江華郡の料理

提供: 韓食ペディア
2015年4月6日 (月) 23:11時点におけるHatta (トーク | 投稿記録)による版
ナビゲーションに移動 検索に移動
この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

江華郡(カンファグン、강화군)は仁川広域市に位置する地域。本ページでは江華郡の料理、特産品について解説する。

来蘇寺の大雄宝殿

地域概要

江華郡は仁川市の北部に位置し、同じ仁川市の西区と甕津郡、京畿道の金浦市と接する。また、北部は川を挟んで北朝鮮の黄海北道開豊郡や、黄海南道白川郡、延安郡と向かい合う。人口は6万7118人(2015年1月)[1]。郡全体が西海岸に浮かぶ島嶼地域であり、韓国で5番目の面積を誇る江華島(강화도)をはじめ、喬桐島(교동도)、席毛島(석모도)といった15の島で構成されている。観光地としても人気が高く、古代から近現代に至るまで幅広い歴史遺産を残しているのが大きな特徴である。ユネスコの世界文化遺産にも指定された青銅器時代の支石墓群(高敞、和順、江華の支石墓群跡)や、神話上の始祖である檀君が天に祭祀を行った摩尼山(마니산)、高句麗時代の381年に創建されたとされる伝燈寺(전등사)、高麗時代の13世紀に臨時首都として使用された宮殿跡の高麗宮址(고려궁지)、朝鮮時代の19世紀後半に諸外国と対峙した防衛拠点の草芝鎮(초지진)など、各時代における歴史が縮図のように集まっている。ソウル(新村、弘大入口などの各バス停)から広域バスで約2時間の距離。

食文化の背景

島嶼地域という特性から漁業、養殖業が盛んに行われている。郡内では四季折々の魚介が食卓にのぼり、春はイイダコ(주꾸미)、メフグ(황복)、春から初夏にかけてはワタリガニ(꽃게)や、マナガツオ(병어)、ツマリエツ(반지, 밴댕이)、塩辛用のアキアミ(젓새우)、秋はコノシロ(전어)や、コウライエビ(대하)、冬はボラ(숭어)といった魚介が旬を迎える。また江華郡は漢江、臨津江、礼成江という3つの河川が流れ込む河口地域に位置するため、堆積地として肥沃な土壌を有することから、漁業のみならず農業が盛んに行われている。米()、サツマイモ(고구마)、カブ(순무)、ブドウ(포도)、高麗人参(인삼)、ヨモギ()といった特産品があり、これらを利用した加工品も多く作られている。食品以外では、花紋席(화문석)と呼ばれる花ござの生産が盛んである。

代表的な料理

江華郡の料理には旬の魚介を使った料理が多い。また、高麗時代に臨時首都が置かれた経緯から、王様に献上された料理との逸話を持つものもある。

ペンデンイフェ(ツマリエツの刺身/밴댕이회)

ペンデンイフェはツマリエツの刺身。ペンデンイ(밴댕이)の和名はサッパであるが、仁川・江華島地域では見た目のよく似たツマリエツ(반지)をペンデンイと呼んでいる。5~7月を最盛期とするが、最近は冬でも全羅南道から冷蔵品が直送されており、旬以外の時期でも見かけるようになった。ペンデンイフェは新鮮なものを刺身にしたものか、または刺身を生野菜とともに辛いタレで和えたフェムチム(刺身和え、회무침)もペンデンイフェと称する。フェムチムの場合は丼ごはんが用意され、フェドッパプ(刺身丼、회덮밥)のように混ぜて食べることも多い。華道(화도)地区の後浦港(후포항)には「船首ペンデンイ村(선수밴댕이마을)」と呼ばれる地域があり、ペンデンイフェを中心とした刺身専門店が集まっている。

チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)

チャンオグイはウナギ焼き。江華島と金浦市を分かつ江華海峡(강화해협)は、塩辛い川のようだという意味で塩河(염하)と呼ばれる。この地域では古くからウナギがよくとれ、名産品のひとつであったが、近年は天然物の減少から漁獲量は激減している。それでも塩河沿いのトリミ(더리미)地区にはウナギ料理の専門店が集まっており、養殖、または天然環境で育てた養殖ウナギのチャンオグイを味わうことができる。

