「大邱市の料理」の版間の差分

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== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
 
[[ファイル:17081412.JPG|thumb|300px|大邱国際空港]]
 
[[ファイル:17081412.JPG|thumb|300px|大邱国際空港]]
大邱市(テグシ、대구시)は韓国の中東部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。北部、東部、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]と接し、南部は[[慶尚南道の料理|慶尚南道]]と接する。人口は248万1489人(2017年7月)で、韓国の都市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]、[[仁川市の料理|仁川市]]に次いで4番目に多い<ref>[http://rcps.egov.go.kr:8081/jsp/stat/ppl_stat_jf.jsp 주민등록 인구통계] 、行政自治部ウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。1981年に直轄市(その後、1995年に広域市)として独立するまでは[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]に属し、慶尚北道庁も2016年2月までは大邱市に置かれていた(現在は[[安東市の料理|安東市]]に位置)。慶尚道全体の中間的な位置にあって交通の利便性に富むことから、1601年に慶尚監営(当時の道庁)が置かれるなど、地域の要衝として発展した。地理的には太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)、小白山脈(ソベクサンメク、소백산맥)に東西を挟まれた位置にあり、北部に八公山(パルゴンサン、팔공산)、南部に最頂山(チェジョンサン、최정산)、琵瑟山(ピスルサン、비슬산)がそびえる盆地型の地形である。一帯を大邱盆地(テグブンジ、대구분지)とも呼ぶ。20世紀初頭からは綿花の栽培が盛んであったことから近代的な繊維産業で栄え、1905年に京釜線が全線開通したことで[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]と結ばれると、経済や物流の中心としても大きな役割を担うに至った。人口こそ1999年7月以降、[[仁川市の料理|仁川市]]へ抜かれて4番手ではあるものの、大邱市を指して「韓国第3の都市」と表現することは珍しくない。主要な観光地には、韓方市場の大邱薬令市(대구약령시)、繊維製品の販売で大きく発展した西門市場(서문시장)、20世紀初頭の歴史を現代に残す大邱近代通り(대구근대골목)、代表的な繁華街の東城路(동성로)、北部にそびえる八公山などがある。ソウルから大邱市までのアクセスは、ソウル駅から高速鉄道のKTXで東大邱駅まで1時間40分前後。ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから高速バスで東大邱まで3時間30分程度。また、大邱国際空港(대구국제공항)までは、成田、関西、福岡、沖縄、札幌、鹿児島(2018年10月30日より)、熊本(2018年11月29日より)の各空港から直行便が出ている。大邱国際空港から中心部の東大邱駅までは4kmほどの距離と近く、また東大邱駅に隣接する東大邱複合乗換センター(동대구 복합환승센터)からは慶尚道地域を中心とした各地域への市外バスが集まるため、地方都市への新たな玄関口といった役割も注目されている。
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大邱市(テグシ、대구시)は韓国の中東部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。北部、東部、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]と接し、南部は[[慶尚南道の料理|慶尚南道]]と接する。人口は237万9086人(2023年7月)で、韓国の市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]、[[仁川市の料理|仁川市]]に次いで4番目に多い<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2023年8月25日閲覧</ref>。面積は1498平方キロ(2023年7月)で、特別市、広域市の中ではもっとも広い<ref>[https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/1070787.html 군위군, 내년 7월부터 대구시로 편입…법안 본회의 통과] 、ハンギョレ新聞(2022年12月8日記事)、2023年8月25日閲覧</ref>。1981年に直轄市(その後、1995年に広域市)として独立するまでは[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]に属し、は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]庁も2016年2月までは大邱市に置かれていた(現在は[[安東市の料理|安東市]]に位置)。慶尚道全体の中間的な位置にあって交通の利便性に富むことから、1601年に慶尚監営(当時の道庁)が置かれるなど、地域の要衝として発展した。地理的には太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)、小白山脈(ソベクサンメク、소백산맥)に東西を挟まれた位置にあり、北部に八公山(パルゴンサン、팔공산)、南部に最頂山(チェジョンサン、최정산)、琵瑟山(ピスルサン、비슬산)がそびえる盆地型の地形である。一帯を大邱盆地(テグブンジ、대구분지)とも呼び、大邱市の西部には洛東江(ナクトンガン、낙동강)が北から南へと流れる。20世紀初頭からは綿花の栽培が盛んであったことから近代的な繊維産業で栄え、1905年に京釜線が全線開通したことで[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]と結ばれると、経済や物流の中心としても大きな役割を担うに至った。人口こそ1999年7月以降、[[仁川市の料理|仁川市]]へ抜かれて4番手ではあるものの、大邱市を指して「韓国第3の都市」と表現することは珍しくない。主要な観光地には、韓方市場の大邱薬令市(대구약령시)、繊維製品の販売で大きく発展した西門市場(서문시장)、20世紀初頭の歴史を現代に残す大邱近代通り(대구근대골목)、代表的な繁華街の東城路(동성로)、北部にそびえる八公山などがある。ソウルから大邱市までのアクセスは、ソウル駅から高速鉄道のKTXで東大邱駅まで1時間40分前後。ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから高速バスで東大邱まで3時間30分程度。大邱国際空港から中心部の東大邱駅までは4kmほどの距離と近く、また東大邱駅に隣接する東大邱複合乗換センター(동대구 복합환승센터)からは慶尚道地域を中心とした各地域への市外バスが集まるため、地方都市への新たな玄関口といった役割も注目されている。
  
