「ヤックァ(蜜入りの揚げ菓子/약과)」の版間の差分

 
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*日本語訳
 
*日本語訳
:端的な訳として定着した事例は確認できず、「〇〇な揚げ菓子」「〇〇な伝統菓子」と説明調の訳や、似た菓子になぞらえて「韓国式ドーナツ」「蜂蜜クッキー」とする訳が見られる。「伝統的な」「小麦粉生地の」「花模様の」「蜜入りの」「蜂蜜入りの」といった補足を加えることも多い。本辞典では当初「小麦粉生地の揚げ菓子」を用いていたが、生地にもち粉を加える調理法があることや、名称の由来に蜂蜜がかかわっていることなどを考慮して「蜜入りの揚げ菓子」と変更した(2023年8月9日)。「蜂蜜入りの~」としなかった理由は、蜂蜜のかわりに水飴や溶かした砂糖を加える調理法もあるからである。
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:端的な訳として定着した事例は確認できず、「〇〇な揚げ菓子」「〇〇な伝統菓子」といった説明調の訳や、似た菓子になぞらえて「韓国式ドーナツ」「蜂蜜クッキー」などとする訳が見られる。「伝統的な」「小麦粉生地の」「花模様の」「蜜入りの」「蜂蜜入りの」といった補足を加えることも多い。本辞典では当初「小麦粉生地の揚げ菓子」を用いていたが、生地にもち粉を加える調理法があることや、名称の由来に蜂蜜がかかわっていることなどを考慮して「蜜入りの揚げ菓子」と変更した(2023年8月9日)。「蜂蜜入りの~」としなかった理由は、蜂蜜のかわりに水飴や溶かした砂糖を加える調理法もあるからである。
  
 
== 概要 ==
 
== 概要 ==
 
[[ファイル:22041306.JPG|thumb|300px|伝統茶店で提供されるヤックァ(写真右)]]
 
[[ファイル:22041306.JPG|thumb|300px|伝統茶店で提供されるヤックァ(写真右)]]
小麦粉に蜂蜜、ゴマ油、酒、ショウガ汁などを混ぜて生地を作り、花模様などに成形して油で揚げ、全体に蜂蜜や水飴を絡める。主材料にもち粉を加える場合や、形状を四角形や、半月型に仕立てたもの、ナツメや松の実などを飾りとしてあしらったものなどもある。韓国の伝統菓子としてはもっとも代表的なひとつであり、著名な作家、歴史家の崔南善(チェ・ナムソン、최남선)は、1946年に出版した『朝鮮常識問答(조선상식문답)』で、ヤックァについて「朝鮮でこしらえる菓子の中で一番高級なものである」と語っている<ref>崔南善 著, 相場清 訳, 1965, 『朝鮮常識問答 朝鮮文化の研究』, 宗高書房, P35-36</ref><ref>[https://nl.go.kr/NL/contents/search.do?resultType=&pageNum=1&pageSize=10&order=&sort=&srchTarget=total&kwd=%EC%A1%B0%EC%84%A0%EC%83%81%EC%8B%9D%EB%AC%B8%EB%8B%B5&systemType=&lnbTypeName=&category=%EB%8F%84%EC%84%9C&hanjaFlag=&reSrchFlag=&licYn=N&kdcName1s=&manageName=&langName=&ipubYear=&pubyearName=&seShelfCode=&detailSearch=&seriesName=&mediaCode=&offerDbcode2s=&f1=&v1=&f2=&v2=&f3=&v3=&f4=&v4=&and1=&and2=&and3=&and4=&and5=&and6=&and7=&and8=&and9=&and10=&and11=&and12=&isbnOp=&isbnCode=&guCode2=&guCode3=&guCode4=&guCode5=&guCode6=&guCode7=&guCode8=&guCode11=&gu2=&gu7=&gu8=&gu9=&gu10=&gu12=&gu13=&gu14=&gu15=&gu16=&subject=&sYear=&eYear=&sRegDate=&eRegDate=&typeCode=&acConNo=&acConNoSubject=&infoTxt= 조선상식문답(館外利用無料図書の検索結果)] 、韓国国立中央図書館、2023年7月25日閲覧</ref>。日常の間食として親しまれるほか、伝統的な祝い膳や、儀礼膳、祖先を祀る祭祀膳にも用いられる。伝統菓子店、餅店、スーパー、コンビニなどで広く販売されており、伝統茶店やカフェで提供されることもある。近年はアイスクリームや生クリームを載せて食べたり、他の菓子類と融合させるなど、新たな楽しみ方も見出されている。かつて高麗の都であった[[北朝鮮の料理|黄海北道開城市]]が本場として知られ、四角形に作ったものはケソンヤックァ(開城式のヤックァ、[[개성약과]])とも呼ばれる。[[京畿道の料理|京畿道]][[水原市の料理|水原市]]の郷土菓子でもある。
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小麦粉に蜂蜜、ゴマ油、酒、ショウガ汁などを混ぜて生地を作り、花模様などに成形して油で揚げ、全体に蜂蜜や水飴を絡める。主材料にもち粉を加える場合や、形状を四角形に仕立てたもの、ナツメや松の実などを飾りとしてあしらったものなどもある。韓国の伝統菓子としてはもっとも代表的なひとつであり、著名な作家、歴史家の崔南善(チェ・ナムソン、최남선)は、1946年に出版した『朝鮮常識問答(조선상식문답)』で、ヤックァについて「朝鮮でこしらえる菓子の中で一番高級なものである」と語っている<ref>崔南善 著, 相場清 訳, 1965, 『朝鮮常識問答 朝鮮文化の研究』, 宗高書房, P35-36</ref><ref>[https://nl.go.kr/NL/contents/search.do?resultType=&pageNum=1&pageSize=10&order=&sort=&srchTarget=total&kwd=%EC%A1%B0%EC%84%A0%EC%83%81%EC%8B%9D%EB%AC%B8%EB%8B%B5&systemType=&lnbTypeName=&category=%EB%8F%84%EC%84%9C&hanjaFlag=&reSrchFlag=&licYn=N&kdcName1s=&manageName=&langName=&ipubYear=&pubyearName=&seShelfCode=&detailSearch=&seriesName=&mediaCode=&offerDbcode2s=&f1=&v1=&f2=&v2=&f3=&v3=&f4=&v4=&and1=&and2=&and3=&and4=&and5=&and6=&and7=&and8=&and9=&and10=&and11=&and12=&isbnOp=&isbnCode=&guCode2=&guCode3=&guCode4=&guCode5=&guCode6=&guCode7=&guCode8=&guCode11=&gu2=&gu7=&gu8=&gu9=&gu10=&gu12=&gu13=&gu14=&gu15=&gu16=&subject=&sYear=&eYear=&sRegDate=&eRegDate=&typeCode=&acConNo=&acConNoSubject=&infoTxt= 조선상식문답(館外利用無料図書の検索結果)] 、韓国国立中央図書館、2023年7月25日閲覧</ref>。日常の間食として親しまれるほか、伝統的な祝い膳や、儀礼膳、祖先を祀る祭祀膳にも用いられる。伝統菓子店、餅店、スーパー、コンビニなどで広く販売されており、伝統茶店やカフェで提供されることもある。近年はアイスクリームや生クリームを載せて食べたり、他の菓子類と融合させるなど、新たな楽しみ方も見出されている。かつて高麗の都であった[[北朝鮮の料理|黄海北道開城市]]が本場として知られ、四角形に作ったものはケソンヤックァ(開城式のヤックァ、[[개성약과]])とも呼ばれる。[[京畿道の料理|京畿道]][[水原市の料理|水原市]]の郷土菓子でもある。
  
