機張郡の料理

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機張郡(キジャングン、기장군)は釜山広域市に属する地域。本ページでは機張郡の料理、特産品について解説する。

海東龍宮寺

地域概要

 
機張市場のズワイガニ専門店

機張郡は釜山市の一部であり、釜山市の北東部に位置し、北部は蔚山市の蔚州郡、南部は釜山市の海雲台区、金井区、西部は梁山市と接し、東部は東海岸に面する。人口は16万0113人(2017年8月)[1]釜山市蔚山市というふたつの大都市に挟まれる位置関係にあり、歴史的にも両地域や、慶尚南道梁山市の間を行ったり来たりする形で所属していたが、1995年に慶尚南道梁山市から釜山市に編入され、現在は釜山市の一部となっている。主要な観光地には、海岸沿いの岩場にて高麗時代の1376年に創建された海東龍宮寺(해동용궁사)や、地場食材の集まる機張市場(기장시장)、カタクチイワシの名産地として知られる大辺港(대변항)などがある。2017年に入って「ヒルトン釜山(힐튼 부산)」、「アナンティペントハウス海雲台(아난티 펜트하우스 해운대)」といった高級宿泊施設がオープンしたことで、釜山市郊外というだけでなく機張郡を中心とした観光へも期待が高まっている。ソウル(南部ターミナル)から機張(機張市外バスターミナル)までは高速バスで約4時間30分の距離。釜山市内の南浦洞、釜山駅、海雲台といった主要地域からは1003番の市内バスで1時間~1時間30分程度。鉄道では釜田駅、東莱駅、新海雲台駅などから機張駅まで東海線が走っている。

  • 機張市場
機張市場(キジャンシジャン、기장시장)は、機張邑大羅里(기장읍 대라리)に位置する伝統市場。周辺の港で水揚げされる新鮮な海産物を中心に、機張の名産であるワカメやコンブ、煮干しといった乾物類を豊富に扱う。市場の一角にはズワイガニ(대게)やタラバガニ(왕게)を専門とする飲食店が並んでおり、市場の名物になっている。

食文化の背景

 
大辺港

機張郡は釜山市の北東部に位置し、東部は東海岸に面する。釜山市は韓国の南東部にあって東海岸と南海岸の境界をまたぐ形になっているが、東海岸の最南部にあたるのが機張郡である。機張邑大辺里(기장읍 대변리)には釜山市に3ヶ所ある国家漁港のひとつ大辺港があり、カタクチイワシ、ワカメ、コンブが名産として知られる。港の周辺にはこれらの乾物を扱う店が集まっており、また、春には機張カタクチイワシ祭り(기장멸치축제)や[2]、機張ワカメ・コンブ祭り(기장미역 다시마축제)が開催されて賑わう[3]。ほかにも機張邑蓮花里(기장읍 연화리)の新岩港(신암항)はマアナゴ(붕장어)や、日光面(일광면)のバフンウニ(앙장구)といった名物があり、機張沖でとれるヌタウナギ(곰장어)は全国的な知名度を誇る。海産物以外では鉄馬面(철마면)に韓牛(한우)を専門とする焼肉店が密集しており、秋には鉄馬韓牛プルコギ祭り(철마한우불고기축제)が開催される[4]

代表的な料理

東海岸に面した港町であり、名産であるヌタウナギ(곰장어)や、バフンウニ(말똥성게)を使用した料理が有名である。内陸部の鉄馬面(철마면)には韓牛(한우)を専門とする焼肉店が集まる。

コムジャンオグイ(ヌタウナギ焼き/곰장어구이)

コムジャンオグイはヌタウナギ焼き(「コムジャンオグイ(ヌタウナギ焼き/곰장어구이)」の項目も参照)。コムジャンオがヌタウナギ、グイ(구이)は焼き物の総称。機張郡の名物料理であり、ヌタウナギを藁の火(짚불)で焼いたチップルコムジャンオグイが有名。全体が真っ黒になるが、皮を剥くと白い身が顔を出す。これをキルムジャン(ゴマ油に塩を混ぜたタレ、기름장)につけたり、サンチュ(상추)やエゴマの葉(깻잎)といった葉野菜に包んで味わう。また、ヌタウナギの食べ方としては、皮を剥いてぶつ切りにしたものを鉄板で炒める場合もあり、塩で味付けをしたものをソグムグイ(소금구이)、薬味ダレに絡めて炒めたものをヤンニョムグイ(양념구이)と呼ぶ。機張邑侍郎里(기장읍 시랑리)一帯に専門店が集まる。

アンジャングバプ(ウニ丼/앙장구밥)