 
*大邱薬令市
 
*大邱薬令市
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[[ファイル:17081402.JPG|thumb|300px|西門市場]]
 
[[ファイル:17081402.JPG|thumb|300px|西門市場]]
 
:西門市場(ソムンシジャン、서문시장)は中区大新洞に位置する常設市場。1601年に慶尚道の監営が大邱に置かれると人々の往来が盛んになり、1669年頃にそれまで大邱邑城の北門にあった機能を西門の外に移すと、これが西門市場の前身となった<ref name="market">[http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=1285441&cid=40942&categoryId=32164 서문시장] 、斗山百科、2017年8月14日閲覧</ref>。その規模は慶尚道地域最大であり、朝鮮時代には平安道の平壌場(평양장)、忠清道の江景場(강경장)と並んで、大邱場(대구장)は朝鮮3大市場と称された<ref name="market"></ref>。1924年に朝鮮総督府が編纂した『朝鮮の市場』という書籍にも「古来平壌、大邱、江景の市場は朝鮮の三大市場と称せられ」との記述があり、同書内ではこれら3ヶ所の市場が主要市場として章立てて紹介されている<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983970/91?viewMode= 朝鮮の市場] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号91、P129)、2017年10月27日閲覧</ref>。その後、1920年代に入って市街地が拡大したことで現在の中区大新洞へと再度移り、1922年に公設市場としての許可を受けた。綿花の栽培が盛んだった大邱では繊維産業が栄えたため、西門市場においても衣類、寝具などの扱いが多く、現在もこれらの店が多く営業している。また、後述するように西門市場は麺([[국수]])の生産でも中心的な役割を担い、現在も市場内には[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)]]や、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]といった麺料理を提供する屋台、飲食店が多い([[大邱市の料理#麺(국수)|代表的な特産品/麺(국수)]]参照)。2016年6月には夜市場が始まり、大勢の観光客で賑わっている<ref>[http://www.nightseomun.com/html/base.php?url=html_04 야시장소개] 、西門市場夜市場ウェブサイト、2017年8月14日閲覧</ref>。
 
