尚州市の料理

提供: 韓食ペディア
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この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

尚州市(サンジュシ、상주시)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは尚州市の料理、特産品について解説する。

ハンゲマウル

地域概要

尚州市は慶尚北道の北西部に位置し、聞慶市、醴泉郡、義城郡、亀尾市、金泉市、忠清北道の永同郡、沃川郡、報恩郡、槐山郡と接する。人口は10万1962人(2016年11月)[1]。市の西部には小白山脈が連なり、忠清北道の報恩郡、槐山郡へまたがる俗離山(속리산)は景勝地としても有名。東部の洛東江(낙동강)沿いには咸昌平野と尚州平野が広がり、古くからの穀倉地帯として栄えた。代表的な観光地としては、俗離山の展望スポットである文蔵台(문장대)や、洛東江に臨み洛東江第1景と称えられる擎天台(경천대)、尚州自転車博物館などがある。ソウル(高速ターミナル、または東ソウル総合ターミナル)から尚州総合バスターミナルまでは高速バスで約2時間30分の距離。

食文化の背景

星州は朝鮮時代に多くの両班(支配階級)が集姓村を作った。この星州を発祥地とする本貫は他地域と比較しても群を抜いて多く、星州李氏、星州裵氏、星州都氏、星州(星山)呂氏など28姓氏を数える。その代表が2007年に重要民俗文化財第255号にも指定された月恒面大山里(월항면 대산리)のハンゲマウルである。こうした両班の食文化が現代にも伝えられており、祭祀料理をもとにしたコノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜)はその象徴的な存在だと言える。また、星州は全国的に有名なマクワウリ(참외)名産地であり、農林部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第10号として星州マクワウリ(성주참외)が登録されている[2]。星州では大半の農家がマクワウリを栽培しており、その生産量は実に全国の7割を超える。そのほか、スイカ、リンゴ、ナシ、完熟トマト、ミニトマト、キュウリなどの農作物も栽培されている。

代表的な料理

祭祀料理をもとにしたコノムルチムや、キジ肉を使った料理が名物である。

コノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜)

コノムルチム
星州では祭祀膳にコノムル(건어물)と呼ばれる干物類を多く捧げる。これを祭祀後にまとめて醤油で甘辛く煮付けたものをコノムルチムと呼ぶ。チム()は蒸し煮の総称。有名食堂である「カムコル食堂(감골식당)」ではコノムルチムを看板料理のひとつとしており、干しダラ(북어)、アカエイ(가오리)、スルメイカ(오징어)、鶏肉、鶏の玉ひも(排卵前の卵と卵管)、昆布といった食材を煮込んで提供する。

クォンシャブシャブ(キジ肉のシャブシャブ/꿩샤브샤브)

星州にはキジ肉料理を出す店が多く、クォンシャブシャブ(キジ肉のしゃぶしゃぶ、꿩샤브샤브)や、クォンタン(キジ肉の鍋、꿩탕)クォンマンドゥ(キジ肉餃子、꿩만두)といった料理を味わえる。

代表的な特産品

かつてはスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が盛んになった。盆地型で降水量が少なく、日射量が多いことからマクワウリ栽培に向いているとされる。

チャメ(マクワウリ/참외)

市場で売られている星州産マクワウリ
星州はかつてスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が主流となった。星州の気候条件などがマクワウリ栽培に向いていたのも要因であるが、シーズンに1度しか収穫できないスイカに比べて、マクワウリは最大で3~4回収穫できるメリットが農家にとっては大きかったとされる(八田靖史の取材記録より、2016年10月26日)。現在では全国に流通する約7割のマクワウリを星州で生産している[3]
  • 品種
現在の韓国で栽培されているマクワウリは大半がクムサラギ(금싸라기)の系統であり、もともとは日本品種の銀泉を改良したものである。星州においてもクムサラギ系統のマクワウリが主流として栽培されている。
  • 栽培方法
病害虫を防ぐ目的から、カボチャに接ぎ木をして栽培する方法が主流である。もっともはやい2月末の収穫を目指す場合、10~11月に種をまき、接ぎ木をしたうえで12~1月に畑へと植え替える。
本来は4~6月がいちばんの旬であるが、近年は出荷が早まっており、2月末頃から市場に出回る。9月から10月にはすべての出荷が終わり、貯蔵がきかないこともあって冬場に出回ることはない。
  • 輸出
星州では日本、シンガポール、香港、マレーシアなどにマクワウリを輸出している。中でも日本への輸出がもっとも多く、2015年は168.4トンに上っている[4]
  • 関連施設
マクワウリ生態学習院
玉星里(옥성리)には星州農業技術センターに併設されて「マクワウリ生態学習院(참외생태학습원)」がある。ここではマクワウリの栽培方法や、品種改良の歩み、歴史について学ぶことができる。また、郡内各地にある流通センターには、シーズンになると簡易販売場が設けられ、そこでマクワウリを購入することもできる。
  • 利用
マクワウリの水飴を用いた伝統菓子
星州ではマクワウリを使った加工食品作りも行われている。星山里(성산리)にある「スミダム(수미담)」では、マクワウリを煮詰めて水飴を作り、それを販売するとともにこれを利用した伝統菓子(한과)の生産も行っている。また、白雲里(백운리)の農家レストラン「ミル(밀)」では、マクワウリの漬物(장아찌)や、マクワウリ入りのビビンバ(비빔밥)蒸しパン(찐빵)などを作るとともに、マクワウリで甘味をつけた酢、水飴、コチュジャンなどを料理の味付けに利用している。
  • スミダム(수미담)
住所:慶尚北道星州郡大家面星山2キル95-33(星山里1222-4)
住所:경상북도 성주군 성주읍 성산2길 95-33(성산리 1222-4)
電話:054-931-6464

トゥンギョジャン(大麦の糠味噌/등겨장)

大麦の糠を原料に作った促成味噌の一種。シグムジャン(시금장)とも呼ぶ。かつて春窮期に味噌やコチュジャンの代替として即席で作った。主に包み味噌(쌈장)や、混ぜ味噌(비빔장)、チゲ(찌개)用として使われる。

代表的な酒類・飲料

星州郡のマッコリ

星州には伽泉醸造場の「星州伽耶山伽泉米生マッコリ(성주 가야산 가천 쌀생막걸리)」や、星州濁酒醸造場の「龍巌マッコリ(용암막걸리)」がある。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • カムコル食堂(감골식당)
住所:慶尚北道星州郡星州邑京山キル9-3(京山里 613-1)
住所:경상북도 성주군 성주읍 경산길 9-3(경산리 613-1)
電話:054-933-2416
料理:コノムルチム
  • ミル(밀)
住所:慶尚北道星州郡修倫面徳雲路1566(白雲里1038)
住所:경상북도 성주군 수륜면 덕운로 1566(백운리 1038)
電話:054-931-2660
料理:韓定食、ビビンバ

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月に初めて星州郡を訪れた。慶尚北道広報大使が取材、執筆する観光冊子『GB-Story Vol.3』にはこの時の取材をもとに、チャメやコノムルチムを中心とした話が掲載されている。

脚注

  1. 주민등록 인구통계 、行政自治部ウェブサイト、2016年12月23日閲覧
  2. 성주참외 、国立農産物品質管理院ウェブサイト、2016年12月22日閲覧
  3. 주요작물재배현황 、星州郡ウェブサイト、2016年12月23日閲覧
  4. 농산물 수출 실적 、星州郡ウェブサイト、2016年12月23日閲覧

外部リンク

関連項目