 
アンジャングバプ

アンジャングバプは、ウニ丼。アンジャング(앙장구)は慶尚道方言でウニ(성게)、中でもバフンウニ(말똥성게)を指す。バプ()はごはん。アンジャングピビムパプ(앙장구 비빔밥)とも呼ぶ。器に盛り付けたごはんの上に、生のバフンウニを載せ、刻み海苔、ゴマ油などを加えてかき混ぜて食べる。バフンウニの旬は11~2月までであり、後半の2月になると若干の苦みが出てくる。冬場に食べるのが望ましいが、冷凍したものを通年で提供する店もある。あるいは有名店である「ミチョン食堂(미청식당)」のように、5~8月が旬のムラサキウニ(보라성게)と組み合わせ、夏冬2度とシーズンを迎えるように調理する例もある。

ハヌプルコギ(韓牛の牛焼肉/한우불고기)

ハヌプルコギは韓牛(한우)の牛焼肉(「プルコギ(牛焼肉/불고기)」の項目も参照)。鉄馬面(철마면)には韓牛(한우)を専門とする焼肉店が集まっており、一帯を鉄馬韓牛村(철마한우촌)と呼ぶ。

代表的な特産品

 
カタクチイワシの刺身和えと焼き魚

大辺港で水揚げされるカタクチイワシ(멸치)や、養殖の盛んなワカメ(미역) 、コンブ(다시마)が特産品として知られる。

カタクチイワシ(멸치)

機張邑大辺里(기장읍 대변리)に位置する大辺港(テビョナン、대변항)はカタクチイワシの水揚げが多く、シーズンである毎年4月には機張カタクチイワシ祭り(기장 멸치축제)が開催される。近隣の飲食店では、ミョルチフェ(カタクチイワシと生野菜の刺身和え、멸치회)、ミョルチグイ(カタクチイワシの焼き魚、멸치구이)といった料理を提供し、露店でもこれらを扱う。また、大辺港には塩辛を販売する専門店が多く、韓国ではキムチを漬けるのにも欠かせないミョルチジョッ(カタクチイワシの塩辛、멸치젓)、ミョルチエクチョッ(カタクチイワシの魚醤、멸치액젓)を生産、販売している。シーズンにはとれたカタクチイワシにその場で塩をまぶして販売する姿も見られる。大辺港におけるカタクチイワシの旬は春と秋に2度あり、春にとれるものをポムミョルチ(春のカタクチイワシ、봄멸치)、秋にとれるものをカウルミョルチ(秋のカタクチイワシ、가을멸치)と呼び分ける。

ワカメ(미역)

 
ワカメやコンブを扱う大辺港の乾物店

機張産のワカメ(미역)は名産として高く評価されている。大辺港や機張市場に専門店があり、乾燥させたワカメが販売されている。養殖ワカメのほか、岩肌に自生する天然のワカメも有名であり、こちらは岩ワカメ(돌미역)と呼んで区別される。同様に乾燥メカブ(미역귀)も扱う。

コンブ(다시마)

機張ではコンブ(다시마)の養殖が盛んである。ワカメと同じく大辺港や機張市場に専門店があり、乾燥コンブが販売されている。

代表的な酒類・飲料

マッコリ

鼎冠邑茅田里(정관읍 모전리)にある「トンベク醸造(동백양조)」、「鼎冠濁酒製造場(정관탁주제조장)」がマッコリを生産している。

クラフトビール

AKITU
AKITU(아키투)は、機張邑万化里の「AKITU Brewing(아키투 브루잉)」が生産するクラフトビール。AKITUとはシュメール人が行った新年の祝祭に由来する。

老舗

  • 機張コムジャンオ(기장곰장어)
1929年創業のコムジャンオグイ(ヌタウナギ焼き/곰장어구이)専門店。ヌタウナギを藁焼きにするチップルコムジャンオ(짚불곰장어)を考案した店とされる。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • 南港フェッチプ(남항횟집)
住所:釜山市機張郡機張邑機張海岸路572(大辺里447-6)
住所:부산시 기장군 기장읍 기장해안로 572(대변리 447-6)
電話:051-721-2302
料理:ミョルチフェ、ミョルチグイ
  • ミチョン食堂(미청식당)
住所:釜山市機張郡日光面機張海岸路1303(三聖里715-5)
住所:부산시 기장군 일광면 기장해안로 1303(삼성리 715-5)
電話:051-721-7050
料理:アンジャングバプ

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2007年1月に初めて機張郡を訪れた。釜山在住のご家族を訪ね、お世話なったご夫婦と、その娘さん夫婦、4歳のお孫さんに混ざりながら、家族旅行のような雰囲気で海東龍宮寺を観光した。4歳のお孫さんからは「サムチョン(叔父・伯父、삼촌)」と呼ばれ、親戚のおじさんというポジションを満喫した。

脚注

  1. 주민등록 인구통계 、行政安全部ウェブサイト、2017年9月19日閲覧
  2. 기장미역다시마축제 、機張郡文化観光、2017年11月14日閲覧
  3. 기장멸치축제 、機張郡文化観光、2017年11月14日閲覧
  4. 철마한우불고기축제 、機張郡文化観光、2017年11月14日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目