「スンドゥブチゲ(柔らかい豆腐の鍋/순두부찌개)」の版間の差分

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日本では2000年代前半からスンドゥブチゲの専門店が誕生し始め、2000年代後半にかけて急速な広がりを見せた。2003~4年頃からの韓流人気とも同調する形であったが、当初は韓国よりもアメリカでのブームを輸入するという形で普及が進んだ。両者の相乗効果によって大きな知名度を獲得できたとも言える。
 
日本では2000年代前半からスンドゥブチゲの専門店が誕生し始め、2000年代後半にかけて急速な広がりを見せた。2003~4年頃からの韓流人気とも同調する形であったが、当初は韓国よりもアメリカでのブームを輸入するという形で普及が進んだ。両者の相乗効果によって大きな知名度を獲得できたとも言える。
  
=== 2003年 ===
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=== 2000年代 ===
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;2003年
 
日本における専門店の登場は大阪がもっとも早かった。2003年に先駆的な2軒がオープンしている。
 
日本における専門店の登場は大阪がもっとも早かった。2003年に先駆的な2軒がオープンしている。
  
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:2003年10月に大阪、豊中で「OKKII」がオープンした。以前からスンドゥブチゲの店を日本で出したいと考えていた金友香社長は「アメリカで専門店が展開しているのを知り、すぐさま現地での修行を決意。ロサンゼルスの専門店に飛び込みで承諾をもらい、料理のレシピや、提供のノウハウを一つひとつ習得していった」<ref>八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P67</ref>と語っている。
 
:2003年10月に大阪、豊中で「OKKII」がオープンした。以前からスンドゥブチゲの店を日本で出したいと考えていた金友香社長は「アメリカで専門店が展開しているのを知り、すぐさま現地での修行を決意。ロサンゼルスの専門店に飛び込みで承諾をもらい、料理のレシピや、提供のノウハウを一つひとつ習得していった」<ref>八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P67</ref>と語っている。
  
=== 2004年 ===
+
;2004年
 
*「BSD DUBU HOUSE」の日本進出
 
*「BSD DUBU HOUSE」の日本進出
 
:2004年6月に韓国で展開する「LA北倉洞スンドゥブ(LA북창동순두부)」の日本進出店として名古屋で「BSD DUBU HOUSE」がオープンした。
 
:2004年6月に韓国で展開する「LA北倉洞スンドゥブ(LA북창동순두부)」の日本進出店として名古屋で「BSD DUBU HOUSE」がオープンした。
  
=== 2005年 ===
+
;2005年
 
*「BCD TOFU HOUSE」の日本進出
 
*「BCD TOFU HOUSE」の日本進出
 
:2005年11月にアメリカに拠点を持つ「BCD TOFU HOUSE」が東京、新大久保でオープン。この時点で「BCD TOFU HOUSE」は韓国、中国、タイなどにもすでに進出していた。東京地域におけるスンドゥブチゲブームの草創期を担った1軒だが、2010年7月に閉店している。
 
:2005年11月にアメリカに拠点を持つ「BCD TOFU HOUSE」が東京、新大久保でオープン。この時点で「BCD TOFU HOUSE」は韓国、中国、タイなどにもすでに進出していた。東京地域におけるスンドゥブチゲブームの草創期を担った1軒だが、2010年7月に閉店している。
  
=== 2006年 ===
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;2006年
 
2006年はスンドゥブチゲが大きく知名度を高めた年であった。
 
2006年はスンドゥブチゲが大きく知名度を高めた年であった。
  
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:2006年4月12日に東京、青山で「東京純豆腐(とうきょうスンドゥブ)」がオープンした。運営元であるブラスアンドカンパニーは当時教育事業を柱とする企業であったが、ロサンゼルスのコリアンタウンで社長がスンドゥブチゲに出合い、それを日本に持ち込むことを思い付いて外食事業へ参入することとなった(八田靖史の取材記録より、2006年8月24日)。「東京純豆腐」はスンドゥブチゲをカレーやラーメンのような日本の国民食に仕立てることを目指し、従来の韓国料理にはない新しい要素を追加していったところに特徴がある。「明太子チーズスンドゥブや、牛すじスンドゥブといった個性的な具のトッピングに始まり、味噌バタースンドゥブ、カレースンドゥブといったベースとなる味の組み換え、さらには女性を意識した根菜スンドゥブ、緑野菜スンドゥブ、潤健美スンドゥブ(コラーゲンボール、ヒアルロン酸のジュレ入り)といった商品」<ref>八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P65</ref>など、いくつもの新しい工夫を加えて、日本におけるスンドゥブチゲの枠組みを大きく広げていった。また、「東京純豆腐」は創業直後の早い段階から多店舗展開を行い、2015年3月現在、北は北海道から南は沖縄まで30店舗以上をオープンさせている。全国津々浦々にスンドゥブチゲを浸透させたという意味でも大きく寄与した店である。2013年4月12日にはスンドゥブチゲとバル業態を融合させた「0,19 TOKYO SUNDUBU BAR(ゼロコンマイチキュー トウキョウスンドゥブバル)」をオープンした。
 
