タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)

2014年10月8日 (水) 14:27時点におけるHatta (トーク | 投稿記録)による版

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タッカンマリ닭한마리)は、丸鶏の鍋。

名称

タッカンマリは丸鶏の鍋。タッが鶏、ハンマリは一羽という意味で、直訳をするなら「鶏一羽」となる。丸鶏を一羽そのまま使ったことに由来し、客が注文時に「鶏一羽!」と注文したところから、そのまま料理名へと転化したと語られる。日本ではダッカンマリ、タッハンマリ、ダッハンマリ、タクハンマリ、ダクハンマリ、タガンマリといった表記も見られるが、本辞典においては「タッカンマリ」を使用する。発音表記は[다칸마리]。

概要

タッカンマリは丸鶏を使用した鍋。鶏一羽をそのままの形で煮込む場合と、ぶつ切りにして提供する場合がある。水炊きにしたものを、つけダレで味わう方式が一般的で、具にはジャガイモ、長ネギ、ニラ、韓国餅()などを加える。店によっては高麗人参、ナツメ、ハリギリ(엄나무)などの漢方材を加えることもある。残ったスープにはカルグクス(칼국수)を入れて味わうのが定番である。また、カルグクスのほかに餃子(만두)を加えたり、残ったスープでごはんを炒めて食べることもある。もともとはソウルの東大門を発祥とする料理で、現在は東大門駅からも近い鍾路5街に専門店が集まっている。いわばソウルの郷土料理であり、他地域においては比較的近年までほとんど存在を知られていなかったと言ってよい。それとは対照的に日本人観光客の間では、インターネットサイトやガイドブックなどで取り上げられたこともあって、2000年代初頭から話題の料理として知名度を上げてきた。

タッカンマリの食べ方

  • 卓上での作業
タッカンマリは卓上で鍋を火にかけ調理しながら味わうことが多い。このとき下煮をした丸鶏がそのまま登場する場合、客が自らハサミで食べやすい大きさにカットする必要がある。日本人客の場合は店員がかわりにやってくれることもあるが、韓国人客の多くは自分たちで行う。骨の継ぎ目を探り当てつつハサミを入れていくのに少しのコツがいるものの、慣れてしまえばこれもタッカンマリを味わう楽しさといえる。また、ビギナー客を伴って訪れた場合、この作業をスムーズに行えるとたいへんカッコいい。
店によっても異なるが、テーブルに浅漬けの白菜キムチや、刻みニンニクが置かれていることが多い。好みによってこれを鍋の中に投入してもよい。
  • つけダレの作り方
タッカンマリのつけダレは、醤油、酢、マスタード、タデギ(다데기、唐辛子ペースト)の4種類を基本とすることが多い。これを好みで混ぜ合わせ、煮えた鶏肉をつけて味わう。濃い場合は、鍋のスープを足し薄めて調節をする。店によっては最初から混ぜ合わせたものが用意されることもある。

調理器具

鍾路5街のタッカンマリ通りでは、洗面器か、金だらいのようなとってのない鍋が用いられることが多い。使いこまれてボコボコになった鍋ほど味があるとして喜ぶファンは多い。

トッピング

タッカンマリを注文する際に、サリ(사리)と呼ばれるトッピングを追加することができる。店によっても異なるが、ジャガイモ、韓国餅、長ネギ、カルグクスなどが代表的な例である。

歴史

1970年代

韓国では1960年代後半から高速道路の整備が進み、各地で高速バスが運行するようになった。1968年に誕生した東大門市外バスターミナルは1970年に京釜高速道路が全線開通すると、地方から東大門の卸売市場を訪れる人たちで賑わった。こうした高速バスの利用客に対し、すぐ提供できてボリュームのある料理として生まれたのがタッカンマリである。もともとはタッカルグクス(닭칼국수、鶏を入れた韓国式うどん)として販売されていたものが、徐々にアレンジされて現在の姿になったと考えられる。なお、東大門市外バスターミナルは1978年8月に江南のソウル高速バスターミナルと統合され、跡地は1970年にオープンした東大門総合市場の駐車場として使われた後、2014年2月にホテル「JWマリオット東大門スクエアソウル」がオープンした。[1]