:西門市場(ソムンシジャン、서문시장)は中区大新洞に位置する常設市場。1601年に慶尚道の監営が大邱に置かれると人々の往来が盛んになり、1669年頃にそれまで大邱邑城の北門にあった機能を西門の外に移すと、これが西門市場の前身となった<ref name="market">[http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=1285441&cid=40942&categoryId=32164 서문시장] 、斗山百科、2017年8月14日閲覧</ref>。その規模は慶尚道地域最大であり、朝鮮時代には平安道の平壌場(평양장)、忠清道の江景場(강경장)と並んで、大邱場(대구장)は朝鮮3大市場と称された<ref name="market"></ref>。1924年に朝鮮総督府が編纂した『朝鮮の市場』という書籍にも「古来平壌、大邱、江景の市場は朝鮮の三大市場と称せられ」との記述があり、同書内ではこれら3ヶ所の市場が主要市場として章立てて紹介されている<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983970/91?viewMode= 朝鮮の市場] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号91、P129)、2017年10月27日閲覧</ref>。その後、1920年代に入って市街地が拡大したことで現在の中区大新洞へと再度移り、1922年に公設市場としての許可を受けた。綿花の栽培が盛んだった大邱では繊維産業が栄えたため、西門市場においても衣類、寝具などの扱いが多く、現在もこれらの店が多く営業している。また、後述するように西門市場は麺([[국수]])の生産でも中心的な役割を担い、現在も市場内には[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)]]や、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]といった麺料理を提供する屋台、飲食店が多い([[大邱市の料理#麺(국수)|代表的な特産品/麺(국수)]]参照)。2016年6月には夜市場が始まり、大勢の観光客で賑わっている<ref>[http://www.nightseomun.com/html/base.php?url=html_04 야시장소개] 、西門市場夜市場ウェブサイト、2017年8月14日閲覧</ref>。
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=== 達城郡の料理 ===
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達城郡(タルソングン、달성군)は、大邱市の南西部に位置する地域。達城郡の料理、特産品については本ページに含むとともに、「[[達城郡の料理]]」でもまとめる。
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=== 軍威郡の料理 ===
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軍威郡(クヌィグン、군위군)は、大邱市の北部に位置する地域。2023年7月1日に[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]から大邱市に編入された。軍威郡の料理、特産品については本ページに含むとともに、「[[軍威郡の料理]]」でもまとめる。
  
 
== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
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== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
[[ファイル:17081403.JPG|thumb|300px|大邱式ユッケジャン]]
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[[ファイル:23010242.JPG|300px|thumb|ナプチャクマンドゥ]]
大邱地域を代表する料理は「大邱10味(대구십미)」として選定されている。2006年に大邱市が専門家らの意見を総合して作成したもので、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]、マクチャングイ(ギアラ焼き、豚の直腸焼き、[[막창구이]])、ムンティギ(牛刺身、[[뭉티기]])、[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]、ノンメギメウンタン(ナマズの辛口鍋、[[논메기매운탕]])、[[ポップルコギ(フグの炒め焼き/복불고기)|ポゴプルコギ(フグの炒め焼き/복어불고기)]]、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|ヌルングクス(韓国式の手打ちうどん、누른국수)]]、ムチムフェ(刺身和え、[[무침회]])、ヤキウドン(辛口焼きうどん、[[야끼우동]])、ナプチャクマンドゥ(薄焼餃子、[[납작만두]])の10種類である<ref>[http://tour.daegu.go.kr/PageLink.do?ret=home/kor/sleepneat/sleepneat 대구가 자랑하는 10가지 별미] 、大邱観光案内ウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。
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大邱地域を代表する料理は「大邱10味(대구십미)」として選定されている。2006年に大邱市が専門家らの意見を総合して作成したもので、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]、マクチャングイ(ギアラ焼き、豚の直腸焼き、[[막창구이]])、ムンティギ(牛刺身、[[뭉티기]])、[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]、ノンメギメウンタン(ナマズの辛口鍋、[[논메기매운탕]])、[[ポップルコギ(フグの炒め焼き/복불고기)|ポゴプルコギ(フグの炒め焼き/복어불고기)]]、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|ヌルングクス(韓国式の手打ちうどん、누른국수)]]、ムチムフェ(刺身和え、[[무침회]])、ヤキウドン(辛口焼きうどん、[[야끼우동]])、[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]の10種類である<ref>[http://tour.daegu.go.kr/PageLink.do?ret=home/kor/sleepneat/sleepneat 대구가 자랑하는 10가지 별미] 、大邱観光案内ウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。
  
 
=== ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장) ===
 
=== ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장) ===
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[[ファイル:17081403.JPG|thumb|300px|大邱式ユッケジャン]]
 
:ユッケジャンは牛肉を煮込んだ辛口のスープ。他地域のユッケジャンとは異なり、大きく切った牛肉と、とろとろになるまで煮込んだ長ネギの2種が具材の大半を占める。少量の芋茎や大根を入れることもあるが、牛肉のうま味と長ネギから出る甘味が味の要となる。ごはんを添えて提供するのが一般的だが、かわりに麺を入れて食べるユッククス([[육국수]])という派生メニューもある。
 
:ユッケジャンは牛肉を煮込んだ辛口のスープ。他地域のユッケジャンとは異なり、大きく切った牛肉と、とろとろになるまで煮込んだ長ネギの2種が具材の大半を占める。少量の芋茎や大根を入れることもあるが、牛肉のうま味と長ネギから出る甘味が味の要となる。ごはんを添えて提供するのが一般的だが、かわりに麺を入れて食べるユッククス([[육국수]])という派生メニューもある。
  