:2006年4月12日に東京、青山で「東京純豆腐(とうきょうスンドゥブ)」がオープンした。運営元であるブラスアンドカンパニーは当時教育事業を柱とする企業であったが、ロサンゼルスのコリアンタウンで社長がスンドゥブチゲに出合い、それを日本に持ち込むことを思い付いて外食事業へ参入することとなった(八田靖史の取材記録より、2006年8月24日)。「東京純豆腐」はスンドゥブチゲをカレーやラーメンのような日本の国民食に仕立てることを目指し、従来の韓国料理にはない新しい要素を追加していったところに特徴がある。「明太子チーズスンドゥブや、牛すじスンドゥブといった個性的な具のトッピングに始まり、味噌バタースンドゥブ、カレースンドゥブといったベースとなる味の組み換え、さらには女性を意識した根菜スンドゥブ、緑野菜スンドゥブ、潤健美スンドゥブ(コラーゲンボール、ヒアルロン酸のジュレ入り)といった商品」<ref>八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P65</ref>など、いくつもの新しい工夫を加えて、日本におけるスンドゥブチゲの枠組みを大きく広げていった。また、「東京純豆腐」は創業直後の早い段階から多店舗展開を行い、2015年3月現在、北は北海道から南は沖縄まで30店舗以上をオープンさせている。全国津々浦々にスンドゥブチゲを浸透させたという意味でも大きく寄与した店である。2013年4月12日にはスンドゥブチゲとバル業態を融合させた「0,19 TOKYO SUNDUBU BAR(ゼロコンマイチキュー トウキョウスンドゥブバル)」をオープンした。
  
=== 2007年 ===
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;2007年
 
スンドゥブチゲの名前が世に知られるようになり、2007年頃から家庭で手軽に作れるスンドゥブチゲの素が多くの食品メーカーから相次いで発売され、スーパーマーケットなどに並ぶようになった。これ以降、お湯を注ぐだけで食べられるカップタイプのスンドゥブチゲや、スンドゥブチゲ風のラーメンなど、多くの派生商品が開発されるに至った。
 
スンドゥブチゲの名前が世に知られるようになり、2007年頃から家庭で手軽に作れるスンドゥブチゲの素が多くの食品メーカーから相次いで発売され、スーパーマーケットなどに並ぶようになった。これ以降、お湯を注ぐだけで食べられるカップタイプのスンドゥブチゲや、スンドゥブチゲ風のラーメンなど、多くの派生商品が開発されるに至った。
  
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:家庭用スンドゥブチゲの素を販売している代表的なメーカーのひとつに丸大食品がある。丸大食品は2007年9月に発売した「スンドゥブ(辛口)」、2009年2月に発売した「スンドゥブ(マイルド)」などで評判を集め、2012年以降はスンドゥブチゲの素として「売上NO.1」(丸大食品調べ、KSP-POSデータより)をパッケージに掲げている。2009年10月2日(豆腐の日)にはスンドゥブチゲの知名度を高めるため、独自の応援歌として「平成スンドゥブ節」<ref>[http://www.marudai.jp/news/index_091002.html 『平成スンドゥブ節 春夏秋冬編』カラオケ配信決定!!] 、丸大食品、2015年3月27日閲覧</ref>をリリースするなど、ユニークな発信も試みている。なお、この「平成スンドゥブ節」は、もともと海軍小唄で、ザ・ドリフターズ、氷川きよしら多くの歌手によってリメイクされた「ズンドコ節」を原曲としており、丸大食品の社員によってつけられた歌詞を、同社社員やナレーターの鈴木裕介、韓食ペディアの執筆者である八田靖史らが歌い手として参加している。なお、この楽曲は2010年4月1日よりカラオケDAMでも配信された。
 
:家庭用スンドゥブチゲの素を販売している代表的なメーカーのひとつに丸大食品がある。丸大食品は2007年9月に発売した「スンドゥブ(辛口)」、2009年2月に発売した「スンドゥブ(マイルド)」などで評判を集め、2012年以降はスンドゥブチゲの素として「売上NO.1」(丸大食品調べ、KSP-POSデータより)をパッケージに掲げている。2009年10月2日(豆腐の日)にはスンドゥブチゲの知名度を高めるため、独自の応援歌として「平成スンドゥブ節」<ref>[http://www.marudai.jp/news/index_091002.html 『平成スンドゥブ節 春夏秋冬編』カラオケ配信決定!!] 、丸大食品、2015年3月27日閲覧</ref>をリリースするなど、ユニークな発信も試みている。なお、この「平成スンドゥブ節」は、もともと海軍小唄で、ザ・ドリフターズ、氷川きよしら多くの歌手によってリメイクされた「ズンドコ節」を原曲としており、丸大食品の社員によってつけられた歌詞を、同社社員やナレーターの鈴木裕介、韓食ペディアの執筆者である八田靖史らが歌い手として参加している。なお、この楽曲は2010年4月1日よりカラオケDAMでも配信された。
  