 
=== 韓菓>油蜜菓>ヤックァ ===
 
=== 韓菓>油蜜菓>ヤックァ ===
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:韓菓は伝統菓子の総称であり、油蜜菓は韓菓の中のひとつである。韓菓にはほかに、ユグァ(油菓、小麦粉や米粉の生地を揚げて蜜や炒り米を貼った菓子、[[유과]])、チョングァ(果物や野菜の蜜漬け、[[정과]])、カンジョン(穀物を蜜で固めた菓子、[[강정]])などがある。
 
:韓菓は伝統菓子の総称であり、油蜜菓は韓菓の中のひとつである。韓菓にはほかに、ユグァ(油菓、小麦粉や米粉の生地を揚げて蜜や炒り米を貼った菓子、[[유과]])、チョングァ(果物や野菜の蜜漬け、[[정과]])、カンジョン(穀物を蜜で固めた菓子、[[강정]])などがある。
 
:油蜜菓は小麦粉や米粉の生地を練って油で揚げ、蜂蜜や水飴などを絡めた菓子を総称する。ヤックァは油蜜菓の中の代表的なひとつである。油蜜菓にはほかに、マンドゥグァ(半月型の揚げ菓子、[[만두과]])、タシックァ(型を用いた揚げ菓子、[[다식과]])、メジャックァ(生地を手綱型にねじった揚げ菓子、[[매작과]])などがある。
 
:油蜜菓は小麦粉や米粉の生地を練って油で揚げ、蜂蜜や水飴などを絡めた菓子を総称する。ヤックァは油蜜菓の中の代表的なひとつである。油蜜菓にはほかに、マンドゥグァ(半月型の揚げ菓子、[[만두과]])、タシックァ(型を用いた揚げ菓子、[[다식과]])、メジャックァ(生地を手綱型にねじった揚げ菓子、[[매작과]])などがある。
:ヤックァの歴史を紐解く場合、高麗時代、朝鮮時代の文献には油蜜菓(油蜜果)、蜜菓(蜜果)として書かれているものも多く、これらはヤックァを含む
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:高麗時代、朝鮮時代の文献には、ヤックァとして登場するものだけでなく、油蜜菓(油蜜果)、蜜菓(蜜果)と書かれたものも多い。これらはヤックァとほぼ同義であるが、厳密には他の菓子をも含む総称である。ヤックァの歴史を紐解く場合はこれらの表記で書かれた文献も参照する必要があり、結果としてヤックァの話をしながらも油蜜菓(油蜜果)、蜜菓(蜜果)などの用語が混在するため注意が必要である。
 
 
ヤックァ(薬果)だけでなく、油蜜菓(油蜜果)、蜜菓(蜜果)と総称して書かれたものも多い。用語としてはヤックァを含むさまざまな菓子の総称であるが、ヤックァの歴史を紐解く場合、これらの表記で書かれた文献も参照する必要がある。結果として、ヤックァの話をしながらも油蜜菓(油蜜果)、蜜菓(蜜果)などの用語が混在するので注意が必要である。
 
  
 
=== 語源 ===
 
=== 語源 ===
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