市場では茹でたものが売られているのをよく見かける。毎年4月には「虎尾串マダコ祭り(호미곶 돌문어축제)」が開催される。
 +
 
 +
:*名称
 +
::マダコの標準名はウェムノ([[왜문어]])であり、一般にはチャムムノ([[참문어]])と呼ぶことが多いが、浦項市を含む東海岸沿い地域でチャムムノはミズダコ([[문어]]、[[대문어]])の方言として用いられるため、混同しやすく注意が必要である。
 +
 
 +
=== ポハンチョ(浦項草、포항초) ===
 +
[[ファイル:23093005.JPG|thumb|300px|[[ソウル市の料理|ソウル市]]の市場で売られているポハンチョ]]
 +
:ポハンチョ(浦項草、[[포항초]])は、浦項市で栽培される在来種のホウレンソウ([[시금치]])。広く流通する改良種のホウレンソウに比べて、サイズは小さいものの、香りや味わいが優れるとされる。真冬がシーズンであり、露地栽培により太陽光と海風を浴びながら育つ。[[シグムチナムル(ホウレンソウのナムル/시금치나물)]]などの和え物に利用するほか、[[テンジャンチゲ(味噌鍋/된장찌개)]]、テンジャンクッ(味噌汁、[[된장국]])の具とすることも多い。ポハンチョは「ポハンシグムチ(浦項ホウレンソウ、[[포항시금치]])」の名前で、農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第96号に指定されている<ref>[http://kpgi.co.kr/page/?mo_id=specialty&id=181&wr_id=268 포항시금치(포항초)] 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2023年9月30日閲覧</ref>。在来種のホウレンソウは、[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[南海郡の料理|南海郡]]で栽培されるナメチョ(南海草、[[남해초]])や、[[全羅南道の料理|全羅南道]][[新安郡の料理|新安郡]]の飛禽島(ピグムド、비금도)で栽培されるソムチョ(直訳は島草、[[섬초]])も有名である。
  
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 +
浦項市には、「都邱マッコリ(도구막걸리)」を生産する「東海名酒(동해명주)」や、「オンヘヤマッコリ(옹해야막걸리)」を生産する「チョンスル伝統都家(청술전통도가)」などの醸造場がある。
  
 
== 飲食店情報 ==
 
== 飲食店情報 ==
125行目: 153行目:
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
 
{{DEFAULTSORT:ほはんしのりようり}}
 
{{DEFAULTSORT:ほはんしのりようり}}
 +
*[[カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)]]
 
*[[クァメギ(サンマの生干し/과메기)]]
 
*[[クァメギ(サンマの生干し/과메기)]]
 
*[[テゲチム(蒸しズワイガニ/대게찜)]]
 
*[[テゲチム(蒸しズワイガニ/대게찜)]]
 +
*[[テンジャンチゲ(味噌鍋/된장찌개)]]
 
*[[ムルフェ(水刺身/물회)]]
 
*[[ムルフェ(水刺身/물회)]]
 +
*[[パダジャンオグイ(アナゴ焼き/바다장어구이)]]
 
*[[センソンフェ(刺身/생선회)]]
 
*[[センソンフェ(刺身/생선회)]]
 
*[[ソモリクッパプ(牛頭部のスープごはん/소머리국밥)]]
 
*[[ソモリクッパプ(牛頭部のスープごはん/소머리국밥)]]
 +
*[[シグムチナムル(ホウレンソウのナムル/시금치나물)]]
 
*[[チョンボッチュク(アワビ粥/전복죽)]]
 
*[[チョンボッチュク(アワビ粥/전복죽)]]
 
*[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]
 
*[[チョゲグイ(貝焼き/조개구이)]]
 +
*[[チュオタン(ドジョウ汁/추어탕)]]
 +
*[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:慶尚北道・大邱市の料理]]
 
[[Category:慶尚北道・大邱市の料理]]
29,495

回編集