「タッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
 
(同じ利用者による、間の42版が非表示)
2行目: 2行目:
  
 
'''タッカルビ'''([[닭갈비]])は、鶏肉と野菜を甘辛いタレと絡めて鉄板で炒めた料理。
 
'''タッカルビ'''([[닭갈비]])は、鶏肉と野菜を甘辛いタレと絡めて鉄板で炒めた料理。
 +
 +
[[ファイル:22122808.JPG|thumb|400px|タッカルビ]]
  
 
== 名称 ==
 
== 名称 ==
7行目: 9行目:
  
 
== 概要 ==
 
== 概要 ==
タッカルビはぶつ切りにした鶏肉と、キャベツ、ニンジン、サツマイモなどの野菜を甘辛いタレと絡めて炒めた料理。鶏肉は主をにモモ肉が使われる。店によって一緒に炒める具材はさまざまであり、タマネギ、長ネギ、エゴマの葉といった野菜に始まり、タンミョン([[당면]]、春雨)、チョルミョン([[쫄면]]、でんぷん麺)、うどん、餅、スライスチーズ、テナガダコなどの魚介類まで多岐に渡る。またこれらをトッピングとして選べる専門店も多い。専門店では円形の平たく大きな鉄板を用意し、注文を受けて客席で調理をするスタイルが多いが、店や地域によって鉄鍋を用いる場合もある。タッカルビをひとしきり味わった後は、少量残したところへごはんやうどんなどを投入し、炒めて食べるのも定番である。韓国では専門店で味わう料理だが、日本では韓国家庭料理店などでも提供される。
+
[[ファイル:17032302.JPG|thumb|300px|タッカルビのトッピング]]
 +
[[ファイル:17032303.JPG|thumb|300px|タッカルビの後に作ったポックムパプ]]
 +
タッカルビはぶつ切りにした鶏肉と、キャベツ、ニンジン、サツマイモなどの野菜を甘辛いタレと絡めて炒めた料理。鶏肉は主をにモモ肉が使われる。店によって一緒に炒める具材はさまざまであり、タマネギ、長ネギ、エゴマの葉といった野菜に始まり、タンミョン(春雨、[[당면]])、チョルミョン(でんぷん麺、[[쫄면]])、うどん、餅、スライスチーズ、テナガダコなどの魚介類まで多岐に渡る。またこれらをサリ([[사리]])と呼ばれるトッピングとして選べる専門店も多い。専門店では円形の平たく大きな鉄板を用意し、注文を受けて客席で調理をするスタイルが多いが、店や地域によって鉄鍋を用いる場合もある。タッカルビをひとしきり味わった後は、少量残したところへごはんやうどんなどを投入し、炒めて食べるのも定番である。韓国では専門店で味わう料理だが、日本では韓国家庭料理店などでも提供される。
 +
 
 +
*シメの食事メニュー
 +
:タッカルビの専門店では、シメの食事メニューとして[[マッククス(冷やしそば/막국수)]]を提供することが多い。[[マッククス(冷やしそば/막국수)|マッククス]]は、タッカルビと同じく[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]の郷土料理であり、その歴史はタッカルビよりも古い。
  
 
== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
14行目: 21行目:
  
 
==== 江原道春川市の事例 ====
 
==== 江原道春川市の事例 ====
 +
[[ファイル:17032304.JPG|thumb|300px|春川の明洞タッカルビ通り]]
 
*江原道春川市の調査
 
*江原道春川市の調査
:タッカルビの発祥地を自認し、市内にも専門店を多数有する春川市は2003~4年に発祥の経緯を調査し、以下のように公式的な発表をしている。
+
:タッカルビの発祥地を自認し、市内にも専門店を多数有する[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]は2003~4年に発祥の経緯を調査し、以下のように公式的な発表をしている。
  