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=== チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비) ===
 
=== チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비) ===
[[ファイル:17081406.JPG|thumb|300px|チムカルビ]]
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[[ファイル:22122827.JPG|thumb|300px|チムカルビ]]
 
:チムカルビは辛い牛カルビの辛い煮物(「[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]」の項目も参照)。ぶつ切りにした牛カルビを甘辛く煮込んだもので、調理法としては[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]ともほぼ共通するが、みじん切りのニンニクや粉唐辛子のたくさん入る刺激的な味付けが特徴的である。1972年創業の元祖店「鳳山チムカルビ(봉산찜갈비)」によれば、1970年代の初めに地下鉄工事が行われた際、近隣で働いていた労働者のリクエストに応える形で、辛く濃厚な味付けに仕上がっていったという(八田靖史の取材記録より、2011年12月11日)。アルマイトのチゲ用鍋([[양은 냄비]])で調理、提供され、残ったタレにはごはんを入れて混ぜて食べるのも定番である。
 
:チムカルビは辛い牛カルビの辛い煮物(「[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]」の項目も参照)。ぶつ切りにした牛カルビを甘辛く煮込んだもので、調理法としては[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]ともほぼ共通するが、みじん切りのニンニクや粉唐辛子のたくさん入る刺激的な味付けが特徴的である。1972年創業の元祖店「鳳山チムカルビ(봉산찜갈비)」によれば、1970年代の初めに地下鉄工事が行われた際、近隣で働いていた労働者のリクエストに応える形で、辛く濃厚な味付けに仕上がっていったという(八田靖史の取材記録より、2011年12月11日)。アルマイトのチゲ用鍋([[양은 냄비]])で調理、提供され、残ったタレにはごはんを入れて混ぜて食べるのも定番である。
  
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;ヤンニョムオデン(양념오뎅)
 
;ヤンニョムオデン(양념오뎅)
 
:ヤンニョムオデンは辛口のオデン(「[[オデン(おでん/오뎅)]]」の項目も参照)。パルガンオデン(赤いオデン、[[빨간오뎅]])とも呼ぶ。ワタリガニなどを加えた魚介ダシで、串に刺したオムク(魚の練り物、[[어묵]])を煮込んで作る。このとき大量の大豆モヤシも一緒に煮込み、オムクと併せて皿に盛り付けて提供する。同様の料理は[[忠清北道の料理|忠清北道]][[堤川市の料理|堤川市]]でも名物として知られる。
 
:ヤンニョムオデンは辛口のオデン(「[[オデン(おでん/오뎅)]]」の項目も参照)。パルガンオデン(赤いオデン、[[빨간오뎅]])とも呼ぶ。ワタリガニなどを加えた魚介ダシで、串に刺したオムク(魚の練り物、[[어묵]])を煮込んで作る。このとき大量の大豆モヤシも一緒に煮込み、オムクと併せて皿に盛り付けて提供する。同様の料理は[[忠清北道の料理|忠清北道]][[堤川市の料理|堤川市]]でも名物として知られる。
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;ネンミョン(냉면)
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:ネンミョンは冷麺(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。大邱市内には老舗の[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]専門店が点在し、朝鮮戦争によって北部から避難してきた人たちによってその歴史が始まっている。1950年6月に朝鮮戦争が始まると、当初は北側が大きく南へと戦線を押し下げ、南側では大邱市の西方および北方を流れる洛東江を最終的な防御線と定めるに至る。[[ソウル市の料理|ソウル]]を失ったことから首都機能は一時、[[大田市の料理|大田市]]を経て大邱市へと移り、1950年7月16日~8月17日まで大邱市が臨時首都となった後、さらに[[釜山市の料理|釜山市]]へ移った。この前後、大邱市へは北部からの避難民が多く移り住んでおり、[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]の本場である[[北朝鮮の料理|平壌]]の出身者も多く含まれた。1951年に創業した中区校洞(チュング キョドン、중구 교동)の「江山麺屋(강산면옥)」と、1953年に[[釜山市の料理|釜山市]]で創業したのち1969年に大邱市へと移転した中区公平洞(チュング コンピョンドン、중구 공평동)の「釜山安麺屋(부산안면옥)」はいずれも創業者が[[北朝鮮の料理|平壌]]出身であり、これに「釜山安麺屋」から分かれて1960年代後半に創業した中区桂山洞(チュング ケサンドン、중구 계산동)の「大同麺屋(대동면옥)」を加えて、3店舗を「大邱3大冷麺」と称することも多い。
  