ファンボクフェ(メフグの刺身/황복회)

ファンボクフェはメフグの刺身。春を旬とするが、近年は漁獲量が減っている。倉後里(창후리)に専門店が集まっている。

コッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)

パジラッチュク
コッケタンはワタリガニ鍋。江華島沖はワタリガニの好漁場であり、4~6月には卵を持ったメスが西海岸の各漁港に水揚げされる。地元ではこの時期をいちばんの旬と考えるが、秋にももう1度旬があり、9月にはオスのワタリガニを、10~12月にはメスのワタリガニを味わう。内可面外浦里(내가면 외포리)にはコッケタンや、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け、간장게장)を提供するワタリガニ料理の専門店が集まっており、「外浦里ワタリガニ村(외포리 꽃게마을)」と呼ばれる。

チョックッカルビ(豚カルビの塩辛鍋/젓국갈비)

チョックッカルビは豚カルビの塩辛鍋。ぶつ切りにした豚カルビを白菜、カボチャ、長ネギ、豆腐などとともに、特産品であるアミの塩辛(새우젓)で味付けをしたスープで煮込む。料理名のチョックッとは塩辛の汁を意味する。料理の発祥として、高麗時代に臨時の都となった際、王に献上するための料理として開発されたと語られることもある。ただし、それを裏付ける史料はなく、あくまでも俗説のひとつと言わざるをえない。

スンムギムチ(カブのキムチ/순무김치)

スンムギムチはカブのキムチ。カブを大きめの角切りにし、カクトゥギ(大根の角切りキムチ、깍두기)のように漬け込む。韓国ではあまりカブを食べる習慣がなく、カブのキムチといえば江華島を連想するほど独特な存在である。

代表的な特産品

島嶼地域であることから魚介類が豊富であり、農業も盛んに行われている。また高麗人参の産地として知られるほか、獅子足ヨモギ(사자발쑥)と呼ばれる薬用ヨモギの栽培も盛んであるなど、漢方材の生産地という側面もある。

高麗人参

アサリ漁の様子
扶安郡の海岸部は広大な干潟が続いており、良質のアサリを多く産する。アサリは代表的な料理であるパジラッチュク(アサリ粥、바지락죽)のほか、パジラッカルグクス(アサリうどん、바지락칼국수)や、ゆがいたむき身を生野菜と和えたパジラクフェムチム(アサリの刺身和え、바지락회무침)、またそれをビビンバに仕立てたパジラクフェピビムパプ(アサリのビビンバ、바지락회비빔밥)といった料理に用いる。

アミの塩辛

コムソ地区の塩田
開岩竹塩は扶安郡で生産される焼き塩の一種。竹塩の生産はもともと寺の僧たちに民間療法として受け継がれてきた技法とされ、開岩竹塩は1990年代になって開岩寺(ケアムサ、개암사)から民間へと伝えられた。開岩竹塩の製造技術は全羅北道無形文化財第23号に指定されているが、その技能保有者も開岩寺のヒョサン住職である。
  • 開岩竹塩の製造方法
開岩寺のウェブサイトでは開岩竹塩の製造方法を以下のように説明している。
「開岩竹塩は清浄海域である国立公園辺山半島のコムソ塩田で生産されたミネラル豊富な天日塩を3年以上育った竹筒の中に入れ、黄土だんごで栓をした後、松の木の薪だけを燃料として使い、高温で焼き上げることを8度繰り返し、最後の9回目は薪に松脂をばらまいて加熱温度をよりいっそう高めることで塩が溶けて流れる、といった丁寧な過程を経、ていわゆる『紫色の宝物のような塩』が誕生することになる」(原文1)[2]
【原文1】개암죽염은 청정해역인 국립공원 변산반도의 곰소염전에서 생산된 미네랄이 풍부한 천일염을 3년 이상 자란 대나무 통 속에 넣고 황토 경단으로 마개를 한 뒤 소나무 장작만을 연료로 사용하여 고온으로 구워 내기를 8번 반복하고, 마지막 9번째는 소나무에 송진을 뿌려 가열 온도를 더욱 올리게 되면 소금이 녹아 흘러내리게 되는 정성스러운 과정을 거쳐 이른바 "자색보물소금"이 탄생하게 된다.