:「春川地域でのタッカルビ誕生に対し調査をした結果、1959年から現在の中央路2街18番地(現、三星生命駐車場と、駐車場のそばにある三星生命の玄関階段の間。その当時はバスターミナルとして使われており、近隣にある現、中央路2街11番地の朝興銀行は江原合乗の終点として使用)に、板で作った小さな豚焼肉店を始めた金永錫さんが、四月革命(1960年4月19日)が起きた年のある日、豚肉を仕入れられず、鶏2羽を買ってきてぶつ切りにし、テジカルビ(豚カルビ焼き)のように作ってみなければならないと言って、終日研究をした結果、鶏肉をテジカルビのように開いてタッカルビを作り、これに味付けをして12時間寝かせ売り始めたのが春川タッカルビが作られた由来と確認する」(原文1)。<ref>『春川地域でのタッカルビ発生に対する由来公告』(春川市庁公告資料)</ref>
+
:「春川地域でのタッカルビ誕生に対し調査をした結果、1959年から現在の中央路2街18番地(現、三星生命駐車場と、駐車場のそばにある三星生命の玄関階段の間。その当時はバスターミナルとして使われており、近隣にある現、中央路2街11番地の朝興銀行は江原合乗の終点として使用)に、板で作った小さな豚焼肉店を始めた金永錫さんが、四月革命(1960年4月19日)が起きた年のある日、豚肉を仕入れられず、鶏2羽を買ってきてぶつ切りにし、[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)|テジカルビ(豚カルビ焼き)]]のように作ってみなければならないと言って、終日研究をした結果、鶏肉を[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)|テジカルビ]]のように開いてタッカルビを作り、これに味付けをして12時間寝かせ売り始めたのが春川タッカルビが作られた由来と確認する」(原文1)。<ref>『春川地域でのタッカルビ発生に対する由来公告』(春川市庁公告資料)</ref>
  
 
*韓国観光公社の記述
 
*韓国観光公社の記述
 
:また、同様の記述は韓国観光公社が配布する『韓国の味紀行』という冊子(WEBでも閲覧可)にも見られ、そこでは以下のように紹介されている。
 
:また、同様の記述は韓国観光公社が配布する『韓国の味紀行』という冊子(WEBでも閲覧可)にも見られ、そこでは以下のように紹介されている。
  
:「1960年代初め、春川の中央路のある掘っ立て小屋で主に豚肉料理出していたいた金氏夫婦がいました。ある日豚肉が手に入らなかった夫婦は、鶏2羽を買ってテジカルビ(豚のカルビ)のように料理しました。鶏肉をテジカルビのように広く伸ばし、かたまりのまま焼いて切って食べると一風変わった味がしました。その後、甘いタレに鶏肉を漬け込んでおいてからテジカルビのように焼いて出したところ、酒のつまみとして人気を呼ぶようになりました。このようにして誕生した『タッカルビ(鶏肉と野菜のピリ辛鉄板焼き)』は、噂で春川全域に広がり、1960年末頃には練炭の上に鉄板をのせタッカルビを焼いて出す『タッカルビ屋台』が流行しました。タッカルビは他の焼き料理に比べて値段が安かったため、休暇中の軍人や京春線の列車に乗り春川や江村に遊びに来た大学生にも好まれました。タッカルビ一つの値段が100ウォンしかしなかったため、『大学生カルビ』または『庶民カルビ』という名前も付きました」<ref>[http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/taste/taste_index.jsp?cid=998437&regionCode=32,13 江原道の味紀行] 、韓国観光公社ウェブサイト、2014年9月4日閲覧</ref>
+
:「1960年代初め、春川の中央路のある掘っ立て小屋で主に豚肉料理出していたいた金氏夫婦がいました。ある日豚肉が手に入らなかった夫婦は、鶏2羽を買って[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)|テジカルビ(豚カルビ焼き)]]のように料理しました。鶏肉を[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)|テジカルビ]]のように広く伸ばし、かたまりのまま焼いて切って食べると一風変わった味がしました。その後、甘いタレに鶏肉を漬け込んでおいてから[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)|テジカルビ]]のように焼いて出したところ、酒のつまみとして人気を呼ぶようになりました。このようにして誕生した『タッカルビ(鶏肉と野菜のピリ辛鉄板焼き)』は、噂で春川全域に広がり、1960年末頃には練炭の上に鉄板をのせタッカルビを焼いて出す『タッカルビ屋台』が流行しました。タッカルビは他の焼き料理に比べて値段が安かったため、休暇中の軍人や京春線の列車に乗り春川や江村に遊びに来た大学生にも好まれました。タッカルビ一つの値段が100ウォンしかしなかったため、『大学生カルビ』または『庶民カルビ』という名前も付きました」<ref>[http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/taste/taste_index.jsp?cid=998437&regionCode=32,13 江原道の味紀行] 、韓国観光公社ウェブサイト、2014年9月4日閲覧</ref>
  