  • 「陳玉華ハルメ元祖タッカンマリ」の開店
タッカンマリの元祖店とされる「陳玉華ハルメ元祖タッカンマリ」は公式ウェブサイトにおいて、1978年に東大門総合市場の飲食店街にて、タッカルグクスの店として創業。その後、1981年に現在の場所へ移転し、店名を「陳玉華元祖タッカンマリ」に変更したと記述している。[2]
  • 韓国観光公社の記述
韓国観光公社は公式ウェブサイトにおいて、「ソウル東大門タッカンマリ通り」というページで、タッカンマリの発祥を以下のように説明している。執筆者や執筆時期は明らかにされていないが、情報提供者として鍾路区庁、タッカンマリ通りの食堂があげられている。
「その路地に点在するタッカンマリ店は短くて5年、長くて30年を越える歳月を過ごしている。だが、今の店舗ができる前、個人宅でタッカルグクスを販売していた時期までさかのぼれば、その路地におけるタッカンマリ店の歴史は30年よりはるか前までさかのぼらなければならない。当時タッカルグクスを売っていたおばあさんの家を28年前に引き継いで、今まで「タッカンマリ」を扱ってきた飲食店の主人に話を聞いてみると、おばあさんのひとりが現在のタッカンマリスタイルではない、鶏肉を入れたカルグクスを作って出していたという。瓦ぶき伝統家屋の板の間と個室でお客さんを受けた。今の社長はその家をそっくり引き継いで、当時庭だったところにホールを作って食卓を置いた。今残っている店の中でもっとも古い店は「陳玉華ハルメタッカンマリ」だ。しかし店で火事が起きて、2009年2月に建て直した。この店もまた、当初は今のようなタッカンマリではなくタッカルグクスを販売した。すなわち東大門タッカンマリ通りの元祖はタッカルグクスであったという訳だ」(原文1)。[3]

2010年代

2010年から11年頃に豚肉の特殊部位を扱う専門店が続々と増えてブームになった。これは2008年頃からの韓牛ブームによって、牛肉の特殊部位を提供する店が増えたことも影響していると考えられる。カルメギサルはハンジョンサル(항정살、首すじの肉、豚トロ)、カブリサル(가브리살、バラ肉を包んでいる肉 )、コプテギ(껍데기、豚皮)などとともに代表的な豚肉の特殊部位として定着している。

種類

カルメギサルには次のような種類がある。

  • センカルメギサル(생갈매기살)
味付けなしのカルメギサル
  • ヤンニョムカルメギサル(양념갈매기살)
辛い薬味ダレを絡めたカルメギサル
  • マヌルカルメギサル(마늘갈매기살)
ニンニクダレを絡めたカルメギサル

日本における定着

日本では焼肉店などで豚ハラミとして提供されている。韓国料理のカルメギサルとしては、まだほとんど馴染みがなく、これからの定着が期待される。

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代の2000年に豚焼肉店でメニューにカルメギサルを発見し、韓国ではカモメの肉を食べるのだと本気で勘違いをした過去がある。

地域

  • ソウル市麻浦区桃花洞
孔徳駅の近くにカルメギサルの専門店が集まっており、麻浦カルメギサル通りと呼ばれる。
  • ソウル市鍾路区敦義洞
鍾路3街駅の近くにカルメギサルの専門店が集まっており、鍾路3街カルメギサル通り(종로3가 갈매기살골목)と呼ばれる。
  • 京畿道城南市中院区麗水洞
麗水洞にカルメギサルの専門店が集まっている。

脚注

  1. 동대문시외버스터미널 、위키백과、2014年10月8日閲覧
  2. http://www.darkhanmari.co.kr/korean/intro/intro03.phtml 회사 연역] 、陳玉華ハルメ元祖タッカンマリ公式ウェブサイト、2014年10月8日閲覧
  3. http://korean.visitkorea.or.kr/kor/inut/where/where_main_search.jsp?cid=704507 [서울 종로구] 서울 동대문 닭한마리 골목] 、韓国観光公社公式ウェブサイト「대한민국 구석구석」、2014年10月8日閲覧

外部リンク

関連項目