 
== 代表的な特産品 ==  
 
== 代表的な特産品 ==  
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*カルジェビ
 
*カルジェビ
:カルジェビ([[칼제비]])は[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|カルグクス]]と、[[スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)]]を掛け合わせた料理。西門市場(ソムンシジャン、서문시장)の名物料理である。
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:カルジェビ([[칼제비]])は[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|カルグクス]]と、[[スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)]]を掛け合わせた料理。西門市場の名物料理である。
  
 
*ウドンプルコギ
 
*ウドンプルコギ
 
[[ファイル:17081408.JPG|thumb|300px|ウドンプルコギ]]
 
[[ファイル:17081408.JPG|thumb|300px|ウドンプルコギ]]
:大邱駅から達城公園に至る北城路(プクソンノ、북성로)一帯には、夜になると駐車場などの空いたスペースにテント屋台が出る。どの店でも[[ウドン(うどん/우동)]]と、[[テジプルコギ(豚肉の味付け焼肉/돼지불고기)]]を提供することから、両者を合わせてウドンプルコギ([[우동불고기]])と呼ぶ。屋台の発祥は1970年代からで、近隣にうどんの製麺工場があったことから名物となった。当初はウドンとともに[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)]]を提供していたが、徐々に薄切りの豚肉を網焼きにするスタイルとなったという。現在は10軒ほどが営業しているが、近隣に高層アパートができることから煙や騒音が問題となり、2017年9月頃をメドに建物内への移転が進められている(八田靖史の取材記録より、2017年6月24日)。北城路は日本統治時代に日本人が多く住んでいた地域でもあり、当時の地図を見ると数軒のうどん店が存在するのを確認できる<ref>「昭和十年代大邱府本町小学校区之図」より。</ref>。
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:大邱駅から達城公園(タルソンゴンウォン、달성공원)に至る北城路(プクソンノ、북성로)一帯には、夜になると駐車場などの空いたスペースにテント屋台が出る。どの店でも[[ウドン(うどん/우동)]]と、[[テジプルコギ(豚肉の味付け焼肉/돼지불고기)]]を提供することから、両者を合わせてウドンプルコギ([[우동불고기]])と呼ぶ。屋台の発祥は1970年代からで、近隣にうどんの製麺工場があったことから名物となった。当初はウドンとともに[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)]]を提供していたが、徐々に薄切りの豚肉を網焼きにするスタイルとなったという。現在は10軒ほどが営業しているが、近隣に高層アパートができることから煙や騒音が問題となり、2017年9月頃をメドに建物内への移転が進められている(八田靖史の取材記録より、2017年6月24日)。北城路は日本統治時代に日本人が多く住んでいた地域でもあり、当時の地図を見ると数軒のうどん店が存在するのを確認できる<ref>「昭和十年代大邱府本町小学校区之図」より。</ref>。
  
 
=== リンゴ(사과) ===
 
=== リンゴ(사과) ===
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== 各地域の料理 ==
 
== 各地域の料理 ==
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;軍威郡(군위군)
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*ヌングム(東洋種のリンゴ/능금)缶渓面
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*メギメウンタン(ナマズの辛い鍋/메기매운탕)孝令面巨梅里
 
;南区(남구)
 
;南区(남구)
 
*ヌルングクス(韓国式の手打ちウドン/누른국수)大明洞
 
*ヌルングクス(韓国式の手打ちウドン/누른국수)大明洞
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*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
 
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
*[https://itunes.apple.com/us/app/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E9%A3%9F%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%BE%9E%E5%85%B8/id1220010846?l=ja&ls=1&mt=8 韓国語食の大辞典アプリ版](八田靖史制作の韓国料理専門辞典)
 
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
 
{{DEFAULTSORT:てくしのりようり}}
 
{{DEFAULTSORT:てくしのりようり}}
 
*[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]
 
*[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]
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*[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]
 
*[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]
 
*[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]
 
*[[テジプルコギ(豚肉の味付け焼肉/돼지불고기)]]
 
*[[テジプルコギ(豚肉の味付け焼肉/돼지불고기)]]
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