 
*ファン・ギョイクの報告
 
*ファン・ギョイクの報告
32行目: 40行目:
  
 
==== 江原道洪川郡の事例 ====
 
==== 江原道洪川郡の事例 ====
タッカルビの発祥地を春川市と隣接する洪川郡だとする主張も根強い。現在の洪川では1969年創業の「オクスタッカルビ(옥수닭갈비)」が営業を続けており、洪川では元祖とされている。春川式のタッカルビが網焼きから始まったのに対し、洪川式では鍋料理風のスタイルから発展していった。
+
タッカルビの発祥地を[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]と隣接する[[洪川郡の料理|洪川郡]]だとする主張も根強い。現在の[[洪川郡の料理|洪川郡]]では1969年創業の「オクスタッカルビ(옥수닭갈비)」が営業を続けており、[[洪川郡の料理|洪川郡]]では元祖とされている。春川式のタッカルビが網焼きから始まったのに対し、洪川式では鍋料理風のスタイルから発展していった。
  
 
*オクスタッカルビの事例
 
*オクスタッカルビの事例
 +
[[ファイル:17032305.JPG|thumb|300px|2003年に撮影した「オクスタッカルビ」の外観]]
 
:店主によれば自店が洪川では初めてタッカルビを提供し、創業当初はドラム缶に練炭を使った方式だったという。また、創業当初は地元客のみならず行楽客でも賑わったが、1975年に嶺東高速道路が東海岸まで伸びると、客足が鈍ったと語っている。(八田靖史の取材記録より、2003年1月14日)  
 
:店主によれば自店が洪川では初めてタッカルビを提供し、創業当初はドラム缶に練炭を使った方式だったという。また、創業当初は地元客のみならず行楽客でも賑わったが、1975年に嶺東高速道路が東海岸まで伸びると、客足が鈍ったと語っている。(八田靖史の取材記録より、2003年1月14日)  
  
45行目: 54行目:
  
 
=== 1970~80年代 ===
 
=== 1970~80年代 ===
 +
;朝鮮日報(1971年)の記事
 +
:1971年1月14日付の『朝鮮日報(조선일보)』には「カラー風土巡覧 冬の旅人(칼러風土巡覧 겨울 나그네)」という記事が掲載されており、[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]の観光情報がまとめられている。記事内では昭陽湖(ソヤンホ、소양호)の周辺で味わえる料理として、夏のオジュク(魚粥、[[어죽]])が有名だと紹介したうえで、「川風が強い最近は冬の味覚を楽しむほどのものがなく、ただ市内の「タッカルビ店」が盛んに賑わうのみである。朝鮮日報のコラムでだけ大手を振っていると思われた「肋鶏」が、5、6年以来、40~50ヶ所の居酒屋で名前を鳴り響かせるという。 だが、同じ肋鶏でも春川のタッカルビには鶏自体がほぼ丸ごとついてくる。下に練炭の火がついたドラム缶の上に、いくつかにぶつ切りにされたカルビについた鶏(1台60ウォン)のかたまりを炒めても食べ、また炭火で焼いても食べる」(原文4)と述べている<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1973101700239105026&editNo=1&printCount=1&publishDate=1973-10-17&officeId=00023&pageNo=5&printNo=16164&publishType=00010 別味珍味 春川「닭갈비」] 、NAVERニュースライブラリー、2023年1月29日閲覧</ref>。この記述から、当時すでにタッカルビが昭陽湖一帯の名物として定着するとともに、炒める調理法のタッカルビが登場していたと推測できる。
 +
 +
:【原文4】「강바람이 세찬 요즘에는 겨울의 味覚을 즐길만한 것이 없고 다만 시내의 「닭갈비집」이 한창 흥청거릴 뿐이다. 朝鮮日報 칼럼에서만 활개를 치는 줄 알았던「鶏肋」이 5, 6년이래 40~50군데의 대폿집에서 마구 이름을 떨친다고 한다. 하지만 같은 鶏肋이라도 春川의 닭갈비에는 닭자체가 거의 통째로 붙어 나온다. 밑으로 연탄불이 피워진 드럼통 바닥에 몇 갠가로 토막쳐져 갈비에 붙은 닭(한대에 60원)덩이를 볶아도 먹고, 또 숯불에 구워도 먹는다.」
 +
 +
;朝鮮日報(1973年)の記事
 +
:1973年10月17日付の『朝鮮日報(조선일보)』には「別味珍味(별미진미)」というコラムが掲載されており、[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]の名物としてタッカルビが紹介されている。記事内では「鶏を丸々骨ごと、醤油、砂糖、コショウなどの薬味ダレに漬け、冷蔵庫に入れてひと晩寝かせてから鉄板で作ったトゥレバン([[두레반]]、円形の大きな膳)をドラム缶の上に置いて焼く。 タッカルビ1本70ウォン、3~4人で囲んで10本を注文して焼酎を飲む」(原文5)と紹介されている<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1973101700239105026&editNo=1&printCount=1&publishDate=1973-10-17&officeId=00023&pageNo=5&printNo=16164&publishType=00010 別味珍味 春川「닭갈비」] 、NAVERニュースライブラリー、2023年1月29日閲覧</ref>。内容を見るに、この時代には円形の鉄板で焼くスタイルが確立していたと思われる。味付けは唐辛子の記述がないことから、[[テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)]]に近いのではと推測される。
 +
 +
:【原文5】「닭을 통째로 뼈째, 간장 설탕 후춧가루등 갖은 양념에 재워 냉장고에 넣어서 하루저녁을 묵혀 두었다가 철판으로 만든 두레반을 드럼깡 위에 놓고 굽는다. 닭갈비 한대에 70원씩, 3, 4명이 둘러앉아 10대를 청하고 소주를 마신다.」
 +
 +
;ファン・ギョイクの報告
 +
:ファン・ギョイクは著書『味について行ってみる(맛따라 갈까 보다)』の中で、タッカルビの歴史について時代ごとの考察をしており、1970年代以降について以下のように述べている。
 +
[[ファイル:17032306.JPG|thumb|300px|網焼きのタッカルビ(タップルコギ)]]
  