=== 2008年 ===
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;2008年
 
*松屋フーズの参入
 
*松屋フーズの参入
 
:松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」では、2008年12月10日よりスン豆腐チゲセットを季節限定メニューとして発売した<ref>[http://www.matsuyafoods.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2008/12/1228890131.pdf 「スン豆腐チゲセット」新発売!] 、松屋フーズ、2015年4月5日閲覧</ref>。
 
:松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」では、2008年12月10日よりスン豆腐チゲセットを季節限定メニューとして発売した<ref>[http://www.matsuyafoods.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2008/12/1228890131.pdf 「スン豆腐チゲセット」新発売!] 、松屋フーズ、2015年4月5日閲覧</ref>。
  
=== 2009年 ===
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;2009年
 
*「小公洞トゥッペギチプ」の日本進出
 
*「小公洞トゥッペギチプ」の日本進出
 
:1962年に創業した韓国でもっとも古いスンドゥブチゲ専門店の「小公洞トゥッペギ」は、2012年10月30日に日本進出を果たした。複数の業態がコラボしてひとつの店を成すというコンセプトの韓国料理店「KollaBo(コラボ)」<ref>[http://www.kollabo.co.jp/shop.html 提携店紹介] 、KollaBo、2015年3月27日閲覧</ref>の一角として展開している。
 
:1962年に創業した韓国でもっとも古いスンドゥブチゲ専門店の「小公洞トゥッペギ」は、2012年10月30日に日本進出を果たした。複数の業態がコラボしてひとつの店を成すというコンセプトの韓国料理店「KollaBo(コラボ)」<ref>[http://www.kollabo.co.jp/shop.html 提携店紹介] 、KollaBo、2015年3月27日閲覧</ref>の一角として展開している。
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:プレジデント社が発行する料理雑誌の『dancyu 2009年03月号』(2009年2月6日発売)では、「『スンドゥブチゲ』人気炎上中!」という8ページの特集記事が組まれている<ref>[http://www.president.co.jp/dan/backnumber/2009/20090300/ 2009年3月号] 、dancyu、2015年4月6日閲覧</ref>。記事内ではレシピ紹介のほか、5軒の飲食店が紹介され、文中には「日本でもこの数年、専門店が続々登場している」<ref>2009, 『dancyu 2009年03月号』, プレジデント社, P144</ref>との記述がある。
 
:プレジデント社が発行する料理雑誌の『dancyu 2009年03月号』(2009年2月6日発売)では、「『スンドゥブチゲ』人気炎上中!」という8ページの特集記事が組まれている<ref>[http://www.president.co.jp/dan/backnumber/2009/20090300/ 2009年3月号] 、dancyu、2015年4月6日閲覧</ref>。記事内ではレシピ紹介のほか、5軒の飲食店が紹介され、文中には「日本でもこの数年、専門店が続々登場している」<ref>2009, 『dancyu 2009年03月号』, プレジデント社, P144</ref>との記述がある。
  
=== 2012年 ===
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=== 2010年代 ===
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;2012年
 
*「ゼスン食堂」の開店
 
*「ゼスン食堂」の開店
:2012年12月27日に東京、赤坂で「ゼスン食堂」がオープンした。「ゼスン食堂」は、韓国で「セマウル食堂」や「本家」を展開する有名外食企業のTHE BONE(더본)が運営する店である。
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:2012年12月27日に東京、赤坂で「ゼスン食堂」がオープンした(閉店済)。「ゼスン食堂」は、韓国で「セマウル食堂」や「本家」を展開する有名外食企業のTHE BONE(더본)が運営する店である。
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=== 2020年代 ===
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;2020年
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*ドラマ『梨泰院クラス』の放送
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:2020年1月31日より、韓国のJTBCでドラマ『梨泰院クラス(이태원 클라쓰)』が放送された。劇中では、主人公パク・セロイ(パク・ソジュン)の経営する居酒屋がスンドゥブチゲを看板メニューに掲げ、また料理大会のシーンではタコ、エビ、ムール貝などを加えた豪華なスンドゥブチゲも作られた。これらが話題となって、韓国ではモデルとなった店<ref>[https://www.instagram.com/honeynight_itaewon/ 이태원클라쓰 꿀밤포차] 、公式インスタグラム、2023年2月1日閲覧</ref>にスンドゥブチゲを食べに行ったり、劇中のスンドゥブチゲを再現した家庭用の商品が発売<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=JzNznyzbjVA [이태원클라쓰] X [해물사관학교] 단밤포차의 존맛탱! 문어순두부찌개! 複製梨泰院Class 泡菜嫩豆腐牛肉湯 梨泰院クラス] 、해물사관학교 YouTubeチャンネル、2023年2月1日閲覧</ref>されたりするなどの波及効果が生まれた。
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:日本においては、2020年3月28日よりNetflixで配信が開始されると、新型コロナウイルスの感染拡大によるステイホーム期間と重なったことから、本作品をはじめとする韓国ドラマを視聴する人が増えて第4次韓流を牽引するに至った。劇中に登場したスンドゥブチゲも注目を集め、韓食ペディアの執筆者である八田靖史の共著書『韓国ドラマ食堂』(イースト・プレス)には本作に登場したスンドゥブチゲの再現レシピが掲載されている。
  
 
== エピソード ==
 
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