獅子足ヨモギ

代表的な酒類・飲料

江華郡のマッコリ

主要な銘柄にチャヌムルの「高香(고향)」、江華温水醸造場の「民族(민족)」がある。また、特産品を活かした高麗人参マッコリや、ヨモギマッコリなども市販されている。
  • 江華温水醸造場(강화온수양조장)
仁川市江華郡吉祥面に位置する江華温水醸造場は1924年の創業(実際は1923年の創業で法的な登記が1924年)で、ソウル、京畿道地域においてはもっとも古い醸造場である。3代目の社長によれば「ソウル、京畿道地域で現在営業する醸造場の多くが、江華温水醸造場で必要な技術を学んでおり、その人数は3~400人になるだろう」とのことである(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。醸造場の建物は築100年を超えるもので、建築的な価値も高いとされる。

老舗

  • 仁川市江華郡江華邑に位置する「ウリオク(우리옥)」は1953年創業である。江華郡においてはもっとも古い飲食店であり、また仁川市内においても1945年創業の「平壌屋(평양옥)」に次いで2番目に古い。魚介料理を自慢とする定食店で、ハンシクペッパン(韓国料理定食、한식백반)と呼ばれる5000ウォンの基本定食に、好みでチゲや刺身などを追加するシステムを取っている。追加用の料理にはテグチゲ(タラの鍋、대구찌개)、ピョンオチゲ(マナガツオの鍋、병어찌개)、ピョンオフェ(マナガツオの刺身、병어회)、プルコギ(牛焼肉、불고기)などがある。
店名:ウリオク(우리옥)
住所:仁川市江華郡江華邑南山キル12(新門里184)
住所:인천시 강화군 강화읍 남산길 12
電話:032-934-2427

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • 江華島ヨモギ韓牛(강화섬약쑥한우)
住所:仁川市江華郡仙源面仙源寺址路32(新井里247-1)
住所:인천시 강화군 선원면 선원사지로 32(신정리 247-1)
電話:032-934-1212
料理:焼肉
  • ソンチャンチプ(선창집)
住所:仁川市江華郡仙源面海岸東路1199(神井里320-3)
住所:인천시 강화군 선원면 해안동로 1199(신정리 320-3)
電話:032-933-7628
料理:チャンオグイ
  • 三郎城(삼랑성)
住所:仁川市江華群吉祥面伝燈寺路56(温水里660)
住所:인천시 강화군 길상면 전등사로 56(온수리 660)
電話:032-937-0397
料理:ポリパプ(麦飯定食)
  • ワンジャジョンムッパプ(왕자정묵밥)
住所:仁川市江華郡江華邑北門キル55(官庁里750-7)
住所:인천시 강화군 강화읍 북문길 55(관청리 750-7)
電話:032-933-7807
料理:チョックッカルビ
  • ウリオク(우리옥)
住所:仁川市江華郡江華邑南山キル12(新門里184)
住所:인천시 강화군 강화읍 남산길 12
電話:032-934-2427
料理:ピョンオチゲ(マナガツオの鍋)
  • 忠南瑞山家(충남서산집)
住所:仁川市江華郡内可面中央路1200(外浦里385)
住所:인천시 강화군 내가면 중앙로 1200(외포리 385)
電話:032-933-8403
料理:コッケタン、カンジャンケジャン

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代である2001年11月に語学堂の卒業旅行として初めて江華郡を訪れた。以後、2009年11月、2014年1月、2月、2015年3月の計5度訪問している。
  • 2001年11月の卒業旅行時、観光中にふざけていた八田靖史は城壁から落下しかけ、危ういところで命が助かるという衝撃的な事件があった。

脚注

  1. 강화군정보 일반현황 、江華郡ウェブサイト、2015年4月4日閲覧
  2. 개암죽염 유래 、開岩寺ウェブサイト、2015年1月21日閲覧

外部リンク

関連項目