*ファン・ギョイクの報告
+
:「70年代初めまでのタップルコギは、今のタッカルビとは違ってドラム缶の中に練炭を入れ、その上に焼き網を載せて味付けをした鶏肉を焼いて食べた」「70年代の中盤を過ぎ、ドラム缶の上から焼き網が消え鉄板が上がった。 それと共に野菜と餅が入り始め、肉を食べた後にごはんや麺を加えて食べるようになった」「80年代に入ると、タッカルビの人気はまさに爆発的だった。 特にテレビの『味に沿って道に沿って』のような番組に紹介されてからは、春川における古くからの郷土料理である[[マッククス(冷やしそば/막국수)|マッククス(冷やしそば)]]に次ぐ名声を得始めた」(原文6)<ref name="kyakucyu03" />
:前掲書の中で、タッカルビの歴史についても時代ごとの考察をしており、1960年代については前述した内容とほぼ共通する。1970年代以降について、以下に引用する。
 
  
:「70年代初めまでのタップルコギは、今のタッカルビとは違ってドラム缶の中に練炭を入れ、その上に焼き網を載せて味付けをした鶏肉を焼いて食べた」「70年代の中盤を過ぎ、ドラム缶の上から焼き網が消え鉄板が上がった。 それと共に野菜と餅が入り始め、肉を食べた後にごはんや麺を加えて食べるようになった」「80年代に入ると、タッカルビの人気はまさに爆発的だった。 特にテレビの『味に沿って道に沿って』のような番組に紹介されてからは、春川における古くからの郷土料理であるマッククスに次ぐ名声を得始めた」(原文3)<ref name="kyakucyu03" />
+
:【原文6】「70년대 초까지의 닭불고기는 지금의 닭갈비와는 달리 드럼통 안에 연탄을 넣고 그 위에 석쇠를 올려 양념한 닭고기를 구워 먹었다.」「70년대 중반을 넘기면서 드럼통 위에 석쇠가 퇴장하고 철판이 올랐다. 그러면서 야채와 가래떡이 들어가기 시작하고 고기를 먹고 난 다음 밥이나 국수를 비벼 주게 되었다.」「80년대 들어 닭갈비의 인기는 가히 폭발적이었다. 특히 텔레비전의 '맛따라 길따라' 류의 프로그램에 소개되고 난 후부터는 춘천의 오랜 향토 음식인 막국수에 버금가는 명성을 얻기 시작했다.」
  
:【原文3】「70년대 초까지의 닭불고기는 지금의 닭갈비와는 달리 드럼통 안에 연탄을 넣고 그 위에 석쇠를 올려 양념한 닭고기를 구워 먹었다.」「70년대 중반을 넘기면서 드럼통 위에 석쇠가 퇴장하고 철판이 올랐다. 그러면서 야채와 가래떡이 들어가기 시작하고 고기를 먹고 난 다음 밥이나 국수를 비벼 주게 되었다.」「80년대 들어 닭갈비의 인기는 가히 폭발적이었다. 특히 텔레비전의 '맛따라 길따라' 류의 프로그램에 소개되고 난 후부터는 춘천의 오랜 향토 음식인 막국수에 버금가는 명성을 얻기 시작했다.」
+
=== 1990年代 ===
 +
1990年代に入ってからは[[ソウル市の料理|ソウル市]]を中心として全国に専門店が拡大していった。
  
=== 1990年代以降 ===
+
=== 2000年代 ===
90年代に入ってからはソウルを中心として全国に専門店が拡大していった。
+
;春川タッカルビ祭りの開催
 +
:2004年4月に[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]にて、第1回「春川タッカルビ祭り(춘천닭갈비축제)」が開催された。その後、2008年からは、1996年8月に第1回を行った「春川マッククス祭り(춘천막국수축제)」と合同になり、現在まで「春川マッククスタッカルビ祭り(춘천막국수 닭갈비축제)」として開催されている<ref>[https://www.mdfestival.com/ 춘천막국수 닭갈비축제] 、春川マッククスタッカルビ祭りウェブサイト、2023年6月25日閲覧</ref>。
  
 
=== 2010年代以降 ===
 
=== 2010年代以降 ===
 +
2014年にチーズタッカルビが登場し、日本にも伝わって大きなブームとなった。
 
*チーズタッカルビの登場
 
*チーズタッカルビの登場
:2014年にチーズブームが到来。2014年5月にソウルの弘大で1号店をオープンした「ジェームスチーズトゥンカルビ」は、辛い味付けのトゥンカルビ(豚のバックリブ焼き、[[등갈비]])を溶けたチーズにつけて味わうチーズトゥンカルビで爆発的な人気を集め、わずか半年で全国に100店舗超を展開した(八田靖史の取材記録より、2014年11月28日)。この人気によって後発店が続々と誕生したほか、同様のスタイルで辛い料理をチーズに絡めて食べる他の料理も人気を集めた。チーズチュクミ(チーズに絡めるイイダコ炒め、치즈주꾸미)であり、チーズタッパル(チーズに絡める鶏足焼き、치즈닭발)であり、そしてチーズタッカルビ(チーズに絡める鶏肉の鉄板焼き、치즈닭갈비)であった。このチーズタッカルビは2015年夏以降に日本へと伝わり、2016年に入って大きなブームへと拡大した([[タッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)#日本における定着|日本における定着 チーズタッカルビのブーム]]参照)。
+
:韓国では2014年にチーズブームが到来。2014年5月に[[ソウル市の料理|ソウル]]の弘大で1号店をオープンした「ジェームスチーズトゥンカルビ(제임스치즈등갈비)」は、辛い味付けの[[トゥンカルビ(豚バックリブの焼肉/등갈비)]]を溶けたチーズにつけて味わうチーズトゥンカルビで爆発的な人気を集め、わずか半年で全国に100店舗超を展開した(八田靖史の取材記録より、2014年11月28日)。この人気によって後発店が続々と誕生したほか、同様のスタイルで辛い料理をチーズに絡めて食べる他の料理も人気を集めた。その代表格と言えるのがチーズタッカルビ(チーズに絡める鶏肉の鉄板焼き、[[치즈닭갈비]])であり、ほかには[[チュクミボックム(イイダコ炒め/주꾸미볶음)|チーズチュクミ(チーズに絡めるイイダコ炒め、[[치즈주꾸미]])]]、[[タッパル(鶏足焼き/닭발)|チーズタッパル(チーズに絡める鶏足焼き、[[치즈닭발]])]]などがあった。このチーズタッカルビは2015年夏以降に日本へと伝わり、2016年に入って大きなブームへと拡大した([[タッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)#日本における定着|日本における定着 チーズタッカルビのブーム]]参照)。
 
+
*チーズタッカルビの起源
 
+
:チーズタッカルビのブームは2014年以降に拡大したが、タッカルビにチーズを加える工夫自体はそれ以前からあった。当初はタッカルビそのものではなく、タッカルビの後に食べる[[ポックムパプ(チャーハン/볶음밥)]]にチーズをかけるトッピングから始まっており、韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2004年7月5日に[[ソウル市の料理|ソウル]]の新村で初めて食べた。このときの経験は親しい友人らに送っていた非公開のメールマガジン「週刊サメガレイ第175号」に記録があり、その中で「タッカルビのさらなる可能性を感じた」と感動を綴っている。このポックムパプへのトッピングが、やがてタッカルビ本体へのトッピングへと移行していった。鉄板に大量のチーズを溶かし、タッカルビを絡めて食べるスタイルもチーズトゥンカルビのブーム以前からあり、ネット検索でさかのぼる限り、少なくとも2011年1月に[[全羅北道の料理|全羅北道]][[全州市の料理|全州市]]でオープンした「コスタッカルビ(고수닭갈비)」の例が見られる<ref>[http://www.jjn.co.kr/news/articleView.html?idxno=527421 전주 한옥마을 '고수 닭갈비'] 、全州中央新聞、2017年3月23日閲覧</ref>。
ただし、タッカルビにチーズを加える工夫自体はそれ以前から見られ、主にトッピングとしてチーズを追加するアレンジがあった。その起源は定かではないが、韓食ペディアの執筆者である八田靖史の記憶によれば、当初はタッカルビそのものではなく、タッカルビの後に食べるポックムパプ(チャーハン、볶음밥)にチーズをかけるトッピングである。
 
  
 
== 種類 ==
 
== 種類 ==
 +
[[ファイル:17032307.JPG|thumb|300px|クンムルタッカルビ]]
 
タッカルビには次のような種類がある。
 
タッカルビには次のような種類がある。
  
90行目: 114行目:
  
 
*クンムルタッカルビ(국물닭갈비)
 
*クンムルタッカルビ(국물닭갈비)
:鍋料理のように煮汁を多めに作るタッカルビ。江原道太白市の郷土料理としても有名で、テベクタッカルビ(태백닭갈비)と呼ばれることもある。
+
:鍋料理のように煮汁を多めに作るタッカルビ。[[江原道の料理|江原道]][[太白市の料理|太白市]]の郷土料理としても有名で、ムルタッカルビ([[물닭갈비]])、テベクタッカルビ([[태백닭갈비]])と呼ばれることもある(「[[太白市の料理#ムルタッカルビ(鶏肉と野菜の鍋/물닭갈비)|太白市の料理/ムルタッカルビ]]」の項目も参照)。
 
*スップルタッカルビ(숯불닭갈비)
 
*スップルタッカルビ(숯불닭갈비)
 
:下味をつけた鶏肉を網焼きするタッカルビ。かつて春川で作られていた大元のスタイルを踏襲したもの。
 
:下味をつけた鶏肉を網焼きするタッカルビ。かつて春川で作られていた大元のスタイルを踏襲したもの。
  
 
== 日本における定着 ==
 
== 日本における定着 ==
 +
[[ファイル:17032308.jpg|thumb|300px|2002年に市販されたタッカルビの素]]
 
90年代に韓国で流行したのを受け、90年代後半から2000年代の初めにかけて、日本にもタッカルビが持ち込まれた。中でも2000~01年にかけては専門店がオープンしたり、ファミリーレストランの「デニーズ」がメニューに加えるなど、ブームの様相を呈した。このとき、タッカルビでなく「ダッカルビ」との表記も多く使われたため、現在でもダッカルビと表記するケースは多い。
 
90年代に韓国で流行したのを受け、90年代後半から2000年代の初めにかけて、日本にもタッカルビが持ち込まれた。中でも2000~01年にかけては専門店がオープンしたり、ファミリーレストランの「デニーズ」がメニューに加えるなど、ブームの様相を呈した。このとき、タッカルビでなく「ダッカルビ」との表記も多く使われたため、現在でもダッカルビと表記するケースは多い。
  
102行目: 127行目:
  
 
=== チーズタッカルビのブーム ===
 
=== チーズタッカルビのブーム ===
 +
[[ファイル:17032309.JPG|thumb|300px|チーズタッカルビ]]
 
*東京、新大久保では2015年夏頃からピザ用のシュレッドチーズを溶かして絡めるチーズタッカルビが登場し、これが2016年に入って人気を獲得。提供店舗が増えるとともに、他地域にも広がって大きなブームとなった。2016年の下半期からはテレビなどのメディアでも取り上げられ、2017年に入ってもさらにブームが拡大している。
 
*東京、新大久保では2015年夏頃からピザ用のシュレッドチーズを溶かして絡めるチーズタッカルビが登場し、これが2016年に入って人気を獲得。提供店舗が増えるとともに、他地域にも広がって大きなブームとなった。2016年の下半期からはテレビなどのメディアでも取り上げられ、2017年に入ってもさらにブームが拡大している。
  
108行目: 134行目:
  
 
== 地域 ==
 
== 地域 ==
*江原道春川市
+
[[ファイル:17032310.JPG|thumb|300px|ファンギタッカルビ]]
 +
*[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]
 
:全国的にタッカルビ発祥の地として有名。明洞や楽園洞、江原大学の周辺などにタッカルビの専門店通りがある。
 
:全国的にタッカルビ発祥の地として有名。明洞や楽園洞、江原大学の周辺などにタッカルビの専門店通りがある。
*江原道洪川郡
+
*[[江原道の料理|江原道]][[洪川郡の料理|洪川郡]]
:江原道春川市とともにタッカルビ発祥地のひとつと考えられている。
+
:[[江原道の料理|江原道]][[春川市の料理|春川市]]とともにタッカルビ発祥地のひとつと考えられている。
*江原道太白市
+
*[[江原道の料理|江原道]][[太白市の料理|太白市]]
:鍋料理風に仕立てるクンムルタッカルビが郷土料理として有名。テベクタッカルビとも呼ぶ。
+
[[ファイル:19121404.JPG|thumb|300px|ムルタッカルビ]]
*江原道旌善郡
+
:鍋料理風に仕立てるムルタッカルビが郷土料理として有名。ムルタッカルビ、テベクタッカルビとも呼ぶ。
:ファンギタッカルビが有名。韓方のひとつでもあるファンギ(キバナオウギ)は旌善郡の特産品。
+
*[[江原道の料理|江原道]][[旌善郡の料理|旌善郡]]
 +
:韓方材のファンギ(キバナオウギ、[[황기]])を煮込んだ汁を薬味ダレに混ぜたファンギタッカルビが有名。ファンギは旌善郡の特産品である(「[[旌善郡の料理#ファンギ(キバナオウギ/황기)|旌善郡の料理/ファンギ]]」の項目も参照)。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
121行目: 149行目:
  
 
== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活]
+
;制作者関連サイト
*[http://zukan.com/koreanfood/internal11503 韓国料理図鑑(タッカルビ)/ズカンドットコム]
+
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 +
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
 
 
{{DEFAULTSORT:たつかるひ}}
 
{{DEFAULTSORT:たつかるひ}}
 +
*[[タッパル(鶏足焼き/닭발)]]
 +
*[[トゥンカルビ(豚バックリブの焼肉/등갈비)]]
 
*[[マッククス(冷やしそば/막국수)]]
 
*[[マッククス(冷やしそば/막국수)]]
 +
*[[ポックムパプ(チャーハン/볶음밥)]]
 +
*[[チュクミボックム(イイダコ炒め/주꾸미볶음)]]
 +
*[[ソウル市の料理]]
 +
*[[江原道の料理]]
 +
*[[旌善郡の料理]]
 +
*[[春川市の料理]]
 +
*[[太白市の料理]]
 +
*[[洪川郡の料理]]
 +
*[[全羅北道の料理]]
 +
*[[全州市の料理]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 +
[[Category:肉・卵料理の一覧]]
 +
[[Category:鶏肉料理の一覧]]
 +
[[Category:焼肉料理の一覧]]
 +
[[Category:ソウル市の料理]]
 
[[Category:江原道の料理]]
 
[[Category:江原道の料理]]
[[Category:肉・卵料理]]
+
[[Category:全羅北道の料理]]
[[Category:鶏肉料理]]
 
29,495

回編集

案内メニュー